Fate/Table Talk 偽史夢幻奇島ニライカナイ ~虚光のタウミエル~ 作:珈琲菓子
GMのお仕事も増える増える
アサシンの真名を初見で見破れる人は多分いないと思う
逆にキャスターの方はガバガバだと思う
パクr参考元がいるからな
地震の脅威は既に無く、2騎はトナカイの引くソリに騎乗し、上空で大地を見下ろしていた
後方には数刻前に召喚されたばかりの無人の街
下方にはセイバーと交戦し、荒れた草原
視線を前方に向ける
草原を越えた先に見えるのは、幾つも並ぶ小さな屋根
小規模な集落のようだ
「…ありゃあ民家か? あそこには人間が居るのかねぇ?」
「…うーむ…」
仮に人がいるならば、何かしらの情報を得ることは出来るだろう
「ともなれば、次はあの村に進むべきじゃな
派手にドンパチをやった以上、ここにおってはアーチャーやアサシンの的じゃろうて」
「だな、それに何かしら情報が手に入れられるかもしれねぇ」
「ま、そうと決まれば…ランサー、目を閉じて口を塞ぎ体をできるだけ低い姿勢にするんじゃ」
「応」
ライダーの言う通りにする
「さあて、行こうか」
トナカイに合図を入れる
次の瞬間、移動した音が遥か後方から響いた
この時上空を眺めているものがいれば、凄まじい突風と衝撃波が飛ぶ光景が見えただろう
「良し、ついたぞい」
「そ、そうか…」
慣れない乗り物と、実体験に驚くランサー
「…ソリって、こんなに速いもんだったか?」
「一晩で世界一周するにはこれでも遅いほうなんじゃろうがの セイバー相手には披露することはなかった、これが儂の宝具の力じゃ」
「なるほどなぁ…」
「さて、降りる前に観察しとくぐらいはしとこうかの」
草原を通り抜けた先に辿り着いた、小規模な農村
小ぢんまりとした家々が身を寄せ合っているかのように、和かな風景がそこに在った
他には、田畑や家畜小屋が目に付くが、出歩く者は誰一人見当たらない
小さい村ではあるが、ここまで人気が無いというのもおかしいだろう
「……ここにも人はおらぬ、か… 今の所あの女人ぐらいしか人を見かけぬし」
「とりあえず降りてみようぜ」
「………ふむ、ここから見るぶんには分からんからのう…一旦降りるぞい」
「頼んだ」
ゆっくりと下降を行う
「しかし、人がいないのはなんなんじゃろなあ…ここが本当に特異点かどうかも不明じゃし」
「この令呪もだけどよぉ、聖杯戦争を始める過程で何かがあったんじゃねーのか?」
「あるいは…そもそも逆なのかもしれぬな」
「逆、つーと?」
「人がいなくなったのではなく、そもそも人がいない場所であったとか」
「んー…この辺りだったらまだ分かるぜ、召喚された街とじゃ発展具合が天地だしよ」
「自分達に都合のいいように手を加えているのやもしれぬ」
「…聖杯戦争のために作らせた場所ってことか? それは……ずいぶんと面倒なことだな」
「儂はよく知らぬが…この手の魔術師とやらは金持ちらしいからの」
「…幾ら金持ちでも無理がねぇか?」
「どのみち、今の段階では仮説以外の何物でもないがの…っと」
ソリを地面に軟着陸 同時に宝具を解除した
トナカイとソリの姿が消える
大地に降り立つ2騎
微かに風が通り抜け、木枯らしが舞う
静寂に満ちた空間
探索を開始しようと辺りに目を向けた時、
突如
ポンッ!
と、何かが破裂したような音、そして短い悲鳴が、辺りに響いた
「!」
「何だ!?」
銃の発砲音や、爆発にしてはいまいち迫力が無い
まるで、風船が破裂したような、気の抜けた音だった
2騎の身体には何の影響も無い
周囲にも、見渡す限り何かが起きた様子は無い
しかし、確かに聞こえた破裂音と悲鳴
何処かで何かが起こったのは確実だ
≪察知判定≫
【槍】→成功
【騎】→成功
立ち並ぶ民家の端に建つ、木造の倉庫のような建物
どうやらそこが発信源のようだ
「さて、音のしたほうはこっちじゃが…」
「…何が出てくるやら」
外観を見る
破裂音は確かに目の前の建物から響いた
建物自体が爆発した訳ではないようであり、破損等は見られない
入り口であるドアにしても、側面に配置される小窓にしても、同じく、傷は一つも無い
破裂音と悲鳴の聞こえた倉庫
2騎は、こっそりと小窓から覗き込んだ
「よっこいしょ」
「どれどれ」
その内部では―――
「―――このように、小規模な粉塵爆発では段ボールすら燃やせません」
薄汚れたガラスの向こう
老若男女問わず、大勢の人が集まっているのが見える
―――村の住人だろうか
そして、その中の子供が手を上げ、発言する
「せんせーい、もっとドッカーン!!ってするにはどうすればいいんですかー?」
対し、”先生”と呼ばれた、人々と向かい合うように立つスーツ姿の男は、
「良い質問だ、ソレについてはまず、”二乗三乗の法則”の事から―――」
人々は皆、男の話に耳を傾けており、窓から覗く2騎には気付かない
「(先生…? どういうことじゃ…?)」
倉庫小屋の奥には、少し大きめのテーブル
その周囲を取り囲むようにして椅子が配置されており、老人や子供は腰かけ、若い者は立って見物している
話の中心となっている男は、テーブルの上に載っている段ボール箱を弄り回しながら教鞭を取る
身に纏う黒いスーツ、状況と合わせ、まるで講義でも行っているかのようだ
「―――つまりは、密閉したまま空間を増やせば良い、ということになる」
「みっぺーすっげぇー!!」
「やべぇ!!」
「空間を増やすことで、単位面積あたりに掛かる圧力を増やし、爆発の威力を高めるという事ね! 凄いわ!!」
男の回答を受け、子供達が歓声を上げる
その様子を微笑ましそうに見る大人達
「(勉強会かの? いやはや、どうやら楽しそうじゃな)」
「(…なんでこんなことしてんだ?)」
「はい、静かに」
男がパンパンと手を鳴らす
大きな声で騒いでいた子供達も、たちまち大人しくなった
「では、反復の時間だ
密閉空間で有機物の粉末には気を付けなければならない、…何故なら?」
「ふんじんばくはつしちゃうからー」
「そう 先程の、この段ボール箱のように、だ」
傍らの箱をポン、と叩き
「これが、特にサイロなんかで起こしてしまうと空一面のポップコーンも有りうる」
「ポップコーンすっげぇー!!!」
「くいてー!!!」
