タイムスリップパンツァー・時をかける戦車少女たち 作:疾風海軍陸戦隊
20年前の時代にタイムスリップした私たちは情報集めのため、リリーとジャスミンは戦車ショップ。ハルカとナポリはエーデルワイスの修理。そしてアーニャと私西住りほが学校の図書室でタイムスリップについて調べることになったのだが、アーニャは生徒会の人たちに追われ、そして私はというと・・・・・・・
「(お、おおおおおお母さん!?)」
そう、若き日・・・・学生だった頃の私の母西住みほと出会ったのだ。
「あ、あの。すみません急ににぶつかって。怪我とかしていませんか?」
ぶつかって慌てて私に言う若き母。
『西住みほ』
戦車道を志す者は知らない者はいないというほどの伝説的な戦車乗りで、戦車道流派の名門中の名門と言われる『西住流』の家元の娘で20年前当時の戦車道経験皆無だった先輩たちを率い無名校から夏の大会で優勝するという華々しい功績を残し、廃校の危機に瀕した私の母校大洗女子を救った英雄としても知られていて、現在、と言っても私のいる時代では高校戦車道協会の高校選抜チームの教官をしている。そして学生時代の功績から周りから『大洗の軍神』と呼ばれている
だが、私が知っている母は周りが軍神!という風な感じの人ではなく、いつも笑顔を絶やさない明るい人でちょっと変わった趣味を持った人なのだ
「あの~」
私がお母さんと会って驚く中若き日の母・・・・・いや学生時代の母は首をかしげていると、私はすぐにはッと正気に戻り、
「え?ええ、大丈夫。私こそごめんなさい・・・・・あ、おか・・・・あなたの鞄の中身、零れているわ。ごめんなさい私とぶつかったせいね」
「え?」
私の言葉にお母さんは自分の鞄を見ると鞄から筆記用具やら教科書が零れ散らばっていた。
「あっ!本当だ!」
「私も手伝うわ」
「え?でも・・・・」
「いいの。元はと言えば私がぶつかったのが原因だから。だから手伝わせて」
「あ、ありがとう・・・・」
と、おどおどとそう言う母の姿を見て私は
「(昔のお母さんって今と変わらいな・・・・・・)」
今も昔も変わらない母の姿を見てそう思った。そして私と学生時代のお母さんは地面に散らばった筆記用具や教科書を拾いお母さんの鞄に入れる
「ありがとう。えっと・・・・あなたは・・・・」
「え?私は・・・・・・・」
私はお母さんに自分の名を名乗ろうとしたがすぐに戸惑った。ここで自分の名を出してよいのだろうか?いいや絶対にまずい。まずいに決まっている。だからと言って名前を名乗らないのも失礼だし・・・・・困った。
そう、私が悩んでいると急にチャイムが鳴る
「あっ!行けない遅刻する!そ、それじゃあ、みほさん!私先を急ぐから!」
「え?あ、ちょっと!?」
そう言い私はタイミングよくなったチャイムを利用して急いでこの場を走り去るのだった。そして一人残された若き母であるみほはというと
「あの子・・・・・何で私の名前を知っていたのかな?・・・・あ、いけない私も行かないと!」
「はぁ・・・・・はぁ・・・・はぁ・・・・あ~びっくりした・・・・・」
慌ててその場を後にしたりほは手に胸を当て息を切らしていた
「まさかお母さんに会うなんて・・・・・・20年前の大洗にタイムスリップしたとはいえこれはびっくりね・・・・・」
若き日の母に出会って驚いていたりほは息を切らしながらそう言うと、急に誰かが後ろからりほの肩を掴む
「っ!?」
ビックリしたりほは慌てて振り返ると・・・・・
「はぁ・・・・・はぁ・・・・はぁ・・・・やっと見つけた、りほーしゃ」
「あ、アーニャ」
りほの肩を掴んだのはアナスタシアことアーニャであった
「はぁ…はぁ…やっとあのおかっぱ連中を振り切ったわ」
「た、大変みたいだねアーニャ」
「ええ、でもこの私の小さい身長とすばしっこさを利用して、撒いてやったんだから。ほんと便利ねこの身長は」
「そ、そう」
胸を張って言うアーニャに私は苦笑する。アーニャって自分の背が小さいことにコンプレックスとか抱いていないんだな。てっきり母親であるカチューシャさんと同じかと思っていた。そう考えているとアーニャは私の考えていることがわかったのか
