タイムスリップパンツァー・時をかける戦車少女たち 作:疾風海軍陸戦隊
りほたちやハルカたちが逃げ回っているころ、
若き母と出会ったジャスミンは
「♪~♪~♪~」
ダージリンが見守る中、ピアノを弾いていた
ジャスミンSIDE
私の家は裕福でした。何不自由なく生活を送ってきました
母ダージリンは聖グロリアーナ女学院の伝説的な人物であり英雄でした。
そして世界有数の企業の社長であったお母様は家を空けることが多く
私を育ててくれたのは家政婦だと思っていた
誕生日でも一緒に祝ってくれたこともあまりなかった。
それでも手紙は必ず送ってきてくれた。だから少なからず、お母様の愛は感じておりました。でも母の仕事が忙しくなるたびに手紙が来ることもメールが来ることもなくなってきて、送った手紙の先にお母様がいたためしもなく良く送り返されていた
「(もうお母様は私を愛していないのかしら)」
そう思うようになったのはいつの頃でしょうか・・・・
そして中学、高校になって、私は淑女としてそして普通の女の子として過ごそうと思っていました・・・・だが
『あなた・・・・本当にあのダージリン様の娘?まるで違いますわね?』
『音楽もマナーもダージリン様と比べて劣りますわね』
『ほんとはあなた養子じゃなくて?』
『母親と比べ才能がありませんわね』
付きまとう母の栄光と名声。偉大な母と比べられる私にはあまりにもまぶしく重い・・・・皆は私の一人の少女ジャスミンではなく、グロリアーナの英雄。ダージリンの娘ジャスミンとしか見てくれない。
いくら努力し、練習をしても必ず皆は
『ダージリン様の娘ならこれくらい当たり前』
その一言が多かった・私はなぜお母様の子として生まれてしまったのだろうか・・・・・私は次第に母の存在や栄光が憎くなっていた。
『私はお母様のコピーじゃない!』
『私は私なのに!なぜお母様と比べられなければいけない!』
『お母様の娘ではなく、私自身を見てほしい』
どんどんそんな負の感情が膨れ上がってしまう。誰にも相談もできず、膨らみ続けるこの醜い感情・・・・
幼いころ好きだった戦車道も次第にどうでもよくなり逃げ出したくなってしまう。まるで母の栄光という呪いから逃げるように
そして私は戦車道を辞めようと思っていた。その時、そのことが母の耳に入ったのか、
『なぜ、戦車道を辞めようとしたのかしらジャスミン?ちゃんと説明しなさい・・・・』
「それは・・・・・」
電話越しで聞く母の声に私は何も言えなかった。もしかしたら言えばお母様もわかってくれるんじゃないか…そう小さな期待を感じていたが、お母様の子の言葉で砕け散った
『あなたは私の娘なのですよ・・・・・逃げ出すなんてあってはいけないのよ』
「っ!?」
その言葉が決定的だった。お母さままで・・・・
「・・・・・・」
『ジャスミン?どうしたの返事をなさい…あなたは・・・』
「わたし・・・・・」
『?』
「お母様は言わないと思ったのに・・・・・わたし・・・・お母様の子に生まれなければよかったです・・・・・」
『っ!?』
お母様ならわかってくれると思ったのに・・・・私は涙を流しいつの間にかそう言っていた
『・・・・ジャスミン』
「お母様の分からず屋っ!」
私はそう電話を切り、家を飛び出していたのだった
「・・・・さん?・・・・・ジャスミンさん?」
「は!」
気が付けば、過去のお母さまが心配そうに私の顔を覗き込んでいました
「大丈夫ですか?泣いていますわよ?」
「え?」
私は自分の頬を触るといつの間にか涙が流れていた
「ほらこれで涙をお拭きなさい」
「ありがとうございます」
過去のお母さまは私にハンカチを渡してくれて私は涙をぬぐった
「すみません・・・・」
「いいのですよ・・・・・それよりもあなたの曲。とても悲しい音色でしたわ。今のあなたの姿みたいで」
「すみません聞き苦しかったですね・・・・・」
私はそう謝ると、お母様は首を横に振り
「確かに悲しい音色でした・・・・でもとてもピアノは上手かったですわよ」
「・・・・え?」
『上手い』初めてそんなことを言われた。いつもはお母様と比べられてきたのに・・・・
「なぜ、あんなに上手いのに悲しい音色だったのかしら?良ければ教えてくれるかしら?」
「それは・・・・・」