「サーモバリック効果によって、フライパンで炒ったのと同じ状態になっているのね! なんて凄いの?!」
再び子供達の歓声が沸き上がった所で、男が再び手を打ち鳴らし、
「はい、静かに
今回の実験では大したことの無い規模だったが、知識として得ておかないと、取り返しのつかない状況に陥る場合もあります」
「みっぺーしない!」
「せーでんきダメ!」
「威力よりも、燃焼によって発生する有毒ガスや窒息の方が危ないのね! やはりヤバいわ!!!」
「その通り
屋外で粉物ぶちまけても粉塵爆発は発生し得ない 屋内ならば、セーターなどは着用を控えることです」
「…あと、さっきから妙に詳しい子は、そのまま勤勉でいて下さい」
若干苦笑いになるスーツ姿の男
段ボール箱を軽く小突きながら続ける
「(このレベルの学問を分かりやすく教えておるのう…
それでいて妙に詳しい御仁がいるのは自ずから学習している証拠…、見事なものじゃな)」
「最後にまとめの時間です…」
「1つ、密閉空間
2つ、静電気を筆頭とする着火源
3つ、有機体の粉末、粒子…
これ等の条件が揃わないよう、日常生活で十分注意しましょう」
「せんせー、せんせー しつもーん」
子供の内、1人が勢いよく手を挙げる
「はい、どうぞ」
「けっきょく、ゆーきたいのふんまつってなにがあるのー?」
「良い質問だ 具体的には、コーンスターチ、小麦粉、後は…」
[
「(うむうむ、子供が積極的に問うておる…周りに委縮せず……)」
スーツ姿の男はそこで一旦言葉を切り、目線を子供から別の対象へ切り替える
「(流石に…いや、最初から気づいてたみたいだな)」
「(…さて、そのようじゃの)」
窓ガラス越しに、目と目が合うそして、薄く笑みを浮かべながら、
「粉砂糖… コレは特に危ない…―――決して甘くは無い爆弾と成りえる…」
そう呟いた
「どうやら、私に来客のようです 皆さん、続きの”授業”はまたの機会にしましょう」
「えーっ!!、もうおわりー?」
「もっともっとー」
「そ、んな…そん…」
「次は、そうだな…”爆鳴気”についてでも…」
「ばくめーきすげぇ!!!!」
「やべぇ!!!!!」
「水素爆鳴気…水の電気分解なんかで発生する、可燃性の混合ガスの事ね!! 一体どれだけ芸術的な化学なのかしら…」
楽しみを中断された事に対する不満と、次の”授業”への期待の声
そんな子供達を宥めるように、大人達が諭す
「我儘言わないの ほら、先生に挨拶なさい?」
「えー」
「ぬー」
「チッ」
子供達はかなり不満そうな表情を浮かべていたが、やがて
「「「ありがとうございました!」」」
「「「―――ハンセンせんせい!!」」」
元気な声で男に礼を言った
男は笑っていたが、その眼は決して笑っておらず、覗き見る2騎の英霊に意識を向けたままだった
「(まあ、当然じゃな… やれはて、どうしたものやらのう)」
「(…隠れても意味ねぇし、正面からご挨拶といこうじゃねぇか)」
「(じゃなぁ…、その前に、向こうから飛びかかって来なければの話じゃが)」
挨拶を済ませた人々は、ゾロゾロと倉庫小屋を後にしてゆく
「何だこの爺さん!?(驚愕)」
「誰だよ」
「チッ」
去り際に子供達から冷たい視線を貰う
楽しい時間に水を差す”お客さん”に対し、あまり良い印象は無いようだ
「……とんだ邪魔をしてしまったのう…、これはあいすまなんだ」
「なんか爆発音が聞こえたから見に来ただけだ、邪魔しちまって悪ぃな」
暫くして村人も全て居なくなり、”教室”は広めの小屋へその在り様を取り戻す
住民はそれぞれの家へ帰ったようだ
それを確認し、2騎は小屋の扉を開け、内部の男に接触を試みた
「…来客とは言ったが、まさかクリスマスパーティとは思いませんでしたよ」
ライダーの格好を見るなり、”ハンセン”と呼ばれたスーツ姿の男はそう言った
「いやあ、すまなんだな…、まあ色々立て込んでおっての」
「立て込んだ事情、ですか…」
「ともあれ、何かしら害意を与えるつもりはないんじゃ、この通り」
「俺もあんたを襲いに来たわけじゃねぇからよ、ほら」
ライダーは荷物置いてホールドアップのジェスチャーを、
ランサーは自らの武器である槍を壁に立てかけ、それぞ敵意が無い事を示す
「……ご老人、そして、物騒な雰囲気の貴方…何やら思う所はあるようですが、先ずは、話を整理しましょうか」
「ふむ…お互い積もる話もあるじゃろうしな」
「はい…人払いも済んだ所ですし、もういいでしょう…」
”一般人”はこの場に居らず、無関係の人々を巻き込む恐れは無い
「単刀直入に窺おう…貴方達は、聖杯戦争の関係者で間違いありませんね?」
黒いスーツに、短く刈った金髪
ハンセンが口火を切る
「通じるならば話が早いわい、如何にも」
「そこの物騒な雰囲気の貴方も、でしょうね…」
「まぁな、この爺さんと同類だ」
「…という事は、遂に始まってしまったか…」
ハンセンが額に手を当て、嘆くように呟いた
「困りました…此処の人達には、まだまだ教えるべきことが沢山あるというのに…」
「て、事はお主もかの?」
「関係者と言う点においては間違い無いでしょう 私はこの戦争の…そうですね…”立会人”と言った所ですか…」
自らを”立会人”と称する男
その言葉から真偽は図れない
発する魔力についても、並の魔術師程度のものであり、サーヴァントにしては微弱過ぎる
「ふうむ? 戦争の立会人とは…聞きなれぬ言葉じゃな、ソレはどういった役目なんじゃ?」
「戦いの終始を見届けると共に、一般人への被害を抑えるべくコントロールする…私の所属する”組織”が、私に下した指令です
今は、拠点としてこの村に身を置きつつ、村人へ教鞭を取っていたのですよ」
「ふむふむ… 随分と馴染んでおったのはそういう理由じゃったか」
”何かを教える”という立場は、人間関係におけるイニシアチブを得やすい
先程の”授業”は、いざという時にコントロールし易くする為、人々の信用を得る”パフォーマンス”だったのだろう
「…此処に潜入し、改めて思いましたが、この聖杯戦争にはおかしい事だらけなのです」
「ふむ」
「確かにそうだな」
「マスターの不在、特殊な令呪の発現、何故、消滅せずに現界出来ているのか…」
「そこの所は儂も気になっておってな…、つい先ほど一騎倒してきた所じゃが、其奴宝具を使って戦闘しおったわい」
「…宝具を…?
