今回はのんびりまったりしているはずです。タグ詐欺ではないのです。
めっちゃキャラ崩壊してます。苦手な方はご注意下さいませ。
「む、こんな所に栄養ドリンク...誰かの忘れ物でしょうか?」
「おっと、何か書いてますね...『ご自由にどうぞ』?」
「...喉も乾いてきてますし、頂きますか。置いてくれた優しい誰かさんに感謝を」
「では───
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「ねぇ、今日否のこと見た?」
「え?」
346プロダクションのとある休憩所。そこに仲良く並んで座っているのは双葉杏、速水奏の二人です。所属プロジェクトも方向性も違い、二人でいることが珍しいと思われる組み合わせですが、二人には否という共通点があります。杏がクローネでの否の様子なんかを聞いたりしている内に、割と色々話す仲になったようです。
そんな二人ですが、なんとなくその空気は重そうです。
「見たって...どういうこと? 一緒に住んでるんじゃないの?」
「今日は先にレッスンしたいからって朝から先に出ていったんだよ。釘は刺したから無茶はしないはずだけど...それで、今日この事務所で否のこと見かけた?」
「いえ...見てないわ。すれ違ったのかしら...」
否と同じプロジェクトに所属する奏ですが、仕事やレッスンが被ることはあんまりありません。方向性が若干違うからでしょうか。
そして時刻は午後3時。杏が最後に否と会ったのは7時間程前ですので、少し心配のようです。
「今日は仕事は無いって言ってたしこの事務所にいるはずなんだけどなぁ...」
「...妙ね」
普通の子ならそこまで心配しないかもしれませんが、あの否です。放っておいたらいつの間にかバイトしてたり無茶して倒れる寸前までレッスンしてたりします。勿論周りが止めたり、最近では本人も少しずつではありますが自重してきたりしてますが。いい子ではあるので言われれば渋々ではありますが止めてくれます。
そんな否がある意味行方不明なのです。なんか心配になりますよね? なるんです。
「...まぁ最悪帰るまでには見つかるはず...だよね?」
「そうね...そうだといいけれど...何か嫌な予感がするわ」
「奇遇だね。杏もだよ...」
そんな時でした。
「わぁ...お姉さんたちの髪ばりキレイかねー...」
「...ん?」
「...え?」
聞き覚えのあるような、無いような、そんな感じの幼い声が二人の背後から聞こえてきました。
思わずサッと振り返ってみると──
「「...否?」」
「わぁ! 髪もキレイかったけど顔ももっと素敵やねー!」
まるで否をそのまま小さくしたかのような可愛らしい女の子がいました。といってもいつもの否が持っているような重々しい雰囲気は一切無く、その身長相応な子供らしいものを持っていました。可愛らしいですね。
「あ、自己紹介するね! わたし、双葉否っていうんです! よろしく!」
「よ、よろしくね...」
「あれー、なんかお姉さん達見たことある気がするー...似てるだけかな?...名前、なんていうと?」
「あー...こっちが速水奏で、私は双葉杏だよ」
「おぉ! ってことは杏おねーさんか! 実は私、友達に双葉杏ちゃんっているとよ! 似てるなーって思ってたんやけど名前までおんなじなんて驚いたわ!」
まだ混乱してる奏の代わりに紹介を杏はしてあげます。その間に杏はあの時の記憶と昔の記憶を探ってしてました。
「(あ、そういや否と初めて会った時こんなんだったような...)」
初めて会ったのはあの時の記憶と自分の記憶の両方に一致する親戚が集まってた日のようです。
「(...そっか、昔の否ってこんなに明るかったんだな...)」
いつもの否、そして昔の否を比較してなんだか複雑な気持ちが湧いてきている様子。否がそのまま成長していたらそれはそれでいいアイドルになっていたかもしれませんね。もう、取り戻せないことですが。
「えっと...杏? 大丈夫?」
「...え? あ、うん。大丈夫」
いつの間にか思いに耽ってたみたいで、少し混乱から回復した奏が杏に声をかけてくれてました。
その間、目の前の否ちゃんはこてんと首をかしげて不思議そうに二人のことを見ていました。かわいいですね。
ここで、奏が否ちゃんに対してまだ戸惑いを見せながら質問をします。
「えーっと...否ちゃん? 何でここにいるのかわかる?」
「えっと...知らんけどいつの間にかここにいたんよ。なんかこれが目の前にあって。持ってきちゃったけど」
「これ...?」