「りほーしゃ。今あなた私がマーマと同じ、身長にコンプレックス抱いているって思ったでしょ?」
「え?いや…別に?」
ジーと私を見つめるアーニャに私は視線を逸らすとアーニャは軽く息をつき
「別にいいわよ。マーマのコンプレックスは有名だしね。そう思われても仕方がないわよ。でもねりほーしゃ。私はこの低い身長は嫌いじゃないわよ。いろいろ得することが多いし」
「例えば?」
「例えばそうね・・・・・・ほら私小学生に見えるからアイスとか映画の料金半額になったり、かくれんぼなんか負け知らずだったりいいことずくめよ。まあ子ども扱いされるのは少し癪だけどそれを除いては別に気にしたりはしてないわよ」
「後者はともかく前者はダメなんじゃない?」
「いいのよ。それよりも早く図書室で元の時代に戻る方法を探しましょ。私図書室の場所わかんないからりほ案内して」
「え?あ、うん!確か図書室は・・・・・・」
そう言いりほはアーニャを連れて教師やほかの生徒に見つからないように図書室へと向かうのであった。
一方、ハルカやナポリはエーデルワイス号のレストアをしていた
「どう?ハルカ?」
「そうね。動くだけならまだしも、試合に出すとなると、やっぱり自動車とかそういう系の専用の工具で完璧に整備できないとまずいわね」
「やっぱりそこが問題か・・・・・ねえ、その道具今から買いに行く?」
「買いに行くって言ってもそういう系の整備道具は結構高いわよ。私たちの費用じゃ今後のことを考えると結構厳しいわよ」
「そっか~どこかに自動車とか整備しているところないかな~」
「そうね・・・・りほが戻ったら訊いてみましょナポリ」
「そうだな~そう言えばりほはアーニャと一緒に学校の図書館で元の時代に戻る方法を探してみるって言っていたけど、大丈夫かな。それとバイトとか賞金の出る試合を探しに行ったジャスミンやリリーたちの方も心配だし」
「そうね・・・・みんな無事だといいけど。それよりもやっぱりこのエーデルワイスの主砲75ミリじゃないわ」
「え?じゃあ、やっぱりハルカこの五式…言え、エーデルワイスの主砲って・・・・・」
「ええ、これ。88ミリ。しかも日本の88ミリじゃなくてティーガーと同じドイツ製の88ミリ砲よ」
一方、リリーやジャスミンたちも生活するうえで必要な資金を稼ぐためにバイトやそして本来の目的である賞金の出る戦車道の試合がないか探していた
「どうリリー?何か見つかりまして?」
「全然ダメ。どこのバイトも履歴書が無きゃ無理。まあ当然だけどね」
「そうですか・・・・」
「ジャスミンの方は?賞金付きの試合見つかった?」
「全然ダメでしたわ。どれもこれも夏の大会についての広告ポスターやらそういう系の物ばかりでしたわよ」
「そっか、もうそんな時期なのね~」
戦車道ショップの休憩場でリリーとジャスミンは紅茶とコーラを飲みながら仕事を探していたが結局見つからないままであった
「それに賞金付きの戦車道の試合もないし、これはもうお手上げね」
「困りましたわね・・・・・・・家出するときにもって来た現金はまだたくさんあるけど今後もし長い間この時代にいるのならやっぱり働き口を探さなくちゃいけませんから。仮に履歴書を偽造してお住所云々で速バレますし」
「そうね~それに生年月日も私たちが生まれたのってこの時代から数年後も先だしね・・・・・カードも使えないし」
ため息をついてそう言う中、ジャスミンは紅茶を飲むと、
「それよりもりほさんたちは大丈夫かしら?迷子になっていなきゃいいんですけど」
「う~ん・・・・一応、彼女の母校だし大丈夫だとは思うけど・・・・・さて、もう一度探してみようかな?」
「わたくしも協力しますわリリー」
そう言い二人は椅子から立ち上がりバイトや賞金付きの試合を探しに行くのであった。
一方、りほたちは図書室の中、タイムスリップ系の本を調べていた
「う~ん・・・・やっぱりないわね…時空を超える方法なんて・・・・」
「そうね。りほーしゃ。タイムスリップ系の小説はあるけど実際のタイムスリップができる方法が書かれた本なんて一冊もないわね。ま、会ったらそんなに苦労しないけどね」
「確かに・・・・・」
