ヌヌ葉否   作:エンゼ

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難産...でした。
ありすちゃん視点といいましたね。あれは嘘だ。
違和感ありまくりんぐですがどうぞ。


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...どうも皆様、ご機嫌はいかがでしょうか。少なくとも私は少しだけ悪いかもしれません。

 

えぇ、私は...というか私の所属してるプロジェクトクローネのメンバーはデビューライブとも言える秋の定例ライブに向けて貰った曲のレッスンをしているわけであります。もう既にある程度は露出していて正真正銘のデビューとは言えないかもしれませんが、ライブをするのは初めてなのでデビューライブです。

 

そういうわけでプロジェクトクローネの皆さんは...いえ、私は内心割と焦ってるのですよ。

 

そりゃですよ、最初から完璧なんてのはあり得ないのは十分承知していますし、例のライブを見に来るであろうお客様も正直そこまで期待していないと思います。ですが、私はプロジェクト内では最後に曲を貰った立場。つまり一番遅れているというわけです。ある程度仕上げないと他のメンバーにまで影響が及んでしまいますし、何より私自身が納得出来ません。

 

そのためには普段のレッスンだけではダメなのは確定として、自主レッスンを入れる予定だったのですが......それは美城さんから『禁止』という死の宣告に等しいものを受けてしまったので出来ません。不味いです。

 

バレたらマジでヤバいですが、私はその美城さんの言葉を『君の曲以外の自主レッスンは禁止してない』という風に私の中で都合良く改変し、全体曲の自主レッスンをしてるという体で誰も見てない時にその曲をレッスンしようと思ってたのですが......残念ながら中々一人になれません。

 

えぇ、実はこれが私のちょっと不機嫌な理由です。プロダクション内にいる間ほぼ一人にさせてくれないとある人に対してなんですよ。そしてその人とは─────

 

 

「否さん、どこに行くつもりですか? まだレッスンの時間まで一時間はありますよ?」

 

 

─────橘ありすさん...なんです。

 

橘さんはとても真面目でして、自分にも他人にも結構厳しい方です。プロジェクト内最年少なんですが、とてもしっかりしていて、どこか同じユニットを組んでいる鷺沢さんに憧れを抱いている節があります。あと何故か名前に対してコンプレックスを持っているようで、名字呼びをお願いしてきます。そのせいか毎回宮本さんや塩見さんに弄られているんですけどね。

 

そんな彼女ですが、よく最近私のそばにいます。明らかに私を一人にしないようにしてるのは確定です...私、何かしましたかね? 何故か自主レッスン禁止のことも知ってましたし、この前もこっそり自主レッスンしようとしたら怒られましたし...なんですかね、美城さんから見ててくれとでも頼まれたんですかねこの娘は。

 

まぁ私が知らないだけで自主レッスン禁止令は他のメンバーも知ってる可能性ありますけど。

 

「えぇ、残念ながら暇を潰す道具は持ってきていないので...散歩にでも行こうかなと」

「それなら私も行きます。いいですよね?」

「...まぁ、いいですが」

 

ここでそうですか、とでも返されたらそのまま自主レッスンに行くつもりだったのに...そう上手くはいきませんよね。はぁ......

 

「あ、否。今日のお昼、一緒に食べない?」

「? は、はい。構いませんが...」

 

出ていこうとしたら唐突に速水さんからこう言われました。あまりにも急だったために返事がおぼつかないものになってしまいました...

...さて、本当に散歩に行くことになってしまったのですが...どこへ行きましょうかね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「...なんで皆さんここに...」

「皆、興味があるからよ」

 

お昼時。一緒に食べると約束したので、その後指定されたレストランに向かうと...なんとプロジェクトクローネ全員集ご......あ、橘さんと鷺沢さんだけいませんね。

 

一瞬人数に違和感を感じなかったのはその二人の枠にシンデレラプロジェクト所属のアナスタシアさん、渋谷さんがいらっしゃったからでした。何故他のプロジェクトメンバーが? とは思いましたが、少し前から美城さんがスカウトしていたようでして、兼任という形でここにいるようです。忙しそうでうらやましいですね...

 

「ところで、興味がある...とは?」

「ほら、最近ありすちゃんが否の後ずっと着いていってるじゃない? 否が何かしたんじゃないかっていうのを聞きたいわけよ」

 

その言葉に皆さんが頷きます。というか、全員でこっち見るのやめてくれませんかね。怖いんですけど。

 

「別に、何もしてませんよ。恐らく私を監視しているんだと思います」

「監視? ってことは何かしてるってことよね?」

「...とりあえず注文してもいいですか? 他の方々のはもう来ているみたいですし」

「ええ、いいわよ」

 

ベルを鳴らして店員さんを呼び、メニュー表にあった日替わりランチを注文します。以前杏がここの日替わりランチは美味しいと言っていたような覚えがあるのでそれを手がかりに選びました。そういえば...こういう店に来るのは初めてかもしれませんね。

注文が完了し後は料理が来るのを待つだけになった頃、質問が再開されます。

 

「それで、なんで監視されてるのかしら?」

 

...ふと、私は閃きました。

橘さんが私のことを理解してくれなかったのはまだ幼かったからのではないかと。ならば、ここにいる私と歳が近いメンバーは私の考えを理解してくれるんじゃないかと。

私はそれを話すことにしました。

 

「橘さんが私が自主レッスンをしないかどうか監視してるんですよ」

『...え?』

 

...おや、何故か全員の動きが止まりましたね。

 

「言葉の通りです。私はクローネでは最後に曲を貰ったので仕上がりは不完全なのですが、何を思ったのか美城さんが自主レッスンを禁止されたんですよ。恐らく美城さんから監視してくれと頼まれたんだと思いますが......正直、止めてほしいです...」

「み、美城常務から禁止って言われたの...?」

「はい...ですがおかしいですよね? この中で一番遅れてるのは私なんですよ? なのに自主レッスン禁止だなんて...私は疲れないのに」

「...それよ」

「...それだね」

「...うん、それだ」

 

...あれ、なんか流れがおかしくなったような。

 

「...否、ちゃんと休んでるの?」

「休みなんて取らなくても動けますよ。仮に休んだら効率が落ちると思います」

 

...え、なんで呆れられたような目線で見られるんですか。居心地悪いんですけど...

あ、料理が来ましたね...これは美味しそう。いただきます、っと。

 

「...こりゃ見てられないよ」

「ワーカホリックってやつだねぇ否ちゃん...」

「これってありすちゃんだけで監視の目足りるかしら...」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なんかプロジェクトクローネメンバー全員が私を監視してくるようになったんですが...これ、自主レッスン諦めたほうがいいかもしれませんね...解せませんが。


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