否ちゃんが手のひらを広げ持っていたものを二人に見せます。そこには『栄養ドリンク』とだけ書かれたそれはそれは怪しげなものでした。材料名は記載なし、志希ちゃん特性! と割と目立つ所に書かれてありました。明らかにヤベードリンクです。
「「(...これ絶対アレだ)」」
薄々感づいていた二人の考えが一つの確信へと持っていかれました。何で否はこれを疑わなかったのか。疲れていたんでしょうか。
あまり目の前の否ちゃんを心配させないためか、二人はこそこそと否ちゃんからは聞こえない程度の声量で話をします。
「...私はとりあえず専務とあの子のプロデューサーのところに行ってくるわ。否のこと頼んでもいいかしら?」
「わかった。とりあえずここで見ておくよ」
「じゃ、行ってくるわね」
スッと奏が目的の所へ行こうとしたところ、否ちゃんが反応しました。
「あ、奏おねーさんどっかいくと?」
「───っ!!! え、えぇそうよ。ちょっと用事があってね」
奏は一瞬だけ何かに目覚めそうになってしまいました。可愛らしく無邪気な子からのおねーさん呼びされたからでしょう。わかります。
「へぇー、かんばれー奏おねーさん!」
「......ちょっと本気で頑張ってくるわ」
「...程ほどにしときなよ?」
杏は呆れてますが、仕方がないことなのかもしれません。可愛い子からの応援に期待を裏切って頑張らない人などいるのでしょうか。いえ、きっといないでしょう。
さて、奏が言ってしまった後、杏は否ちゃんと二人きりとなりました。奏のこともあるため下手にフラフラと動けないこの状況ですが、そんなこと否ちゃんは知りません。否ちゃんは早速退屈してしまっていました。
「杏おねーさん! ここ探検してきてもいいやろー!?」
「だからダメだって。奏が戻ってくるまで待っておかなきゃ」
「ひーまー!」
普段からは考えられない我が儘娘っぷりです。そのことを思いつつも、少々対応が面倒になってきた杏は思わずため息をついてしまいます。
「大体...迷ったらどうするのさ、帰れなくなっちゃうよ?」
「あ、それは大丈夫やと思う。なんかね、何故か知らんけどここ見覚えあるっさねー...来たことないはずなのに」
「へぇ......(ん? ってことはやっぱり普段の記憶とかも少しはあったりするのかな...?)」
どうやら、否ちゃんは完全に幼い頃に戻ったってわけじゃなさそうです。
「(もしかして、今の否からなら...)」
──否の本音を聞き出せるかもしれない。あの時の記憶は見たとは言ってもまだ完全に否のことを知れたわけじゃないから──
そうやって思考を続けようとしたとき...突然杏の携帯の着信音が鳴り出し、思考がストップしてしまいます。あまりにも突然であったため、杏と否ちゃんは一緒にビクッと同じような表情で驚いてしまいました。
いきなりなんだと杏は少し面倒そうな顔付きで電話に対応し始めました。
「...もしもし?」
『あ、杏ちゃん?!』
「なんだきらりか...驚かせないでよ」
『もうっ、杏ちゃん! そろそろレッスンの時間だにぃ! 早く来ないと怒られちゃうよぉ!』
「あー...」
「?」
目の前の否ちゃんをチラ見してどうしようかと考える杏。レッスン時間を把握し忘れていた自分のミスだと考えつつも、否ちゃんをどうしようかと考えているようです。
「...ごめん、もうちょっと後だと思ってた。レッスンいつから?」
『あと15分で始まっちゃうよぉ!』
「15分かぁ...わかった。ありがとね、きらり」
今杏達がいるところからレッスンルームまでそこまで時間もかかりませんが、着替えや準備体操等を考慮するとそろそろ向かうべきです。レッスンするのは面倒だが後で怒られるのはもっと面倒で嫌だと杏は考えてるので一人ならば渋々レッスンに向かうでしょう。
しかし否ちゃんをどうするか。同じプロジェクトであるクローネに預けようにも事情を話す時間もないですし、そもそもクローネのルームまで行くのに時間がかかります。
「...連れてくしかないかぁ」
「え、どっかいくと!?」
暇をしていた否ちゃんには今のは救いの言葉です。目をキラキラと輝かせ杏の方を見ています。
杏はトークで奏に事を軽く説明し、携帯のしまいました。
「じゃ...行こっか」
「うん!」
手を繋ぎ、二人は並んで歩いて行きます。その後ろ姿はまるで姉妹のようです。隣でさーんぽ! さーんぽ! とはしゃぐ否ちゃんを見て、杏はまた微笑ましいような、悲しいような複雑な気持ちになりながらレッスンルームを目指すのでした。
次回以降は後編を投稿してからアフターストーリーに入っていきます。そちらの方は若干ではありますがシリアスがあるので、気長に待っててくださると嬉しいです。
掲示板の方は...すみません、もうちょっと待っててください。