「...ねぇプロデューサー、冬のシンデレラの舞踏会ってさ、出来るだけ杏達の要望聞いてくれるんだよね?」
「はい。出来る限り案を採用をさせていただきたいと考えていますが...」
「実はその舞踏会でのお願いが一つあるんだけど、いい?」
「ええ、どうぞ」
「それじゃあ言うね、それは────.........」
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時間が経つのは早いもので、秋の定例ライブが終了してから一週間が過ぎようとしています。その様子は私の中ではかなり印象が強く、もはや昨日のことのように思い出せます。
実は今日美城さんに後で来るよう言われているのですが、それまではまだ時間があるので自主レッスンでもやろうかと思ってましたが、何故か橘さ...いえ、ありすさんを初めとする皆様から監視されてますので、時間まで秋の定例ライブのことについて振り替えってみることにします。反省点とかも見つけないといけませんからね。
私が凛さんに教えてくれたやり方でステージ入りしたあと、私は中央に立ち、深呼吸をしてマイクのスイッチを入れて語ります。私にはスポットライトが当てられている状態であり、かなり目立っています。
『プロジェクトクローネ所属、ヌヌ葉否と申します。先ほど放送であったように、少々トラブルが発生したため先に私がやることになりました。しかし、全力を尽くしますので、どうぞご覧ください』
スタッフさんは放送で伝えたと言っていましたが、改めて私でも観客の皆さんに伝えます。そこで何か反論が来るのかと少し警戒をしていたのですが、逆に《頑張れー!》という応援の言葉が聞こえました。なんと優しい方々なのでしょうか...思わず感動してしました。
しかし私はそれを抑えつつ、続けます。
『では聞いてください、私のデビュー曲...「I AM DREAMING」!』
それを言った直後、曲のイントロが流れ始め、同時私は目を瞑り、右手を正面を通して真上へと曲に合わせて少しずつ上げていきます。その際指は親指と中指を合わせている状態に。
そして右手が真上へと到達し、曲も一瞬止んだ時、指を弾いて目を開け、囁くように呟くのです。
『───It's begin.』
...実は、この後のことはよく覚えていません。頭に本番前に立てた修正案などなく、もうとにかくがむしゃらに踊り歌っていました。
───そして、気付いたら曲が終わっていたのです。いつの間にか最後のポーズを決めていて、息が切れている私。そして聞こえる観客の皆さんの拍手。じわじわと、自分はやったのだ、為し遂げたのだという実感が沸いてきました。
なんとも言えないこの高揚感。もっと踊りたい、もっと歌いたいという欲求。そして...今まで感じたことが少ない「楽しい」という感情! 仕事の時とはまた違う楽しさ!!...これが、私の生きる意味...に繋がるのかもしれません。
表情がにやけていくのを堪えつつ、最後の挨拶を告げます。
『ありがとうございました!!』
その後は無事に落ち着いた鷺沢さ...文香さんとありすさんが私の次に、さらにその次にトライアドプリムスが出て、無事に秋の定例ライブの幕を閉じました。
その終了後にクローネの控え室で祝賀会みたいなのをしたのですが、その際に凛さんにのみ名前呼びをしていると...皆さんに何故か文句を言われてしまいました。そしてそこから色々あり、結局クローネの皆さんを名前呼びすることになったのです...どうしてこうなったのか。あと一人だけ名前呼びされてた時の凛さんが少し得意げな表情をしていたのは何故なのでしょう...
まぁ、ともにもかくにもこんな感じですね。
うーむ...肝心なライブをしていた場面を覚えていないのは残念です。美城さんに会いに行くとき、ついでにライブ映像があるか確認してみましょうか。
──おや、気付けばこんな時間に...そろそろ行きますか。
「否さん、どこへ行くんですか?」
「本日は美城さんから呼ばれていましてね。今から常務室に行くところです」
「...そうですか」
ありすさんから疑いの目線が持たれてますが、私の進路方向にはレッスン出来るような場所は無いのでそんなに疑わなくてもいいですのに...まぁいいです。
ふむ、そういえば美城さんと直接対面するのは久しぶりでしょうか。ライブ終了後に軽く全員に対して「よくやった」的なことを言ったぐらいですから...怒られはしないでしょう。きっと、ええきっとですけれど。
そんなことを考えている内に到着しました。ノックを4回し、自分の名前をいいます。少しすると「入りなさい」と言われたので入り、ソファに掛けろとも指示をされたのでソファに腰を掛けました。美城さんの雰囲気からして怒られる案件ではなさそうです。
「久しぶりだな...こうして君と一対一で話すのは」
「そうですね。時が流れるのは早いものです」
「そうだな...さて、少し話をするとしよう。先日の秋の定例ライブの感想を聞かせて欲しい」
「分かりました」
私は先ほどまで考えていたことを隠さずそのまま話します。あの高揚感や達成感、もっとやりたいという感情。そしてそれが、生きる意味に繋がるものなのかもしれないということも。
「──そうか」
一つそう言い、美城さんは考え込むような姿勢になりました。そして十秒ほどし、美城さんは私にこう言いました。
「一つ、君に話がある」
「...なんでしょう?」
「冬に行われる『シンデレラの舞踏会』を知っているだろう」
「『シンデレラの舞踏会』...ですか」
勿論知っている...というか、最近美城プロダクション内で噂になっていることですね。詳しくは知りませんが、何やらシンデレラプロジェクトを中心に計画されているそうで、プロジェクトの壁を越えて声がかけられているそう。
「定例ライブよりも大きなライブであることは間違いない。よってプロジェクトクローネもそれには参加するのだが、君個人にはクローネとはまた別件で話が来ているんだ」
...妙に胸騒ぎがします。
「...ちなみに、その話はどこからでしょう?」
「シンデレラプロジェクトの...双葉杏からだな」
「杏から...?」
右手が震え始め、思わず左手でそれを抑えます。
...なんでしょう。この感覚は...
「そう、君には───
───舞踏会で、双葉杏とユニットを組んで貰いたい」
やめて! まだ色々不安定な否にこんな提案したらトラウマストレスがマッハになっちゃう!
お願い死なないで否! 貴女が倒れたら皆が心配しちゃう! まだ理性は保ってる! ここで話を断ればこれ以上酷くならないで済むんだから!
次回、「否死す」。デュエルスタンバイ!