インフィニット・ストラトス〜つきのおとしもの〜   作:リバルリー

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悩んでたら箒の誕生日に2日も遅れるヘマやらかしたので初投稿です。
かなり時間を掛けてしまい申し訳ありません……。しかも間違えて返信の内容を変えようとして折角の感想を消してしまいました……。書いてくださった方本当に申し訳ないです……。
改めて、今回はセシリアvs一夏をカットし、クラス代表が決定します。それでは、どうぞ!


第2話.不和(ディファレンス) (6)

「う、ううん……」

 

夕方、忍はベッドの上で目を覚ました。

ベッドといっても、寮室のぬいぐるみで囲まれた柔らかいベッドではなく、病院にあるような硬いベッドだ。

 

「ここは……?」

 

そう言って、忍は周りを見渡す。

外は茜色に染まり、グラウンドには人の影もない。

ベッドの形状から察するに、ここは保健室だろう。

 

「……まだ夕方だし、ご飯食べに行こうかな」

 

そう思い、忍が起き上がろうとした瞬間──

 

「忍、起きてるか?」

 

一夏の声がそう問いかけた。

いつからいたのか、カーテンの後ろに人影が見える。

 

「……うん、起きてるよ。一夏」

 

忍は少し顔を曇らせ、数秒ほど間を空けた後にそう返した。

 

「入るぜ」

「うん」

 

そう言って、一夏はカーテンを開ける。

 

左手には、お見舞いのつもりなのか、林檎などの果物が入った籠がぶら下がっていた。

 

「……そういえば、代表決定戦はどうしたの?一夏の番だったよね?」

 

忍は、クラス代表決定戦のことを尋ねた。

ミサイルを見た後の記憶が抜け落ちていたのだ。

 

「ああ、それなら千冬姉の提案で明日に延期になった。割と時間も迫ってたしな。使えても、時間はごく僅かだったと思う」

「そうなんだ……」

 

家庭科室から借りてきたらしいナイフで果物を切りながら、一夏はそう答えた。

 

「……ごめん」

「ん?なんで謝るんだよ?」

「だって……『お前ならきっと勝てる』って言われたのに、トラウマに怯えて逃げ回って負けるなんて……」

 

明日に延期になった、ということは、自分はセシリアに負けたのだろうと、忍はそう結論づけた。

 

「なんだよ、そんなこと気にしてたのか」

 

そう言って、一夏は笑う。

 

「そんなことって……親友の期待だよ?それを裏切るなんて……」

「あまり重く考えないでいいんだぞ?千冬姉から聞いたよ。お前が【白騎士と堕天使事件】のことがトラウマになってること。トラウマなら逃げて当然だろうしな。しかもお前はテレビじゃなくて実際に見てるわけだし。箒もきっと同じこと考えて『負けるな』って言ったんだと思うぜ。実際に見てることに気付いてるかは分からないけど」

「そ、そうかな……?」

「ああ。だから、次は俺のことも応援してくれよ?」

「当たり前だよ。きっと勝ってね。親友」

「おう!任せとけ!」

 

二人は右手で拳を作り、それを小さくぶつけ合う。

沈み行く太陽が、二人の拳を優しく照らしていた。

 

 

一方、セシリアは自室でシャワーを浴びていた。

金色の髪から、水滴が滴り落ちる。

 

「今日の試合……」

 

彼は最後に一度逃げ回ったとはいえ、それまでは恐れすらせず立ち向かってみせた。

なぜ、彼はそんなことが出来たのか。

 

「……分からない」

 

男は皆、女に畏怖するものだと思っていた。

だが、彼は、そんな様子は全く見せなかった。

それは、ISを纏えることから来る自信の表れなのだろうか。

 

「……そういえば」

 

彼の隣には、いつもあの男がいた。

 

「……織斑、一夏」

 

彼も、セシリアが知っている男とは全く違う男だった。

彼は初めて邂逅したあの日、他人を窘めつつ自分の意思をはっきり示してみせた。

彼の存在も、忍の支えになっているのだろうか?

