あ、後キャラ崩壊してる箇所と理解にしくい所があるかもです。ここも許して。
外は雲一つない晴天...というわけではないですが、晴れ。働くには絶好な日となっています。洗濯物が良く乾きそうですね。
さてさて、本日は346カフェでの最初のバイトとなります。昨日は書類を書いただけでしたからね。
ちなみに、杏にはバイト先を変えたことは伝えましたが346カフェで働くことはまだ伝えておりません。フフフ、軽くドッキリってやつですよ。
実はこのカフェ、制服というかそういう縛りは無いみたいなんですよね。菜々先輩とか完全に自分のメイド服を着ていらっしゃるらしいので。
ですが私には私服でそういうのはありません。それに私にはメイド服なんてキラキラしたものは絶対似合うはずがありません。そういうのはもっと輝いてる方が着るべきでしょう。それこそ菜々先輩のような方とかですね。他にも理由はありますけれど、私にはメイド服は似合わないと言っておきましょう。
更に私は喫茶店の服みたいなものは持っていません。というわけでカフェの店長や菜々先輩と色々相談した結果、カフェの店長経由でどこからかとある服を貸していただける事となりました。
「否ちゃん...タキシード似合ってますねぇ」
「...ありがとうございます」
そう、タキシードです。杏が見ているアニメで知ったのですが、最近では女の執事というのも有りかと問われれば有りだそうです。ならばあまり違和感はないでしょう。メイド服よりはこっちのほうが私には合ってますし。
「でもよかったんですか?多分否ちゃんサイズのメイド服ありますよ?」
「メイド服なんて私には眩しすぎます...それに、あまり肌を人前に晒したくないというのも...」
「あ~確かに否ちゃん、いつも長袖のものを着てますからねぇ。分かります分かります。ナナも最近肌のシミとか出てき...あ、ン゛ン゛!!!な、なんでもないですよ!」
「?」
いきなり慌ててどうしたんでしょう?何か不味いことでも言ってしまったとかですかね?
──おや、そろそろ始まる時間に差し掛かってますね。接客は確かに以前のバイトでもやってはきてましたが、コンビニとカフェとでは一言接客と言っても全く性質は異なります。念のために昨日の夜に軽く勉強...というか杏の見てたアニメを見ました。偶然女執事の話でしたので参考にと思いましてね。
見てたら杏から意外そうな表情で見られたのは心外でした。一応私ゲームとかやってるんですけど...9割ポケモンですけどね。とまぁこんな感じなのかなということを見てきたわけですよ。
おっと、早速お客さんが来たみたいですね。話し声からしておそらく女性三人でしょう。さて頑張りますか!
「──いらっしゃいませ。ようこそ346カフェへ、お嬢様方」
アニメでやってた執事みたいに左手を腰に右手を左胸に当てて忠誠心を見せるが如く目を瞑りながら頭を下げます。多分これであってるはずです。
「わぁ、執事さんだぁ...ってあれ?ここ執事さんなんて居たっけ?」
「あ、新しいバイトさんかも...」
「......」
よしよし、掴みはいい感じかもですよ。この感じで頑張っていきますか!
...そういえば、このお二方の声、どこかで聞いたような...?さらに後一名から物凄く視線を感じるのですが何でしょう...
──いえ、今は仕事中。考え事は禁止です。
「それではお席までご案内させて頂きますね」
「...いや、ここで何してんのさ。否」
「...杏?」
これはこれは、杏と...三村さんと緒方さんですか。ということはキャンディアイランドのお三方ですね。
とりあえず予定通り席に案内しましょう。
「何って...バイトですよ?」
「いや確かにバイト先変えたって言ってたけどさ、ここだとは思わないじゃん...それに何その格好!」
「言ってませんしね。後、服はこれしかありませんでした」
「ふーん...プッ!」
あ、こいつ笑いやがりましたね。仕方ありません...明日の飴は全部ハッカにしてやりましょうか。確か杏はハッカ苦手なはずですしね...フフッ、楽しくなってきました。
「...あの、杏ちゃん。この人知り合い?」
「ん?あぁ、かな子ちゃんと智絵理ちゃんは面識無かったっけ。ほら、例の飴作ってくれる人だよ」
「...あぁ!もしかしてこの人が否さん?初めまして!三村かな子です!」
「よ、よく見るとホントに杏ちゃんにそっくりなんだね...緒方智絵理です。よろしくお願いします...」
「...どうも、杏の従姉妹のヌヌ葉否です。そしてこちらが座席となります。どうぞ」
そっくり...まぁいいですけれどね。自覚はしてますし。
本当はもう少しこのお二人から杏に関しての話を聞きたいところですが、生憎バイト中ですのでさっさと仕事に戻りましょうか。
「それではご注文がお決まり次第お呼びくださいませ」
...おやおや、またまたお客さんがいらっしゃったようですねご案内しなければ。
「いらっしゃいませ。ようこそ346カフェへ」
★ ★ ★ ★
「...ホントにそっくりだね」
「でも性格とかは真逆だね」
「杏ならあそこまで勤勉には働かないよ」
キャンディアイランドの三人、双葉杏と緒方智絵理と三村かな子は自分達を出迎えてくれた杏の従姉妹である『ヌヌ葉否』を話題に話が進んでいた。
彼女らと否が出会ったのはほんの偶然。否がこの時間にシフト入れてなかったり、三人が今日はここで食事をしようと話をしていなければこうはならなかっただろう。
「...そういや、否が働いてる所初めて見たかもしれない」
「え、そうなの?」
「うん。かなり忙しそうにしてたから大変そーだとは思ってたけどさ、まさかあんな働き方をしてるなんてね」
ジッと現在別の席に客を案内したり、注文品を運んだりしている否を観察しながら杏は言う。
「...いや、それは否さんが服はアレだけしかなかったからだって言ってたからじゃ...」
「あぁ、それもなんだけどね...杏が言ってるのは別の事」
「...別?」
うんと頷き、軽く杏はため息をつくような様子で杏は続ける。
「だって否の働き方さ────何かから逃げてるみたいじゃない?」
「──逃げてる?」
「そ。その何かを考えたくないから無理矢理自分を追い込んでる...みたいな」
「そうかな...」
三人の目線はそのまま否へと移る。
一見すればただバイトを真剣に取り組んでいるだけの普通の人に見える。
「私にはただバイトを頑張ってるだけに見えるよ?」
「わ、私も...」
「...うーん、じゃあ杏の勘違いだったのかなぁ。ごめんね変なこと言って」
そうは言いつつも、杏は自身の言葉に間違いはないだろうと感じていた。
上手く隠してるな、とも。
「(もしかして、否と結構付き合いあるから分かるのかな...否が何か隠してることと繋がってるのかも)」
杏は心の中で色んな可能性を考えては消し、考えては消しを繰り返していくが──今いくら考えても無駄だと思い、止めた。
「(...まだ聞くにしても時期尚早だね。何かきっかけがあればいいんだけど...とりあえず今は皆とお昼かな)ねぇ、なに食べる?」
「えっと...このパフェとか!」
「かな子ちゃん、今はお昼御飯だよ...!」
「あ、そうだった...」
そのまま三人はメニュー表からそれぞれ食べたいものを選んでいく。
否もその様子を見て微笑ましそうに...そしてどこか羨望も含んだ目線で見てから仕事を再開し始めた。
───杏の言う『きっかけ』のきっかけを作る
誤字報告ありがとうございました!