お蔵入り作品集   作:ADONIS+

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宇宙人?いえ大和撫子です その五

2006年1月15日

 

 マブラヴ世界に送り込んだロボットたちの暴走は私にとって非常に都合の悪い事だった。勿論、私は監察軍に所属するトリッパーだから、その程度で土台が揺らぐほど基盤が弱くはありませんが、それでも傷がついてしまったのは間違いないのです。

 

 故に、この問題はなんとしても監察軍に不利益にならないように対応しなければなりません。内心ではこんな問題を引き起こしたロボットたちに対する怒りを胸に、私は紋章機シャープシューターでキャンベラ国際空港に降りました。

 

 そんな私を出迎えるオーストラリア人たち、事前に私の情報を聞いておられるようで私を見る目がやや厳しい気がします。それでもこの場にいるということは外交の素人ではないでしょうから、それをあからさまに表に出していません。

 

 そんなオーストラリア人たちを無視して、私は空港にいたロボットたちの方に向かいます。

 

「随分と勝手なことをしましたね」

「少尉殿、これは調査の一環です」

 

 ぬけぬけとそういうロボットに腸煮えくり返る思いですが、それを表に出して怒り狂っては大和撫子という私のキャラが壊れてしまうので我慢です。

 

「確かに私はこの世界の調査命令を出していましたし、この世界の勢力と接触を禁止していませんでした。しかし、命令の拡大解釈をして勝手な行動をするのは許される事ではありません。第一、貴方たちの行動は監察軍のマニュアルに反しています」

 

 監察軍は基本的に下位世界に余計な情報や技術を与えるのを良しとしないから、現地勢力と無暗に接触しません。その為、ステルス機能に長けた巡洋艦を配備して隠密行動を取ること多いのです。

 

 そのような事情を考えれば上層部、そしてこの世界を縄張りとする私の許可もなく現地勢力と接触するのはやってはならない事なのは明白です。

 

「しかし、この世界の原住民は絶滅の危機にあっています。それを無視するのは人道的ではありません」

 

 ロボットが人道を持ち出すとは、私は溜息をつきたくなりました。彼らから見れば私は出身世界を見捨てている人でなしに見えるのでしょうが、監察軍に所属する者としてそんな人道主義に付き合うつもりはありません。

 

「そのような事を貴方たちが考える必要はありません。貴方たちに次の命令を与えます。ただちに巡洋艦に乗って監察軍本部に帰還しなさい。その後、ラボ(研究所)に出頭するように」

 

 彼らはラボ送りです。今回の問題点を洗い出した後は廃棄処分になると思いますが、それは当然の処置です。こんな扱いにくいロボットなどさっさと処分するに限ります。

 

 いくら反発しても所詮ロボットではここまで面と向かって上官から命令されたらそれを実行するしかない。私はロボットたちが巡洋艦に乗り込んで監察軍本部に帰還していくのを市場に売られていく子牛を見るような目で見送ります。まさにドナドナですね。

 

 

 

「ミス・カザマ。お待ちください!」

 

 これで用は済んだとばかりにシャープシューターに乗り込もうとしたが、ここでオーストラリア人たちがちとせを止めるべく話しかけてきました。正直、このまま立ち去りたいのですが、さすがに無視するわけにもいきません。

 

「なんでしょうか?」

 

 私は呼び止めた彼らに表面上は礼儀正しくそう答えます。

 

「我々はオーストラリア政府の者です。」

「そうですか。私たちのロボットが迷惑を掛けしまいましたが、私たち監察軍はこの世界には関わるつもりはありませんのでご安心下さい」

 

 この状況で関わるつもりはないと言われても安心するどころか絶望するだけでしょうが、皮肉を込めてあえてそういいます。

 

「では、失礼します」

「風間待つのだ!」

 

 改めて引き上げようとした私ですが、命令口調でそういわれたので思わず眉をひそめてしまいました。誰がそういったのかというと、五摂家出身の武家と五摂家に近い有力武家の一団でした。彼らの身分は一目でそうとわかる格好をしているので一目瞭然です。

 

 そういえば日本帝国は滅亡しましたが、ある程度の日本人はオーストラリアに逃げ込んで亡命政府が建てられていました。その中に武家の方々がいたのでしょう。

 

「何か御用ですか?」

「何かではない。貴様我らがわざわざ来たというのに無礼であろう!」

 

 どういうわけか、彼らは私を格下扱いしているようです。言動からそうとしか思えませんが、これはかなり拙い事ですよ。事実、オーストラリア人たちは武家たちの言葉に顔色を変えています。

 

 もしかして、かつての私が外様武家の娘に過ぎなかったから、五摂家出身の武家と五摂家に近い有力武家である自分たちは私よりも遥かに格上の存在だと認識しているのでしょうか?

