【完結】ナツキ・スバルの生存戦略 In ナザリック地下大墳墓(短編)   作:taisa01

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コミケ&正月期間なので短編を1つ公開したいとおもいます。

活動報告にも書きましたがコミケに参加します。



プロローグと一周目

 

 

 体のあちこちが軋みを上げる。

 

 鼓動に合わせて、激痛が全身を駆け巡る。痛みのあまり叫び声を上げそうになるも、喉はすでに喰いちぎられて、コヒューコヒューと言葉にならない音が血反吐とともに吐き出されるだけだった。

 

ーーああ、またか

 

 あまりの痛みで諦めのような思考が広がる。そのせいかわからないが、嫌に冷静な部分が過去の似た経験を掘り起こす。

 

 あれは(はらわた)狩りに切り刻まれた時だろうか?

 

 それとも崖の上まで追い詰められ、飛び降りた時だろうか?

 

 それとも誰かを救いたくて自裁した時だろうか?

 

 悲鳴を上げ続ける神経。絶望にすりつぶされそうな精神。何度繰り返そうとも慣れることのない不快感と嫌悪感が津波のように押し寄せてくる。

 

 しかしこんな時だからこそ、まるで頭上にでも目があるような俯瞰する感覚であたりを見回せてしまう。

 

 なぜ死にそうになっている?

 

 ここはどこだ?

 

 何があった?

 

 そんな思考が欠片でも存在する自分の心はすでに壊れているのだろう。すでに喉は食い破られ声は出ず、眼球は砕かれその機能を失っている。かすかな触覚が、体中……それこそ体内も含めて何かが這い回り、生きながら食われる感覚を知覚する。正気などこれだけで十二分に失えるものだが、失った正気さえも引き戻されてしまうのだから、この際目が見えていなかったことは幸運だったのかもしれない。

 

「……」

 

 浪々と何かを語る男の声が聞こえる。罠にかかった愚か者を蔑むようなものではなく、感謝の祈りのようにも聞こえる。何かにむさぼり食われる状況を鑑みれば、哀れな犠牲者への追悼の言葉にしか聞こえない。あのくそったれな怠惰の野郎に感謝の祈りをささげられているようで胸糞悪くなる。

 

 しかし、どうやらここまでのようだ。すでに体の熱は流れ出し、凍える心臓はその動きを止めようとしている。

 

 ここ数日に出会った顔が思い出される。なにかと世話を焼いてくれたフォーサイトの面々。いろいろ情報をくれた串焼き屋のおやじ。

 

 そして

 

「(エミリアたん。必ず帰るから……)」

 

 その時、ナツキ・スバルはナザリック地下大墳墓 第二層 ブラックカプセルの一角で、恐怖公の眷属である大量のゴキブリに貪り食われ息絶えた。

 

 

 

第一話

 

 ナツキ・スバルは、エミリアに贈るプレゼントを見繕うため、久々の休日を利用して露店街を見て回っていた。

 

 見慣れた街並み、見慣れた露店。もちろん顔なじみの店もある。しかし、この場ではコンビニのようにいつも同じ商品が手に入ることはない。同じ商品でも日々値段が移り変わり、日によって売られる商品さえかわってしまう様子は、彼にとって新鮮なものであった。

 

 そんな露店を回りながら、ふと街を見渡すといろいろな事が思い出される。

 

 異世界転移してエミリアに出会い、いろいろな事があった。楽しい事。辛い事。体がきしむような後悔にさらされた事。心臓をつかみ出されるような恐怖に直面した事。体の穴という穴から熱を持った血液が流れ出した事。

 

 あれ? なんかツライ事多くね?

