タイムスリップパンツァー・時をかける戦車少女たち 作:疾風海軍陸戦隊
「いたた・・・・・もう何なのよ、あれは・・・・」
「大丈夫、ハルカ?」
「思いっきり尻をぶつけちゃったわ。座布団じゃクッション代わりにもならないわよ。せめて段ボールを山積にしてほしいわ」
船底のとある場所で秘密の飲み屋に向かうりほたちは、なぜか尻をさすりながら歩いていた。
「りほ~どういうこと?エレベーターがあるんじゃなかったの?」
リリーがそう訊くと、りほもお尻をさすって、
「う、うん。確かにこの辺りにエレベータがあったはずだったんだけど。この時代にはまだなかったのかな・・・・いたたた」
「大丈夫ですか、りほさん?」
「う、うん。大丈夫。ありがとうジャスミン。それよりジャスミンは平気そうね。さっきもまるで猫みたいに可憐に着地していたし」
「そんな。たいしたことありませんわ。ただ戦車から放り出されたときの訓練で習ったことをやったまでですわ」
「いや、どんな訓練よ?」
「いや、戦車に乗っているんだし。戦闘のさなか衝撃で放り出されて怪我をするっていうのもあったし。受け身とかそう言うのもあるんじゃないか?」
「そういうものかな~?」
ぶつけたところをさすりながら、りほたちは進む。すると・・・・
♪~♪~♪
何処からか音楽が聞こえた。
「あれ?これって…音楽に…歌声?誰かが歌っているのかな?」
「なんかカリブの海賊みたいな雰囲気の音楽だね~。こっちかな?」
そう言い皆が音楽が聞こえるところに行くと、そこは小さく狭くそして薄暗い廊下であった。その突き当りにドアがあり、そこから音楽が流れていた。
「あ、ここだ」
「え?ここがBarドンゾコ?」
「うん。内装や飾り付けが変わっていたから気づかなかった」
「そ、じゃあ目的地に着いたということで飲みましょうか」
「居酒屋じゃ・・・・・まあBarだし似たようなものか・・・・でも私たちは未成年だから酒はNGだぞ?」
「そんなことわかっているわよ、ナポリ。ノンアルコールか炭酸ジュースにするから」
「あ、私コーラにしようかな~」
ナポリの言葉にハルカ、リリーがそう言い、先頭にいるりほは、
「じゃあ、入るよ」
そう言うと皆は頷き、りほたち6人は店に入る。そこにはまさに海賊たちが出入りするようなバーがあり、そこには店員の少女を除き数名の客らしき少女が座っていた。そして中央の開けた場所には・・・・
「♪~♪~♪~♪」
モデルのように華奢で長い銀髪の少女は奇麗な歌声で歌っていた。
「奇麗な歌だね……」
「うん。せっかくだからビデオカメラ持ってくればよかった」
「スマホでもできるでしょ?」
と、りほたちがその歌声に聞き惚れていると、店員らしき金髪でジト目をした少女が、
「あんたたち、店に入ったら何か注文しな」
「あ、すみません。え・・・・と。メニューとかあります?」
「そんなものないって」
りほが店員にそう訊くと、バーの席で飲んでいる赤毛のくせっけの少女がそう言う。
「あ、そうなんですか・・・・・・ここのおすすめは何ですか?」
りほがそう訊くと店員の少女はりほをじろじろ見て、そして、
「・・・・・・クリームソーダよ」
「じゃあ、それで」
「じゃあ、私はコーラで。あ、クリームソーダみたいにアイスをトッピングね」
「私はノンアルコールウォッカを。無ければリホーシャと同じクリームソーダ」
「ノンアルコールビール。無ければ同じくクリームソーダを」
「私は大人のぶどうジュースがあると良な~まあ、なければクリームソーダで」
「では、わたくしはノンアルコールラム酒をなければクリームソーダで、それと何かつまめるものをお願いできます?」