私は理由を話した。もちろん今いるダージリンさんが未来の母であること、未来から来たことは話さずに・・・・
「そうでしたの・・・・・」
そう言うと若き日のお母さまは
「親が偉大だと・・・子供が苦労するのは何処も同じなんですね・・・・」
「え?」
母の言葉に私はあっけにとられると若き母は私の隣に座りピアノを弾いた
「私の家は裕福で父も若くして起業しビジネスで政界まで進出した人物でしたわ。そんな父の口癖は「ナンバー1以外は無価値と思え」でした。当時幼かった私はそんな意味も知らず「大人の世界は大変」としか思っていませんでした」
「・・・・・」
「当時私はヴァイオリンが好きでいつかは有名なヴァイオリニストになることでした。コンクールでは準優勝でした。残念に思いましたが私はベストを尽くしましたきっと父もわかってくれるとそう思っていました、結果は『ナンバーワン以外には価値がないと思え』の一言でした・・・」
「そんな・・・・」
初めて知った母の過去。確かに私は祖母に会ったことがあるが祖父には会ったことがなかった。だけど、まさかあのお母様にそんな過去が・・・
「それで始めたのが聖グロリアーナの戦車道でした。隊長就任。全国制覇を目標に私は努力してきました。始めた動機は歪んではいましたが次第に戦車道の奥深さに感銘を受け仲間と一緒に戦車道をやり続けるにつれ、そんな思いは消えていました・・・・・・だから決めましたの私の道は私の道。お父様に何と言われようとも自分の道を行く・・・・そう決めましたの」
「・・・・・」
「ジャスミンさん・・・・私はあなたのお母さまのことは知りませんわ。ですが優秀な戦車乗りなんでしょうね?」
「はい・・・・まぶしすぎるくらいに・・・・」
「でも、あなたはあなたよ・・・・あなたは自分の道を歩んでお母様になるのではなくそれを超える存在になりなさい・・・・きっとあなたのお母さまもそう思っていますわ」
「‥‥‥そう・・・ですわね」
まさか過去のお母さまに教えられるなんて思いませんでした・・・・そうだ。私はジャスミン。私の道は私のもの。誰に何と言われようとも私は私なのだ。
「ふふ・・・・元気が出たようですわね?」
「ありがとうございます。おかげで少し気持ちが晴れました」
「それはよかったですわ・・・・・どうです?このまま連弾でも?」
「はい。私でよろしければ・・・・・」
そう言い私と過去の母は二人で一つのピアノを弾いた。曲名は幼いころ母がよく聞かせてくれた曲でした。そう言えば幼いころもこうしてお母様と一緒にピアノを弾いていましたっけ・・・・
懐かしい思いを感じながら私は過去の母と連弾を楽しんだ
そしてしばらくして、りほたちの集合時間が迫っていることに気が付いた私は部屋を後にすることにした
「今日はありがとうございましたダージリン様」
「いいですのよ。また会うことがありましたら一緒にもう一度、連弾をしましょう」
「はい。その時はお茶もお入れします」
「ふふ…楽しみにしているわねジャスミンさん」
微笑むダージリンにジャスミンも
「またお会いしましょう‥‥‥ダージリン様」
そう言い部屋を出るのであった。そして残されたダージリンは
「ええ…お会いしましょう。大洗で・・・・・・それにしても面白い子でしたね・・・・・「また」・・ですか」
ダージリンは彼女から何処か懐かしさを感じ微笑むのであった
コンビニ連絡船内
「いや~なんとか間に合った~~」
「ほんと、乗り遅れるかと思ったわ~~」
船内ではアーニャたちは息切れをしながら床に座っていた
「ハルカは何をしてたの?来るの少し遅かったけど」
「ん?ちょっとカウンセリングをね。中々の好評で三、四人相手してたわ?アーニャたちは?」
「甲冑を着て学校内走り回っていたよ」
と話す中、ジャスミンは遠ざかるグロリアーナの学園艦を見ていた。するとりほが近づき
「どうしたのジャスミン?」
「りほさん・・・・いいえ。なんでもありませんわ・・・ただ」
「ただ?」
「いいえ・・・なんでもありませんわ」
「?」
そう言いジャスミンは学園艦を見て
「(もし・・・元の時代に帰れたら今度はちゃんとお母様と話をしよう・・・・)」
そう決意するのであった
余談ではあるが、聖グロリアーナ出は動く甲冑事件やアッサム様百合疑惑などの騒ぎが、のちの学校内新聞で報道されたとかないとか・・・・・