お蔵入り作品集   作:ADONIS+

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続 異世界で偽VRをやろう その二

<魔術師視点>

 

 魔術協会や聖堂協会が行ってきた神秘の隠匿はすでに意味のないものとなってしまった。何故ならVRMMMORPG『ユースフィア・オンライン』というゲームによってユースフィア式魔術なる未知の魔術が日本中に広まってしまったからだ。

 

 街中で馬鹿なプレイヤーが堂々と魔術を使い、それがネットやテレビなどに流れるというおおよそまっとうな魔術師から見ればとんでもない話に上層部は大混乱になっていた。

 

 ちなみにプレイヤーたちが使用している魔術は正式名称はユースフィア式魔法なのだが、魔術師たちにとって魔法とは特別な意味を持つことから、いくら世間では魔法と呼ばれていても彼らはそれを魔法とは認めず頑なに魔術と呼んでいた。

 

 魔術協会や聖堂協会が動いたのは当然ながらプレイヤーたちが魔術を大っぴらに使用したからだが、言うまでもなくこの時点で致命的なまでに後手に回ってしまっていた。

 

 そもそもユースフィア・オンラインが配布されたのは二か月近く前のことで、それから魔術ばれで動くことになっても既にVR機器は広く配布されてしまっており、今更日本全土に広がっているであろうプレイヤーを把握して何らかの規制をすることなど不可能だった。

 

 当然ながら、魔術師たちは問題のゲームを運営している同人サークルを魔術師による神秘の漏洩であると判断して襲撃して始末したが、それは何の解決にもなっていなかった。何故なら彼らは黒幕に使われているだけの一般人にすぎなかったからだ。

 

 これはよくよく考えればわかることであるが、魔術師であればこんなあからさまな行動で表にでないから当然の事である。その黒幕にしてもわかった事といえば雪村涼乃と名乗る十代の白人少女ということぐらいであるが、この名前にしても白人女性が日本人女性の名前を使っていることからも明らかに偽名だとわかるため何の手掛かりにもならない。

 

 魔術協会では回収したVR機器の解析をやっているが、未知の術式が使用されているらしくまったく解析できないらしい。ただ分かった事といえば『ユースフィア・オンライン』が科学技術ではなく未知の魔術が使用されていることぐらいだ。

 

 つまり黒幕につながる情報はなく、神秘の隠匿もままならない。そんな手詰まりの事態に魔術協会はせめてユースフィア式魔術の情報を獲得するために魔術師たちにユースフィア・オンラインをプレイさせることにした。

 

 しかし、これは担当の魔術師たちにかなりの負担になったのはいうまでもない。そもそも魔術師とは世間ずれしているものである。一般人のように一般社会に適合しているわけではなく、特にゲームなど興味を示さず、そんなことをする暇があるなら魔術の研究をするのが魔術師という者である。

 

 つまり、家庭用ゲーム機すらまともに使ったことのない魔術師がいきなりVRMMMORPGをプレイするなど土台無理な話なのだ。

 

 これがVRでなくとも普通のオンラインゲームをやったことのあるゲーマーであればVRMMMORPGであろうともすぐに対応できるだろうが、世間ずれした魔術師の悲しさ、彼らはそれに順応することは非常に難しかった。

 

 いくら魔術師でもゲーム内では魔術は一切使用できず、身体能力にしても他のプレイヤーと条件は同じであった為、彼らに有利な点など一切なく、それどころかゲーマーとしてド素人以下であったから一般人以下の成果しか出せていなかった。

 

 そんな魔術師たちもユースフィア式魔術の調査の一環として、イマジカ王国城下町の王立図書館で霊子学初級教科書を読むところまで来ていたが、その程度の事は彼らよりも先にもしくは同時期にゲームを始めた一般人ならば当に到着していたのだった。

 

「しかし、このユースフィア式魔術はやはり我々の魔術とは根本的に違うな」

 

 自分たちの知る魔術とは全く違う未知の魔術に彼らは溜息を零した。

 

 魔術とは世界に存在する魔術基盤を依存して自らの魔術回路で生命力を魔力に変換して魔術を使用するが、魔術基盤の弊害で魔術を使用する者が多ければ多いほど威力が低下してしまうというデメリットがある。

 

 しかし、ユースフィア式魔術は魔術基盤を用いていないため使い手の人数など関係なく、魔術の威力は本人の能力がものをいうし、魔術回路を使用せず本人の霊力(魂の力)を用いて魔術を行使するため、霊力を扱えるものならば理論上だれでも魔術を使う事ができる。

 