 

 そんな風に考えるも、結局一周回って守りたい笑顔と縁のために思考を切り替えてしまうのは、よく言えばポジティブ。悪く言えば楽観的というナツキ・スバルがナツキ・スバルたる所以でもあった。

 

 しかし今回は良い縁はなかったのだろう。プレゼントに足りるアクセサリーのようなでもないかと、民芸品や小物をあつかってそうな露店を見て回るが、なかなかピンとくるものはなかった。悪くはないが無駄に高かったり、結構いい線を言ったデザインだが、どうも付いている小さなクズ宝石の色がいまいちだったり。

 

 小一時間露店を回ってみたが、結局決定打に値するものはなかった。

 

「ま。こんなこともあるか」

 

 誕生日とか期限が決まったものではないのだ。今日たまたま予定が空いていて、エミリアの笑顔が見れたから、何かプレゼントをしたくなった。そんなレベルのものだったのだから無理に急ぐ必要はない。そんな風に考えながら、川のほとりの芝の上に転がる。そして顔見知りの店で買ったリンガを一つ取り出しシャクリとかぶりつく。

 

 だがその瞬間

 

 ほんの一瞬だが、なにかに視界が覆われたような気がする。

 

 気のせいかと思い、袖で目をこすり辺りを見渡す。先ほどと同じように街中を流れる川のほとり。芝の上であることはかわらなかった。

 

――妙な違和感

 

 見た目は中世の街並みのようなつくり。中途半端に魔法が普及したせいか生活は近代程ではないがなかなか便利にそろった生活感。人間だけではない、獣人や亜人が平然と闊歩する街。

 

 だが先ほどまで歩き回っていた街並みとは違うことに気が付くと、ナツキ・スバルは右手で胸を抑えるようにうずくまる。それは何度も経験した感覚。すべてのものを置き去りにして、自分だけが一人見知らぬ世界に放り出された感覚。正確には自分ひとり逆行(・・・・・・)した感覚だ。

 

 もっとも、いつもなら込み上げてくる吐き気が襲ってこない。それでも儀式のようにゆっくりと深呼吸をして、目もくらむような錯覚と違和感を強引に腹の底に収める。

 

 そして立ち上がり、もう一度ゆっくりと回りを見渡す。中世のような街並みで、すくなくとも現代ではない。とはいえ建物の作りはそういうカテゴリに収まるが、先ほどまでいた街じゃない。周りを見れば、人間ばかりで亜人や獣人の姿はない。冒険者なのだろうか、漆黒の全身鎧を身に着けた戦士と美女が歩いている。また兵士らしい鎧を着た人間が街角に立っているが、顔見知りの騎士連中のような装備ではない。なにより、さきほどリンガを買った顔見知りの露店が影も形もない。

 

「どういうことだよ」

 

 スバルの口から自問の言葉が漏れるが、答えるものはいない。周りの人間はせわしなく働いている。活気のあるまちなのだろう。一人街角で呆けている男がいてもわざわざかかわるほど暇ではない。なにより着ている服がジャージである。そのデザインはこの辺りで見たこともないものであったため、周りからは旅人が初めて帝都(・・)を訪れて驚いているぐらいにしか見られていなかった。

 

 とはいえ、いままでにないパターンに混乱するが、しばらくすると情報を求めて川のほとりから見晴らしのよさそうな橋の上に移動したのだった。

 

「やっぱ王都じゃないのか」

 

 見渡せば、巨大な街の一角であることがわかる。遠くに巨大な城が見えるが、スバルが知っている城ではなかった。そしてエミリアと上った思い出の高台も見当たらない。その二つは王都であればたいていの場所から見えたのだから、ここが違う街であることが予想ついた。

 

 原因がわからないが……

 

 だけど一つだけ似た経験を思い出すことができた。

 

 それは初めて王都に訪れた日

 

 異世界転移した日

 

 エミリアと出会った日

 

「なにか巻き込まれたのか、それとも夢の中なのか? 目が覚めたらエミリアたんの笑顔が隣にあるなんてことは無いんだろうけど」

 

 彼は大きなため息をつきながら、都合の良い妄想を頭から追い出す。いつものごとく厄介ごとに巻き込まれた。そんな確信が胸の奥にあるのだから、現状確認でしかなく、それに続く言葉は軽口であり自身を誤魔化す戯言にすぎない。

 

「周りを見る余裕があるってだけで、あの頃と違うんだろうな」

 