 

 しかし、国が滅亡したら王侯貴族といえども庶民と変わりありません。日本帝国が滅んだというのにそんな身分を振りかざしても空しいだけでしょう。といいますか、そもそも私は国を捨てて監察軍に所属しているわけで、既に武家でなければ日本帝国に人間でもないのですよ。

 

 どうしてこんな馬鹿がきているのでしょう。多分、私の素性を知ったオーストラリア政府が日本の亡命政府に協力を求めて、所詮は外様武家の娘などどうとでもなると調子に乗った武家が暴走したのでしょうが、外交的に見ればとんでもない失態ですね。

 

「そもそもだ。日本がBETAに攻め滅ぼされたというのに貴様は何をしていたのだ!」

「……」

 

 まさか、彼らは私がトライデント作戦以降何もしなかった所為で日本が陥落したのだと言いたいのでしょうか? ですが、あれはマブラヴ世界の人間が自滅しただけです。

 

 最もアメリカ人以外はそれはアメリカの所為だと責任をアメリカに押し付けるでしょうが、私たちからすれば多用すれば何が起こるかわからないG弾使用を認めてしまった時点で同罪です。そんな自滅の尻拭いまでやっていられません。

 

「……三千世界の基本ルールは弱肉強食。強者が繁栄し弱者が淘汰されます。自国を自らの世界を守れない弱者に権利はありません」

 

 下位世界は基本的には力が物を言うだけに力のない弱者では何もできません。勝てば官軍負ければ賊軍というように、この世界ではBETAが正義でそれに敗北しつつある人類は悪ということになります。

 

「私たち監察軍にとって、この世界の人間はBETAに勝てなかった弱者であり、無謀な行動で自滅した愚か者です」

「何だ、その言い草は!」

 

 少々きつい事を言った所為で武家連中はカッカしている。

 

「どうやら貴方たちは立場の違いというものが何もわかっていないようですね。私は三千世界の列強たるブリタニアに所属しているのですよ。滅亡寸前のこの世界の者たちとは立場が違います」

 

 確かに以前の私はこの世界の日本帝国に所属していましたが、監察軍に鞍替えした今となっては立場が大幅に違うのです。

 

「無礼な! 国を捨てた非国民が!」

「……どうやら話にならないようですね」

 

 実力がないくせにプライドばかり高い武家なんか馬鹿馬鹿しくてまともに付き合っていられません。私はそんな彼らを無視してシャープシューターに乗り込みました。途中で彼らが喚き散らしましたが、それを無視して私はキャンベラ国際空港から飛び立ち、監察軍に帰還しました。

 

 かくして、私はマブラヴ世界から引き上げました。その後、激変した地球環境、人類同士の内ゲバ、BETAの侵攻などでこの世界の人類が滅亡したのは言うまでもありませんが、そんなことは私の知った事ではありません。




おまけ

「そうか、そんなことになったのか」
「はい、あの世界の武家の方々とは付き合いきれません」

 監察軍に帰還して、私は監察軍本部の司令室でトレーズ総司令官にことの詳細を報告することになりました。

「まあ、あの世界の者たちはそれでいいとして、問題はロボットたちだね」
「研究所からは何か報告がありましたか?」
「ああ、やはり自己学習の過程で余計な倫理観を持ってしまった事が問題だよ」

 監察軍のロボットにはAIは学習機能があります。それは学習させることで命令を効率よく遂行させる為ですが、今回はそれがあだになってしまいました。

「倫理観ですか、確かにある程度の倫理観は合った方がいいでしょうが、私たちは正義の味方やNPO団体ではないんですから、やはりその辺りは見直した方がいいのでは?」
「うむ、その方向で改良を進めることにしよう」

 監察軍はブリタニア帝国の特務機関なのだからブリタニア帝国の国益を優先しなくてはいけません。例え異世界で困窮する人々がいても国益にならないのであれば無視しなければいけません。それだけに、私たちが使うロボットが良心的すぎるとこちらが困ります。

 とはいえ、これで厄介な問題は終わりです。今回の事で少々疲れたので多少休んでから異世界でエンジェル隊のスカウトをやるとしましょう。



解説

 この『宇宙人?いえ大和撫子です』はこれで終わりです。ちとせがマブラヴ世界に救済のチャンスを与えましたが、あの世界の人類ではそれを活かすことができなかったという話です。
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