な○でも鑑定団の時間だ。
「まず、最初の商品はこちらになります」
俺が箱を開けると、綿に包まれ大事に保管された大量の茶透明の虫が整然と…。
「うわあ!? なんだこれ!?」
「…セミの抜け殻かな」
「捨ててこい!」
「鑑定してくれないのか?」
「こんなもの売れるわけねーだろ!」
オチがつくのが早すぎる。
二品目。
車の中からダンボールを取り出す、重い。
「いまや日常系の代名詞といえる、あの4コマ雑誌だ」
「ほ…埃くせえ」
市ヶ谷が顔を顰める。
「創刊からなんだかんだ15年くらい?経ってるからな」
「この雑誌、中綴じだった時代があったんだな…」
「創刊号から割と最近のまである!
これは高額買取が期待できるぞ!」
さあ幾らだ!
「そういう系は古本屋とかその手の店で売ったほうが価値を分かってもらえるからいいと思うぞ」
うちに売っても誰も買ってくんねーからな、と真面目に諭されてしまった。
「……じゃあ何売ればいいんだよ!」
「貴金属系とかじゃねえ?
あとはここ見たら分かんだろ」
見渡すと確かに価値のよくわからん壺とか巻物だらけだ。
なるほど、骨董品か。
……そんなの持ってなかったよ。
「つまりこの手のものはネットオークションかメル○リで売るべきだと」
「身も蓋もねーけど、そういうこと」
「商売敵なのになあ」
「まあ、私も使ってるし……
普通のものを買い取りしたいんなら今の時代うちじゃなくていいだろ」
そう言われるとこちらから出すものはもうない。
「……そんなこと言っちゃうなんて商売人向いてないんじゃないか、市ヶ谷よ」
市ヶ谷は笑った。
「そうかもな」
笑って、そのまま言葉を続けた。
「いーんだよ。 モノはその価値の分かるやつにやらないと。
本だって、読んで楽しんでくれる人にあげたほうが、嬉しいし、そんな奴がたくさん来てくれるようなプラットフォームで売るほうがみんな幸せだろ。
……セミの抜け殻を貰って嬉しがるやつがいるかは知らねえけどさ。
とにかく、売り手と買い手を繋ぐんだからいい加減なことはできねーってこと」
ばあちゃんの受け売りだけどな、と照れながら
俺は目を見開いた。
そして何も、言わずに呆けているだけだった。
「お、おい?なんで急に黙るんだよ……」
……なんでこっちをじっと見て黙って…うぅ……」
気付いたら市ヶ谷がまた顔を赤くしていた。
よほど恥ずかしかったらしい。
「すまん、ちょっとぼーっとしてた」
「なんなんだよお前もう!
今結構真面目なこと言ったろ!?」
「ちゃんと聞いてたっつの……
いや、凄いよ。 流石は老舗の孫だ」
「どういう意味だよそれ…」
「なるほどなあ。
だから戸山にランダムスターあげたんだな」
一番彼女が価値を見出していたと気付いたから。
ギターと戸山に、そして市ヶ谷自身と戸山に
市ヶ谷は俺の言葉に激しく狼狽していた。
「お、おま……なんでそれを知って」
「そりゃ、本人から聞いたに決まってるだろ」
「香澄の奴!なんでも話しやがって!」
「いや、面白かったよ、不登校の頃の市ヶ谷の話」
「信じるなよ、あいつの言うことはめちゃくちゃ大袈裟なんだからな!」
そうかそうか。
にこやかに笑って俺は退散するとしよう。
含蓄のある話も聞けたしな。
「……それじゃあな。よいお年を、市ヶ谷」
「ちょっと待て!」
腕を掴まれた。
「なんだ」
「一つだけ聞きたいことがあるんだよ」
振り向くと、似合わず真面目な表情をしてくさる。
市ヶ谷は、俺の腕を掴んだまま、言った。
「今まで見せたもの全部、お前の物じゃないだろ。
なんで、自分のものだって嘘ついてまでここで売ろうとしたんだ?」
……バレてたか。
「そんな怖い顔をしちゃ、可愛い顔が台無しだぞ市ヶ谷」
「からかったって無駄だからな」
どうにもごまかせないらしい。
俺は、小さくため息をついた。
外で強い風が吹いて、ガタガタと窓が鳴る。
窓を見ると雪がチラチラと降っている。
それを二人して押し黙って聞きながら、俺は次にいうべき言葉を巡らせた。