 

(……父は母の顔色をうかがうばかりの人だった)

 

ふと、セシリアは父のことを思い出す。

名家に婿入りした父は、母に引け目を感じていたのかもしれない。

母に媚びるような父を見て、セシリアは、『情け無い人とは結婚しない』という思いを幼い頃から抱いた。

セシリアの男を見下す態度も、そこから来たものである。

 

オルコット家に関わる男が全て情け無い男ばかりで、いつからか、男全てを見下すようになっていた。

 

そして、ISが発表されてから、父の態度は益々弱々しいものになった。

それからの母は、父との会話を拒んでいるようにも見えた。

 

(母は強い人だった……。女尊男卑の風潮になる前から、いくつもの会社を立ち上げ、成功を収めた人だった)

 

厳しいが優しい、セシリアにとって自慢の母だった。

だが、三年前の越境鉄道の横転事故が起きて、セシリアの両親は帰らぬ人となった。

死傷者は百人を超え、その中に、両親もいた。

 

(……普段会話すらしていなかったのに、何故、あの時だけ……。私を置いていって……)

 

セシリアの手元には莫大な資産が残り、それを守るために様々な勉強をした。

その一環のIS適性テストでA+が出て、政府から、他所に取られないための国籍保持のために、様々な好条件が出され、セシリアは、両親が遺した遺産を守るため、その条件に飛びついた。

そして、第三世代型ISのブルー・ティアーズの第一次運用試験者に選抜され、稼働データと戦闘経験値を得るため、セシリアは日本にやって来た。

 

そして、あの二人に出会った。

 

「白波、忍……織斑、一夏」

 

何故、あの二人は女尊男卑が当たり前のこの世の中で、女性に屈しないのか。

何故、あの二人はこんな世界の中でも、あんな強い意志を持てるのか。

 

「……知りたい」

 

あの二人を。

この女尊男卑の世界でも曇らない、強い目を持った男たちを。

 

(そのためには……親睦を深めていかないといけませんわね)

 

そんなことをセシリアが考えていると、部屋からリモコンで通信が入る。

 

「はーい?」

「セシリアー、いつまで入ってるのさ。もうお湯空っぽ!」

「え……?」

 

ルームメイトである如月キサラの話がにわかには信じられず、セシリアはリモコンを見る。

そこには、残り湯無しの表示が出ていた。

 

「な、な……⁉︎」

「私もシャワー浴びたかったのに……」

「も、申し訳ありません‼︎」

 

そして、夜は更けていった。

 

 

翌朝、一夏と忍は廊下を歩いていた。

 

「なぁ忍、お前もう動いて平気なのかよ?」

 

一夏が心配からそう尋ねる。

 

「うん、大丈夫。心配してくれてありがとう。でも、一夏も自分の心配をしないとね?」

「わ、分かってるって。ところで忍、俺のISなんだけど、武装が剣一本だけなんだけどさ……」

 

一夏が唐突に話題を変えてきた。

しかし、その内容に忍は驚愕の表情を浮かべた。

 

「えっ……⁉︎いや、第三世代なのにそれはおかしいんじゃ」

「まぁ落ち着けよ。その剣の名前がなんと【雪片弐型(ゆきひらにがた)】って言うんだ」

「…⁉︎その剣の名前……」

「ああ、千冬姉のIS【暮桜(くれざくら)】の専用装備【雪片(ゆきひら)】と同じ名前なんだ。凄えよな、運命すら感じそうだ」

「そうだね。それとその剣を使うってことは、千冬さんの名前を預かるみたいなもんだし、強くならなきゃね」

「おう、というわけで忍、レクチャー頼む!」

「まともに教えられないから実戦形式になりそう……」

 

二人がそんなことを話しているうちに、教室に着いた。

忍が教室のドアを開ける。

 

「おはようございます」

「おはよう」

 

二人が挨拶する。

 

「忍、もう動いて平気なのか?」

 

