俺はこの曲を聞いているうちに、どんどんはまっていった。
こんな素晴らしい曲、久しぶりに出会ったな……
俺は、すぐに祐樹にLINEをした。
『ものすごく、いい曲だね。ボカロ好きなんだ』
すると、意外にもすぐ返事が返って来た。
『僕が好きなのは、ボカロじゃないんだ。この曲が好きなんだよ』
そのあとも、祐樹はLINEを送って来た。
『僕、この曲に救われた。親は俺の事見放して、一度僕が一晩いなくても全く気付かなかった……友達も誰もいなくて、もう生きる価値なんてないんじゃないか、いっそ死んでしまった方が喜ばれるんじゃないか。そう思ったんだ』
俺はLINEを返そうかと思ったが、その前にすぐ返信が来た……
『だけど……この歌詞を聞いてから、まだ生きよう、って思えたんだ』
俺はただただその文字を追っていた。
俺と、同じような人生を歩んでるな……
『だから、君にもこの歌を歌ってほしいんだ』
祐樹を……救ってあげよう。
俺はそう思い、毎日練習を始めた。
俺は練習と同時に、ボカロの世界にもはまっていった……
よく聞いてみたら……今のボカロ、ものすごくいい曲が多いな……
俺の想像と全く違う歌がたくさんある……
歌い手かぁ……
俺はボカロよりも、もう1つはまっていたことがあった……
ボカロ曲をカバーする人たち、歌い手にはまっていたのだ。
歌い手は何千、何万といて、それぞれ特徴のある声……
俺も、歌い手なってみたいなぁ……
そう思い始めたのはこのころだった………
楽しそうに他の歌い手とトークしている人たちを見て……
絶対、普通の仕事よりも楽しいよなぁ………
それから毎日のように違う歌い手の歌を聴き始めた。
もちろん練習はしている。だけど、正直そっちにはまってしまっていたかもしれない。
でも、歌い手の歌を聞いていると、しだいにその声に近づけようとしたくなる……
そのおかげか、歌が下手だった俺が、結構上手に歌えるようになったのだ。
俺は祐樹にLINEを送った。
『今度の土曜日、家おいで』
そして、家の位置の映っている地図の画像を送った。
『歌ってくれるんだね、ありがとう』
祐樹からはそう返信がきた。
しかし、来るか来ないかの返事はこない……
来ると信じて練習するか。
そしてそれまでの間、今までにないほど練習した。
ついに土曜日、その日がやって来た。
祐樹には時間を伝えてある。ちゃんと来てくれるかな……
すると……
チャイムが鳴った。
ドアから外を見てみると……
祐樹がいた。
俺はドアを開けるとすぐに部屋に案内した。
「じゃあ、早速歌う?」
俺は問いかけた。
なるべく明るく。
「ああ、おねがい」
祐樹は小さな声で言うと、椅子に座った。
俺はパソコンでカラオケ音源を流した。
すると、きれいな前奏が流れ始めた。
ふぅ、緊張する。
それもそうか……
あっという間に前奏が終わりそうになる。
俺は発声練習を軽く済ますと、音楽と同時に歌い始めた。
「死にたいなんて言うなよ……諦めないで生きろよ………そんな歌が正しいなんて、ばかげてるよな」
俺は歌いながらふと祐樹の顔を見てみた。
すると、祐樹は少しうつむいている。
どうしたんだろう……
不安に思うが、歌い続けた。
「実際自分は死んでもよくて、周りが死んだら悲しくて……それが嫌だからっていうエゴなんです」
なんでだろう……泣きそうだ………
でも、泣いちゃだめだ、笑顔にしないと……
俺は泣くのを我慢して歌い続けた。
「他人が生きてもどうでもよくて、誰かを嫌うこともファッションで、それでも平和に生きようなんて素敵なことでしょう……画面の先ではだれかが死んで、それを嘆いて誰かが歌って…それに感化された少年が……ナイフを持って走った…!!」
俺は、なるべく笑顔で歌うものの、つい歌詞に感動して涙が出てしまう……
「僕らは命に嫌われている、価値観もエゴも押し付けて、いつも誰かを殺したい歌を、簡単に電波で流した……僕らは命に嫌われている、軽々しく死にたいだとか、軽々しく命を見てる、僕らは命に嫌われている……」
普段はこんなに歌詞のことを思ったりしなかったのに、やっぱり誰かの前で歌うと、詩がよく頭に入ってくる……
そんなことを考えながら、2番も歌い続けた。
「……正しいものは正しくいなさい。死にたくないなら生きていなさい。悲しくなるならそれでもいいなら、ずっと一人で笑えよ……」
祐樹に、話しかけているみたいだ……
こういうところが、祐樹も好きだったのかな……
「……幸福も、別れも、愛情も、友情も…滑稽な夢の戯れで全部カネで買える代物……明日死んでしまうかもしれない、すべて無駄になるかもしれない……」
ああ、その通りだな……
もしかしたら、明日いきなり祐樹が死んでしまうかもしれない……
俺が救わないと。
「朝も、夜も、春も、秋も、変わらず誰かがどこかで死ぬ…夢も、明日も、何もいらない、君が生きていたならそれでいい……」
君に、祐樹に生きてもらいたい……
俺はそれでいいんだ………
「そうだ、本当は……そういうことが歌いたい………!」
俺の気持ちが、すごく詩に当てはまっているな……
「……それでも僕らは必死に生きて、命を必死に抱えて生きて……殺してあがいて、笑って、抱えて……生きて、生きて、生きて、生きて、生きろ…………!!!」
歌い終わったときにふと祐樹の顔を見た。
祐樹は、俺の方をまっすぐ向いて、涙をこらえているようだった……
泣いちゃだめだよ……
俺は祐樹を笑顔にするために歌ったのに……
俺も泣いちゃうじゃん。
あれ、いつの間にか2000文字も書いてた……
まだ1000行ってないと思って頑張って書いてたのにww
ということで、お久しぶりです。最近、別サイトにて他の小説も書いています。