好きにやる。
「あれ、杏里じゃん。男二人も連れて歩いて……逆ハーか?あれ?しかも一人正臣じゃん」
「クレア!?……さん」
「あれ?クレアさん杏里と知り合いなんすか?」
「え?え?え?」
暇だったからプラプラ歩いてたら杏里と正臣となんかパッとしない感じの前髪ロストボーイと会った。
おいおい、高校生になったとたん乙女ゲーでも始まったんか?
真面目小動物系男子と金髪ヤンチャ男子の同時攻略とか杏里ちゃんの成長っぷりにお兄ちゃん脱帽。
「あの、正臣?この人は……」
「あぁ、こっち来たばっかりの帝人にはわかんねぇよな。この人は真日原クレアさんって言って、池袋で何でも屋してる人なんだけど……、杏里とも知り合いってのは驚いた」
「クレア……さんには、小さい頃からお世話になっているので……」
そうなんです、高校を卒業した俺は何でも屋をしています。
金はあったから、正直働かなくてもいいんじゃねぇ?とも思ったんだけど、さすがに親の金使ってニートするのは嫌だったので、赤林さんとかイザヤさんとかに手伝ってもらって開業できた。
ちなみに、赤林さんと杏里のお母さんは籍は入れてないが、事実婚状態らしい。
初々しい感じの、お互いに言いはしないけどこれ絶対両思いだよね的な空気を発していて辛いって杏里に相談された。
「よろしく、真日原クレアだ。杏里と仲良くしてやってな、高校で友達できるか心配だったんだよ」
「あ、は、はい!僕は竜ヶ峰帝人っていいます!こちらこそ!よろしくお願いします!」
「エアコンみてぇな名前だな、……カッコいい。なんか困ったら杏里の友達ってことで割引するから、ぜひともよろず屋紅ちゃんをよろしくね!」
わかると思うけど店の名前は遊馬崎さんと狩沢さん発案です。
「あんま若いもんの邪魔すると空気読めてねぇって言われそうだから俺はそろそろ行くぜ」
「お疲れ様っす、こんどロシア寿司奢ってくださいね!」
「お、お疲れ様です!」
「金入ったらいいぞ。あ、そだ!今日静雄さんと飯食う約束してんだけど、杏里来るか?」
「え、あ、……行く、ます」
「行くます?……なんで敬語使ってんだ?まぁいいや、じゃあどこで食うか決まったら連絡するわ。じゃあな高校生諸君!あんま夜遊びすんじゃねーぞー」
よし、静雄さん探しに行くかぁ。
なんか後ろの方で杏里が質問攻めにあってる気がするけど知らん、青春だなぁ~。
ーーー
ーー
ー
お、自販機が空飛んでる。
ありゃ静雄さんだな。
「お疲れ様ですトムさん」
「お?クレアじゃねぇか、どうした?」
「今日静雄さんと飯食う約束してたんで、散歩がてらそろそろ仕事終わりそうな静雄さんと合流しようかと」
「なるほどなぁ、そりゃちょうどいい。今取り立てしてるヤツが今日最後だ」
あ、静雄さんがこっち気づいた。
とりあえず手振っとくか。
「おぉ!クレアじゃねぇか!ちょっと待っててくれ、このクソで最後だからよ。……ってことでよぉ、お前に割く時間はこれっぽっちもねぇんだわ」
「ひ、ひぃぃぃ!!!」
おっさんがこっちに逃げてきた。
ちょ!しがみつかんといてぇや、おっさんに触られて喜ぶ趣味ないねん。
「た、助けてくださいぃ!!!」
「……おじさん、ちょっと携帯貸してくれる?」
「け、携帯?……は、はい」
「あんがと、……それじゃあマジックをお見せします!ここにあります携帯!これを両手で握りしめまして~……ほい!」
手を開くとあら不思議!
携帯が小さくなっちゃった!