魔力の供給元が分からない以上、宝具の使用など自殺行為でしかないというのに…」
「自分での令呪も使っていたしな、そいつで補填してたんだろ」
「うむ、少なくとも其奴は魔力切れで消滅するような事は無かったし、なんなら最後の最後まで戦って死んでいったぞい」
「自分の令呪を、自分に…どうやら、かなり無茶苦茶な存在と戦闘していたようだ…」
目を閉じて何やら思考するハンセン
自分の中で情報を整理しているのだろう
「ところで、その組織ってのは何なんじゃ?」
「…本国、”ドイツ帝国”絡みとだけ……裏の事情については、口外を避けたい所なので…」
「なるほどのう……あと、もう一ついいかの?」
「何でしょう?」
「―――何でお主は聖杯戦争が始まった事に気づいておらんかったのに、マスターの不在も、特殊な令呪の事も知っておったんじゃ?」
「簡単なことです 直接、この目で”サンプル”を見ましたから」
「サンプルとな」
「どういう事だ?」
「サーヴァントですよ 傍にマスターも居らず、何故か令呪をその身に宿した…不思議な存在…
偶然かと、その時は目を疑いましたがね…、貴方達を見て、話を聞いて、間違いないと確信出来ました」
この地に召喚された、他のサーヴァントを目撃したのだという
やはり、そのサーヴァントも同じ条件にあったようだ
「…そこまで確認できる程近くに居ておいて、よく無事だったな」
「職業柄、隠れて行動するのはは得意なもので…」
肩を竦める
隠密行動によって状況を探るのも”指令”の範疇なのだろう
「ふうむ…、で、そのサーヴァントは何処で見かけたんじゃ?」
「この付近の森です しかも、何やら”仕掛け”を施している様子でした
私に気付かなかったのも、おそらくソレに集中していたからではないでしょうか?」
「森か」
「ふうむ……となれば、儂としては確認に赴くところじゃが…」
「相手がどんな奴か知りたいし、行くしかねぇか」
「そう言ってくれるのであれば、助かります…実の所、脅威が近くにあるというだけで、肝が冷えるもので…」
確かに、人々の住まう近くに強大な力を持った存在が野放しになっているのは恐ろしい事実だ
「然らば向かうとするかの…いやはや、突然に押しかけてしまった上に情報まで、助かるわい」
「いえいえ…貴方達は敵を打倒できる、私は、人々の危険を未然に防ぐことが出来る…
これは、双方にとって有益となる取引なのですよ」
「ま、情報を貰っちまったしな」
情報と安全の契約取引
即ち、信頼と合意のプロセスを経た”ビジネス”である
不確実な口約束とは違い、情報という”報酬”を既に得ている以上、断ることは許されない
「私も後片付けの後、直ぐに向かいますので…」
直ぐに済みますのでご安心を、と付け加え
少し憂いた表情で、テーブルの上の段ボール箱に触れた
”講義”に使用した道具
はしゃぐ子供達の様子を思い出したのだろう
「ゆこうか…」
「そうだな」
片付けに取り掛かる男を尻目に 扉に手を掛け、外へ出る
後ろではガサガサと、男が物を扱う音が聞こえる
出口へと歩を進め、扉を開く
木の床から、土へ
足を付けようとしたその瞬間
ふと、僅かな絹擦れの音に混じる、違和感
少し、ほんの少しの魔力の揺らぎ
普通ならば気にしないであろう不協和音
聖杯戦争に関わる者ならば、特に不思議でも無いと、流してしまう程度の物
なのに何故、違和感を持ってしまったのか
微細な魔力の揺らぎなどに、疑問を持ったのか
数秒前の記憶
テーブルの上には段ボール箱しか無く、他に荷物は存在しなかった
片付けなど秒で終わる事だ
魔力の揺らぎは何故発生した?
何処から発生した?
そもそもの話
サーヴァントという、一刻を争う事態を前に、”片付け”など優先している場合なのか?
そんな考えが頭を過り、
「あぁ…そうだ、忘れていました―――」
呼び止める声
「あん?」
反応し、振り返る
いや、振り返ろうとしたその前に、
「9割程、嘘です」
と、男の小さな呟きが、鼓膜から脳へ届く
嘘?、何故?
9割?、何処から何処まで?
他人を信じたい気持ちの生んだ、一瞬の隙
間髪入れず、銃声が思考を吹き飛ばした
≪不意打ち判定≫
ランサー:成功
ライダー:失敗
ダメージ:2
「…むぅ…英霊に通常兵器は効かぬが…どういうわけか老骨に響くわい」
飛来する弾丸が、ライダーへと傷を与えた
致命傷には程遠いが、傷付けられたのは事実だ
「…爺さん、大丈夫か?」
「…セイバー相手に比べればかすり傷じゃわい」
疑いを持った、そこまでは良かった
直後に思考を”与えられた”事が問題だった
「(…あまり、考えたくない可能性だったんじゃがな…)」
「…しかし、一本取られたぜ…」
全て嘘では無く、9割の嘘
残る1割の真実について”考えさせられた”事から発生した隙
取引を結び、関係を築いたが故に”抱かされた”無意識の信頼が招いた被害
「…この距離の銃撃でも、仕留められないか…」
ハンセンが銃を持ったまま呟く
その手元からは硝煙が立ち昇っている
Luger PO8
属に”尺取虫”と呼ばれる拳銃
第一次世界大戦時、ドイツ帝国で開発、同軍で好んで使用された代物だ
耐久性と整備の難しさを犠牲にした反面、機構の完成度、弾道の正確性がウリの一品である
「…して、隠し事はもう不要じゃろ もう一人か、二人かの?さっさと出てきてもらった方がいいんではないかの?」
「………」
「ああ、それともこの小屋ごと吹っ飛ばす、とか? どうせお主は無事な手段を確保済みじゃろうし」
「………」
2騎を見定めるように押し黙るハンセン
次の手を考えているのか、それとも何かを待っているのか
不意打ち、そして騙し討ち
自らを偽り、更に別の敵を用意し、そちらへ意識を向けさせる心理的誘導
狡猾なのは、嘘言の自白
尚且つ、9割という言葉
敢えて思考の余地を与え、後に控える不意打ちにすら保険を掛ける徹底ぶり
そして当然、湧き上がる疑問
「テメェが何者かは分かんねぇが、敵って事でいいんだよなぁ…?」
男の有する魔力は、どう見積もっても並の魔術師程度のレベルだったはずだ
サーヴァント特有の気配も感じられず、人間以外と判断するのが難しい程だった
仮に男が気配遮断のようなスキルを有していたとしても、サーヴァントの性質まで隠し通すのは難しいだろう
だが、一瞬
銃撃の際のホンの一瞬だけ、”人間”としての側面は崩れた
男はサーヴァントなのか
だとすればクラスは?
どのような宝具、スキルを持っているのか
果たして、如何なる方法により2騎を欺いたのか
考えうる材料は幾らでもある
否、用意されてしまった
不意打ち騙し討ち嘘偽り虚言妄言空言ハッタリ
思考を疑念が過る
”虚”
一発の銃弾を撃つ
ただ、その一瞬のためだけに、目の前の男は村一つを舞台に変えてみせた
そこまでする男が他に手を打っていないのか?
