タイムスリップパンツァー・時をかける戦車少女たち 作:疾風海軍陸戦隊
船底に遊びに行った翌日の朝、私たちは正直、大洗のみんながいる倉庫へ行きづらかった。
「なんでしょうね・・・・・いつも朝はさわやかに行くところですが・・・・・」
「ああ、正直言って・・・・・」
「「「空気が重い・・・・・」」
ジャスミンとナポリが呟き、そして全員思ったことを言う。昨日は楽しかった。いや、本当に。さすがに帰る時の階段は大変であったが、その後倉庫に戻った時にはみんなでサンダース風のパーティをやったな・・・・
だが、そんな楽しい時間も終わり翌日になれば、辛い現実を目にしなければならない。ああ、きっと出勤前の連休の最終休日を過ごす社会人たちもこんな思いなのかと思う。
なぜ、私たちがこんな状態かというと、やはり前の学園艦新聞で私たちが未来人だという事が報道されてしまったことだ。これは非常にまずい。
たとえていうなれば、ウルトラマンの正体が記事に報道されてしまうのと同じだ。
そのため私たちは、他の戦車道の人たちに何を言われるか(まあ十中八九、未来について質問される)わからない。
「ねえ、アーニャ・・・・・」
「何りほ?といっても言いたいことはわかるわ。戦車道のみんなのことでしょ?」
「うん。きっと質問攻めされるわ。どうやって誤魔化そう」
「無理よ。私だったら、たくさん質問攻めにあったらすぐにゲロっちゃうわ」
「私も同じだ。私嘘つくのへたくそだからな~。すぐにぼろでちゃう」
「わたくしもですわ。それにあの新聞が出回っているから尚更ね・・・・・」
「わたしも変に嘘をついてぼろが出ちゃうより、言える範囲で質問とかに答えるまでの抑えないと・・・・」
私たちは重いため息をつき、戦車格納庫へと向かうのであったが、すぐにその重苦しい空気が一時的に消えることになる・・・・それは、
戦車格納庫前
「・・・・・・ナニコレ?」
昔やっていた珍百景をみた人のように私はそう言う。それはアーニャたちもそうなのか口を開けたまま驚いていた。
その理由は私たちの目の前にある戦車だった。Ⅳ号はそのままだったが、三突は何ともカラフルな塗装になり、のぼりが四本立てられ、八九式は『バレー部募集』と白い文字で大きく書かれて、M3リーはピンク色に。何より目立ったのは38tだった。全身金ぴかで輝いていたのだ。
「ねえりほ・・・・・」
「何?ハルカ?」
「今日、ディ〇ニーで戦車のエレクトリカルパレードの予定とかあったっけ?」
「いいえ。無いわ・・・・・」
「でもあんな派手な塗装の戦車初めて見ましたわ。一輌だけ百式ですし・・・・」
「まともなのは・・・・・Ⅳ号と八九式とM3ぐらいだね・・・・・・」
「アーニャ。Ⅳ号はともかくなんで八九式とM3はセーフなの?」
「八九式のように車体に文字を書くのは大戦中のロシア戦車だってあったし、それにM3はデザートピンクでしょ?」
「八九式のことはわかったけどM3のあれはただのピンクでしょ?目立ちすぎるわよ」
アーニャの言葉にハルカが突っ込むと、りほはフフッて笑っていた。
「なんだか楽しそうですわね、りほさん?」
「うん。なんか戦車をこんなにしちゃうなんて面白いなって思って」
「確かに最初は驚きましたけど、ああいうペイントもなかなか味があって面白そうですね」
「確かにある意味そうだな・・・・・・」
と、りほの言葉にジャスミン、ナポリがそう言う。りほがⅣ号の方を見ると、そこにはまだ若き母であるみほとその友人であるアンコウチームがいて、秋山さんは何かガックシうなだれているみたいだが、母であるみほは何やら楽しげな表情をしていた。
そして金ぴかピンの38tを見ていた杏は、
「いいね~河嶋。例の件すぐに先方に伝えてくれない?」
「はっ。連絡してまいります」
杏がそう言い、河嶋さんは角谷さんにそう言われその場を後にする。そしてM3リーの一年生たちが格納庫にやって来たりほたちを見ると・・・・・
「あ!未来人!!」
「あっ!本当だあの新聞の子達だ!!」
そう言った瞬間、その場にいた全員が、りほたちの方に集中した。その時の表情を見たりほたちは、
『マ、まずい・・・・』
少し焦った状態でそう思ったが、その予感は見事に的中し、みんな獲物に飛びかかる様に6人に群がる。
