追憶逸脱 作:種火の茶色いヤツ
雰囲気をそれっぽくなるように書いているだけなので、考察とかはしても無駄だゾ☆
ふじのんはいいゾー☆
昔、散歩をしているといつの間にか妙なところにいた記憶がある。
そこがどんなところだったのかは、まるで
その後はまるで夢遊病の患者のように、田んぼのあぜ道をふらふらと歩いているところを、兄に発見された。
それからだろうか。兄と姉の異常性に気が付くようになったのは。
それからだろうか。雨の日は決まってうんざりしたような気分になるようになったのは。
それからだろうか。昔のことが時々思い出せなくなるようになったのは。
昔、何か衝撃的なことがあったはずだ。それがどうしても思い出せない。
嗚呼、今日も頭の端で
1話 プロローグ
と──昔、近所の寺のお坊さんに言ったことがある。
その時帰ってきた答えは何だったか。
お坊さんが少しの間黙り、
だけど。
なぜかは分からないけれども、この時のことを思い出すことが時々ある。なぜだろうか、その原因を明らかにしようと思考すると、真っ先に
黒桐幹也。彼を思い出すのは、連想ゲームのようなものだろうか。なぜなら、黒桐幹也という人間は、どこまで行っても普通なのだから。
いつも真っ黒な服で全身をかためている。眼鏡をかけている。顔を思い出そうとすれば、まあ。それなりに特徴のある格好だけは思い浮かぶけれど、顔はどうだったか。少し自信がない。どこかの人混みの中に彼を放り込んで、探せと言われれば、見つけ出すことは簡単だろうけど、記憶の中から顔をそっくりそのまま再現しようとすれば、なぜか途端に難しくなる。おかしな話なものだ。
けれども、黒桐幹也はどこまでも普通なのだ。だからだろうか。どこにでもいるような、普通の人間だからなのか、その顔を思い出すことができないのだろうか? それとも、これは俺だけなのだろうか。こんど、母──いや、家の人間は駄目だ。皆、黒桐幹也という人間を嫌っているふしがあるから。
だから、こんど姉か、それとも友人にでも聞いてみようかな。
ともかく。黒桐幹也は普通なのだ。
けれども、俺は黒桐幹也を普通とは時々思わなくなる。異常だと思う時がある。普通で異常。矛盾しているだろうか。それとも、こう言い換えればいいのだろうか。そう──黒桐幹也は異常なほどに普通なのだ。
普通に友人とか、知り合いとして付き合う分には、なんら問題ない。黒桐幹也の異常を感じとることはなく、普通の人間として接することができるだろう。
けれども、彼と近しい関係を持つと、普通な彼の異常を感じとることができる。例えば、妹とか、弟とか。そういう身分。
俺が最後に黒桐幹也と、
一緒に遊んだり、買い物をしたり、兄弟として行動したことは結構ある。そうした記憶もまあ、かなり昔のものは覚えていないけれども、それなりには覚えている。けれども、最後に話したのは、いつだったか思い出せない。
幹兄との記憶は
そして、お坊さんに問いかけたときのことを思い出し、黒桐幹也のことを思い浮かび。結局のところ、普通とはなんぞや? 『説破』──結論は出ない。思い出せない。最後に思い出すことを諦めてしまう。
今だってそうだ。さっきまで、お坊さんの答えを思い出そうとしていたのに、諦めてしまった。
「
ぽつり。と雨粒が地面におちる。
その最初の一粒をきっかけにして、雨粒が次々と雲の中から、地面へと
やがて
景色は無数の雨粒によって、白いヴェールが掛ったように白くなる。まさしく霧がかかったように。文字通り如雨露の如き雨。
ざあざあ。ざあざあ。いくつもの音が響く。沢山の雨粒が地面をたたき、音を奏でる。自然の交響曲。
そんな中。俺は身近な本を開く。タイトルは『三銃士』。アトス、ポルトス、アラミスで三人。ここにダルタニャンを入れると四銃士になるのではないか、なぜタイトルが四銃士じゃないのか、と初めて読んだときは思ったものだ。
そんなことを思い出して。細かい内容は思い出せなかったから、改めて読み返すことにする。ミレディーの兄は誰だったか。王様婦人の宝石の
本を読んでいて。ふと思い出した。
「明日から、東京に旅行だった」
雨は相変わらず土砂降りのまま。明日出発するごろには止んでいると良いのだけれども。せっかくの旅なんだ、どうせなら快晴のほうがいい。何より、夏の
「そういえば、荷物の準備してなかった」
読みかけの本を閉じて、テーブルの上に置いて立ち上がる。
何かが落ちた音がした。テーブルの上に置いてあった、昔幹兄がどこかのお土産として持ってきた小物か何かだっただろうか? こういう妙な物は、大抵が幹兄のお土産だったりする。幹兄のお土産のセンスはどこか変だ。
それを手に取ると、またテーブルの上に戻す。小さな、家をかたどったような木彫りのお守り。神社か何かだろうか? 後利益について何か言っていたのを思い出す。確か、迷子に対する後利益があるという話だった。