不意打ちが失敗する可能性も考慮していないとは考えづらい
動くべきか、動かざるべきか
罠か、否か
≪行動選択≫
【槍】→攻撃
【騎】→撤退
「(ひとまずは、この膠着状態をどうにかせねばな…!)」
ライダーは霊体化して小屋からの脱出を試みる
「馬脚を現しやがったな………喰らえッ!」
槍を手繰り寄せ、ハンセンに接近するランサー
しかし、攻撃がその身に届くよりも、男の口が開く方が速い
「キャスター!! まだ、手を出すのは早いですよッ!!」
唐突に、叫んだ
「ッ?!」
攻撃を中断して横に避けるようにして跳ぶ
「(…やはり、協力者がおったか…!)」
霊体化解除し、再び小屋に足を踏み入れる
「全く…きちんと村人が帰宅したか確認しないと、”切り札”にならないでしょう…」
呟くハンセン
キャスターの名を出せど、応えも無く、姿を現すことも無い
「……キャスター、のう」
「……次から次に…、一体何なんだアイツは…?」
これ以上の不意打ちが控えていないとは限らない
2騎は互いに背を合わせながらハンセンを見据える
「あぁ、そうそう、そのまま動かないで下さい…出来れば、使いたくない手なので…」
「…ほう、どうする気なんじゃ? まさか、村人たちの家に仕込んだ爆薬が起動するとでも言いだすつもりかの?」
「さぁ? その辺について、私は関わっていないので」
肩を竦める
”キャスター”、”村人”、”切り札”という意味深なワードを並べておきながら、白を切る
「…やれさて、ここまでやって儂らを引き止めた目的はなんじゃ…?」
嘘と、虚、そして罠
一つの村を舞台装置に利用した男
ライダーの問いには応えず、内では思考を張り巡らせていた
「(銃では手傷のみ…、単なる肉体強度の問題では無いな…成る程…これが、”神秘”という奴か…)」
傷は浅い
ショットガンや機関銃でも用いなければ決定打にはならないだろう
「(見たままを信じるならば、真名は”サンタクロース”…もとい、”聖ニコラウス”…)」
「(それでいて、大衆のイメージ・信仰の影響も、確かに含まれているようだ…)」
「(消去法から、クラスは恐らくライダー…)」
「(直接的な戦闘力は無さそうだが…)」
「(もう片方は…ランサー、…か?)」
「(こちらの警戒を解くためとは言え、対話の際、あっさりと槍から手を放したのは引っかかる…)」
「(単なる”慢心”、…いや、”自信”の方か…)」
「(肉弾戦への自負…? 或いは別の要素…)」
「(武器の方か? 確か…アイルランド…ケルト神話…)」
「(自動的に迎撃する槍の伝承があった筈…)」
「(だが、まだ早い…)」
「(―――見立てのみで探るには、ここが限界か…)」
「(現時点での敵宝具は不明、戦闘能力も不明、何一つ推測の域を出ない…が)」
「(確かな事が一つ…)」
「(2騎は、一瞬でこの村に移動して来た…)」
「(魔力の反応から、いずれかの宝具であるのは間違いない)」
「(宝具使用に伴う魔力の消費量不明)」
「(とは言え、移動が一瞬で済むだけ、燃費もそこまで悪くないのだろう)」
「(私が、この場を上手く逃げおおせたとして、機動力の面から、追いつかれるのは明白…)」
「(ならば…―――)」
右手の銃はそのままに、男が左手を懐に入れる
おもむろに取りだしたのは、―――何かしらの呪術に使う様な、”木製の符”
スーツ姿には似合わない小道具
視線を2騎から逸らすことなく、まるで無線機のように木符に話しかけた
「聞こえていますね? 他サーヴァントを発見、不意打ちは失敗しました」
『――そのようだな、…だが、先の”村人”やら”切り札”とは何の事だ? やにわに呼ぶので驚いたではないか』
割れたような音声が響く
木製の符は、通信機の如く何者かの声を届けているようだ
向こう側の声の主は、かろうじて女である事が判断できた
「いえ、こちらの話です それよりも、そちらの守備は?」
『―――相も変わらず、木々に囲まれ建築三昧よ……”創建”には時間が足りぬが、如何する?』
「…そうですね…一旦、合流しましょうか…」
『―――うむ、了解した帰還せよ、”あさしん殿”』
「…はぁ……」
溜め息をつくと、男は木符を口元から離した
「話し合いは終わったかの?」
「えぇ、おかげさまで… 動かないでいてくれて、助かります」
「で、これからどうすんだよ?」
「まぁ個人的には、このままずっと動かないでいてくれると助かるのですが」
口振りから、キャスターと手を組んでいると思しきハンセン
合流するとは言ったが、このままでは双方動けない
「せめて理由の一つでも言ってくれれば、共闘の目があるんじゃがのう…儂はさておき、此奴は強いんじゃし」
ランサーを指差す
「アンタもそこそこいける方だろうが…」
ライダーの方を見つつも、意識はハンセンに向いたままだ
それとなく共闘の意志を匂わせる
とは言え、互いに武器を向け合っている状況では何の説得力も無い
「―――”グループ・ダイナミクス”…」
「ほう?」
「集団において、その力関係の偏りが齎すモノ…、…何だか分かりますか?」
「この歳になると勉強が億劫でのう…無学な爺に教えてはくれんか?」
「―――”集団の崩壊”、ですよ」
再び、”先生”らしく問いに答える
「貴方達の仰った、”強さ”…ソレが一番の問題となる」
「弱き者は強き者に付き、強き者は強き者と対立する…どちらにせよ、その集団はロクなことにはならぬのう…
で、その問題に対してお主はどういう解を導いたんじゃ?」
「簡単に言えば、信用に至らない…ですかね」
「強き者は信用ならぬ、と」
「勝手な話ですがね…いずれにせよ、最終的には判断するのは私自身なので…」
「…可哀想な奴じゃのうお主」
「(…これは…)」
哀れむ視線を受け、ハンセンは心中でほくそ笑んだ
―――”侮られている”
何より、強さについての問題を”理解していない”
敵は無意識に自分を低く見ている
その傲りを、”使える”と判断した
「この世界で生きていくには、常人には厳しいのです…よもや聖人が知らぬわけはないでしょう?」
「じゃろうなあ…が、弱き人間なぞ此の世に居らぬぞ? 他人を推し量る前に眼の曇りを晴らすことをお勧めするぞい」
「おや、では私も強者の仲間入りだ…聖人の言葉ともなれば、お墨付きでしょう」
「(聖人については否定せず、か…)」
当たりを付けていた真名にカマを掛けた
会話の趣旨をズラされた事に2騎は気付かない
「その基準で他人を見る限り、お主は敵に囲まれて生きねばならぬ…
お主がサーヴァントか人間かは知らぬが… それは流石に哀れよのう」
「そうですねぇ、どうやら聖人でも私は救えないらしい」
「まぁ、儂を聖人と信じるのは自由じゃし、儂の言葉を真に受けるかどうかも自由じゃ
どの道、今は口先だけじゃしなあ」