 成長と呼んで良いのか、本人でさえわからない。たとえ成長であったとしてもうれしくもないと考えながら、スバルは食べ終わったリンガの芯の部分を川に放り投げる。それは思いのほか大きな波紋を広げながら川底に沈んでいくのだった。

 

******

 

 通貨は予想通り違った。いまだに記念として持っている日本円の硬貨ももちろんつかえなかった。

 

 一応貴金属としての価値があったため金貨や銀貨を両替することができた。多少はぼったくがれたのだろうが、ナツキ・スバルが必死に頭を下げたおかげでかなり(・・・)ではなく多少(・・)で済んだと考えることにした。とはいえ、周りの話を聞く限りではそれほど余裕がある金額ではない。

 

 前回は、一日と立たずにエミリアと出会い、その経緯もあってなんとか生きる術を手にいれることができた。過程に惨殺死体になったりもしたが、結果的に生活のとっかかりを手にいれることができた。

 

 それがどれだけ幸運だったかを理解できないほど馬鹿ではない。そんな出会いはそうそう期待できないならば、できるだけ早く日雇いでもなんでも、仕事なりを見つけなくてはならない。

 

「いや~旅でここまでこれたんだが、路銀が尽きそうなんで仕事を探したいんだけど、いいところ知ってます? あ、あとそのまま食えそうなの一つ」

 

 そのあたりの情報を、謎肉の串焼き一本で屋台のおやじからいろいろ聞きだすことができた。

 

 まず腕に覚えがあるなら冒険者。しかし帝国は冒険者ギルド自体が有名無実化しておりワーカーと呼ばれる直接契約をする連中が主流になっているそうだ。それ以外のまっとうな仕事となると、コネが必要とのこと。赤の他人に店番任すようなアホはいねえよな、なんて屋台のおやじは笑ってたが、コネどころかこの辺りの一般常識さえ無いナツキ・スバルにとっては他人事ではなかった。

 

 ただ、暇潰し程度に串焼き一本でいろいろ親切に教えてくれたおやじは最後にちょっとだけ真面目な顔になった。

 

「まあ、あんちゃんは人が良さそうな顔してるから無いと思うが、悪いことはしないこったな。見ての通り兵士が巡回してる。悪いことをすればすぐに飛んでくるぜ。なにより今の皇帝は鮮血帝っていわれてるんだ。悪事を働いたら貴族だろうななんだろうがバッサリよ」

「へ~。じゃあ真面目に生きるなら、生きやすいの?」

「人様のものに手を付けなければ、それなりにいい国じゃねえのか? 少なくとも王国よりかは生きやすいって商人連中は言ってたな。お? もう一本食うか?」

 

 屋台のおやじは、目ざとく食べ終わったことに気が付き声をかける。何の肉かは変わらないが、若干固いことに目をつぶれば濃い目のタレのおかげで、おいしく食べることができた。そして何か聞くならもう一本買えを言外でいっているのがわかる。

 

「さっきも言った通り仕事を探さなきゃならないんだ。仕事にありつけたら、また買いにくるよ」

「そうかい。じゃあ、あそこにある店にいきな。安酒の店だが宿もやってる。さっき言ったワーカーの仕事を仲介しているから、仕事は見つかりやすいだろうよ」

「お、ありがとう。助かるよ」

「礼を言えるのは、いい親にしつけられた証拠だ。がんばりなあんちゃん」

 

 スバルは屋台のおやじの進めを信じて安宿に向かう。中に入れば、昼間だというのに飲んだくれてる連中もいる。とてもではないが全うな仕事をしている連中では無いことは見て取れた。そして壁際にはいろいろ書かれた羊皮紙のようなものが張られている。しかし数字や文字は似ているが内容はいまいち理解できなかった。エミリア達の世界と数字や文字は近いのだろうが、単語を知らないため読めないという感じだ。もちろん日本語でもない。

 

 とりあえず、カウンターの開いている席に座り店員に声をかける。

 

「兄さん。一杯安いのでいいのでもらえる? あと一泊したいんだけど」

「個室は開いてないが大部屋なら空きはある。銅貨6枚だ。高いと思うだろうが、朝飯を最低限つけてやる」

「いや~旅してて……」

 

