<プレイヤー視点>
魔法バレによってウィッチズガーデンのメンバーが拘束されてもユースフィア・オンラインはつつがなく運営されていて、多くのプレイヤーがゲームに参加していたが、ある日いきなりログアウトできなくなり、すべてのプレイヤーがユーヤット王国にある始まりの街の中央広場に転移していた。
そして、プレイヤーたちの外見が次々に変わっていった。いや本来改変されていたアバターがリアルの姿に戻っただけだったが、プレイヤーの手にはいつの間にか手鏡があったためにプレイヤーは鏡を見て大混乱になっていた。
特に拙かったのはネカマプレイをしていたプレイヤーだった。彼らは男の姿に戻っても女性用の衣服を着たままであったために著しく見苦しかった。すでに現場はリアル顔バレ+ネカマバレととんでもない有様になっていた。
そこに巨大な白い服装の魔女の現れた。それは魔女の衣装を着た美少女をそのまま巨大化したような姿で立体映像かなにかだろうか。どうもリアルティがない。
『諸君はこのユースフィア・オンラインをクリアしないとログアウトできない。これはゲームであっても遊びではない』
「なっ、なんだと」
「この展開って…」
どっかで聞いたようなことをいう魔女にプレイヤーは驚く。
『プレイヤーの諸君、私の世界へようこそ。私の名はエリーゼ・ペルティーニ。このゲームの開発者にしてGM(ゲームマスター)である』
ゲーム開発者という言葉にプレイヤーたちの間で戦慄が走った。この場のプレイヤーたちはウィッチズガーデンが拘束されてもゲーム運営ができているのは彼女たちが開発と運営にほとんど関与していないからで、日本政府がゲーム開発と運営を担当している人物を必死に捜索している事はリアルではニュースとして流れていた程だ。
『プレイヤーの諸君はすでにログアウトボタンが消滅している事に気付いているでしょう。しかし、これはゲームの不具合ではない。ユースフィア・オンライン本来の仕様である』
「仕様だと!」
とんでもない言葉にプレイヤーが叫んでいた。
『諸君は魔王を倒すまで、このゲームを自発的にログアウトすることはできない。また外部の人間の手によるVR機器の停止、あるいは解除もありえない。事実リアルではすでにそれが試みられたプレイヤーもいるがログアウトできていない』
「そんな馬鹿な!」
「そうだ。ありえないぞ!」
『そうでもない。諸君らもこのユースフィア・オンラインがただのゲームではない事に気付いているだろう。この世界ユースフィアは仮想世界ではない。本当の異世界なのだ』
この世界は本当は異世界ではないか。それは多くのプレイヤーがうすうす疑っていた事だった。いくらなんでもゲームをしていたからといって魔法が使えるようになるわけがない。多くのプレイヤーもその点に気付いていたが、あえて目を反らしていたのだ。
『あのVR機器は諸君らの霊格、霊力、精神を異世界に飛ばしてアバターを構成して遠隔操作させる魔道具だ。そう、ゲームはVRではなく魔法によってVRに偽装した代物に過ぎないのだ』
魔法による偽VRという驚愕の事実であるが、プレイヤーはある意味納得していた。やはりVRという本来なら実現不可能なぶっ飛んだ技術が出て来た点と魔法という要素が結びついたからだろう。
『つまり一端ログインしてしまうと、VR機器を取り外そうが解体しようがログアウトできない。ついでにいえば魔法技術が存在しない地球ではVR機器として使用されている魔道具を解析する事は不可能なので、助けを求めるのは現実的ではない事を伝えておこう。諸君らが解放される方法は魔王を倒す事のみである』
「魔道具だって、そんな馬鹿な」
プレイヤーの一人が信じたくないのか愕然とした顔をしていたが、リアルで魔法が使えるようになったという事実がそれを否定できずにいるのだろう。弱弱しく呟いていた。
『ちなみにそのことは私が地球でも知らせているので、日本政府が君たちの肉体を保護してくれる筈だ。その為、一人暮らしの人間でも餓死などの心配はいらない。諸君たちは心置きなくゲーム攻略に励んでくれたまえ』
「ふざけんな。そんな事が許されると思っているのか!」
「そうだ、そうだ!」
激怒したプレイヤーがエリーゼに怒鳴りつけているが、エリーゼはそれを無視して言葉を続ける。
「しかし、この世界は現実であるという事を注意してもらいたい。以後この世界ではありとあらゆる蘇生手段は機能しない。HPが0になったとき諸君らのアバターは消滅し、そのダメージによって本体も死ぬことになる」
死という言葉に戦慄が走る。
『諸君たちは何故と思っているだろう。何故ユースフィア・オンライン開発者である私がそんなことをしているのかと、大規模なテロ、身代金目的の誘拐、そのいずれでもない。私の目的はこのデスゲームを楽しむ事だ。諸君たちが私を楽しませてくれることを期待している』
そう言うとエリーゼは消えて、プレイヤーたちの仁義なくデスゲームが開始されるのだった。
<運営視点>
ユースフィア・オンラインを運営していたエリーゼであったが、βテストとして十分なデータ収集が終えたので、仕様変更してユースフィア・オンラインをデスゲームにした。
やっぱデスゲームをやって新世界の神として君臨するのはロマンだよね。と思いながらプレイヤーたちの悪戦苦闘を眺めていた。
エリーゼは最近『ソードアート・オンライン』というライトノベルにハマっていた為にネタに走ってみたが、そのとばっちりを受けてデスゲームをやらされているプレイヤーたちはたまったものではないだろう。
まあ、エリーゼとしてはトリッパー以外の人間などNPCと大して変わらない。彼女にとって自分と同じトリッパーだけが仲間にして本当の人間であると考えていたのだ。この思想はトリッパーには珍しくなく、多くのトリッパーは大なり小なりそんな考えを持っていた為に、エリーゼがそれほど異常というわけでもなかった。
そんなエリーゼにしても、デスゲームになった途端にゲーム進行速度が改善したのは意外だった。デスゲームになったからにはこれまでのような死に戻りはできなくなり戦闘を恐れるようになるだろうから進行速度は大幅に落ちると思っていたのだが、逆に向上していたのだった。
「それだけこれまで本気じゃなかったのでしょうね」
デスゲームが始まるまではプレイヤーはゲームクリアに消極的だった。それはゲームクリアしてしまうとこのゲームをプレイできなくなるからだが、追い詰めらえたことで彼らは本気になったのだろう。この分だと、そう遠くない内に魔王を倒してクリアしそうなので、その準備もしておくか。
こうして、エリーゼの予測通りユースフィア・オンラインはこれまでの停滞が嘘のようにデスゲームが開始されてから僅か二年、リアルでは一ヶ月でクリアされる事になった。勿論、日本政府はデスゲームをやらかしたエリーゼ・ペルティーニを指名手配していたが、必至の捜索にも関わらずついに見つけることはできなかった。
あとがき
もしもエリーゼがソードアート・オンラインにハマってデスゲームをやったらと妄想して書いてみました。その為、SAOのネタに塗れています(笑)。