「…爺さん、お喋りするだけ無駄だ…、届いちゃいねぇよソイツには」
会話の進展の無さに痺れを切らしたのだろう
ランサーは今にも飛び掛かってきそうだ
「(…話題の軸を回しすぎたか…、これ以上は無謀…)」
話題の移り変わりを意識させず、会話から性格や人となりと言った情報を掠めとるつもりだった
”乗ってくる”相手には嵌まるが、手が早いタイプには逆効果となりうる
「(収穫はあった、…潮時だな…)」
「では、」
一呼吸置き
「―――”令呪を以て我が肉体に命ずる、”」
男の右手から紅い光が輝き始める
奇妙な紋様
令呪
本来ならば、召喚者であるマスターに宿る筈のモノ
先程まで何も無かった男の手の甲に、突如として現れる
膨大な魔力の塊
サーヴァントへの命令権
時には奇跡に近い現象すら引き起こす
この戦争に限り、サーヴァントへ与えられた、三度限りの切り札
そんなイレギュラーを、男は自らに行使すべく、言葉を紡ぐ
「”キャスターの下へ転移せよ”」
「逃げる気かよッ!!」
淡々と告げると同時に、持っていた木符を頭上に放り投げ、―――すかさず尺取虫の弾丸が木符を撃ち抜いた
破片が勢いよく飛び、2騎の視界を少しだけ掻き乱す
無惨にもその身を散らせながら、最期に陽動の役目を果たした
「む…」
「チッ!!」
「―――機会があれば、また会いましょう…森の中に居ますので、来たければ何時でも」
去り際に挑発の一言を残し、男の姿が一瞬で消失した
「…逃げられたか」
「令呪の事を喋ってしまったのはマズかったのう…」
令呪による、”移動”を超えた”転移”
消える間際の言葉を信じれば、キャスターと合流を果たしたのだろう
そして、木符を通し、通信していた相手
”あさしん殿”、とその声は確かに言った
令呪を行使したことから男はサーヴァント・アサシンである可能性が高い
加え、キャスターと手を組んでいるのは明白
ここに来て、新たな脅威の存在が浮き彫りとなる
「やられたのぅ…彼のローマ皇帝ような、口で戦うタイプと来たか…こりゃ厄介じゃて」
「あのデブか…アレはアレで中々動けるからな…、さっきの奴は、そうでも無さそうに見えたぜ」
「とは言え、今すぐどうこうするつもりは無いみたいじゃし、憂いを晴らしておこうかの」
「…あぁ、物騒な事言ってたしな」
「儂の考えが正しければ、杞憂で終わるんじゃがな…」
≪行動選択≫
【槍】→霊体化し、周囲を探索
【騎】→同上
《小屋内部》
・椅子と机がちらほら
・机の上には段ボール箱が一つ
・床には最後の目くらましに使った木符の残骸
・他には目立った物は無し
《段ボール箱内部》
・小麦粉が入っている
・内部は地味に焦げ臭い
《砕けた木符》
・漢字で呪文っぽい何かが書いてあったっぽい
・オール漢字(かなり古い字体、解読不能)
《民家》
・危害を加えるような仕掛けは一切無かった
「ふむ、完璧にしてやられた、といったところかのう…やはり、向こうも余計な被害を出したくはないようじゃの」
「ただ、相手がどんな奴かわかんねぇのはきついな」
「じゃなぁ…まあ、最悪の最悪、逃げ果せる事ぐらいはできそうじゃからな」
「敵の居所は分かっても、当然、罠だらけだろうしな…」
態々、自分の行き先を教えるくらいだ
何者が訪れても対処できるような仕掛けはあるだろう
「キャスターの陣地に迂闊に飛び込むのはのう…時にランサーや」
「ん? どうした?」
「お主、アンサズ(炎)のルーンって刻めるかの」
「…知ってはいるが使ったことはないな」
「森ごと焼き払えたら便利じゃなあ、とか…まあ、流石に外道の発想じゃの」
「…燻り出すってところか」
「向こうの掌の上で踊らされる盤面は避けたいからの…森を拠点にしておるようなら尚更、じゃな」
罠の中に飛び込むぐらいならば、罠ごと敵を焼く
戦略としては有効である
少なくとも、聖人の発想では無いが
「……最終手段としてこれもあるがな」
自ら槍に目を落とす
「火を起こせるんじゃったか?」
「焼野原にはできるな…まぁ反動はあるけどな」
「ふむ、割とすぐに出番があるかもしれぬからの…幾らか無理してもらう事になりそうじゃわい」
「あぁ、その時は任せろや」
「すまぬな」
―――2騎は、警戒しつつ、森へ足を踏み入れた
樹の群れが立ち並ぶ、緑の中
一本一本の背は高く、まるで樹海のようになっている
薄暗く、陽の光でさえも満足に届かない
影が悪意をも覆い隠す
身を潜めるには絶好の場所といえる
「やれさて…」
じめじめとした空気に、何か嫌なモノを感じていると、
「―――お早いご到着のようだ」
最初から潜んでいたのか、少し離れた木陰から男が姿を現す
気配は殆ど感じられなかった
視界に入れているのに、気を抜くと見失ってしまいそうな、独特の”薄さ”がある
やはり、サーヴァント特有の気配は感じられず、発する魔力も極めて微弱だ
「足が速いのがウリじゃからのう」
「此処へ踏み込んでくるのに、少しは躊躇すると予想していたのですがね…当てが外れたか…」
「急ぐからのう儂等も”仕事”があるでな」
「それはそれは…この森は既に私の手中にあるも同然ですが…そうと分かっても、尚?」
「その程度のメリットでいいんじゃな?」
「えぇ、十分ですとも」
挑発に継ぐ挑発、見えない火花が散る
緊張感が場を支配する
、
「……一応、聞いておくんじゃが儂らを先に行かせて会わなかった事にして流すってのは?」
「………」
ハンセンは一瞬、呆気に取られたような表情を浮かべ、
「…ハハハっ! 良いですねぇ…こちらとしても、魅力的な提案だ!」
笑いながら、賛同するような発言をした
「ほう? 儂を不意打ちした割には争う気はないと?」
「流石に2対1では、準備があっても厳しいでしょう? そもそも、不意打ちに関しては事故のようなモノですよ」
「事故で撃たれたらたまったもんじゃないのじゃがなあ…」
会話しつつ、ランサーに合図を送る
「(おう、準備は出来てるぜ…)」
「考えてみて下さい
いきなりサーヴァントが2騎も、しかも一瞬で近傍まで移動してきたんです…
それは驚きました、恐ろしすぎます、動揺しましたとも」
「故にやむを得ない、と…分からんでもないがのう」
「何とかして場を切り抜けたい…出来れば、1騎でも倒す事が出来ればそれはそれで儲けものです」
「…賢いやり方じゃねぇか」
「機会は逃すべきではない…経営戦略論の基本です」
「……」
いまいち掴みどころの無い様子に訝しむライダー
なまじ、不意打ちされた経験上、警戒心は高まる
「…で? 結局どうするんじゃ?」
「お通ししますよ? 私と貴方達は出会わなかった、それでこの場は終わりです」
「間違えとるぞ
私”達”じゃろ?」
「さて…”私”は、”私”ですが?」
「………」
≪行動選択≫
【槍】→警戒しつつ素通り
