いつもながら急展開ですが、どうぞ...
むかしむかし、あるところに一人の男がいた。
そして、男には双子の兄がいた。その兄は所謂『天才』と呼ばれる存在。一度やらせれば初めての事でも人並みに、二度やらせれば上級者に近いレベルで何でもこなすタイプの人間だった。更に兄は人柄も良く、友人も沢山おり、充実した毎日を送っていた。
では、弟である男はどうか? 彼の人生は悲惨なものだった。頭は良かったが兄ほどでなく、人付き合いは苦手で殆どの時間一人でいるような性格であった。
そんな双子となれば、比較されるのは当然のことだった。男は、
『どうして兄は出来るのに、貴方は出来ないの?』
『どうして兄と違ってお前は何も出来ないの?』
こんなことを常に言われ続けていた。
男は努力家であった。なんとか彼らを見返すため、必死に勉強したり、走り込みをしたりした。兄が手を出さないようはジャンルのことに取り組んだりもした。
確かにそれで一定の評価な貰えた...だが、それだけだった。結局は、兄ならもっとやれる。もっと上手く出来るなど言われ、挙げ句の果てには弟と仲良くなりたいということでそのジャンルに兄まで取り組んでしまった。
いつも注目されるのは兄。皆口を揃えて兄、兄、兄だとほざく。
男は考える。何故、こんなことになったのか。何故、自分はこんな目にあってしまうのかを。
そこで、彼は思い至ってしまう...全てあの『兄』のせいだと。
それから、彼は兄を憎み始めた。兄に注目していたやつらをいつか見返してやると常に思い続けた。
だが、それは殺人衝動ではない。前述したように、兄ほどではないが彼は頭は良かった。殺したとしてもそれは意味が無いことであるし、殺すなんてとても出来ないからだ。
何かしらのことで見返す。そのために彼は生き続けていた。
高校を卒業してからのこと。彼は親元を遠く離れ、連絡などせずに静かに暮らしていた。
家を離れたお陰か、段々と復讐心が薄れたのだろう。彼は落ち着いた人物となり、恋人が出来、最終的に結ばれることとなった。彼の背景を聞いたその恋人は親を無理矢理説得し、本当にあまり人を呼ばず些細な結婚式を挙げた。このままいけば、彼の人生は平凡な幸せを味わい終えれた──────このままだったなら。
結婚してから暫く、彼のもとに一つの噂が届く。それは──兄は結婚し子供がいる、という知らせだった。
信憑性なんてない。兄というとは男の兄ではなく別の人物の兄だったのかもしれない...だが、男はその噂が事実であると感じるとると共に、復讐心がまた芽生えだしてきた。
そこで男はとある策を思い付く。それは...自分の子供が兄の子供を超えれば、自分は兄を超えたことと同じであると。暴論かもしれないが、彼はそれを目標にし始めた。
しかし、彼ら夫婦には子供がいなかった。というより、出来づらい体質だったのだ。そこで男は孤児院から子供を一人引き取った。奇しくも、その容姿は兄の子供とそっくりであったらしい。妻の反対を無理矢理押しきり、子供に彼は名を──『否』と名付けた。
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「『否』って...」
「彼が何の意図でこの名前を着けたのかは不明だけど、予測は容易に可能さ。自分の子供だけど自分の子供じゃない。ただ兄の子供を超えさせるためだけの存在。そんな意図が含まれている...みたいにね」
「.........」
「...続けるよ」
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男は妻に一緒に男の実家へ行くよう頼んだ...いや、指示をした。その頃は男の急激な変化により、妻は怯えて従うくらしいか出来なくなっていたためだ。理由は、兄の子供を一目見るため。否に兄の子供見せるためでもあった。これがお前が超えるべき存在だと分からせるための。
この頃は、男は否に対し普通の教育を行っていたため、否は名前によらず、明るい性格であった。
そして、親戚が集まる日...男達は実家へと言った。偶然にも、兄の子供と否は同い年、なんと容姿もそっくりであったためか、すぐに仲良くなった...なって、しまった。
内心で何をしているんだと男は怒り、兄や兄の子供に対し憎しみを交えつつ表面はにこやかに親戚に接し、着実に情報を集めていた。男の内心を知っている妻からすれば、その怒りで身を震わせていたが。
そこで得た情報はこんなものであった。
『兄の子供は兄に負けず劣らず天才だ。昔の兄を見ているようだよ』
男に更なる怒り、憎みが包み込む。
やめろ! また俺を苦しめるつもりか!! どれだけ俺を苦しめれば気がすむんだ!!