そう注文すると店員は、
「適当な席に座ってて。すぐに用意するから。それとここは居酒屋じゃないからつまみはないわよ。でも一応探してみるわ」
「ありがとうございます」
りほは店員に礼を言い、Barの席に座る。
「へ~ジャスミンは紅茶じゃないんだ?」
「ここはBarであって喫茶店じゃないですから」
「なるほど・・・・・それにしてもあの人の歌声、きれいだね~」
「そうですわね。わたくしも歌いたいですわ」
「今はあの人が歌っているからね。終わるまで黙って聞いておこうよ」
と、ハルカやジャスミンがそう話していると、
「はい。お待たせ。コーラとノンアルコールラム酒はあったけど、ノンアルコールのウォッカやビールとぶどうジュースはなかったからクリームソーダで我慢して。あとおつまみにどん底名物の燻製ソーセージにスモークサーモンがあったから食べてみて」
「ありがとうございます」
りほは礼を言い、そして6人がソーセージやスモークサーモンを食べると、
「「お!美味しい!」」
と感激の声を出す。するとそれを聞いた店員は無表情だがどことなく嬉しそうに笑っていた。すると彼女たちの隣にいた先ほどのラム酒の瓶を持った少女が、
「でしょ~桜のチップ使ってじっくり燻したんだよ」
「へ~そうなんですか」
「で、あんたら。この店に来た目的は何?」
「え?何って決まっているじゃないか。飲みに来たのよ」
「いや、そうじゃなくてさ・・・・・・あんたら見たところ陸から来たんだろ?どうやってここを知ったんだ?」
と、そこへさっきまで歌っていた銀髪の少女が訊く。
「あれ?あなたさっきまで歌ってなかった?」
「あいつが今歌っている」
「「あいつ?」」
銀髪歌姫が指をさし、りほたちはそこを見ると、
「色は~匂えど~いつか~散りぬるを~♪」
中央でジャスミンが歌っていた。歌は下手ではないが上手くもなかった。だが自然に耳を傾けられるような魅力のある歌声であった。
「でさ、さっきの質問なんだけど」
「え?ああ。この店のことは噂で聞いたの、船底にはいいお店があるって。だから私たちはその噂を頼りに来たってわけ」
「ふ~ん。噂ね・・・・そうなんだ。もの好きね~」
歌姫はそう言い、ジャスミンの歌を黙って聞いていた。そして赤髪くせっけの少女が、
「うほっ!噂ね~。私たまにしか上に出ないけど、そう言う噂が出ているんだね~」
とラム酒(ノンアルコール)を飲みながらそう言うと、店員さんが、
「それよりあんたたち、ここに来るまで絡まれなかった?ここいらの子たちは血の気が多いいから」
「ああ、大丈夫。二人つっかかって来た人いたけど、私がどついて倒したから」
「そう・・・・で、その二人は?というよりどんな奴?」
「頭にたんこぶ付けて気絶した。それとあいつら白鼠とか言っていたわ」
アーニャがそう言うと店員が納得したような表情をし、いつの間にか、さっきまでソファーで帽子を深くかぶってた大柄な少女が、
「あ~あいつらか・・・・まあ、あいつら、トカタやババと違って相手選ばずに噛みつく奴だったからな~」
「うほっ!そういや、あの二人、ムラカミに喧嘩を売ってボコボコにされたよね?」
「ああ、全然私の相手にならなかったけどな。それよりあんた。小学生が何でここにいるんだよ?」
「小学生じゃないわよ。こう見えて高校三年よ」
「嘘だろ?・・・・お前あれか、ホビットてやつか」
「誰がホビットよ!」
ムラカミの言葉にアーニャが激しく突っ込み、それを聞いたりほたちエーデルワイスメンバーとくせっけの少女と店員は笑いをこらえる。そして二人は何か言い争いをはじめ、