【騎】→同上
数秒、それぞれの思惑が交差する
「ま…致し方あるまいな、浪費は避けたいしの」
周辺を警戒しつつ立ち去ろうとする
「そうだな…何してくるかわかったもんじゃねぇし」
同じくすぐに対応できるよう周辺を警戒する
「ご安心を、何もしませんので」
両手を挙げ、無抵抗を示すハンセン
「(これで、当分の時間稼ぎにはなるか…)」
と、表情には出さずに安堵を浮かべた、その時
「―――待てぇい!!」
と、ハンセンの遥か頭上から声が振りかかり
「我を抜きに勝手に話を進めるとは何事か!!」
突然の割り込みが、漂う緊張感を消し去った
「………じゃあ、儂等はそういう事で、がんばるんじゃぞい」
トナカイに乗って距離を取ろうとする
「え、待って、ちと、待て待て」
「…なんじゃ? プレゼントでも欲しいんかの?」
「ぷれ、”ぷれぜんと”? 良く分からんが、我を無視して行かんでくれ…」
気の抜けた声
聞こえた方を見ると、男のすぐ傍の木の枝に、仁王立ちする存在
小柄な少女が、2騎を見下ろしている
「Hmm… What your name?」
「????、????ふはははは??」
何となく、笑って誤魔化した
そんな態度だ
「(………なんかすげぇ残念な奴が来たな)」
少女に生暖かい視線を向ける
「………お前さん、英語って分かるかの?」
「んん? 外つ国の言葉であろう? 何となく分かるが、結局分からん
此の大地はヤマトの領域だ、大和の言葉で話せ」
突然現れた、謎の少女
目を引くのが、その出で立ち
巫女装束のような紅袴、上には漢服を身に付けている
まるで和と中華のを両方を、節操なく良い所取りしたようで、統一性がまるで無い
或いは、巫女装束をベースに、中華の意匠を汲んでいるのか、どうにも奇妙な服装をしている
気配からサーヴァントだと分かるが、その格好からでは出自は絞ることは難しい
「…………………は?」
「む?」
その出現はハンセンにとっても予想外だったようで、数秒間、面食らったような表情でいたが、
「何、故…、いや、何時から……というか着いて来る気配など…」
「何時からと問われれば、最初からだな…、”禹歩”を用いてこっそりと」
「…………………いやいやいやいや」
不意打ちで仕留め損なった時よりも動揺している
「…あのですねぇ…我々に白兵戦は向かないという事は、散々説いたでしょう…? そもそも貴女、”創建”の作業は―――」
「分かっとる、分かっとる そちらも進めておる
単騎では大変であろうと、汝の手助けに馳せ参じたのではないか」
「ほう? なるほど、お前さんがこやつの相方か…確か、キャスターだったかの?」
「ふはははっ!!―――如何にも」
「(あっさり認めるのか…)」
枝から飛び降り、軽やかに着地して見せる
そもそも木に登る必要があったのかは謎だ
「ところで一つ聞きたいんじゃが」
「うん? 何だ?」
「儂等、別段戦うつもりなかったんじゃが…無用な争いは避けて先へ急ぐつもりだったんじゃが」
「うむ」
「最初から全部見てた上でこうやって何やかんや割り込んできたという事は……お前さんは戦う気満々って事かの?」
「………ふっ……」
鼻で笑う
「(何だよその反応は…)」
「…汝等その格好、実に面妖よな…我の時代にも異人は居ったが、汝らのような者達は初めて見る…」
少し黙った後、語り出す
「(あ、誤魔化しおったな)」
「(単に蚊帳の外だったから出てきただけでしょう…)」
「案ずるな、我も積極的に争いたい訳では無い…」
「じゃあ、儂等を呼び止めたのはどういう理由じゃ」
「興味があったのよ 戦に臨む者達の、心内にな」
「興味、のう…その為だけにわざわざ前線に来るか」
「応よ それに、あさしん殿に任せきりなのも、悪いと思うてな」
「……………」
額にしわを寄せるアサシン(仮)
「(そのアサシン殿が一番ダメージ受けてるのってどう見てもお前さんの登場なんじゃが… まあ、ええか)」
「ん? どうした、あさしん殿? 頭を抱えて、体調でも悪いのか?」
「…いいえ、特に…もう、いいです…」
「……アンタ、大変だな」
同情の視線をアサシン(仮)に向ける
同じ憐みでも、小屋での問答のソレとは異なる
「…自分の考えてた策略が粉微塵に吹き飛んだって顔じゃな」
「………ふう…」
あさしん殿と呼ばれた男は、何か言いたげにしていたが、結局諦めたようだ
ため息をついて、疲れたような表情を浮かべる
「…では、改めて名乗るとしよう 我は、”きゃすたあ”…とか言う器らしい
本職は斎宮だ、あとは道術を少々嗜んでいる」
「察するにそこなアサシン殿は、どうやらキャスターの能力で時間を稼いでどうにかするつもりだったようじゃな
何じゃ、儂等が怯えておっただけ……………は……?」
「いやいやいや待て待て待てどういうつもりじゃお前さん!?」
道士、若しくは巫女でキャスターならば納得できる
文化の異なる二つを、両方兼ねるなると、かなり複雑だ
格好から見ても、道士の纏うような漢服を、巫女の袴と共に身に付けていることから、ほぼ間違いなく東洋の人物と思われる
…が、その事実を抜きにしても、真名がバレかねない、丁寧すぎる自己紹介だった
「おおう…あさしん殿と似たような反応をするな、爺様よ…」
「(あ、これ定石で判断したらダメなやつじゃな)」
「私は黙秘させていただきます」
「うむ、分かっておるぞ…”すぱい”とは自らを秘匿する生き物なのであろう? なれば、あさしん殿はそれで良いのだ」
黙秘の意味を速攻で消滅させた
「………なあ、アサシンよお前さんなんでまたこんな……」
こんな、で切って皆までは言わない大人の会話術だった
「…小屋での会話、覚えていますか? 私の見た”サンプル”は、彼女しか居なかったのです…」
「……そこは嘘ついてなかったんじゃな…あの村人たちの為か?」
「私が、というよりは彼女の依頼です…”我が国の民は、我が守護らねば”、とか…」
何となく光景が目に浮かぶ辺り、真実味があった
「彼女が先走りそうになったので、止めました
役割分担の結果、ああなって…………こうなった訳です」
「だが、それだけならお前さんが引き受ける理由がないじゃろ
なるほど、キャスターは確かな実力を持っているのかもしれぬが…お前さんは人質でも取れば一方的な交渉もできたろうに」
「……他にも理由があるんじゃろ?」
「別に? 要は、やり方の問題ですよ
私は人を使いますが、人の命までは勘定に換算しない…”死ぬな、殺すな、囚われるな”…そんな所です
ただ、ここまでの状況は、全く想定していませんでしたがね…」
「……そういう事にしといてやるわい」
「(それだけで動く人間が、ああまで誰かに慕われるものかのう…)」
「で、じゃ」
「はい」
「お前さんらはどうするつもりなんじゃ?
