タイムスリップパンツァー・時をかける戦車少女たち 作:疾風海軍陸戦隊
大洗女子学園の森の小屋
「ふわぁ~」
まだ日も昇らない朝、りほは目を覚ます。私たちチームエーデルワイスチームの朝は早い。食事当番なんかは特にだ。りほが洗面所に行くと
「ああ、おはようりほ」
「おはようジャスミン」
今日の朝食の当番は、りほとジャスミンであった。二人は顔を洗い歯を磨きそして髪を整えた後、エプロンをつけてキッチンへと入る。そしてりほが野菜を切り、ジャスミンは鍋に入った熱湯に煮干しなどを入れてだしを取る。今日の朝食は和食であった。
「へ~ジャスミンってお料理できたんだ」
「はい。母の友達に花嫁修業だといわれ習っていたんです。まあ、実を言うと母は料理があまり得意じゃなくて、その母の代わりに料理を始めたのがきっかけなんですけど・・・・」
「そんなにひどいの、ジャスミンのお母さん?」
「ええ、卵を割るのに床にたたきつけたり、キャベツをそのまんま、鍋に入れたり。特にウナギのにこごりぜりーを見た時、こういっては母やイギリスの人に失礼かもしれませんけど・・・あれはウナギや料理に対して失礼だと思いましたわ・・・・」
顔を引きつらせ苦笑いするジャスミン。そしてりほも
「うちも似たようなもん。お母さんは料理は上手いけど、まほ伯母さんのほうは・・・・・」
「まほ伯母さんっというとあの西住まほさん?あの戦車道日本代表の隊長の?」
「うん。伯母さん。私生活で料理が壊滅的で、特に健康にいいとくれば分量や味を考えずに入れてくれて、すぐに仕事とか迅速に戦車道できるように軽く希塩酸で溶かしたものをふるまってくれたのよ・・・・・アハハ・・・・その時の食事はまさに地獄だったわ。よく保健所が来なかったなっと思ったわよ」
「うわぁ‥…なんだかガスマスクつけて調理する姿が想像できますわね・・・・・」
と、苦笑いしあう二人。すると・・・・
「まほさんの料理なら私も知っているわよ」
「「っ!?ハルカ!!」」
いつの間にかハルカが後ろにいた。
「やあ、二人ともおはよう。何だかいい匂いがしたから起きちゃったよ。今日の朝は和食?」
「あ、はい。今日は野菜の味噌汁と豆腐と、それと昨日水産科の人から分けてもらった鯖を焼いています・・・・・・・で、ハルカ。あなた、まほさんのお料理を知っているって・・・」
「ああ、それね。私の母校、黒森峰で、お母さんとりほの伯母さん、そうまほさんの母校でもあるじゃない?だからお母さんとまほさんがOGで特別コーチとしてきてね。練習後まほさんが料理をふるまうことになったのよ・・・・で、まず先に出された料理が紫色の謎のスープでね・・・・・・・私たちが飲もうとしたときお母さんが『あなたたち早まらないで!私から先にいただく』とか言って先にそのスープ飲んだの。そしたら・・・・」
「「そしたら?」」
二人がそう訊くとハルカの顔色が少し青くなり震えだすと
「お母さん口から血を吐いてばったんと倒れたのよ」
「「ひ~!?」」
「それでね。みんな驚く中でまほさん『大げさだ。少しのど越しがいいだけだ』と凛とした表情で言って・・・・」
「いいや、のど越しっていう言葉は吐血するときには使いませんわ・・・・」
「まほ伯母さん・・・・自覚がないだけたちが悪いね・・・・ハルカごめんなさい、私の伯母が大変迷惑をかけて・・・・」
「いいえ、いいのよ、りほ。誰も怒ってはいないし・・・・・母さんも『そんなんでも隊長は素敵』だとか言っていたから・・・・」
「「あははは・・・・・」」
ハルカの言葉に二人は苦笑するのであった。そしてその後は三人一緒に朝ご飯の支度をし、残り三人も起きて、朝ご飯の手伝いをする。そして6人は机を囲んで朝食を食べていた。
「ねえ。今日はどうする?」
「そうね・・・・今日は練習もお休みだし、久しぶりにどこか行かない?なんか秘密基地みたいで冒険できそうなところ。それでおしゃれなバーとかあるところとか?」
「それは面白そうね。りほそう言うところ大洗にある?」
アーニャとリリーがそう訊くとりほは
「う~ん・・・・・・・あ、!一つだけあるわ。でも場所は船底なのよ」
「へ~面白そう。じゃあ、そこに行ってみよう・・・・・・・て、ナポリ。なにニンジンをどかしながら食べているのよ?」
「人参が嫌いなんですの?」
ジャスミンがそう訊くとナポリは箸を置き窓のところへ行くと遠目で
「実は・・・・私は小さいころニンジンで命を落としかけたことがあったんだ」
『え?ニンジンで?』
皆が驚きながら食事をとる中、ナポリは
「うん・・・・あれは私が小学生の時の夏だった・・・・給食の時間。苦手なニンジンを先生に無理やり食べされられてあまりの味のまずさにのどが通らなくて呼吸困難になった。そして苦しさに私は病院に搬送され大手術の末、何とか生還できた・・・・・」
「へえぇ~そんなことがあったの?」
ナポリの言葉にハルカは味噌汁を飲みながらそう言う。