「勝負しようじゃないのよ!!」
「上等だ。なにでやる!こぶしか!!」
「違うわよ!女の力比べなら腕相撲で勝負よ!!」
「上等だ!」
そう言いアーニャとムラカミさんは腕相撲を始めた。その様子をりほたちは見ている。力比べをしていたムラカミはすぐに勝てるだろうと思ったが、いくらムラカミが力を入れてもアーニャの腕はびくともしなかった。
「なっ!こんな小さい体なのに!!なんて馬鹿力なんだよ。バケモンか!?」
「バケモンて失礼ね~。こう見えて私一昔前まではかーべーたんの装填手してたから力比べなら負けない・・・・わよ!」
「うわっ!?」
アーニャはそう言いムラカミの腕をあっさりと机へたたきつける。腕相撲の勝負はアーニャの勝ちであった。
「うほっ!おお~すごい。ムラカミに勝つなんてね~」
「さすが副長殿・・・・・いやレミリア・スカーレット様」
「ナイス勝利、おぜう様」
「二人ともまだ、そんなネタやっていたのかよ・・・・」
リリーとハルカの言葉にナポリは呆れ顔でクリームソーダを飲む。そして、
「うほっ?そう言えばフリントは?」
「あっちであなたのお友達と一緒に歌っているよ」
「「え?」」
店員の言葉にりほとくせっ毛少女は振り向くと、
「「踏み出した空に~走っていく光~♪」」
と、なぜか仲良く歌っていた。そしてアーニャとムラカミは・・・・
「よ~し!こうなったらもう一回だ!」
「フフッ!返り討ちよ!!」
なぜか腕相撲の二回戦を始めていた。そして時は過ぎた。
「あ、もうこんな時間だ・・・・・そろそろ帰らないと」
「ああ、本当だ。あのお勘定をお願いします」
ナポリが店員にそう言うと店員は頷き、金額を言う。そしてりほたちは財布を出して注文した品の料金を払うのだった。そして帰り際に、
「なあ、あんた。いい歌声だったよ~。また来たときはもう一度、歌おう」
「ええ、わたくしも楽しみにしています」
「おい、あんた今度は私が勝つからな。10連敗の借り、返させてもらうからな!!」
「ええ、その時はまた返り討ちにしてやるわ」
となぜか仲良くなっているジャスミンと歌姫ことフリント、アーニャとムラカミ。そして店を出た後、りほたちは、
「いや~いい店だったな。ソーダやサーモンも美味しかったし」
「そうですわね。また来たいですね」
「うん!そうだな!!」
みんなご機嫌にそう言う。そんな中りほは、
「(あれ?そう言えばあの店の人たちどこかで見覚えが、それにあの店の中にも何かあったような・・・・・・・・・・・ま、いいか)」
と、何か思い出しそうだったが、気のせいだと思い、考えるのをやめたのだった。
「でさ・・・・・」
「どうしたのナポリ?」
「ここから、どうやって上に行こう?エレベーターないんだろ?」
「それは階段で・・・・・・・」
そう言い、皆は階段のある場所へ着き階段を見るが・・・・
「あの階段を・・・・・上るの?」
その階段を見上げると地上までははるか遠くであった。
「これは……家に着くまでが大変だね」
りほの言葉に皆は頷くのであった。
バーどん底では、
「いや~あいつらにぎやかで楽しい奴だったな~」
「うほっ!」
「そうね~特にあのジャスミンていう子、また来たら一緒に歌いたいわ~」
と、そう話している中、バーの隅っこにいた海賊風の少女がいた。
「・・・・・・・・」
「どうしたんですか?そう言えば先ほどから彼女たちの話に入らなかったようですが?」
店員ことカトラスがそう訊くと、彼女は寂しそうにお気に入りのハバネロクラブを一口飲み、
「・・・・・・タイミングを逃した・・・・」
そう寂しそうに言うのであった。