儂等は平和に生きている村人を争いに巻き込むつもりもないし、お前さんらと積極的に争うつもりもない」
ランサーに視線を送り、武器を収めさせる
「じゃから、これはあくまで提案の一つ…これを蹴るか蹴らないかはそっち次第じゃ」
「良かろう、申すてみよ」
「同盟、とまではいかなくとも消極的な友好関係ぐらいは結べないかの? 積極的に交流するまでは行かずともお互いを見逃すぐらいの関係性で」
「……」
「何はともあれ、”戦争を片付ける”…其に関しては、全く同意だ」
真剣な面持ちで語り出すキャスター
アサシンはその様子を静かに見守っている
「”ヤマト”、…今は日ノ本、ニホンと呼ぶか…召喚に応じ、座より来たれば、懐かしき我が故国」
「(日本出身…マスターと同じか)」
「かつて我ら一族の支えた国の現状を、この眼でしかと見定めたいのだが…状況が許してはくれぬでな…」
自らの手に浮かんだ令呪を見るキャスター
聖杯戦争への参加経験は兎も角、この状況が通常とは異なる事は理解しているようだ
「何故、我等にこの紋様が有るのか…? 本来ならば、我を召喚せし主が居て、その者に現出するのではないのか…?」
抱いて当然の疑問を投げかけてくる
どうやら、キャスターにも心当たりはないようだ
「その通りじゃよ だからこそ、この聖杯戦争は異常なのじゃ」
「ぬぅ…やはりか…」
例外なく、全てが例外
令呪も、マスターも、抱える事情は皆同じだ
「主が何処に居るか確かめるべく、試しに紋より霊力の流れを辿ると、土地の龍脈に繋がっておってなぁ
我等が消滅せず、この地に留まり続けているのはその為だ」
「そんな仕掛けだったのか」
「あさしん殿もそうであった
恐らく、この地自体が、我ら共通の主と言う訳だ…誰が、何のために、この方式にしたのやら…」
「龍脈……あー、確かマナの大元の事じゃったか?
幾分けったいな真似をするのう……ただ、目論みの推論はつかない事もないかの」
「ほう? 汝はどう考える?」
「…この聖杯戦争を開催し、願いを叶えたい輩がたった一人のみであったならという前提の上でじゃ…」
結論ありきの飛躍
即ち仮説
「マスターたり得る存在がたった一人であったならば…わざわざ英霊同士の争いに首をつっこむなんて真似をするより、英霊達にマスターを兼任させて争わせ、最後に残った英霊を潰した方が効率的に願いを叶えれるのでは…と
…まあ根拠の薄い妄想に過ぎぬがな」
「余計な消費は抑え、尚且つ利益は一人占め…
…状況証拠だけならば納得できなくもないが、証明もまた不可能だ」
証拠の無い推論は妄想でしかないと切り捨てるアサシン
「…うーむ、仮説の真偽は兎も角、戦を御するような仕組みにはなっておるのは確かではある…」
「どういうことだ?」
「霊力の話になるが7、土地は常に一定量しか供給せぬ故、準備無くして大規模な術はそう仕えぬのだ…」
仕える魔力量が定められている以上、全力を出そうとすれば魔力切れを起こす
セイバーのように令呪を行使するならば話は別だが、その場合は3回のみの切り札を消費してしまう
「必然、連戦を重ねた者から、霊力の不足も顕著となる…」
「宝具もポンポン使えねぇってことか」
戦う者ほど消費を余儀なくされ、弱っている者ほど狙われやすくなる
仕組みに気付いた者は、無駄な戦いを控えるようになるだろう
「まあ、或いは主催側にも想定外のトラブルかなんかが発生した…、なんて可能性もあるかもじゃが、わざわざこんな場所用意しといてそれは流石に無いじゃろうなあ」
「ならば、準備を疎かにし、飛び出してきたのは間違いであったか…?
いや、しかし情報を得るのもまた…創建も7割方出来ておるし…」
「(…やはり役割を放棄してきたか……)」
生暖かい目をキャスターに向ける
「おっと…、うむ、異常な戦である事には違いないな!!」
アサシンの視線に気づき、微妙な誤魔化しを入れた
キャスターによれば、サーヴァントの魔力供給は土地から行われているらしい
通常、弱点となりうるマスターが居ない反面、大規模な魔力消費は制限される
準備があれば別、との事だが
キャスターがその準備を完了していないのは、本人が今し方白状してくれた
「そ、それはそうとして、聞いておきたい事がある!」
「……なんじゃ?」
「汝等は、生前からの知り合いなのか? 皆が警戒し動かん中で同盟を組むとは、それなりの背景があろう?」
自らも同盟を組んでいる事を棚に上げ、興味津々といった様子で聞いてくる
アサシンはというと、変わらずに生暖かい眼でキャスターを見ていた
「ほれほれ、遠慮なく話すがよい」
2騎の抱える事情は少々特殊だ
カルデアによって先に召喚された立場としては、他のサーヴァント達とは戦う理由がそもそも異なる
人理焼却、歴史を救う戦い
壮大に過ぎる事情を、話した所で信用されるかどうか
「そうじゃな…
生前からの知り合い、というわけでは無いが…縁が無いわけでも無い、それ故に同盟を組んで動いておる
…生憎じゃが、具体的にどういう縁なのかは我が真名に関わる事じゃしなぁ…」
キャスターの目を見つつ、数秒考え
「………否、煙に巻くのはやめておくかの…、せっかく遠慮せずと言っておるのじゃからな」
「…爺さん、どうするんだ?」
「正直に言うわい ランサー、万一の時には備えておくんじゃぞ」
「おう」
抱える事情を話す事に決める
ライダーとしても、一縷の望みを託した賭けだ
「儂は今からお主らにとって恐ろしく突飛かつ奇妙な事を口走る
正直言って、儂がお主らと同じ立場じゃったら信じぬであろうような事をの」
「うむ」
「……お好きにどうぞ」
キャスターは期待を、アサシンは諦観を浮かべ、続きを促す
「まず大前提から話すぞい
儂等はこの時代とは別の時代からやって来た
ここの聖杯によって座から召喚されたというわけではなく、既に座から召喚されて英霊として存在していた状態で、この時代に呼び寄せられたんじゃ」
「………」
「…」
「まず、これが大前提
1つ、儂等は別の所で召喚された英霊で、どういうわけかこの時代に呼び寄せられた
2つ、その主目的は人類史の崩壊を防ぎ、人類が滅びる未来を防ぐため
……この段階で大分トチ狂った事を言ってると思ったじゃろ」
「…あー、何だ、その…、途方も無いだのう…人類史を救う?…とは、恐れいった」
「…………」
キャスターは吃驚を、アサシンは疑念の表情を、それぞれ浮かべている
「…無理を承知で頼むが、汝等の令呪を、確認しても良いか?
