ゲームのプレイ方法とかの知識どうしようね…
斬る 穿つ 躱す
無数に迫ってくる触手をかいくぐり、目の前の
また一体、それでも止まることはできない。
もう何度目か分からないほどの全方位からの触手による攻撃。
避けれるものを極力避ける
迫る触手を薙ぎ払う
それでも避けられないものは体を動かし致命傷を避ける。
その荒野は今や地獄絵図とも言えるありさまだった、無数の異形の死骸が転がり、沈みかけの太陽がその場を赤く染める。
この場に数えるのも億劫になるほど集ったそれは、決して弱い相手ではない、この世界を一度滅ぼし、必死に生きのびた僅かな命をも滅ぼそうとしている十七種の獣の一体。
恐ろしく成長が早く、殺してもその死体を盾にして高速で育ち、実質復活する、おまけに強くもなる、それが大型の個体ともなると200回殺してもまだ倒せないというのだから恐ろしい。
おまけに、ちぎれて増える、今人々ー多少語弊はあるがーが生き残る為だけに相手にしているのは偶然ちぎれてタンポポの綿毛のように飛んできた六番目だけだ、それなのに毎度毎度大きな被害が出る、こんな化け物があと16種類もいたのだ、伝承で伝わる恐ろしい速さで世界が滅ぶわけである。
その化け物がー小型とはいえー、地を覆うほど揃い踏み、その猛威を振るっているというのに。
薙ぎ払われた六番目の獣が魔力の奔流に飲み込まれ消える。
赤い剣と黒い軍服、光の無い虚ろな目、そして、かつては蒼空に例えられ、今ではその名残も残らぬ紅の髪の少女ただ一人に、世界を滅ぼす悪夢が切り裂かれ、数を減らしていく。
無論少女も無傷ではない、その逆、知識がある人物でなくても分かる程にその体は死に体だった、貫かれて、打ち付けられて、無茶な動きで捻じれて、切り裂かれて…胸と頭にこそ大きな傷はない、だがそれ以外の部位は、思わず目をそむけたくなるほどの有様だった。
それでも彼女がその手の剣を振るえるのは一重に魔力の恩恵である。
死に踏み込めば踏み込むほど力を増すそれは、幼い死者の夢たる
振り下ろす、切り払う、すれ違いざまに裂く
死にかけの体のまま、大剣を振り回し一体、また一体と六番目の獣を葬る。
切り裂き、叩き潰し、焼き尽くし・・・
…どれほど、その戦いが続いたのだろう
気が付けば、月の光の下に動くものは、紅い少女ただ一人だった。
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周囲を囲んでいた《獣》が居なくなったことに気付き、その手と足を止める。
何の為に戦っていたのかすらもう思い出せない、だけれど、もう戦う相手は居ない、それならばこの剣の出番もないと、右手の剣を放る。
私はなぜ戦っていたんだろう、自問してみるが、何も思い出せない、あったはずの理由が、掴めない。
私はなぜここにいるんだろう、分からない、呼ばれたはずの名前も、居た筈の場所も、今の私には分からない。
体が重くて仕方ない、意識が遠くて考えが纏まらない…。
視界に誰かが映った。
誰だろう、と思う、そちらを見ようと思うが、体が言うことを聞いてくれない、苦労しつつ、その誰かを視界にとらえる
「あ…」
それは、灰色の少女を抱いた黒髪の青年だった。
頭では思い出せない、けれど、自分を失ってなお残る願いが覚えている、
私を待ってくれた人、私に希望を見せてくれた人、そして、私が笑っていてほしいと望んだ、けれど同時に、私の為に泣いて欲しいとも思った、私のことを泣いてしまうほど思ってほしいとも望んだ、大切な人だ、その人に泣いていていて欲しいとか、我ながらひどい奴だなと呆れもする、でも、覚えていなくても今はそれが私なのだと思える。
そして、そんな自分でも分からなかった自分を見せてくれたのが"彼"だ、
そうだ、私は、彼に…
青年が、うっすらと目を開いて、こちらを見たような気がした。
喜びが胸の奥から沸き上がった、今ならば伝えられる、今しか伝えられない、私が消えきる前に、彼にどうしても伝えたかった事。