箒がそう聞いてくる。

 

「うん、大丈夫。ありがとう心配してくれて」

「昔からの友であるお前たちが怪我したとあっては私も悲しいからな、無事で良かった」

 

忍はそう返し、箒は少し微笑みながらそう言った。

 

「それと……ごめんなさい」

「ん?……あぁ、昨日のことか。そのことなら気にするな。私もミサイルが飛んできたら斬ったり逃げ切ったりする自信はないからな。怖いと思うのは当然だと思う」

「うん……ありがとう」

《良かったですね、マスター》

(うん。ありがとう、アルヴィト)

「まぁ、ISを纏ってるのにそれはないだろとは思ったけどな」

 

そう言うと、箒はくすっと笑った。

 

「否定出来ないけど、ひどいよー……」

「すまんすまん、少しからかっただけだ」

「もう……」

 

少し頬を膨らませつつ、忍は席に着いた。

 

「しのぶー、大丈夫?頭とか痛くない?」

 

席に座った忍に、本音が声を掛けた。

 

「みんな僕なんかのことを本気で心配してるんだ……。ありがとう、でもこの通り元気」

「そうなの?良かったよー。あと、渡したいものがあってねー」

 

そう言うと、本音はだぼだぼの袖を漁りだした。

 

忍が不思議そうな顔をしていると、本音は、小さいお菓子がたくさん入った袋を取り出した。

 

「はい、これどーぞー!」

「え……?」

「多分昨日の戦いで疲れてるかなって思ってー。甘いものは疲労回復に効果的って聞いたことあるから、お菓子は効果てきめんかなーって思ってお菓子をたくさん袋に詰めたんだー!」

「……でも、いいの?僕なんかにこんなの渡して……。貴方は、お菓子をよく食べるんでしょ?」

「いいよー、渡すためにお菓子を袋に詰めたから!」

「そ、そう……?なら、いただきますね。ありがとう、布仏さん」

「本音って呼んでほしいなー、同じクラスメイトだし!」

「うん。分かった、本音さん」

 

そんなことを話しつつ、忍は心の中でこう呟く。

 

(やっぱり、ここにはいい人が多いな…僕のいたあの学校とはまるで違う。女尊男卑なんて、初めからなかったみたいに)

 

すると、千冬先生たちが教壇に立つ。

 

「おはよう、諸君。本当に突然だが、クラス代表決定戦が中止になり、代表は織斑が選抜されることとなった。誰か異論のあるものはいるか?」

「「……え?」」

 

一夏と忍の声が綺麗に重なる。

そのまま二人は硬直する。

そして、誰も異論を唱えようとはしなかった。

 

「では、一年一組代表は織斑一夏くんに決定です。あ、一繋がりでいい感じですね!」

 

山田先生は、嬉々とした話し方でそう言った。

 

(あれ?おかしいぞ?まだ一夏の試合残ってるよね……?)

《ですね。何故でしょう……?》

 

忍とアルヴィトが脳内でそう会話していると、

 

「ちょ、ちょっと待ってください!」

 

一夏が手を挙げた。

 

「はい、織斑くん!」

「まだ俺の試合は始まってすらいないのに、何故クラス代表になってるんですか?」

「それは——」

 

山田先生が理由を話そうとした瞬間、

 

「それはわたくしが辞退したからですわ!」

 

席を立ち、セシリアが胸に手を当てそう言った。

 

(((いやなんで辞退してるんだよ《ですか》)))

 

忍たちは、心の中で同時にツッコんだ。

 

「まぁ、ISに乗って一ヶ月も経たない初心者が、代表候補生であるわたくし、セシリア・オルコットに挑むのは、流石に可哀想ですし……」

(ひでぇ。まぁ実際そうなんだけどさ)

「それに、わたくしも協調性がない行為をしてしまいました。そんなわたくしでは、クラスの代表には不釣り合いだと思い、それを反省し、一夏さんにクラス代表を譲ることにしましたの。IS操縦は、実戦が一番糧になりますし、クラス代表ともなれば戦いには事欠きませんもの」