あぁ、直接触れなくとも、遠間から、ただ我に見せるだけで良いのだが…」
「ほれ」
表情も真剣に、躊躇いなく右腕の令呪を見せる
「………………………」
まじまじと令呪を観察するように眺めた後
「…………………うむ」
「…どうです?」
「分からん、という事が分かった」
「それはどういう…」
「あぁ、令呪は我等と同質…だが力の流れが良く分からん
この地だけでない、別の妙な所にも繋がっているようだ」
「別の供給元が有る、と?」
「(となれば、儂等の魔力はどこから来ている物なんじゃ?)」
「…あさしん殿はどう見る?」
「…判断しかねますね…オカルトの事情など、私にはサッパリなので」
「うーむ…」
2騎が嘘をつく理由は無いが、キャスター達も信用する理由が無い
結局の所、信頼も何も無い現状では、関係の発展は難しいのだろう
「…一応聞いておくが、”人類史の崩壊”とやらは、世の…、この国の終わりと同義で相違ないのだな?」
「無論」
「…そうか、そうよな…」
嘆息し、目を閉じる
数秒の沈黙の後、口を開いた
「―――カムヤマトイワレビコが東征より、我ら一族が支え、育んだ国…
政と祭祀が共にあった時代… 我は斎宮として、幼き頃より国の中枢に居った」
「……」
「…動乱の時代であった……争いの果てに全てを喪おうとも、一族の仇に下ろうとも、ただ国が為、尽くしてきた」
「我も、厩戸皇子も、…あの忌々しき蘇我の一門も…内に抱える物は有れど、ヤマトを支えるという点は同じであった…」
「汝等も、あの村人達を見たであろう?
平穏無事に暮らし、こうして訳の分からぬ戦に巻き込まれながらも、この国の者は、この国の者なりに立派に生きているのだ」
アサシンが潜り込んでいた村
住人は、聖杯戦争の事情など全く知らないのだろう
「…中々、勤勉な人達でしたよ…、私が教えた事を次々吸収していました」
「だろう、の」
「うむ あさしん殿に、村の者達の庇保を頼んで正解であったわ
…我等の戦などに、民を巻き込みたくはないからな」
「…彼らには適当な事情を話しておきました…爆発の授業に関連付け、外には出ないようにと、ね」
村の”教室”で行った授業
爆発に関する話をメインに、その危険性・対応を教育していた
予め、爆発に関する知識を与えることで、戦闘による爆音と関連付ける、思考の種を植え付けた
村人の心理に介入し、行動をコントロールする事が目的だったらしい
「子供達は興味深々でしたが、親としては危険は避けたい所…
この辺りから爆発音の一つでも聞かせてやれば、彼らが家外へ出る可能性も減るでしょう」
「うむ、流石は”すぱい”と言った所よな…実に捉えどころの無い、不思議な者よ!」
「本当に不思議ですね
こちらの情報を次々と流す貴女の存在が……かつての同僚を思い出します」
「(なんというか…のう…)」
「(また強烈な奴だよなぁ…)」
聞いてもいないのに、どんどん横流しされる情報
最早キャスターが、逆にスパイ染みてきている
「仮初めではあるが、家の中ならば、幾らか安全であろう…
何があろうと、我等の築いたこの国を、何処の馬の骨とも分からぬ輩に侵させはせぬ…」
静かな闘志、怒り
彼女の、国を愛する気持ちは、確かに本物だ
「―――そろそろ、いいでしょう…」
アサシンが話を断ち切る
彼の中では結論は出たようだ
「キャスター、貴女の意見を聞かせて下さい これからどうするか、…貴女が、どうしたいかを…」
相方の意志を確認するアサシン
質問に対し、数秒考えるように目を閉じるキャスター
「―――うむ、…」
ぱん、と
思いついたように手を鳴らし
「戦だ」
思い付きをそのまま口にした
「…やるってか、俺達と…」
「言ったであろう? まずは、戦争を片付けねばならん、と
この国の問題は、この国の者が解決するのが筋である」
「集う英霊総てを討ち果たし、戦を終結させる
我らを呼び出した輩も、顕現した杯に釣られ、現れよう」
「”人類史の崩壊”とやらにしても、優先すべきは目先よ
ならば、この戦から何とかせねばならん
…汝等も、元の居場所とやらへ帰還したいならば、杯は必要であろう?」
「それはそうじゃが…」
「それにな…、―――此処で果てる程度の力ならば、汝等の大望、果たす事など到底叶うまいて…」
静かに語る
本気で戦いを始めるつもりだ
どれ程激しい戦いになったとしても、
双方の内の誰かが命を落とすことになったとしても
彼女は彼女の意志を貫くだろう
「…………」
苦虫を噛み潰したような顔になるライダー
「是が我が”答え”よ…、あさしん殿は如何する?」
「愚問ですね…一体何の為に、我々が同盟を組んだというのです?」
「…そうであったな、…済まぬ」
「………やはり、戦争など起きぬに限るわい」
やりきれないといった風に言葉を吐き出す
「とは言え、こちら側の準備は不十分ですよ…?
頼みの綱である”祭祀殿”とやらは、どうなんですか?」
「安心するがよい
既に基礎は完成し、必要な霊力は、基礎自ら汲み取るようにしてある」
「そうですか(そう言うのは最初に言ってくれ…)」
「ただな、陣はこの辺りにも敷いておかねばならぬ…どの道、まだ完成には至らんのよ…」
「そうですか(そう言うのは最初に済ませてくれ…)」
「…そこでな、察していると思うが、頼みが有る」
「時間を稼げ、でしょう?」
「うむ、その通り―――やれるか?」
「依頼はこなしますよ、キッチリと」
「うむ、頼もしいな
では、共に征こうぞ、あさしん殿」
「―――了解、我が同胞」
アサシンとキャスターが臨戦態勢に移る
戦闘は避けられないだろう
「戦わないんだったらそれでもよかったんだけどな…
まぁ、そっちがやる気ならそれはそれで構わねぇさ」
獰猛な笑みを浮かべて武器をかまえるランサー
「せめて発言と表情を合わせる努力ぐらいはしたらどうなんじゃ」
「楽しみなんだからしょうがねぇだろ」
「……そっちに合わせるんじゃな」
溜め息をついて袋を担ぎ直す
「相分かったわい…、やらねばならぬのなら決着をきちっと付けねばあるまいよ」
戦う覚悟は決まったようだ
「……加減はせんからの」
「応とも…いざ、尋常ならざる勝負を」
虚ろなる島に、2度目の戦が訪れる
そりゃあいきなりサーヴァントが2騎も一瞬で接近してきて、力になるよーとか信用もクソも無いわな
その上、自分達強いですよアピールはマズいっすよサンタさん
(交渉として対等にならないので下策)
そして、移動手段をデフォルトで持ってる奴はGMとして扱いに困っちゃうよ
宝具なのにバンバン使うから余計にね(愚痴)
そうだね、理由付けて封じればよかったね(今更)
フリーダム過ぎるのも破綻を招くから、制限はどうであれ必要だわ