まぁ、力ずくで圧縮しただけなんですけどね。
昨日とある読み返してたら第一位が空気圧縮してたねん、真似したかってん。
「ひ、ひぃぃぃぃ!!!」
「あー、コイツも静雄と同じ部類の人間だからよ。諦めて金だした方が身のためだぜ?」
観念したのかおっさんはトムさんに連れられ消えていった。
今日はこのまま解散でいいって言ってた、トムさんいい上司かよ。
「なに食いましょうか、静雄さんなんか食いたいもんありますか?」
「食いたいもんか、……俺は別になんでもいいけどよ」
「でたよ一番困る回答、静雄さん彼女できたらそれ言っちゃダメっすよ?」
「そうなのか?」
「そうなんすわ。さっき杏里見かけたんで誘ったら釣れたんで、杏里に食いたいもん聞いてみますわ」
二人で並んでタバコを吸いながら、杏里に電話を掛ける。
あ~、このニコチンで血管細くなってキューってなる感覚がたまらねぇ。
『はい、もしもし』
「俺俺、静雄さんと合流できたんだけどよ、なに食うか決まってねぇんだわ。なんか食いたいもんあるか?」
『……ナポリタン、食べたい』
「ナポリタンか、……んじゃ喫茶店とかか?」
『じゃなくて、クレアの作ったナポリタン』
「え?そんなんでいいの?」
『うん』
「ちょっと待って、静雄さんにも聞いてみるわ」
杏里はちょくちょくナポリタン作らせるんだよなぁ。
まぁ、俺の料理は上手いからしょうがないか。
「静雄さん、飯ナポリタンでもいいすか?店じゃなくてウチになっちゃいますけど」
「いいぜ、お前の料理は美味いからな。むしろそっちのがいいな」
「オッケーだってさ、今どこにいんだ?来んなら迎え行くけど」
『うんうん、大丈夫。歩いていける距離だから』
「そか、じゃあ気をつけて来いよ。……というわけで、材料を買いに行きますけど静雄さんも来ます?」
「飯作らせるんだ、材料費ぐらいは俺が出すぜ」
「さすが静雄さん、カッケーっす!」
ーーーーー
ーーー
ー
料理はできたのに、来ると言っていた時間になっても杏里が来ないので、静雄さんと探しにいこうかと言っていた時、チャイムが鳴った。
「やっと来たか、もう少し遅かったら探しに……?なんでセルティさんおるん?」
ドアを開けたら、申し訳なさそうにうつむいた杏里と、困った雰囲気を醸し出すセルティさんがいた。
「……とりあえず中入ったら?」
なんだかんだよく遊ぶメンバーが揃ったな。
ナポリタン食いながら事情を聞いてみると、なんか面倒くさいことになっているらしい。
遅れた理由は、杏里がセルティさんに斬りかかったかららしく、それは知り合いのセクハラ教師を助けるためらしく、そのセクハラ教師はイザヤさんの金盗んだからセルティさんに追われてたらしい。
なるほど、わけわかめだな。
「ホントにすいませんセルティさん、……暗くてわからなかったとはいえ、いきなり斬りかかったりして」
『いや、その教師を守ろうとしたんだし、杏里ちゃんは悪くないよ。傷もすぐ塞がったから』
「間違いねぇ……、あのゴミ虫がなんかやったに決まってやがる!!!ちょっと今から潰してくる!!!」
「いや、落ち着きましょ静雄さん。まず間違いなくイザヤさんが関わってるとは思いますけど、もう夜ですから。……それより、俺はそのセクハラ教師が気になるんだが、なんて名前だ?」
「えっと、……たしか、那須島。下の名前はわからない」
那須島、那須島、……あ!思い出した!
那須島ってあれだ!
去年、家に帰ってこない娘が何してるのか調べて欲しいって依頼で調べたとき、その娘使って売春まがいのことしようとしてたからボッコボコにしたやつだ。
その娘がどっぷり惚れ込んでてどうしようもねぇから、依存から助けることはできなかったけど、今度やったら残しておいた片方の金玉も潰すって言ったんだけどな。
「杏里、今度そのセクハラ教師になんかされたらすぐ言ってくれ。触られたとか、最悪口が臭かったとかでもいいぞ?」
「……なにする気?」
「いや、男としての人生終わらせるだけだから気にするなよ、ハッハッハッ」
ーーー
ーー
ー
その後は、今にも飛び出して行きそうな静雄さんをみんなでなだめ、水曜どうでしょうを見て解散となった。
……解散になったんだけど、杏里をセルティさんに送っていって貰おうと思ったら
『私は今すぐ帰らないといけない!家で新羅が待ってるからね!そういうことで、さよなら!あ、静雄は私が送っていくからクレアは杏里ちゃんを頼むぞ』
と、白々しい雰囲気を出しながら帰ってしまった。
いや、なんで杏里送れないのに静雄さんは送れるんだよとツッコミを入れる暇もなかった。
「わ、私は一人で帰れるから、別に送って貰わなくても……」
「いや、女子高生夜に一人で帰らせるわけにはいかんだろ。俺が赤林さんに殺されるわ」
ま、バイクだからそんなに面倒でもないからいいけどね?
ただ、杏里成長してなかなかえげつないボンキュッボンだから後ろに乗せると圧がさぁ……。
スゲーんだぜこれ、低反発枕でも入れてんじゃねーかって思うもん。
いくら妹みたいなもんだとはいえ、たまに理性と欲望の狭間でスパーキングしそうになる。
「ほれ、早く乗りんしゃい。できるかぎり体をくっつけないようにしつつ、しかししっかり掴まるんだぞ」
「……変態」
「はぁ?ガキが何言ってんだガキが、沙也香さんぐらいの色気出してから言え。だから今すぐ腕回すのやめろ、おい、やめなさいって」
「ガキだから気にならないんでしょ?……早く帰らないと赤林さんに怒られるよ」
「クソ、体だけはいっちょまえに育ちやがって。……仕方ねぇ、しっかり掴まってろよ」
……返事の変わりに抱き付く力強くするのやめてもらっていいかな?
ーーー
ーー
ー
「クレア……、なんで杏里ちゃんがお前に抱きついてんだい?」
「赤林さん?家の外まで出迎えありがとうございますっていうか、どうみてもこの状態に俺の意思は介在してないですよね?」
「ただいま、赤林さん」
「おかえり杏里ちゃん、この馬鹿に変なことされてないかい?されたらすぐ言うんだよ?」
「いや、赤林さんはシャレにならねぇって」
「……俺がいつシャレを言ったってんだい?」
「失礼します!杏里!風邪引かないように暖かくして寝ろよ!じゃあな!」
赤林さんの親バカっぷりがとどまるところを知らない。
マジ勘弁。
最初池袋じゃなくて渋谷って書いてたのは我ながら致命的だと思いますた。