どうなるのかビジョンが欠片も見えねぇな?
こんなところにいられるか!
俺は部屋に帰らせてもらう!
前回の一件以降、池袋がまたざわつきだしている。
セルティさんがはっちゃけて一躍有名人になったこともそうだが、それ以外にもダラーズと黄巾賊がぶつかりそうとか、切り裂き魔がパーリーしてるとか。
「で、杏里は切り裂き魔じゃないんだよな?」
「違う、私じゃない」
『しかし、噂では切り裂き魔は目が赤いらしい。これは杏里ちゃんの罪歌の特徴と一致しているよな』
「寝ぼけてやっちゃって……オッケーわかった、杏里はやってない。だからその罪歌をしまえ」
「杏里じゃねぇってことは、偽物か別に罪歌を持ってるヤツがいるってことだろ。そいつを見つけてぶっ飛ばせばいい話だ」
今日も相変わらずのメンツで机を囲んでいる。
最近切り裂き魔が出没しているので、杏里に話を聞こうと思って集まったのだ。
『最近は街でよく黄巾賊も見かける、気を付けてね杏里ちゃん』
「はい、ありがとうございます」
「俺と静雄さんには言ってくれないんですか?」
『お前たちは襲われても大丈夫だろが。むしろ切り裂き魔の方が心配だ』
「ぬかしよる、……隙あり!残り少ない肉は譲らねぇ」
「あ!」
「甘いぜクレア、そいつは俺が狙ってた獲物だ」
クレアの箸がすき焼き鍋に触れる瞬間、そこにはもう牛肉はない。
あまりに早い攻防に、杏里とセルティにはただ傍観することしかできなかった。
静雄の超人的反射神経と筋力による一線、綺麗なカーブを描く軌跡だけが目に焼き付く。
それは、このすき焼きにおいて、勝者と敗者を分かつ一瞬の攻防であった。
「クソっ!完璧に隙をついたつもりだったのに!」
「お前が最後に動くことは読んでた、何年一緒にいると思ってやがる」
「ふっ、さすが静雄さんだぜ。勝てねぇなぁ」
「「ハッハッハッ」」
「モグモグ……おいしい」
「……は?」
こいつッ!?
俺と静雄さんが友情フィールド展開していた隙に、横から肉をくすねていやがったッ!!!
さすが罪歌の戦闘経験を会得しているだけある、気配をまったく感じなかった!
これが圏境ってやつか!!!
『……材料はまだあるんだから、第2段を作ればいいんじゃないか?』
ーーーーー
ーーー
ー
前に依頼を受けたことがある贄川さんから、会いたいとの連絡をもらった。
どうやら池袋最強は誰なのかという取材をしたいらしい。
「久しぶりですね、あれから娘さんとは上手くいってますか?」
「いや、それがまったく。……最近のあの娘はわたしには理解できない気までしますよ」
……開幕地雷踏んだっぽい、ごめんて。
「そ、そうですか。……それより今日は俺に聞きたいことがあるとか」
「えぇ、今池袋最強についての記事を書こうと思っていまして、いろいろと聞き込みをしていくうちにクレアさんの名前を聞いたので、そこら辺についてどう思っているか取材したいなと」
「池袋最強なら静雄さんだと思いますよ、怒らせなければいい人ですけど、怒らせたらヤバいですからね」
「平和島静雄、彼の事はいろんな人に聞きましたから。……しかし、中には違う意見も聞こえてくる。平和島静雄、寿司屋のサイモン、そして、何でも屋のクレア」
……この人どこでなに聞いたんだ?
「平和島静雄は目立つから池袋のほとんどの人間は知っている。しかしクレアさん、あなたは静雄さんとは違った強さがあると」
「……そこまで詳しいとなると、イザヤさん、四木さん、あとは……セルティさんとか?」
「な!?」
「俺は人前では暴れないようにしてますから、そんな情報持ってるのは見たことある人だけっすよ。なんて言ってました?気になるな」
「……あなたは、美しい戦い方をすると。平和島静雄とは違う、力に任せた戦い方ではなく、力と技術の両方を持っていると」
照れるな、ここまで語るのはセルティさんだな?