そう言いながら、りほとアーニャは必死に元の時代に戻るための方法を探していた。家出してきた彼女だがやはり元の時代に帰りたいのだろう。するとアーニャが
「ねえ、りほ。私たちこれからどうなるんだろうね?」
「え?」
真剣な表情で本を読みながらアーニャがそう言う
「もし、もしだよ。私たちが元の時代に帰れなかったら私たちこの時代の人間として生きなきゃいけないのかな?家出した身でこんなこと言うのはおかしいけどもうマーマに会えないのかな?」
「アーニャ・・・・大丈夫だよ。きっと元の時代に戻れるよ」
「そっか…そうだよね。確かにりほーしゃの言う通りだね。それにニーナお姉ちゃんがよく言ってたわ『絶望したりすぐに諦めたりするものはは愚か者のたとえ』だって」
「ニーナお姉ちゃん?アーニャ、お姉さんがいたの?」
「ほんとのお姉さんじゃないけど。マーマの後輩でね。小さい頃はよく戦車に乗せてくれたり戦車道で悩んだ時はいつも相談に乗ってくれたり、ほんとの姉のような人だったわ。まあそれと同時に私の師匠のような人でもあったけど。知らない?」
「ごめん。あまり・・・」
「そう、これでもニーナお姉ちゃん。大学選抜戦でKⅤ2に乗ってあの『プラウダ殿戦』でも活躍したんだよ」
「え!?プラウダ殿戦ってあのプラウダ殿戦!?」
「そ、あのプラウダ殿戦」
プラウダ殿戦。それは戦車道でも有名な戦いの一つ。大洗の命運をかけた大学選抜戦で援軍に駆け付けた大洗連合軍。その中で大学選抜の追撃やカール自走砲の砲撃で危うくなったひまわり中隊の副隊長であったアーニャのお母さんであるカチューシャを救うべく彼女の仲間が盾となり彼女を救ったと言われ、戦車道界では有名な話の一つである
「でね、マーマが卒業した後、お姉ちゃんマーマの後を継いでプラウダの隊長をして『小さき
「へ~そうなんだ。すごいんだね」
「うん。マーマの次に尊敬する人なのよ」
とニコッと笑うアーニャ。するとアーニャは
「で、りほーしゃ。さっき校庭で会った時何かあったの?」
「え?」
「だって今こうして調べ物をしている時でもりほーしゃ。何かあったような顔しているじゃない。話してくれる?もしかしてしにくい話?」
「あ、いやそうじゃないの。実はね・・・・」
そう言いりほはアーニャに学生時代の母にあったことを話す
「そ、りほーしゃのマーマにね・・・・それは複雑な気持ちになるわね。私もマーマに会ったらきっと同じ感情を抱くわよ。そっか。りほのマーマがここに来たってことはもうすぐ大洗の戦車道の歴史が動き出すね」
「うん・・・・・そうだね・・・・・でも私たちがこの時代に来て。本当に歴史通りになるのかな?」
「さあね。それは時の神様にでも聞かなきゃわからないわよ。さ。、もう少しだけこの山済みの本を片っ端から調べよう」
「そだね」
そう言いりほたちは再び、タイムスリップについて調べるのであった
そして生徒会長室では
「それは一種の情報操作にあたるのでは?」
「大丈夫、大丈夫」
「では、直ちに取り掛かります」
「あ、それと河嶋。例の件調べてくれた?」
「はい。風紀委員やほかの生徒に協力してもらいましたが、やはりうちの学校にいるはずのない生徒が6名います」
「へ~で、どんな子たち?」
「はい一人は、先ほど会長がリストアップしていた西住に似た子。もう一人は小学生、もう一人は金髪でお嬢様みたいな子とそしてアメリカ風な感じの生徒、そしてもう一人はグレー色の髪をした生徒とそして最後に目つきの悪い少女の6人です。その6人は目撃情報によると放課後旧部室棟にこっそりと入り込んだり森の中に入ったり、そして授業中にも関わらずコンビニや戦車ショップに通っているとの情報が入っています」
そう言い河嶋はひそかに撮られた6人の写真を会長に渡す
「なるほどね~旧部室の怪奇現象の正体はこの子たちかな?わかった。じゃあ見つけ次第生徒会室に連れてくるように」
「はっ、かしこまりました」
そう言い河嶋と柚子は部屋から出ると杏は先ほどの写真を取り
「何者なんだろうねこの子たち・・・・・何か世界の流れを変えちゃうような感じがするね・・・・・ま、そんなわけないか」
そう、ポツリとつぶやくのであった