「ねえねえ!未来から来たって本当なんですか!!」
「どうやってこの時代に来たの!!」
「ドラえも〇っていますか!!」
「未来ではバレー部復活していますか!もしくはバレーの時代来ているんですか!?」
と、ものすごい勢いで質問攻めをする。予想はしていたが一斉に飛びかかれてはたまったもんじゃない。アーニャに至っては身長が低いせいでもみくちゃ状態で目を回している。
「ストーップ!一人ずつ、ね?お願いします、私たち聖徳太子じゃないですし」
りほが慌ててそう言うと、みんなりほに取り敢えず賛同してくれたのか一歩下がる。一年生チームの車長、梓が手をあげて、
「あ、あの!未来から来たって本当なんですか!?」
と、梓が質問をするとリリーは、
「yesかnoか訊かれたらyesになるね」
「ほう?あの新聞のことだから眉唾かと思ったらまさかここでタイムトラベラーに出会うとは・・・」
とドイツ軍の軍服と帽子をかぶった人がそう言う。
「えっと・・・・あなたは確かパンドラズアクターさんでしたっけ?」
「エルヴィンだ」
ジャスミンの言葉にエルヴィンさんは苦笑して言う。エルヴィン。本名は松本里子で欧州の歴史に詳しい歴女でありカバさんチームの車長。りほの時代では大洗大学の欧州戦史の教授であり教師を務めている。
「それで?私は疑うのは好きじゃないが、本当に君たちは未来から来たのか?」
とエルヴィンが質問すると・・・・・
「はいはい!みんな聞きたいことがあると思うけどね。それは後にしない~?」
とそこへ杏がやってくる。沙織が、
「あ、会長。伊庭さんたちが未来から来たっていうのは・・・・・・」
「うん。ほんとだよ?でもねそう言う質問は練習が終わった後にしようか。練習が終わった後、軽く伊庭ちゃんたちの歓迎会をする予定だからね~」
い、いつの間に?とりほたちが驚くが他の生徒たちは、
「ああ・・・・それなら」
「歓迎会ならお菓子とかジュースとか食べながら訊けるもんね?」
となぜか納得したように各自戦車に戻っていった。そして杏はりほたちを見て、
「・・・・で、りほちゃん。いいの喋っちゃって?」
「は・・・はい。昨日部屋に戻った後、みんなで相談して下手にぼろが出て悪い方向に行っちゃうなら話せる範囲で言うという決断を取りました。無論誰が将来何になるとかは言えませんけど・・・・」
「だよね~。特に西住ちゃん・・・・・りほちゃんのお母さんには言えないもんね~。自分が20年後から来た娘ですなんて・・・・」
「え・・ええ・・・」
「ま、君たちが未来人だという事が知れちゃったのは私たち生徒会にも責任があるからさ、いろいろサポートはするよ」
「ありがとうございます杏さん」
「いいって、いいって未来の後輩だしさ、助け合わないと」
とにっこり笑う杏さん。それを見たリリーたちは『また裏があるんじゃないか?』と少し疑いの目を向けていたが、りほは、
「はい。よろしくお願いします」
と頷くのだった。そして杏たちは戦車に戻り、りほたちもエーデルワイス号に戻る。その中、リリーとナポリとハルカは、
「いや~予想はしていたけど、かなりすごかったね~」
「ええ。これは練習後の歓迎会で質問攻めにあうわね・・・・・・」
「それにしてもいつの間に生徒会の人たち、歓迎会の準備していたんだろう?」
と、そう言いりほを見ると、
「杏さんて、ああ見えてイベント好きだから、たぶん私たちが生徒会につかまって杏さんたちに未来人だって言ったときから計画していたんだと思う」
「ああ、それならなんか納得ですわ・・・・・でもどんな質問をされるでしょう?」
「まあなんにしても覚悟と胃薬は持ってないとダメかもね・・・・・」
と、あたしたちは少し重いため息をつくのであった。
一方、とある場所では・・・・・
「大洗女子学園?戦車道を復活させたのですか?おめでとうございます・・・・」
英国風の気品に満ちた部屋で金髪の令嬢が電話で誰かと話していた。その服装は以前ジャスミンが来ていた服と同じ青色の制服だった。
「・・・・結構ですわ。受けた勝負は逃げない主義ですの」
そう言い電話を切るのであった。そしてその少女の顔は髪形は違うがジャスミンにそっくりの人だったのである・・・・・・
次回はりほたちの歓迎会を書きたいと思います