「それは嬉しい。でも、最強は静雄さんですよ」
「それはなぜ?」
「俺は静雄さんほどの力はないですから、あんな人間戦車みたいな人と喧嘩する気も起きないですよ。だから俺の不戦敗です」
「なるほど、やはり平和島静雄なのか……ありがたい、参考にしてもらいますよ」
「いえいえ、これくらい。そうだ、贄川さんも気を付けた方がいいですよ。最近は切り裂き魔が出るらしいですから」
「ありがとうございます、それじゃあ私は失礼しますよ」
行っちゃった。
結構暗くなってるし、心配やなぁ。
それにしても、静雄さんと俺のどっちが強いのか、ねぇ。
どうなんだろうなぁ~、たぶん負けないとは思うんだけどねぇ。
ーーーーー
ーーー
ー
贄川さんが切り裂き魔にやられたらしい。
もしかして俺がフラグ立てたせいかな?マジごめん。
というか、切り裂き魔が罪歌を使ってた場合、切られた人ってあのラブラブ洗脳攻撃食らうんだべ?今贄川さん辛いんだろうなぁ。
そろそろ切り裂き魔に勝手させるのもシャクなので夜の街を歩いてたら杏里が一人で歩いてた。
「なんで深夜徘徊してんだ?切り裂き魔探し?」
「……」
「なんだ反抗期か?あんま遅くまで出歩いてると沙也香さんと赤林さんが心配すっぞ?送ってくから大人しく帰りなさい」
後ろに贄川さんがお目目爛々とさせてるし。
ありゃ洗脳入ってんな、マジごめん。
「そういや例のセクハラ教師になんか変なことされてないか?」
「……大丈夫」
「そっか」
これなんかされてんな?
殺すか?善意で残してやったもう片方も潰すか?
いや、むしろ棒の方殺るか?
T字路に差し掛かったところで贄川さんが姿を表した。
「ありゃ、結局こうなんのか。……一応聞きますけど、その包丁をどうするつもりで?」
「邪魔をするな、その女を渡せ」
ありゃりゃ、ダメだこりゃ。
贄川さんは、包丁を振りかざしてこちらに駆け寄ってくる。
そして、横からなかなかのスピードで走ってきたワゴン車にはねられてフライアウェイ!
結構飛んだなありゃさすが渡草さん。
「おい、大丈夫だったか?」
「さすが門田さん、構わん、行けってやつですね」
「そこに痺れる!」
「憧れるぅぅぅ!」
ワゴン車から降りてきた遊馬崎さんと狩沢さんとハイタッチ、今のくだりは我ながら気持ちよく決まったと思われ。
「……おいおい、アイツまだ立つぞ」
「すごい振り回すやん、包丁すごい振り回すやん」
贄川さんはブンブン包丁振り回しながら、なおも杏里に向かって走ってくる。
このままだと門田さん達も危ないので止めるとしましょう。
「あ、おいクレア!危ねぇ……」
走ってくる贄川さんの前に立ち、体を地を這わせるように落とし、振り向くようにして蹴りで足を刈り取る。
勢いよく走ってきていたので、贄川さんの体はそのまま飛ぶように俺の真上に。
そのままお腹に足を優しく当て、目一杯力を込めて足を伸ばすと、あら不思議!贄川さんが宙を舞うよ!
普通に蹴り飛ばしてもよかったけど、それだと内蔵系に傷つけちゃいそうだからやめときました。
「……心配した俺がバカだったな」
「クレア君はさすがですねぇ!もしかして、闇の組織で幼い頃から鍛えられたエージェントなのでは!」
「違うよ、きっと殺し屋の家系で育てられた超絶エリート君なんだよ!」
……マルティージョファミリーでいろんな人に子供の頃からしごかれ、形だけだがファミリーの一員になり、しかも殺し屋の祖父と殺し屋の父にもしごかれた過去があります。
ほとんど当たってんな?
そうこうしていたら、セルティさんと静雄さんが登場。
どう考えても過剰戦力ですありがとうございます。
ネバーギブアップ精神の塊のような贄川さんは、標的を静雄さんに変えると、再びブンブンスタイルで特攻。
騒ぐ渡草さんなど目もくれない静雄さんは、ワゴン車のドアを引きちぎると、そのまま盾のように構えて突進。
そのまま贄川さんをぶちかまし!
さらに止まらず壁にドーン!!!
「ありゃ死んだんじゃねぇか?」
「……大丈夫かな」
……正当防衛?
俺の執筆意欲を支えてくれているのは杏里のおっぱいだけだ……。
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