12世紀、平安時代末期の平安京。原作の800年ほど前のこの時期、人間界には妖怪の侵入を阻む霊界の結界は存在せず妖怪たちは魔界と人間界を好きに行き来していた。
そんな妖怪たちの中でも特に問題になったのが、食人鬼などの人間を捕食する妖怪だ。彼らの多くは人間でないと腹が受け付けないという切実は問題もあり、人間と争いになっていた。
彼らとしても人間を食べずに餓死などしたくないからわざわざ人間界に来て人間を捕食しているのだ。それだけに人間を襲うのを止めろと言っても止まるわけがない。故に人間たちは自力で妖怪たちに対抗しなければならなかった。
そんな情勢なだけに陰陽師や退魔師などの霊能力者は800年後とは比べ物にならないほど強力で、驚くべきことにこの時期の平安京には徒党を組めばB級妖怪にも勝てるほどの霊能力者が数多くいたのだ。とはいえ、そんな彼らにしてもA級妖怪や更にその上のS級妖怪にはまるで歯が立たなかった。それはある意味仕方がない事だろう。A級妖怪ともなれば人間が対抗できる強さではないのだ。
しかし、A級妖怪どころかS級妖怪をも単独で討伐する人間の少女が現れて、平安京ではその話題でもちきりになっていた。その彼女・山田零菜は身元不明であったが、日本人の容姿をしていたこともありわりとあっさりと受け入れられた。というかこの時代の日本は戸籍制度がしっかりしていないのでその辺りはどうとでもなった。
『ハイスクールD×D』の世界から引き上げた零菜は『幽☆遊☆白書』の世界に転移していた。この世界での目的は“聖光気”を会得する事だ。
聖光気は幻海ですら会得できなかった人間にとって究極の闘気で、これを会得した仙水は「聖光気」を物質化した「気鋼闘衣」を身につけることができ、その時の強さはS級妖怪に匹敵するほどである。それなら零菜が聖光気を会得すればその力は凄まじい物になるだろう。
零菜は様々な試行錯誤の末に霊力と気を融合させる事で聖光気の発動させる事ができた。まあ、より正確に言えば自らの霊力を気で染め上げるような感じで発動できた。
その後、零菜は修行と強力な妖怪との戦いを繰り返した。武術や霊力などは修行で鍛えることはできるが、格闘漫画でありがちなように実戦を重ねた方が効率よく強くなれるからだ。
ちなみに『幽☆遊☆白書』の世界は原作時期には霊界の結界によって強力な妖怪が人間界におらず、それらの妖怪と戦うには瘴気に満ちた魔界に行かなければならなかった。零菜はそんな悪環境な場所に行くつもりはなかったので、大昔の人間界に行く事にしたのだ。
強大な力を得た零菜はA級妖怪どころかS級妖怪すらも討伐することができるようになり、戦う度に零菜は強くなっていたが、そんな行動がより強力なS級妖怪を引き寄せることになり、零菜はある日遭遇した妖怪に手痛い敗北を喫することになった。
「確かに人間の娘とは思えんほどの強さだが、まだまだだな」
その妖怪・雷禅(らいぜん)は地面に零菜が倒れこんだ零菜にそう称した。数多の世界を巡り強大な力を身に付けてきた零菜にとって屈辱的なことであるが、ここまで惨敗してしまうと反論する事も出来ない。何しろ聖光気を纏った格闘戦やスタンドなどの能力が全く通用せずに叩き潰されてしまったのだ。
正直言って死を覚悟したほどであるが、雷禅は人間とは思えない強さを持つ零菜を面白がって殺すことなく去っていった。これが、雷禅との関わりのはじまりで、これ以降雷禅の喧嘩仲間として付き合うことになる。最も零菜としても遥かに各上の雷禅との戦いは得る物が大きかったので好都合であった。
そうして長い月日が流れて、雷禅が喧嘩を止めて魔界で国造りをするようになった。零菜はもうそんな時期かと原作知識を思い出した。確か雷禅は原作の700年ほど前に人間の女に惚れて人間を食べなくなったのだ。
雷禅という喧嘩相手がいなくなったのは残念であるが、それでも強力な妖怪たちはまだ人間界にいる為、戦う相手に不自由はせず修行と戦いの日々を送ったが、そんな日々も霊界が人間界に干渉してくることで終わりを告げた。
霊界は人間界を保護する為と称して魔界と人間界の間に強力な妖怪の侵入を阻む結界を張ったのだ。この結果、人間界から強力な妖怪を姿を消すことになった。
霊界の者たちはあくまで人間たちの為と綺麗ごとを主張していたが、実際には霊界の利権確保の為に過ぎない事を知っている零菜にとって彼らの主張は白々しいにもほどがあった。当然ながらS級妖怪すら倒せる零菜に霊界からスカウトが来た際も即座に断っていた。
最早、得る物はないと判断した零菜は現世での活動を終わりにすることにした。今回は250年近くも生きたが、その月日によってこの体も限界になっていたので、零菜は毒を飲んだ。
尚、零菜が聖光気で派手に戦った為に聖光気の使い手の出鱈目な強さが霊界、魔界、人間界問わず広く知れ渡る事になるのであった。
解説
■妖怪
幽☆遊☆白書の世界の魔界に住む種族。このSSではA級妖怪が白銀聖闘士並の戦闘能力で、妖力値100万以上のS級妖怪ともなると、零菜でも苦戦する強さである。
■雷禅(らいぜん)
魔界三大妖怪の一人。「闘神」の異名を持つ魔界でも最強クラスの妖怪。原作では断食によって弱体化しているが、全盛期には黄泉どころか煙鬼ですらも問題にならない程の圧倒的な強さを持っており零菜も敗北している。
■スカウト
霊界にとって人間最強の霊能力者である零菜は有望な人材だったためにスカウトしていた。
あとがき
原作では聖光気の詳細が不明なので、このSSでは聖光気は霊力と気を混ぜると発生するというオリジナル設定にしました。それと聖光気を物質化した気鋼闘衣の防御力は桁違いで、念による強化など問題になりません。