タイムスリップパンツァー・時をかける戦車少女たち 作:疾風海軍陸戦隊
「・・・・・・・この先の未来で大洗は廃校を免れるの?」
角谷さんの質問に6人の顔は強張る。わかってはいたがやはりこういう質問をしてきた。確かに目の前に未来から来た人がいたらまず訊くのは自分のその後はどうなっているかということ。角谷さんの場合、廃校の危機に瀕している大洗女子学園が20年後まだ存在しているかどうか、それを知りたいはずだ。
「・・・・で?どうなの?」
角谷さんはまじまじとした表情で見て、柚子さんは心配そうな表情。そして桃さんはまだ疑った表情をしていた。するとアーニャが
「何でそんなこと訊くの?」
「何でって決まってるじゃん。未来に大洗女子学園があるってことは廃校の危機を回避できた。だから未来から来た君たちにはどうやって私たちが廃校の危機を免れたのか訊こうと思ってさ・・・・で、どうなの?」
干し芋を頬張って言う。その言葉を聞いて私は決断する。
「残念ですが角谷会長。その質問には答えられません」
私はそう言うと
「あれ?なんでかな?」
「当たり前です。未来を知るというのはかなりのリスクを背負うことになります。仮に私たちが大洗女子学園が大会に優勝し廃校を免れたなんてよけいなことを言ったら、どこか気が抜けて負けてしまう可能性があります。逆に学園が廃校になったと知れば、大会に出場する意味が無くなってしまいます。それでもあなたは知りたいのですか?角谷生徒会長?」
私の言葉に角谷さんはじっと私の目を見る。そしてしばらく私の目を見た後、角谷さんは
「そっか・・・・・それもそうだね」
「え?会長、いいんですか?」
小山さんがそう訊くと角谷さんは頷き
「うん。確かに彼女たちの言うことも一理ある。未来を知ることはずるをするということになるし、先知っちゃったら却ってつまんないしね」
「しかし、会長!まだこいつらが未来から来た証拠はないんですよ!口から出まかせを言っている可能性だって!」
「河嶋~、落ち着きなって・・・・・まあ確かに河嶋の言うことも一理あるけど。ねえ君たち。君たちが未来から来た証拠はあるの?」
「それは・・・・・・」
角谷さんの言葉に皆は黙る。未来から来た証拠。スマホはこの時代でもある。エーデルワイスも第二次大戦の代物だから意味がない。かといって空飛ぶ車・・・・そんなの映画の中での話。確実な証拠は学生証だけど下手に見せることはできない。特に私の名は・・・・今現在、正直言って今ある証拠は無いに等しい・・・・・・あ、
「あります!一つだけあります。あの私のポケットに財布があると思うんですが、とってもいいですか?」
「ん?いいよ。何か証拠でもあるの?」
「は、はい・・・・あ、これです」
そう言って私が財布から出したのは100円玉と千円札だった。それを受け取った三人は
「これがどうかしたのか?そんなもの私たちの時代でも……てあれ?この千円札、野口英世じゃない・・・北里柴三郎?」
「それだけじゃありません。年号を見てください」
「年号?・・・・・・あれ?平成じゃない令和になっている?」
「これは偽物じゃありません。私たちの時代のお金です。現在私たちの時代では平成の時代が数年前に終わって令和になっているんです」
「これが証拠だと?」
「はい。これが証拠です」
真剣な表情で言う。そしてその表情を見た角谷さんは
「ふ~ん・・・・・・平成の次は令和になるんだね~。もっとかっこいい年号かと思っていたけど。まあいいよ、信じてあげる」
「え!?会長本気ですか?」
「うん。ずっとこの子たちに目を見てたんだけどね。嘘言っている目じゃなかったよ」
「なぜ、そんなことがわかるのですか、会長?」
「まあ、河嶋。そこは私の直感というやつだよ。君たちが未来から来たというのはわかったよ。それじゃあさっきの話に戻るけど、答えられないなら質問を変えるよ。君たちの時代・・・20年後には大洗女子はまだあるんだね?どんな結果になってもいい。あるか、ないか、それだけ知りたいんだよ」
そう言う杏さん。いつも
「大洗女子は・・・・・・20年後もあります。しかし現時点私たちの時代ではということです」
「どういうこと?」
「小山さん。はっきり言えば私たちは本来、この時代にはいない人間です。私たちはこの時代の歴史にできるだけ干渉したくないんです。下手をすれば違う未来となって私たちの存在が危険になる可能性があります」
「タイムパラドックスというやつですね」
「どういうことだ柚子?」
「時間を遡って自分の父親を殺せば自分が生まれる理由がなくなってしまう。だから自分も一緒に消えてしまうか、そもそも父親を殺せないという理論よ桃ちゃん」
「桃ちゃん言うな!」