...いや、これを超えさせればいい。あいつには兄のガキを超えさせる。そうすれば───!!!
──そこからが、悲劇の始まりであった。
男は否に数多くの習い事をさせ、トップになることを強要した。出来なければ、男が気がすむまで、その身に直接
否は最初こそ喚き、助けを求めたが────助けなどないことを自覚すると、男に怯え従順になった。明るい性格など消え失せ、相手の機嫌を損なわないため常に敬語を使って話すようになってしまった。
その頃の妻は子供を助けないとと思う母親としての精神、虐待を平然と行う男へと恐怖との板挟みになり、精神を病み、病院に収用されてしまった。口がまともにきけなくなったため妻の実家は男に事情を聞こうとするが、男は平然と嘘をつき、実家側は見事に騙されたという。
否に対しては、妻は交通事故で死んだと男はまた嘘をつき、否の逃げ場になるかもしれなかった場所を完全に無くしたのだった。
否はトップに君臨し続けた。そうしなければ、自分が苦しむから。もう、痛いのは嫌だから。否は逃げるように打ち込み続けたのだ。ただがむしゃらに、ひたすらに。
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《何でこの程度のことさえも出来ねぇんだよ!!》
《糞が!! 何のために生かしてると思ってんだ!!》
《お前に双葉を名乗る資格なんて無い...そうだ! お前は今日から『ヌヌ葉』だ!! 糞みたいな名字だろ? お前にはそれで十分だ!!》
「...止めて、ください...! 嫌です、嫌...もう、見たくない...!」
『うん...私だって...でも、向き合わないといけない。私はもう覚悟は決めた...でも見て? こんなに私も震えてるの...でも、乗り越えないと...』
「...乗り越えることに、意味...あるの?」
『
「...わか、りました...それに意味が、あるなら...乗り越えて、見せます...!」
『うん、頑張ろう...
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父親である男の言いつけを守り、トップを取り続けた否だったが、学校ではそうもいかない。勉強時間はいいとして、何もやることがない時間がある程度できる学校で否は手持ちぶさたになってしまった。
そこで否が無意識に目を着けたのは──『仕事』であった。最初は教師の手伝い、学級委員、生徒会の役員など、とにかく現実を忘れさせる忙しいものに取り組み始め、最終的には男をなんとかの思いで説得し、バイトを始め、無理矢理帰宅時間を遅らせた。
そこから、否の仕事中毒は始まっていくのだった。そんな否に、一つの転機が訪れる────
結論から言おう。男は交通事故に巻き込まれた。即死であったのだ。
否は一人になった。しかし、目の前で男が死んだのをみたわけではない。否はまたひょっこり男が帰ってきて、自分に教育をしてくることを恐れた。習い事はお金の都合で辞め、現実逃避するためにバイトへと打ち込み始めた。
いつしか、仕事をすることが生きる意味となっており、そのように暮らしていた。あの日が来るまでは───────
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「──ここから先は、君でも知っているんじゃないかな?」
「............ねぇ、一つだけ聞かせて」
男性が話を終えた後、私は一つ問いを投げ掛けた。本当はもっと聞きたいことだってある。何でこんなことを知ってるのかとか、そもそもあんたは誰だとか...だが、敢えてこの質問をした。
「その神様はさ、なんで否って娘を見ていたのに助けなかったの?」
「...助けれなかったのさ」
男性は苦しそうに告げた。
「その神様はちっぽけでね。権力もほぼない形だけの神様だったのさ。だから、やれることなんて限られていた。例えば...居場所を作ってあげる、事ぐらいしかね...」
「...そっか。その神様は...見捨てたわけじゃないんだね」
「...」
「...私さ、やることが出来た。話してくれて、ありがとね」
「いやいや、ボクは昔話しかしてないよ。それで、君の助けになればいいんだけどね...」
「なるよ。勿論ね...じゃ、私行くよ」
そういって、私はコンビニを後にしようとする。すると最後に、男性は私の背中に声をかけてきた。
「あの娘を、頼むよ...ボクじゃ、何も出来なかったからね」
「...分かった」
振り向かずに答え、そのまま駆け足でその場を離れる。もう大分暗くなってしまったが...まだ時間はある。
行き先は病院。否の病室だ。
今更なのですが、この作品の良い点、悪い点があれば教えてくださると嬉しいです。参考にしますので...!