さて、本編へどうぞ。
あ、キャラ崩壊注意です。
あれから、キリのいい時間に自主レッスンを終わらせ、控え室に戻りました。
戻ると私に対して皆さんは何か言いたそうな表情をされていましたが、私は切り替えをもう済ませていたので気にしてないという風な様子を見せ、無理矢理ライブへと意識を向けさせました。悪気が無いことは重々承知なのでそんなに気にしなくてもいいんですがね...
───そして時間が過ぎライブが始まって早一時間が経ってしまいました。私達、プロジェクトクローネは開始から一時間半頃から...つまり、あと三十分もすればクローネの出番なのです。
私の出演順は何故かラストとなります。ラストを飾るのはシンデレラプロジェクトの渋谷さん率いるトライアドプリムスのほうが相応しいかと思うのですが...クローネの中では一番期待されてるユニットですからね。その次にアナスタシアさんあたりでしょうか。何せ、渋谷さんとアナスタシアさんはシンデレラプロジェクトにより知名度は他に比べ圧倒的に高いですからね。その他の方々もダンス等私より上のはずなのです。やはり相応しくないでしょう...しかし、文句を言える立場ではないので従うしかありません。納得はしてませんけれど...
...そして、現在ステージにいるのはシンデレラプロジェクト──だけではないですね。主となるのはシンデレラプロジェクトの方々ですが、そこに菜々先輩を初めとする別の部署に属している方々をちらほら見かけます。
今控え室の中継テレビからその様子を見ているのですけれど......やはり皆さんダンスの完成度が高いです。羨ましくなるレベルに...いいえ、妬むのはあまりよくありません。自身のレベルが足りてないのが悪いのですから。残念ながら今から自主レッスンをしに行く暇はないですし場所もありませんからこのままでいくしかありません。見に来てくださっている方々は失望するでしょうが...腹をくくりますか。最悪アイドルを辞めることになるでしょうけど、私の責任なので文句は言えません。
「...大丈夫? 否。険しい顔してるわよ」
「おや、これは失礼しました。ありがとうございます速水さん」
急いで表情を戻します。全く、何のためにバイトでポーカーフェイスを身に付けたのやら。こういう場面で使ってこそでしょうに。
「......」
「...速水さん?」
「...いえ、なんでもないわ」
「?」
どうしたんでしょうかね速水さん...緊張、されているんでしょうか。なんとなく、らしくない感じがします。
そういう面から見ると、私も緊張しているのかもしれません。なんとなく不安になるような感じがしてしまいます。
とりあえず一度内心を落ち着けるため辺りを見渡してみます。既に皆さん、ステージ用の衣装になっている状態です。
皆さん、かなり似合っています。とても眩しいほどに...クローネの衣装の基調となっているのは黒ですが。
当然ですが、私の衣装も黒が主になっています。というか私を含めた全員以前のPV撮影で着たやつまんまですね。簡単に私の衣装を説明するとタキシードレスです。
...おや、誰かの足音?
「すいませんクローネの速水さん、スタンバイお願いします」
「...」
...もう、ですか。最初である速水さんが呼ばれた、ということはそうなんでしょうね。
チラッと皆さんの顔を伺ってみますと、全員の顔つきが強張ってます。速水さんに至ってはもうすぐだからでしょうか、かなり表情が固くなってます。うーむ、これではいけないですね...
「速水さん」
「...否?」
...咄嗟に声をかけてしまいました。
あ、確かここで『頑張って』は逆効果なんでしたっけ? ええとじゃあなんと声を続ければよいか...しかし声をかけてしまったからには何かを続けなくては......
「...今日は、楽しみましょうね!」
「......」
...やっちまいましたよ私。これって『頑張ってください』とほぼ同じじゃないですかぁ! あぁ私としたことが、さらに緊張をさせてしまうことに...そもそも声をかけてしまった時点で失敗でしょうに! うう、申し訳ありません速水さん...
「...ありがとね、否」
「...へ?」
「じゃあ、行ってくるわ」
「あ...」
何故か私に微笑みを向けたかと思えば、そのまま控え室を出て行きました。心なしか、少し肩の荷が降りていたような...幻覚でしょうが、そうであってほしいですね。
心の中ですから許してくださいね速水さん......頑張ってください。
─────────────────────────
クローネの番がやって来ました。最初である速水さんですが、特にアクシデント等はなく、無事にステージを終えて来ました。歓声も凄まじく、成功したと胸を張って言えるでしょう。
それに勢いが付いたのか続けてアナスタシアさん、塩見さん、宮本さんもあまり緊張を様子はなく、無事にやりきっていました。宮本さんが緊張していたとき無表情で怖かったのでもとに戻ってくれて割とほっとしてます。
さて、現在ステージにいらっしゃるのは大槻さんです。彼女もさほど緊張の色は見えず楽しそうに踊ってます。やはり完成度は高い...私とは大違いです。曲の終盤に入りましたが、綻びは全然見えませんよ...