 ナツキ・スバルは先ほどと同じような理由を語り、値切ろうとするが結局出された安酒(さらに水割り)が一杯タダになっただけで金額はかわらなかった。相手を不快にさせないように、道化を演じて軽口をたたきながら値切ったのがよかったのか、ひと段落すると隣に座っている冒険者風の装いをした四人組に声をかけられた。

 

「いや~あの親父から一杯もぎ取っただけでも、やるもんだな坊主」

「ほんと。ここってぼったくらないけど、値切りもしないから一杯サービスさせただけでもたいしたもんだよ」

「いや~、路銀が少ないって必死だっただけですよ」

 

 スバルは安酒が入ったコップ片手に話しかけてきた冒険者達に顔を向ける。装備からみれば軽戦士に神官っぽい恰好の男が二人。あと弓をもった軽装の女性と杖をもったもし魔法があるなら魔法使いだろう女性。たぶんワーカーといわれる人たちなのだろうと当たりをつける。

 

「皆さんの出で立ち、もしかしてワーカーですか?」

「よくわかったな。外から来たなら冒険者と間違える連中のほうが多いのに」

「ほら、この店を出て斜め前の串焼きのおやじから教えてもらったんですよ」

「あそこのうまいよな」

 

 スバルは相手の表情を見ながら話を進める。相手はワーカーという言葉に嫌悪感などは無いようだ。まあ、聞く限り冒険者の仕事っぽいが、腕にそれなりの自信があり自負もあるようだ。あとラインハルトのようなトチ狂った強さを持った存在ではなさそうだが……。あれも、結局戦うまで強さを感じることはできなかったからいっしょかと、思考を切り替える。

 

 さっきまでのカバーストーリーを織り交ぜて様子をみる。ここではない遠い場所から迷い込み、この世界の作法を知らないのは事実なのだから、あながち嘘ではない。

 

 どうやらワーカーの面々、フォーサイトというチーム名の面々はなかなかの聞き上手だった。手元の飲み物がなくなるまでの小一時間話した結果、ナツキ・スバルを田舎から夢を見て上京してきた少年と認識されたようだ。

 

「なんらかのコネができるまでワーカーとして仕事をするってのは悪くない。真面目に働いて、贅沢をしなければ生きていけるぐらいの仕事はあふれてるからな」

「へ~。帝国って景気いいんですか?」

 

 何気ないスバルの言葉に、フォーサイトの四人中三人が一瞬視線を泳がせる。そして魔法使いという女性だけがすまし顔をしている。景気というキーワードで魔法使いの女性に何かあるのだろう。反感を買ってまで聞きたい内容でもないので、話題を変えようとするとその女性が口を開く。

 

「別にみんなが気にする事じゃないのに。ああ、私の実家は元々そこそこの貴族だったんだけど、いまの皇帝の改革に異を唱えた立場っていえばわかるかしら?」

「あ……その、ごめんなさい」

「別にあなたが謝ることじゃないわ。もう実家には愛想も尽きてるし。それに実家的にはアレでも、治世としては真っ当だから帝国全体の景気がいいわ。だから私もそれなりにやっていける」

 

 貴族の女性に対し、スバルは素直に謝る。しかし頭の中では、別のことも考えていた。

 

 今の皇帝は相当優秀なのだろうということを。見る限りテレビやラジオのようなものはないにも拘わらず、串焼き屋のおやじもだが国民にまで皇帝の働きというか成果が知られているのだ。プロパガンダ的なものであろうとも、やはりその辺を意識して対応できる頭脳と実行力があるのだから、この国は安定し、景気が良いのだろう。

 

 もっとも目の前の女性のように、家族が被害を受けた側にはなんとも言えない相手なのかもしれない。

 

 そのあと話題を変えて、フォーサイトと様々な話をした。 

 