(ありがた迷惑だなぁ……ん?今俺のこと名前で呼んだ?あと、なんで忍と戦った後に……?あ、忍と俺が戦うと確実に俺が負けるからか)

「いやぁ、セシリア分かってるね!」

「だよねー。私たちは貴重な経験を詰めて、他のクラスの子に情報が売れるし。一粒で二度おいしいね、織斑くんは」

(だから商売にするなって……)

 

一夏は心の中でそうツッコんだ。

 

「それでですわね、わたくしがIS操縦を教えて差し上げれば、それはもうみるみる成長を──」

 

セシリアが言い切る前に、机を叩く音で遮られた。

そして、箒が立ち上がった。

 

「生憎だが、一夏の教官は私で事足りている。済まないが、他を当たってくれ」

「そうでしたのね。ですが、引き下がるつもりはありませんわ。わたくしも、一人のクラスメートとして、貴方方の信頼を取り戻し、親睦を深めるために一夏さんのお手伝いがしたいんです。私自身の態度のせいで、こうなってしまいましたが……それでも、今のこの気持ちに嘘偽りはありません」

「……」

 

セシリアの目は真剣そのものであり、言葉通り、嘘偽りのないことを窺わせる。

 

「……そうか。私も説明は苦手だ。お願いしてもいいだろうか?」

「ええ、勿論ですわ。二人で一緒に一夏さんにISのことを教えていきましょう」

「ああ!」

 

そして、二人は互いに歩み寄り、固い握手を交わした。

 

(セシリア、変わった……?)

 

そう思い、忍が少し驚いたような表情をしていると、

 

「うむ。友情が芽生えるのはとても良いことだ。だが……」

 

その声に二人の顔が、青ざめていくのが分かる。

二人が声がした方を向くと、

 

バシンバシンッ‼︎

 

「……今はSHR中だ。席につけ、馬鹿ども」

 

そう言って、千冬先生が二人の頭を同時に叩く。

 

(流石元日本代表にして第一回世界大会の覇者。凄みが違うな)

 

一夏は心の中でそう思った。

そして、二人はすごすごと席に戻った。

そんな二人を見て、一夏が何か閃いたような顔をする。

 

(凄みと、すごすご……なんつって)

 

その時、

 

バシーンッ‼︎

 

という音とともに、一夏の頭に衝撃が走った。

 

「その得意げな顔はなんだ。やめろ」

 

千冬先生が出席簿で叩いたことによる衝撃だった。

 

(うーん、千冬姉、職場ではこんなにしっかりしていたのか。そういえば、俺たちが寮で暮らすようになってから、千冬姉洗濯物ちゃんと自分でしてんのかな。ずっと俺らにやらせてたけど)

(……というか、せめて下着くらい自分でネットに入れて欲しいよ……。男に女性ものの下着任せちゃいかんでしょ……)

(それくらいはやってくれよ、二十四歳社会人)

 

などと二人が心の声を漏らしていると、

 

バシンッ‼︎

バシンッ‼︎

 

という音とともに、二人の頭に衝撃が走った。

言わずもがな、千冬先生の出席簿で殴られた衝撃である。

 

「……お前達、今何か無礼なこと考えていただろう」

「「そんなことは全くないです」」

「……ほう……」

 

バシバシバシバシンッ‼︎

 

という音とともに、二人の頭に二連続で衝撃が走る。

 

「「すみませんでした」」

「分かればいい」

 

そう言って、千冬先生は教壇に戻った。

 

(理不尽な……)

(痛い……というか手の動き見えなかった)

《マスター、大丈夫ですか?》

(だいじょばない)

《ですよね……》

 

二人が頭を抑えている間に、ほぼ全会一致でクラス代表は一夏に決定した。

 

その中で、一夏だけが不満そうな顔をしていた。




いかがでしたか?相変わらず長い時間掛けてますが、これからも頑張ります‼︎
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