自分を見失っても、今尚覚えている願い。
「--、---。」
もう声は出なかったけど、何とか、口をその形へと変えて
そうして、消えゆく意識と視界は、僅かに青白い光をとらえて…
今度こそ、少女の意識は暗転した。
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「………困ったな」
仮想世界でありながら、現実とあまり変わらない視点から目の前のウィンドウに視界を落とす、その画面にはこの世界での私ーアバターネーム:ルクスーのステータスのデータが出ている。
そして、かれこれ15分程前からこの画面のままだった。
理由は深刻なものではない、世界初のVRMMORPG、《ソードアート・オンライン》を何とかーβテスターには当選できなかったので非常に苦労しながらもー入手する幸運に恵まれたた私は、日曜である事をいいことに、キャラ作成もほとんど自分そのままに本サービス開始とほぼ同時にログインした。
とは言え、リアルそのままの姿と言うのも気がかりではあるので、少し手は加えてある。髪の色を白に変え、目の色も黄色に近くして………体の起伏を控えめにした程度で大して変えてはいない、いないとも。
そして最初にするべきことと聞いているスキルポイント振りとスキルの習得をしようとメニューを操作していた。
そこでものの見事に詰まった、レベル1のルクスには二つのスキル枠が与えられていた、ソードアート・オンラインにおける武器の使用にそのスキルは必要ではないー例えば、〈片手直剣〉がなくとも片手剣自体は扱えるのだが、熟練度が上がらないのでスキルによる威力の上昇は期待できない、おまけに必殺技たるソードスキルを使うにはスキルのセットが必要なのだと言う。
スキルは取ったらそれきりではなく、外すこともできるらしい、ただ、その場合そのスキルの熟練度は0になってしまう、ならば取るなら早めに取り、できる限り変えない方がお得だろうと思って、あれこれ5分ほど悩んで一つ目のスキルスロットを〈片手直剣〉で埋めた私は、二つ目は武器系統以外から早く選んでフィールドに出ようと意気込んでスキル選択に移った。
甘かった。
目に付いたスキルも気になるスキルも多すぎた、〈投剣〉〈軽業〉と言った戦闘の役に立ちそうなスキルから〈限界重量拡張〉などのあって損はなさそうなもの、まだとろうとは思えないが〈釣り〉や〈調合〉など、欲しいものの数に反しスキルのスロットはあと一つしかないのだ。
あれでもない、これでもないと悩んでいたらいつの間にやら15分が経過していたのだった。
「何時までもこうしているわけにも行かないし、流石にそろそろ決めないと…」
〈限界重量拡張〉…は、こまめに倉庫のようなところに行けば問題ないはずだ、〈投剣〉は欲しいが、まだ投げ武器がない、そもそも普通の近接戦にも慣れていないのだ、これは後回しでよさそうだ、〈軽業〉もAGIを重視すると決めたわけでもないし…。
「………」
結局、さんざん悩んで…私は自分のとある欲に従い、二つ目のスキルスロットを移動速度向上のスキルである〈疾走〉で埋める。
ここまで来たらあとは、とややSTR寄りに能力値を振る、ほかのゲームではここも大きく悩むものだが、SAOで振れるのは
結局、ここまで20分ほどを消費してしまったが、ようやく準備が完了したので、〈はじまりの街〉の外に出てさっそく戦闘を…
視界の隅…それも上の方に、薄い青の光が見えた。
「………?あれ?」
光の正体は、転移の光だ、〈はじまりの街転移門広場〉の名の通り、ゲームを始めたプレイヤーは最初にこの街からスタートになる、つまり初期のスタート地点である、実際私も、この街に来てから何度か青い光とともに新しいプレイヤーがこのゲームにログインしてくるところを見た。
だか、今回はそれが少し違う、光はいつもの青色であり、もしそれが地上に出ていたら違和感など無かっただろう。…そう、つまりはその光は上の方に…空中に、出ていた
