次も含めて急展開っぽいので賛否両論ありそうですが...最初から考えてたことなのでお許しを...
ではどうぞ。
「───過労、です。かなり酷いので相当な疲労を溜め込んでいたのでしょう。しかし命に別状はありません。危なかったですね、もう少し後だったら命が危うかったかもしれません。ですが、暫くはこちらの方で安静にしておいたほうがいいでしょう」
「...そう、ですか」
「............」
否が倒れて、緊急搬送された。
今、私とプロデューサーがいるのは否が搬送された346プロから一番近い病院。否が寝ているベッドの横から否の担当医から症状を聞かされたところだ。
そういえば...初めてかもしれない、否の寝顔なんて...こんな形では見たくなかったけど。
「...双葉さん」
プロデューサーが声を掛けてきた。顔を否からプロデューサーの方へと移すと...何やら深刻そうな顔つきをしていた。
「申し訳ありませんが...ヌヌ葉さんが倒れてしまったことにより、限定ユニットを解散ということになります」
...そこまで、驚かなかった。覚悟はしていたんだと思う。予測も出来ていたんだろう。
本音を言えばやりたい。まだ否を知りたいし、足りない。でも、結果この様だ...
...それにしてもやっぱり気になる。何が否を──
「...一体、何が彼女をここまで突き動かしたのだろうね?」
ガラッと扉が開き、否の病室にとある人物が入ってくる。その人は...私が割とよく知る人物だった。
「今西さん...」
「すまない、双葉君に少し話があるんだ」
「...わかりました」
「助かるよ」
プロデューサーが病室から出ていき、代わりにさっきプロデューサーがいた位置に今西さんがやって来て、否のことを優しげな目で見つめる。
今西さん...プロデューサーより立場が上の少し老けた男の人。かなり優しくて何かあればアドバイスをくれる人。最近はあの常務のところによくいるからあまり会ってないかな。
「ヌヌ葉君の...いや、ここは敢えて名前で呼ぼうか。否君のことはカフェでアルバイトをしている時から見ていてね。10代にして働くことに異常なまでに関心を持ち、アイドル候補生になってからもレッスンの休日でもバイトをするほどだった...」
「......」
「ただのワーカホリックではない...そのことは分かってるね?」
「...うん、そりゃあね」
「ここまで否君を突き動かしたのはなんだと思う?」
この人も気づいてたんだ。否の異常性に...
...私が分かってるのは『否は何かから逃げている、恐れている』ってことだけ。その『何か』は私は知らないし、知りたい。だけど現状それを知る方法はない。だけど...
「...分かんない。だけど、きっといつか教えてくれると思う」
「どうだろうね、私は君に教えることは決してないと思うよ」
「...どういうこと?」
いつものような微笑みを浮かべて諭すように今西さんは続ける。
「否君はおそらくね、知られてほしくないのさ。特に杏君、君にはね」
「...なんで?」
「誰にも言えないほど酷いもの、と私は思うよ。それか杏君を巻き込みたくない、とかかな? どちらにせよ、否君の本意は否君にしか分からないけれどね」
優しい目付きで否に目をやる今西さん。
「実はね、否君が346プロにきた経緯には私の知人が関わっているんだよ」
「知人?」
「そうさ、もうずっと前のね...そして最近、否君の件で久々に連絡してきたんだ。うちで務めてた否君をそっちで働かせてほしい、とね。それも必死にさ」
その知人って、もしかして否の前のバイト先の人かな...結局何が言いたいんだろう、と少し疑問と苛立ちが出て来はじめたけど、まだ何かあるだろうと思って続きを待つ。
「その必死さに理由をあまり聞くこと無く話を通して346カフェを紹介したんだけどね。偶然346プロも人手不足みたいだったから...と、それはいいか」
少し苦笑し、更に続けた。
「──彼なら、否君について...ここまで否君を突き動かせさせた何かを知っているかもしれない」
「!」
───その言葉に、私はピクッとした。
「最初私はね、否君の容姿関係かと思ったんだよ。否君の容姿は杏君にそっくりだから、それ関係かなってね。実際、時期も杏君のデビューして少し経った頃だったしねぇ...でも、彼の必死さはそれが原因だとすると少し弱い気がしてね...何か他にある、そう感じたんだよ」
.........
「あくまで可能性、だよ。でももし、否君のことが知りたいなら...彼のもとを訪ねるといいかもしれないね」
そう言って今西さんは懐から折り畳まれた紙を一枚渡してきた。受け取ってそれを開いてみると...とある場所に印がつけられている地図だった。しかも、そこは346プロから近くの場所だった。
「...これは?」
「彼がおそらくいるところさ...といっても、これは彼から連絡を受けた時に渡されたんだけどね。いずれ使うだろう、って」
...その人が何を知っているのか分かんない...けど、ここで迷っているだけじゃ始まんないよね。
「...」
「...そろそろかね。じゃあ、私はここで失礼するよ。それを生かすかどうかは任せるからね」
最後にそう告げた後、今西さんは病室から出ていった。それと同時に交代でプロデューサーが入ってくる。
「...これから、どうされますか?」
...敢えて話の内容は聞かないんだ。ありがとねプロデューサー。
「...ちょっとさ、杏用事が出来たんだ。今からそっちに行くから」
「では、その場所まで送りましょうか?」
「いや、いいよ。意外と場所は近いし、一人で行けるから」
「分かりました...では、先に失礼します」
プロデューサーも出ていってしまい、ここにいるのは私と否だけになった。
点滴されてて、酸素マスクみたいなのをつけられて静かに眠っている否の頭をなんとなくそっと撫でてみる。
「──早く起きてね。飴、楽しみにいつも待ってるから」
ポケットの中にある無くなりかけている飴の入った小さな袋を握りしめ、私は病院を出て、地図を頼りに目的の場所へと向かい始めた。
これから投稿ペースはガタッて落ちます。
最悪の場合一年後とかになるかもしれません...すみません。
必ず完結はさせるので待ってくださると嬉しいです。