そうこうしている内に大槻さんの出番は終了。続けての出番は鷺沢さんと橘さんのユニットの出番のはず...ええ、確かにそうでした。
...おや、何やら妙に控え室の外が騒がしいですね...
「何かあったんでしょうか?」
興味本位で控え室から出てみると──何やら会話が聞こえてきました。
「鷺沢さん、緊張でダウンしちまったってよ」
「マジか...とりあえず、上にどう動けば聞きにいく!」
「俺は向こうの人探して伝えてくるわ!」
...今の話...
私は控え室から出てステージを出るところへと向かいます。そこにいたのは...蹲ってる鷺沢さんと、それに声をかける橘さん、そして忙しく走り回ってるスタッフさんたちでした。
私は迷わず鷺沢さんのもとへ行き、顔を近づけ声をかけます。
「鷺沢さん、まずは深呼吸をしましょう。私に続いてください」
わざとらしく呼吸の音を大きく立て注意を引きます。それに気付いてくれたのか、鷺沢さんは私の真似をして深呼吸を始めました。
...この調子では、ステージに上がるのは厳しいかもですね。
「橘さんは水をお願いします。コップ一杯を医務室に」
「わ、分かりました」
「鷺沢さん、医務室へ行きましょう。立てますか?」
鷺沢さんは一回コクリと頷き、自力で立とうとしますが...転けてしまい立てなさそうです。確かにまだ身体は震えていますからね...私の身体がもう少し大きければ鷺沢さんを支えれるのですが...と、悩んでいると、速水さんと女性スタッフさんがやって来ました。
「私達が代わりに医務室に連れていくわ...文香、行くわよ」
...ふぅ、なんとか鷺沢さんの心配は一段落と言ったところでしょうか...さて、ここで問題となってくるのは出演順です。橘さん、鷺沢さんユニットが出られないとなると代わりに誰か出なくてはならないでしょう。そうでなくては観客の皆さんに迷惑がかかりますからね。
とりあえず美城さんに報告をすべきでしょうが...
「あの人どこにいるの?!」
そうです。大槻さんの言う通り、どこにいるのか分からないのです。一応そこら辺のスタッフさんに連絡するよう言っておきますか...おや、ステージ裏のほうで声が...
「出演順を入れ替えなくては...」
「...そうですね、なら──」
...その権限を持つ方がいるのでしょうか。なら、話は早いですね。
「私が出ます」
「! 貴女は...」
「プロジェクトクローネ所属ヌヌ葉否、17歳です。出演順を入れ替えるならば、先に私を出してください」
「...しかし、」
「時間があまりありません。すみませんが、早めのご決断を」
「...やむを得ません。分かりました。ヌヌ葉否さん。よろしくお願いします」
「了解しました」
おや、どうやらシンデレラプロジェクトの皆さんが場繋ぎをしてくれていた様子...本当にありがとうございました。
「待って、否」
「...渋谷さん?」
どうしたんでしょう。かなり真剣な表情です。
「緊張、してるよね?」
「...ええ、していないと言えば嘘になります」
「やっぱり、身体震えてるよ」
...あれま、流石に震えは消せませんか。これを隠せるようになれば完璧なんですけどね。
「...私達が先に出ようかって聞こうと思ったんだけど...意志は固そうだし、代わりにちょっとだけアドバイス...いい?」
「なんでしょう?」
「...ステージに出るときに好きな食べ物を言ってみてよ。気合いが入りやすくなるから」
「なるほど、それはいいことを聞きました。ありがとうございます渋谷さん」
「役に立てたなら良かった...あ、もう一ついい?」
「どうぞ」
「否ってさ、かなり他人行儀だよね。誰に対しても。なんかむず痒く感じるから、せめて名前で呼んでよ」
「...へ?」
「ほら、『凛』って呼んでみて」
「えっと、あの」
「.........」
「...凛さん、で許してください」
「...ま、今はこれでいいかな」
...なんかやりきった感出してますね渋谷さ...凛さん。
「あの、何故私にこんな話を...?」
「なんか放っておけないんだよね、否って。だから...かな?」
「...そうですか?」
なんか複雑な気分ですね...遠回りに危ない人認定されてませんかね?
「すみません。ヌヌ葉さん、お願いします!」
「あ、はい!...では、失礼します」
「うん、行ってらっしゃい」
ステージ裏に立ち一呼吸おきます。
さて...好きな食べ物、ですか。特にこれというものはないのですが...そうだ、あれでいきましょう。いつもお世話になってるあれです。
「五秒前!」
四。
三。
二。
一─────
「──カロリー、メイトォ!!」