「ッ!?」
とか思っている場合ではなかった、光が消えると共に、蒼と黒の少女ーと言っても私とそう変わらなそうな年齢の少女ーが視界に映る。
当然ながら、上空に投げ出された少女は重力にー
ーーーフルダイブ環境下での落下、と言うものは冗談じゃないほど怖い。
SAOが出る前に出ていたナーヴギア対応ゲームの中に、バンジージャンプができるゲームがあった、万が一の命の危険も無く、外に出る必要も無い状態で現実に限りなく近い体験ができるナーヴギア対応ソフトには、そう言ったいわば…現実においては色々な理由で躊躇うような内容の様々な行為をゲーム化したモノはもう既にいくつかリリースされていた、そして私は一度だけ、そのゲームをプレイした経験があった。
すごく後悔した。
そんなにリアルに再現しなくてもいいじゃないかと思うようなバンジージャンプの恐怖…風とか一瞬で流れていく風景とか音とかをそれはもう堪能する羽目になった、…実際にやった事はないから、リアルだともう少し感覚も違うのかもしれないけれど…
開始直後にそんなのを味わった挙句に地面に叩きつけられて即死亡、なんてことになったらいくら何でもそれは惨い…!
先ほど取った《疾走》が役に立ったかは分からないが、落下地点に走り込み、受け止める…が、それなりに高くから落下してきた自分と同じくらいの体格の少女を受け止めて見せるには、未だレベル1のルクスの筋力値では足りるはずもなく。
「わぷっ」
潰れて下敷きになり、地面に倒れこむ…
が、その前に私と地面の間に紫色の障壁が浮かび上がり、接触を拒んだ、HPに変化は無く、叩きつけられるような感触は無い。
…そう言えば、SAOだと街の中などの〈圏内〉ではシステムの保護によりHPが減らないのだというチュートリアルを今更ながらに思い出す、放っておいてもコードに弾かれるだけで少女はそのHPを失うことは無かっただろうとも。
…かと言って、目の前で落下してくる人を見捨てようとは思わない、取り敢えず現実でやったら死ぬほど痛い思いをするであろう所を、痛覚を遮断するペインアブソーバーのおかげでそうならなかった、これがなかったら正直切ったり切られたりするRPGゲームの完全没入など成り立たないだろう。
何とか抑えた落ちてきた少女は、気を失っているのかどうかは分からないーこの世界で呼吸は必要ないーが、全く動きそうになかった。
落ちている最中に確認するすべなどなかったから、このタイミングで初めて少女の外観をしっかり見る事が出来た。人の顔に対して評論する言葉はそう知らないから大した言葉で表すことは出来ないけれど、整った顔をしているなと思う。
年齢は、やっぱりそう変わらないと思う。少し軽い…と言うより、肉付きが薄いような気もするけれど。
視線を少しずらせば少女が纏う服が見える、黒を基調とし金の装飾が所々に見えるそれは、現実世界のそれでいうなら軍服のような服だった。
つまりは、
ただその服装ながらも、少女はこのゲームの世界に…仮想現実の世界に違和感なく存在する、その印象を与えるのはその長い髪の色だった。
蒼、それこそ、晴れた日の蒼空のような蒼色だった。その蒼空を湛えた髪を腰ほどの長さに伸ばしている。
現実では見様のないその蒼が服装の現実感をも凌駕して見せていた。
ーーー綺麗な色だと思い、しげしげと見つめてしまう。
「?」
そんなことをしていると、周りからの視線とささやき声を感じた、視線をあげ周囲を見渡すとこちらを窺う幾つかの視線と目が合った。
何でだろうと少し考えて………当然だと納得する、空中から落下してきた少女と、そこに滑り込んで下敷きになった二人だ、注目を集めるのはそれはそうだと思う。
「名前のスペル」
ルクス「クトリ…珍しい名前だね、どう書くんだい?」
クトリ「Chtholly、ね」
ルクス「…本当に珍しいね」
*本編とはあまり関係ありません