 単純な噂話から、ワーカーのだれもがひっかかる失敗談、ワーカーの仕事そのものなど。スバルもエミリアとの出来事などそれなりにオブラートに包んで話題にした。途中からスバルのエミリアへの想いに感付いた女性陣から、質問攻めにされることもあったが、比較的有意義な時間だったのだろう。

 

 そんな時、馬車が店の外に止まる音と共に、一人の男が店に入ってきた。背丈はそれほど高くはないが、上質な服からどこかの貴族に仕える者と酒場にいる面々は当たりを付けた。

 

 その男は奥にいる店主に声をかけると、何かを話すと奥の個室に入っていく。そして店主は飲み食いしている連中に声をかけ始める。

 

「なあ、店主は何をはじめたんだ?」

「ああ、貴族の依頼が入ったんだろう。条件に合いそうなワーカーを見つくろってああやって声をかけてるんだ」

「へ~。あそこに依頼状をだして終わりってぐらいだとおもった」

「まあ、あそこに出てる依頼は基本誰でも受けれるやつだ。その分金額も低く設定されている。でも、店主が回ってるやつは、店主への謝礼なんかも含めて高額なやつだ。それなりにリスクもあるが」

 

 フォーサイトの面々が答えると、店主もこのテーブルにやってくる。

 

「あんたら、山が終わったところだったよな」

「ああ。久々の休みを堪能中だ」

「じゃあ、一山いかないか」

「さっきの、そんなにいい話なのか?」

「少なくとも提示された額も良い。二日前にも一度来てるんだが、そのあと調べたかぎり悪くない。少なくとも提示された金額を出せるぐらいの資産もあるようだ」

「内容は直接か?」

「ああ、そうだ」

 

 店主とフォーサイトのやり取りを見ながら、冒険者とはこんな感じなのか? とナツキ・スバルは考えていた。思い返せば、異世界転移をした初日、冒険者というものにも憧れていたと思う。だがそれも遠い昔のような気がするが、実際はそれほど経っていないというのが、いろいろおかしいスバルの縁であり境遇であったりする。

 

「店主。この話、彼を誘える?」

 

 スバルの気を利かせた沈黙を、フォーサイトの面々がどう受け取ったのかわからない。しかしツインテールの女性がスバルを指さしながら店主に声をかける。

 

 店主は軽く値踏みするようにスバルの姿を改めてみる。

 

「この辺りは初めてっていってたが、なにができる?」

「炊事はこっちの味がわからないから何ともいえないけど、洗濯に繕い物。あと大規模から小規模の旅は経験してるかな。腕っぷしはお察しってことで」

 

 スバルは、館での生活や白鯨討伐などのことを思い出しながらできそうなことをアピールする。カバーストーリーで旅をしてきたとしているのだからおかしいことではない。なにより、せっかく声をかけてくれたフォーサイトの面々に泥を塗らないように言葉を選びながら答える。

 

「最終的に代理人のお眼鏡にかなうかだが、あんたらが連れていくならいいんじゃないか? 報酬については相談して決めろ」

 

 それに対して店主は言外に、フォーサイトが最低限面倒見るなら良いと言ってきたのだ。その言葉にフォーサイトの面々は視線で会話する。最後にリーダーらしき男性が頷くと、ナツキ・スバルに向き直る。

 

「とりあえず、仕事の内容を聞いてみようとおもうがどうだ?」

「え? いいんですか?」

「内容次第では下りるし、それこそ働き次第で報酬には差をつけることになるかもしれない。ただ何もないよりかはマシだろ」

 

 フォーサイトのメンバーはそのあと警告染みたことをいろいろ言う。しかしスバルは、見も知らぬ自分に世話を焼いてくれるフォーサイトのメンバーの人の良さに感謝しつつ、右も左もわからぬ状況で唯一とれる選択肢と確信して立ち上がり、頭を下げながらしっかりした声を出す。

 

「よろしくお願いします。ご一緒させてください」

 

 その姿に、フォーサイトの面々も微笑む。

 

「よろしくするのは、依頼を聞いてからだよ」

 

 そういうと、奥の個室に待つ依頼人に話を聞きに行くため全員が立ち上がるのだった。

 

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