ヌヌ葉否   作:エンゼ

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今回は別の方の視点を。
短め...になるのかな?


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──プロジェクトクローネへの参加。それは今までデビューが中々出来なかった私...橘ありすにとって非常に嬉しいものでした。

 

元々私は美城プロダクション内ではあるけど別の部署に所属していました。将来は音楽関係の仕事に就きたいと考えているのでアイドルをやってみたいと思ったのがきっかけです。でも...中々デビューできる機会は来ませんでした。アイドルをこのまま続けても大丈夫なのか...と悩んでいた時に声を掛けられたのです。

 

プロジェクト内最年少ではありますが他のメンバーはそんなことで差別とか全くしなくて、優しい人達ばかりです...まぁ、一部の人は私のキライな名前を呼んでからかったりしてくるんですが...

 

そして先日、私は同じプロジェクト内のメンバーで一番憧れている鷺沢文香さんとのユニットを組むことになり、それ用の曲まで貰いました。鷺沢さんは私の目指している大人の女性そのもので、とても博識なんです。現在は私達のユニットがデビューする秋の定例ライブに向けてそこ曲のレッスンを積んでいるところです。私も鷺沢さんもまだ不完全ではありますが順調に成長してきているところです。

 

...しかし、今私は悩みがあります。勿論レッスンとは別のことです。

 

ちなみにですが、私にはこの同じプロジェクトクローネ内で鷺沢さん以外で憧れている人がいます。実は、悩みというのはその内の一人に対してのことなんです。その人とは────

 

 

 

「おや、橘さん。おはようございます。お早いですね」

「...おはようございます。否さん」

 

 

 

───そう、ヌヌ葉否さんです。身長は私とあんまり変わらない否さんの一体どこに憧れているかというと、仕事に対する姿勢と果てしない体力面です。

 

このプロジェクトに参加する前、私は346カフェの前を通りかかるとき否さんを初めて見ました。その時否さんは何故かタキシードを着ていたんですが、全く笑顔を絶やさずキビキビと仕事をこなしていました。仕事が出来る女という感じがして格好いいな、とそこで私は思いました。

 

そして、同じプロジェクトに所属しての初めてのレッスンの時...なんと2時間も休憩無しでトレーナーさんのレッスンを受けてたんです。今までここでレッスンをしてきた私でさえその日はハードだったと思ったのにも関わらず否さんは...

 

『今日はここまでですか?...むぅ、そうですか』

 

と、物足りなさそう言ったんです!

ありえない...と、浮き出てきた感情を隠しつつ否さんにその体力をどこで鍛えたのかと聞いてみると...

 

『えぇと...以前に空手やダンス等の習い事をしてまして...』

 

そこで死ぬほど体力作りをしましたから、と言ってました。

 

アイドルのLIVEというのは実際に行ったりやってみたりしたことある人なら分かるかと思いますが、長時間で一人何曲かする場合もあります。

 

つまり非常に体力が重要となるわけです。元々運動はしてきましたが更なる体力向上を目指そうと決意したときまた否さんから声がかけられました。

 

『後は身体の効率のいい動かし方を自己流で見つけたんです。長時間パフォーマンスが続けやすくなるというやつです』

 

良かったら軽くですがお教えましょうか?という提案に私は即座に乗りました。

 

自主レッスンするため部屋を探しましたが空いてなかったので近くの公園ですることになり、動きやすい格好になって集合し始めました。

 

否さんのアドバイスはとても的確で分かりやすいもので、私のダンスを客観的に見て指摘してくれたり躓いているところのコツを教えてくれたりしてくれ、見た目とは大きく違ってとても大人な人なんだと思いました。

 

そんな否さんに対しての悩みというのは────この人、全くと言っていいほど休みを取らないんです。

 

レッスンの休みをそれぞれ週2に入れてるのですがその日はバイトをしており、尚且つバイト中もにカフェの店長さんが無理言わないと休憩しないんです。実際に見てたから分かります。

 

それに改めて考えてみると、否さんは習い事をしてたのは結構前らしいですからそれなりに体力は落ちてるはず。絶対否さんは無理をしてるんです。

 

更にです、この前否さんが誰もいない場所できつそうに壁に寄っかかって息を整えてるところをこっそり見ました。確実に疲れが溜まってる証拠です!

 

...正直言って、トレーナーさんも美城常務さんもお手上げの様子です。デビューが控えてるのでレッスンを禁止には出来ませんからね。ならその二人よりも否さんに近いクローネのメンバーでなんとかしたいのですけどその事実を知ってるのは多分私だけです、私がなんとかしないと......

 

 

「ふむ...よし」

「いや待ってください否さん。来たばっかりなのにどこに行くんですか?」

「何って...自主レッスンですよ。多分部屋は空いてないんで公園に行きます」

「...否さん。私、否さんが自主レッスン禁止されてること知ってるんですよ?」

「えっ......」

 

あの事を見たその日に私は咄嗟に常務さんに報告しました。常務さんは少し頭を抱えてから教えてくれたんです。

 

『そうだな...彼女のことを気にかけてる君には伝えておこう。彼女のこれからレッスン時間以外の自主レッスン、及びバイトを禁止した。実は彼女は休みという休みを全く取っていなくてな...もし都合が良ければでいい、彼女が自主レッスンをしないよう見ていてほしい』

 

無論そのつもりです。だって...否さんには倒れてほしくないですから...

 

「...なるほど、今理解しましたよ。橘さん、貴女は勘違いをしています」

「勘違い?」

「私、先日デビュー曲を頂きました」

「それはおめでとうございます」

「それと同時に、確かに私は自主レッスン禁止を言い渡されました」

「はい」

「ですがこれは『私の曲だけの自主レッスンの禁止』であり全体曲とかには影響ありません。つまりは全体曲の自主レッスンはオーケーなのです!」

「なるほどそれなら......ってダメです!自主レッスンは自主レッスンだから禁止です!」

「...そうですか...」

 

一瞬落ち込んだ否さんでしたが、いきなりスッと復活しまたドアに手を掛けました。

 

「では『散歩』に行ってきます。レッスンまでには戻りますから」

「散歩...ならいいです。きちんとレッスンまでには戻ってきてくださいね」

「分かってますよ。では」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やっほーありすちゃーん♪げんきー?」

「...宮本さん、おはようございます。後、橘です」

「んー今日のありすちゃんもゼッコーチョーみたいだね!フレちゃんもゼッコーチョー♪」

「ですから橘ですって...」

「んーゼッコーチョーと言えば、さっき近くの公園で否ちゃんがめっちゃ張り切ってトレーニングしてたような─────ってあれ、ありすちゃーん?? どこいくのー??」




次も多分ありすちゃん視点辺りになるかと思います←

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