才能という物は平等ではない。才能がない人はどれだけやっても大したことはできないが、逆に才能がある人はそれを容易くできる。勿論、才能だけでなく努力も大切であるし、才能に胡坐をかいて怠けていたら大成することはできないだろうが、それでも才能の差というものは大きい。世の中とはそういうものだ。
そして、どの分野にしても才能に満ち溢れた天才という者は存在してる。私、姫百合零菜(ひめゆり れいな)もそんな天才の一人だ。
零菜は武道の才能に優れていた。無手の空手、合気道だけでなく、弓道、なぎなた、剣道などの武器を使った武道でも天才的な能力を発揮した。元々知っていたかのように鍛錬でき、技を振るうことができたし、漫画のように相手の動きを見切る事さえできたのだ。
当然ながら零菜は学生の頃から女子武道の試合で引っ張りだこになり、その手の業界では知らぬものはいないほどの有名人になった。
しかし、そんな零菜も病気には勝てず38歳の若さで癌で呆気なく死亡した。そう、自分が死んだ自覚はある。だからいきなり貴女は死にましたなんて言われても納得はできた。
今、私の前には黒い衣に身を包み大鎌を持つ骸骨がいた。それは自らを死神と名乗った。確かにいかにもと言える古式ゆかしい死神姿だ。私はその死神に創作物の世界に転生しないかとスカウトされていた。
「なぜ私を?」
「確かにトリッパーは上位世界人なら誰でもいいわけですが、貴女のような上位世界人の天然能力者は貴重で、そのまま死なせるのは勿体ないからです」
死神が言うには私は『あらゆる武術の才能』という能力を生まれつき保有しているらしい。私が武道に長けていたのはこの能力の影響らしい。
「残念ながら貴女がいた世界では不思議も神秘もありません。だから精々試合で活躍する程度しかできませんでしたが、様々な下位世界で能力を身に着けていけば漫画の主人公みたいな超人的な活躍もできるようになりますよ」
「それは本当ですか?」
その話に私は食いついた。そう、私は昔から漫画とかを見て気とか使えたらなと思っていたのだ。まあ当然ながらそんな事はできなかったけど。
「それで貴女の天然能力を補強する為に転生特典を上げます」
「それはテンプレですね」
「まあ、一応こっちで『無限転生』『スキル及びステータス継承』『転生先及び異世界間転移先の指定』『アイテムボックス』『鑑定』の5つを用意しました」
「具体的にはどんな能力ですか?」
転生特典がすでに決まっているみたいなので訊いてみることにした。
「まず、『無限転生』は、死亡しても前世までの記憶と転生特典を引き継いだまま下位世界に無限に転生できるスキルです」
「何度でも転生できるワケですね」
「その通りです」
つまり転生先で殺されたりしてもやり直しがきくのか。
「次の『スキル及びステータス継承』は一度でも入手した事があるスキルは転生しても失われず、身体能力などのステータスも生前の能力を最適化して継承できます」
「これは身体を鍛えたり、RPGの世界でステータスを上げた状態で死んだら、それを継承するわけですか?」
「そうですね。だからその手の世界でレベルアップをするのは効果的ですよ」
転生して一々体を鍛えなおす必要がないのはありがたい。
「『転生先及び異世界間転移先の指定』は文字通り好きな下位世界に移動したり、事前に転生先を指定しておくことで死後にその下位世界に転生できるスキルですね。後、転移と転生はある程度調整ができるので、時間や場所を指定することもできます」
「つまり原作の何年前とか生まれる場所とかも指定できるわけですね?」
「ええ、かなり大雑把になりますが可能です」
なるほど、この三つの特典は様々な下位世界を転生と転移で巡りながら力を付けていくという目的を相互に補完していることを見ても、どう考えても長期熟成型ですね。まあ最初から俺TUEEEEEーーなんてやっても白けるだけだからこの方が私的には嬉しいです。
「最後の『アイテムボックス』と『鑑定』は異世界転移物のテンプレなので説明は省きましょう」
なんか手抜き感があるが、アイテムボックスと鑑定なんて定番すぎて説明するまでもないというのはわからなくもないね。それでも便利だからあるのはありがたい。
「分かりました。条件はそれでいいです」
「そうですか。ではいきますよ」
そう死神がいうと、私の足元の地面にいきなり黒い穴ができて私は落下した。
「ここはテンプレなのーーー!?」
私は落下しつつも意識を失ったのだった。