 その点を考えると、ユースフィア式魔術は既存の魔術と全く異なるもので、魔術師たちのリソースを奪うものではない。いくらユースフィア式魔術が広まろうと魔術師が使う既存の魔術に影響はないだろうが、神秘の隠蔽という観点では大問題だ。

 

 しかし、ここまでくると無理に隠蔽するよりも既存の魔術を隠蔽するためにユースフィア式魔術を隠れ蓑として利用する方がいいかもしれない。今更隠蔽など無理なのだからそれが効率的だろう。

 

 ちなみに魔術たちが集めたユースフィア式魔術の知識は一応魔術協会に提供されたものの既存の魔術を重んじる魔術師たちの偏見によりほとんど有効活用されることはなかった。

 

 むしろ、その点では表社会の主要国や研究機関のほうがよっぽど進んでいたのは余談である。

 

 

 

 

 

<プレイヤー視点>

 

 俺、山田次郎が今話題の『ユースフィア・オンライン』のVA機器を手に入れたのはたまたま駅前で無料配布が行われていたのを受け取ったからだ。

 

 ユースフィア・オンラインは完全無料のオンラインゲームであるが、通常のオンラインゲームと異なりパソコンがあればできるわけではなく、専用のVR機器が必要なのだ。

 

 つまりそのVR機器がないとユースフィア・オンラインをプレイできないわけで、多くのゲーマーたちはVR機器を手に入れようとしたが、これが面倒なことに直接無料配布しかしていないことから入手が困難であり、俺はそんな中で数少ない機会を得たわけだ。

 

 以前はサイトに申し込めば『ウィッチズガーデン』がVR機器を無料配送してくれたらしいが、例の魔法バレからすぐに『ウィッチズガーデン』が潰れてからはそれもなくなってしまったのだ。

 

 ここで潰れたといったが実際にはメンバー全員が突如として行方不明になったからだが、これには『ウィッチズガーデン』が謎の組織に襲撃されてしまったなどの黒い噂があったりする。

 

 まあVRゲームだけでもとんでもないのにゲーム内の魔法が現実でも使用できるようになったわけだから『ウィッチズガーデン』が某国や某組織などに狙われても不思議ではない。

 

 じゃあ、VR機器を配布している連中はなんなのかというと、短期アルバイトで雇われた学生やフリーターらしい。そんな彼らを雇った人物は明らかに『ウィッチズガーデン』の関係者だと思われるが、その辺りの経緯よりもこれでゲームができる事の方が大切だ。

 

 そんなわけでキャラクター作成を行って早速ゲームをすることにした。始まりの街にある女神神殿でチュートリアルを済ませて早速住民と話をすることにした。

 

 しかし、VRというだけあってTVゲームのRPGや普通のオンラインRPGとはまるで違う。風景はリアルで肌で風を感じられ、土の臭いもする。これでは本当の異世界と言われてしまうとそのまま信じてしまいそうな程である。

 

 というか、この世界の魔法がリアルでも使用できるようになってからは、この世界はプログラム上の電脳世界ではなく本当に異世界ではないのかと、ネットでも盛んに議論されている。

 

 俺としてはそのどちらでもかまわない。ようは異世界風味あふれるこの世界をゲームのように楽しめればそれでいいのだ。

 

 

 

 そんな俺であるが、変なプレイヤーたちと関わることになった。そいつらは通常のオンラインRPGどころか、家庭用TVゲーム機のRPGすらやったことのない、ド素人プレイヤーだった。

 

 そんな連中なだけにこのVRMMORPGに対応できる筈もなく四苦八苦していた。はっきりいってそこまでひどい初心者がいきなりこのユースフィア・オンラインに挑戦するなど無謀としか言いようがないが、多分VRゲームができるようになったから無理に挑戦しているのだろうな。

 

 また、彼らは魔法を魔術と頑なに呼んでおり、この世界の魔法を魔法と決して言わないのだ。なにか変な拘りでもあるのだろう。人それぞれだからどうでもいいけど、俺が魔法と言うと嫌そうな顔をするからちょっと付き合いにくい連中であった。

 

 結局、そんな奴らなだけに俺もそいつらとの関係はあまり長続きするすることなく、終わったのは言うまでもない。

 

 この手のゲームでは全くしらない他人と関わることが多いから人間トラブルもあるんだろうな。まあ、無理に合わない連中と関わる必要はないから、俺と考えが合うプレイヤーと仲良くすればいいだけさ。俺はそう思いこのゲームを自分なりに楽しむのであった。




あとがき

 エリーゼはこの世界では雪村涼乃という偽名を用いていますが、これは魔術師対策として真名を伏せる為です。
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