年末。
年の瀬である。
世の中の
ご多分に漏れず我が職場、CiRCLEも28日をもって営業終了。 つかの間の正月休みを得た。
納会で聞いたところ、まりなさんは里帰りするらしい。
CiRCLEを利用する女子高生たちは、とっくに冬休みだ。
各々年末を家族と過ごしているのだろうか?
それとも、CiRCLEが使えなくても練習をやっているのだろうか?
中々気になるところではある。
そんななか、新人スタッフたる俺は何をしているかと言うと。
「いらっしゃいま………? なんでお前がこんなところに…?」
「よう市ヶ谷、デートしようぜ」
「はぁ!? バカか!?」
…市ヶ谷有咲の実家こと流星堂にいた。
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「…それで?さっきのが冗談なら何の用?」
顔をまだ仄かに赤くしながら市ヶ谷は問うた。
この娘はこんな反応をするからからかわれがちだということを理解したほうがいいと常々思っている。 言わないけど。
「年の瀬だからね、質屋は入り用なんだ」
「普通に客として来たのかよ!」
むしろ客じゃなかったらなんだというのか?
「ついに母さんにどやしつけられてね、今年中に綺麗にして新年を迎えなさいってさ」
「実家住みだったのな…」
そう。俺は花咲川生まれ花咲川育ちだ。
なんなら先祖代々花咲川だ。
…帰省も何にもないわけである。
「ま、そういうわけでここで色々買い取ってもらおうってわけ。 車に積んであるよ」
「あー、はいはい」
客に対してその態度はなんだ。
一瞬思ったが俺も普段CiRCLEで市ヶ谷相手にしてるときはこんな感じなので文句を引っ込めた。
「それで、なんでお前はお前で店番してんだ? てっきり、ポピパのみんなと遊ぶか練習してるもんだと」
…こいつ、ポピパと会わないと寂しがりそうだし。
「い…色々あんだよ。
りみは関西に帰省しちゃったし…」
「ああ、そういえばりみちゃんは帰省してるんだっけ」
「お前、りみちゃんって呼んでんの?」
「え、気持ち悪かったか? なんか凄く心配になってきた」
年下の女子高生にキモがられていたらあまりにもいたたまれない。
「いや…別に。私や香澄は苗字で呼び捨てなのになって」
「俺は向けられた態度に相応しく対応しているだけだ」
呼び捨てタメ口利きまくりの子と礼儀正しい子への対応を分けてるに過ぎない。
あと牛っていうのが正直彼女のイメージと合わないから、逆に使いたくないというのも理由だったり。
「……話を戻すけど、おたえは新年旅行に行くって言ってて今はいないし」
「あー、あの家も結構なセレブだよな…弦巻家が色々と凄すぎて霞むけど」
「弦巻さんといえば、なんでクリスマスパーティにいなかったんだ? まりなさんも来てたのに」
答えの分かりきった質問はやめてほしい。
「まりなさんは別にいいけどさあ… 女子高生だらけのところに男一人で混ざれっていうのか?」
「あれ? いっつも周り年下の女の子ばっかりだし気にしてないかと」
「そりゃ仕事だからだろ!」
プライベートでああいう場所に行くのはかなり勇気のいることだと思う。
と、いうわけで今回は丁重にお断りさせていただいた。
代わりに何してたって?聞くなよ。
「…なんだ、それじゃ彼女がいた!とかじゃないんだな」
「お?そこ触れちゃう?新手のイジメか?」
悲哀の表情を浮かべる俺を見て市ヶ谷はご機嫌そうに笑った。なんか凄くムカつく。
「…ま、そういうわけでポピパは練習になんねーし今日はオフってことにした」
「それで店番か、普通に接客されてびっくりしたわ」
「とっさにあんなこと言ったのかよ…」
まあ、蔵(市ヶ谷の部屋に、ポピパの普段の練習場所もあるらしい)の前の盆栽を見せてもらったことはあるし、何となく会うかもしれないくらいは思っていた。
「ばあちゃんが大晦日までは開けるって言って休む気ねーんだもん…どうせあんまり客なんて来ないのに、稼ぎ時だって
…だから今は代わってやって」
「偉い!偉いぞ市ヶ谷!めっちゃいい子だな市ヶ谷!」
言い切らないうち被せて褒め殺す。
こいつ基本的にめっちゃいい子だよな。
まあCiRCLEに来る子は基本的にめっちゃいい子だけど。
「……つか、ばあちゃんもじいちゃんも市ヶ谷だからな!」
照れ隠しが下手すぎてひとしきり笑ってしまった。
……市ヶ谷と話しすぎて本来の目的を見失うところだった。
「…それじゃ、買い取りの方、頼みますよ店員さん」
「見積もりするのは奥にいるじいちゃんだけど…承りましたって言っといてやる」
良いようにからかわれた市ヶ谷は、顔を赤く染めそっぽを向きながら、言った。
さあ、思い出を売るとしようか。
年末といえば大掃除、ということで私も年内に執筆中小説をすべて出し切りたいと思ってます!
感想、評価等お待ちしてます。