「それ以来、私は一度もニンジンを口にしたことがなかった。お母さんやペパロニお姉さんたちが何とかして私の人参嫌いを治してくれようと、甘く味付けをしたり刻んだり工夫してくれたんだけど。食べると…またのどに引っかかって・・・・・・・うわあああ!!」
「もうナポリ。泣かないでよ」
「どんだけニンジンにトラウマ抱えているのよ」
泣き出すナポリにりほがなだめると、アーニャが風呂敷を広げてお菓子を包んでいた。
「アーニャ。何をしているの?」
「ん?昨日作ったお菓子、多く作っちゃったから自動車部の人におすそ分けしようと思ってね。ほら、エーデルワイス号の修理してくれたからそのお礼もかねて」
「意外と律儀なのね、アーニャ?」
「どういう意味、ジャスミン?」
「でもいいアイディアね、アーニャ。じゃあ、船底に行く前に戦車道格納庫に行こうか」
「「「賛成!」」」
と、そう言うと6人は食事を終え食器を洗って片づけた後、制服に着替えてお菓子を包んだ袋を持ち森の外のグラウンドにある戦車倉庫へと向かうのであった。
生徒会室
「おはよ~河島」
「おはようございます会長」
生徒会室に角谷と河島は朝早く登校していた。理由は生徒会での仕事があるからだ。
「あれ?小山は?」
「柚子でしたら、新聞部の今日の新聞を受け取りに行ってます」
「ああ~新聞部か。あそこのネタはいろいろと面白いからね~去年の夏の記事を除けば」
「たしか・・・・『会長は実はおっぱい星人だったっ!』っていう記事ですか?確かそれを見て会長、めちゃくちゃ激怒してましたよね?」
「まあね~まあ、昔のことだしね~さて・・・・今日はどんな記事かな?」
と、干し芋をほおばりながら杏がそう言うと
「か、会長!大変です!!!」
そこへ小山が慌てて部屋に入ってきた。
「どうしたんだ、柚子?」
あまりの慌てように桃が首をかしげると、
「こ、これを見てください!!」
と、杏の前に一枚の新聞を置く。それは大洗女子学園の新聞部が発行しているものであった。杏と桃がその新聞を見ると、見出しには
『本当にいたタイムトラベラー!!あの謎の6人組の正体は未来からやってきた少女たちだった!!』
とデカデカと書かれていたのであった。
「なんなんだ、この記事は!?てかなんで伊庭たちのことが新聞部にバレているんだ!?」
「小山~どういうこと?」
「わ、わかりません。新聞部に行ったら、なぜかこんな記事が・・・・」
小山がそう言うと新聞を見ている杏は
「ふ~ん・・・・・・・これはまずいことになったね・・・・編集長は・・・・あの烏か」
と、目を細めそう言う。因みに烏とは新聞部部長の射命丸文のあだ名であり去年の夏にでたらめな記事を書いて角谷を怒らせた張本人である。そして角谷の居間の表情はいつもみたいににこにこしてはいるが目は笑っていなかった。
「かわしま~」
「はい」
「すぐに烏ちゃんを呼んできて~大至急」
「は、はい!!」
怖い笑みをする角谷に河島は急いで、新聞部へと向かうのであった。そして角谷は
「さて・・・・・伊庭ちゃんたちにはどうやって謝ればいいんだろう」
と困ったようにため息をつくのであった。
いっぽう、格納庫では
「いや、ありがとね伊庭さん。アーニャさん」
「いえ、いえ。こちらこそエーデルワイス号を修理してもらっているんですからそのお礼ですよ」
「そうですか。それにしてもハルカさんとナポリさん。いい腕をしていますよね?自動車部に欲しいくらいだよ」
中嶋さんたち自動車部とりほたちは、アーニャの作ったお菓子を食べていた。
「それにしてもすごいですね。あれだけ損傷していた戦車を一晩で直すなんて」
「いや、確かに大変だったけどやりがいのある仕事だったよ」
りほの言葉に中嶋はニコッと笑ってそう言う。するとホシノが
「そう言えば、伊庭さんたちに聞きたいことがあるんだけど?」
「なんですか?」
「君たち未来から来たって・・・・・ほんと?」
「え?」
その言葉に6人は目を丸くする。誰も自分たちが未来から来たなんて言っていないのに何で?という顔をしていた。するとスズキが
「ああ、あの学園艦新聞でしょ?でもあの新聞、ネタは面白いけど、少しオーバーに書くし、嘘も書く時があるからね」
「確か、この前は『生徒会は悪の秘密結社か!』だったけ?たぶん今朝の記事もそんな感じに書いたんだよきっと」
ツチヤは笑ってそう言う。
『学園艦新聞?』
「うん。うちの学校の新聞部が書いている新聞なんだよ。はいこれ」
6人は首をかしげるとスズキが一枚の新聞を6人に渡す。そしてその新聞の内容を見た6人は
『『・・・・・・・・』』
チベットスナギツネみたいな表情をするのであった。
数分後、生徒会室では何やらドドドという足音が響き渡った。
「ん?小山が烏を連れてきたのか?」
桃がそう言うとドアがバタンと力強く開き
『角谷はどこに行ったあぁーーーーーー#!!!!』
ロケットランチャーを持ったりほたち6人組が眉間に青筋を立てて入ってきたのであった。