そのお守りには、かつて名前が彫られていたが、昔からあるものなのか、今となっては劣化によるものか文字が
着替え。お金。電車の中での暇つぶしとしての本。カメラ。地図……リュックの中に、目についた旅行に必要そうなものを手当たり次第に放り込んでいく。途中で昔読んだきりのマンガを見つけて、読むのに夢中になったりもして。結局荷物の整理が終わった頃には、雨は上がっていて、その代わりに暗闇があたりを支配していた。
腹の虫が鳴る。時間を見ると、夜の7時を過ぎたころだった。
夕食は美味しかった。けれども、夏休みの宿題をやるように釘を刺されるのは、ちょっと嫌だった。明日から東京で過ごすことになるんだから。楽しい旅行をするんだから、その間は宿題とか、学校とかの
……………
…………
………
……
…
僕の弟は、昔からぼうっとしていた。昔、式を動物に例えるなら、兎だと答えて友人に怪訝な顔をされたことがある。弟を動物に例えるなら、キリンだろうか。あの首の長い動物。
そのことを橙子さんに伝えると、微妙な顔をされた。
「人を動物に例えるとき、キリンに例えるという回答は中々ないわよ?」
「そうですか?」
「ええ。それで、その弟クンっていうのは、どういう人なのかしら?」
「結構昔に分かれたきりですから……」
と前置きしてから、昔の弟のことしか知らないことを橙子さんに伝える。
「一言で片づけるなら、ぼんやりとしています」
そう。僕の弟はとてもぼんやりとしている。それが僕が彼に抱く印象だ。
最後に会ったのはいつだろうか。その時の身長は僕の胸元ぐらいだったはずだ。髪を短く切りそろえていて、いつも白と赤の組み合わせをした格好をしていた。顔は僕にはあまり似ていなくて、どちらかというと妹である鮮花に似ていたかもしれない。今は中学生3年生だっただろうか。
目は少し垂れていて、まるで猫のように時々どこかをじっと見つめているときがある。前に一度何を見ているのかを聞いてみたら、不思議そうに首を傾げていた。多分、何も考えないでぼうっとしている癖がある。その時、目を覗くと
友人もそれなりにいるようで、学校が終わった時は駅やコンビニとかでポテトとか、アメリカンドッグとかを買い食いして、
マンガとか、アニメとか、ゲームとかもするけれど、それは友人との付き合いでやっていくのに十分な範囲で、
「今じゃ、時間も経っているから色々と変わっているかもしれませんが」
と締めくくる。
橙子さんは「ふうん」というふうに頷くと、
「人間の本質なんていうのは、そんな簡単に変わらないものよ。小学生中、高学年あたりで、人間の性格は決定されるの。それ以降はその芯となった性格に、肉付けがされていくだけで、根本は変わらないのよ。人には皆起源が存在するのと同じね」
吸い終わったタバコを灰皿にグシャリと押し付けると、きょとんとした顔を浮かべた。
「……何で弟の話をすることになったのかしら?」
ため息。
「僕が
「そうだったかしら」
「そうですよ」
……ああ、そうだ。一つだけ思い出した。
「橙子さん」
「何かしら?」
「今月の給料、まだ貰ってません」
橙子さんは眼鏡を外すと、そっぽを向いた。その動作に、嫌な予感を覚えた。
「……ちょっと、オークションでいい感じの
……もう一つ。なぜだかわからないけれども、ちょっとだけ嫌な予感を覚えた。
これは多分、目の前の給料未払いの雇い主とは別のものが原因だろう。その原因は不明だが、その原因が近々やってきそうな予感がした。具体的には、明日ぐらいに。
はあ、とため息を
…
……
………
…………
……………
空には雲一つもなく、朝の優しい太陽光が飛び立つ小鳥や、地面に生える草花を祝福するかのように降り注いでいる。旅立ちには相応しい天気だ。
リュックを背負い、
「ごーごーごー。ごうごうごー」
乾いた地面の上を、キャリーケースのタイヤが転がり、俺の靴が踏みしめる。間抜けな歌は、この付近には畑もないし、家の中にいる人には聞こえない音量で、東京旅行が楽しみなためついつい口ずさんでしまう。
「東京を一人で歩くのは初めてだからなー」
昔の記憶に悶々としている上に、雨が降っていた昨日とは違って、今日は天気も心も快晴だからか、ついつい機嫌がよくなってしまう。東京で何をするのかは、はっきりとは決まっていないけれども、昔から街を一人で自由に歩くのは、一つの夢だったし、貯めたお小遣いと、数度に渡る両親との交渉のおかげでやっと実現したのだから、気分が良くなってしまうのは仕方が無いだろう。
東京には、
そんな期待を胸にして、駅へと向かう。東京まで電車で2時間半ぐらいだろうか。
痛覚残留/追憶逸脱
サブタイは微睡みジラフにしようと思ったけど、それは物語シリーズぽくなるのでボツの方向で。
感想、評価よろしくお願いします。「ここ直したほうがいいよ」っていうのあったら、よろしくお願いします。