「なるほどね・・・・・・で、君たちはこれからどうするの?」
「私たちは、元の時代へ帰るための方法を探すつもりです」
「そっか。でもたった6人で見つかるの?」
「そうよ。それにその探す間、どうやって生活するの?アルバイトとかするにも住民票とかが必要なんだよ?」
「そうだ。お前たちの時代ではどうだか知らないが、この時代ではいろいろと大変なんだぞ?」
「そ、それは・・・・・・戦車で稼ぐつもりです」
ハルカがそう言うと三人はきょとんとした表情をする。
「戦車で稼ぐ?どういうこと?」
「え?ですから賞金付きの戦車道の試合に出て買って賞金をゲットしようかと・・・・・」
ジャスミンがそう言うと三人は顔を見合わせ
「賞金付きの戦車道の試合?河嶋、小山?知っている?」
「いいえ、知りませんが・・・・」
「私もです。ですがもしかしたら明日に来る教官なら何か知っているかもしれません」
「なるほど・・・・・まあ、詳しい話は明日にしようか。君たちはあの倉庫に住むつもりなんだよね?」
「そうだけど。追いだしたりする?」
「別に~、誰も使っていないんならいいんじゃない?でも、妙なことはしないでね。もししたら・・・・・わかっているよね?」
怖いくらいの笑みにみんなはこう思った。
『この人、敵に回したら面倒なことになる』
そして私たちはハイの二文字で頷き、解放される。
「じゃあ、また明日呼ぶから。来てね・・・・・・え・・・と。そう言えばまだ君たちの名前を聞いていなかったよね?名前なんていうの?」
角谷さんはまだ私たちの名前を聞いていなかったため私たちの名前を聞く。
「私の名前はハルカ」
「同じく、ジャスミン」
「リリーよ」
「同じくナポリ!」
「アーニャよ」
と私以外の皆は名を名乗る。
「・・・・で、君は何て名前なの?」
そう言う杏さん。私はこの時名乗るのを躊躇した。ニックネームで名乗ったみんなとは違い。私の場合は名字を名乗るわけにはいかない。西住と名乗れば間違いなくお母さんの子だとばれてしまう。どうすればいいか考えた時。一つの名が思い浮かぶ。
「私の名は・・・・・・名前は・・・・・伊庭りほです」
「そっか、伊庭ちゃんか。いい名前だね」
「あ、ありがとうございます・・・・・角谷さん・・・じゃあ私たちはこれで」
そう言い、私たちは生徒会室を出るのであった。そして残された三人は
「まさかあの謎の6人組が未来から来たなんて・・・・・いまだに信じられないな」
「私もだよ桃ちゃん・・・・・でも、お金と言い言動と言い信じるしかないかもしれない・・・・会長。どうしましょうかあの子たち?」
「そうだね~。これからのことは明日来る教官と一緒に考えよう」
「ですが会長。あの6人はこれから先の未来のことを知っています。ここは強引にでも彼女からどうやったら上手く勝ち進めるか聞きだすべきです」
「ああ、まあ河嶋。そんなに焦らない。下手に訊きだしてそれを実行したら彼女たちの帰る場所が無くなっちゃうんだからさ~」
「それはそうですが・・・・・」
「それに彼女たちは歴史を変えたくないって言ってたよね?」
「は、はい・・・・・まさか会長」
「うん。歴史を変えたくなければ、そうならないように彼女たちに協力してもらえばいいんだよ」
と、杏は干し芋を一口頬張り。そう言うのであった。そして杏は先ほどの6人ことを思い浮かべ
「(未来から来た6人か・・・・・未来がどうなっているか知らないけど。君たちはこの大洗女子学園の危機に一緒に立ち向かって……………くれるかな?)」
少し寂しそうな表情をするのであった。
おまけ
一方、りほたちは
「なんか面倒なことになったな~」
「そうですわね。覚悟はしていたのですが・・・・・・」
「で、どうするりほ?」
アーニャの言葉に皆はりほの顔を見る。するとナポリが
「まあ、急に決断しないでゆっくり考えればいいさ。りほ、急に決断する必要はないんだ。ここはみんなで話し合おう」
「そうだね・・・・・・」
「それにしてもりほ。あなたさっき伊庭って名乗っていたけど。あれってあの映画の人物からとったの?」
「ううん・・・・実は伊庭っていう苗字、お父さんからとったの」
「え!?お父さん伊庭っていうの!?」
「う、うん。驚いた?」
「え、ええ。まさかこんな偶然があるなんてね」
「ちなみにジャスミン。あなたの本名て・・・・・何?」
「なんですかいきなり?と、言うより・・・・・言わなきゃダメですか?」
「いや、何となく気になって・・・・・・」
「わたくしの苗字は斎藤ですが?」
「「「「えっ!?田尻さんじゃなかったの!!?」」」」」
「はぁ‥‥やはり皆さんその反応ですか・・・・・・予想はしておりましたが」
とガックシ項垂れるジャスミンであった・・・・・