インフィニット・ストラトス〜つきのおとしもの〜   作:リバルリー

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梅雨明けして本格的に暑さが襲撃し、ダラけてたので初投稿です。頑張ると言った矢先にこれか…(自虐)では、どうぞ!


第3話.鈴の音一つ(1)

四月の下旬の朝。

グラウンドで全員が並び、千冬先生の授業を受ける。

 

「ではこれよりISの基本的な飛行操縦を実践してもらう。織斑、白波、オルコット。試しに飛んでみせろ。織斑は初めてに見えるが、白波たちと放課後に訓練していたようだからな。初めてという言い訳は通用しないぞ」

(((バレてた《ました》か)))

 

一夏たちは、千冬先生の観察力に脱帽せざるを得なかった。

セシリアと忍の戦いの後、彼らは訓練の内容を放課後の剣道の訓練からIS操縦の訓練にシフトしていたのだ。

これは、一夏が『ISのことを学ばないと、あの二人に追いつけないし、そうなったら、千冬姉の名前に泥を塗り直すことになるかもしれない。そんなのは嫌だ』と言って決めたことである。

 

「早くしろ。熟練のIS操縦者は展開(オープン)までに一秒もかからない。お前たちもそうなれるように努力しろ」

 

そう言われて、忍とセシリアが同時に、少し遅れて一夏が、それぞれ展開を終えた。

 

セシリアの四つのBTは、とっくに修復が終わっており、スカートアーマーに新品のそれが付いていた。

 

「よし、飛べ」

 

その言葉と同時に、セシリアは飛び上がり、グラウンドの上空を飛び回る。

忍もセシリアが飛び上がるのと同時に翼を大きく羽ばたかせて飛び上がり、上空を飛び回り始める。

 

一夏も飛び上がり、グラウンドの上空を飛び回り始めたが、その速度は二人と比べてかなり遅いものだった。最初はフラフラしたが、すぐに体勢を立て直し、真っ直ぐ飛べるようになった。

何も経験がないところから、始めて一ヶ月にも満たない放課後の特訓だけでここまで腕を上げているのだから、目覚ましいほどの進歩である。

 

「何をやっているんだ、織斑。スペック上の出力では白式が二人のISよりも上だぞ」

 

だが、千冬先生は容赦なく一夏を叱る。

その時、セシリアから忍に個人間秘匿回線(プライベート・チャネル)で通信が入った。

 

≪忍さん、一夏さんはまだイメージをはっきり固めておられないご様子。わたくしたちでイメージのことを教えて差し上げた方がよろしいのではないでしょうか?≫

≪そうだね、そうしようか≫

 

二人のわだかまりは、放課後の一夏の訓練にセシリアも同伴することによって、すっかり無くなっており、忍も、周りの生徒と同じようにセシリアと接するようになっていた。

 

そして、二人は速度を落とし、一夏に近付いた。

 

「なぁ、セシリア、忍。『角錐を自分の前方に展開するイメージ』ってどうやるんだ?よく分からないんだが」

 

一夏は困った表情を浮かべつつそう言った。

 

「一夏さん。イメージは所詮イメージ。自分がやりやすい方法を模索すればいいのですわ」

「僕は翼を羽ばたかせるイメージで飛んでるけど、一夏は?どんなイメージしてる?」

「うーん……背中からジェット噴射してる感じかな」

「なら、それをもっと強く意識して飛ぶといいよ」

「ISはイメージが大切ですから、そのイメージに任せて飛んでみてくださいな」

「だけど、そもそもこれどうやって浮いてるんだこれ……」

 

一夏がまた疑問を浮かべる。

 

「まぁ、PICっていうすごい装置がISにかかる重力を軽減してるって考えればいいんじゃないかな?」

「忍さんのもあまり間違っていませんが、結構端折ってますわね……。更に説明しても構いませんが、長いですわよ?反重力力翼と流動波制御の話になりますから」

「うっ……。俺では理解出来なさそうだからいいです」

「そう、それは残念ですわ。ふふっ」

 

そう言って、楽しそうにセシリアは微笑んだ。

ただ純粋に楽しんでいるようなその笑みに、かつて、一夏たちや日本を見下していた頃のセシリアの面影はなかった。

 

そんな時、地上から箒の声がした。

 

「一夏、忍。オルコットも、そろそろ降りてこい。授業が進まないぞ」

「分かりましたわ。あと箒さん、そろそろ苗字で呼ばずに、セシリアと名前で呼んで欲しいですわ」

「む、そうか……。分かった、セシリア」

「ふふっ、名前で呼ばれるのは、気心知れた友人という感じがして嬉しいですね」

 

またセシリアは楽しげな笑顔を見せる。

 

セシリアは、過去に男にいじめか何かを受け、男性が苦手なだけだったのかもしれない。

それが女性特権であるはずのISを動かせたなんてこと言われたら、ああなるのも仕方ない。

 

(……そう思うと、セシリアは僕に似ている。僕にそれを責める資格はなかったよね)

 

忍はそう思うと、少し表情を曇らせた。

 

「どうかしましたの?忍さん?」

 

ハイパーセンサーで忍の表情の変化に気づいたのか、セシリアが少し心配した様子で近付いてきた。

 

「……ううん。何でもない」

 

忍は首を横に振り、そう言った。

 

「それは良かったです」

 

セシリアは、今度は優しく微笑んだ。

心配してくれているということが伝わり、忍は申し訳ないと思いつつ、少し嬉しくなった。

 

「ちなみに一夏さん、あんなに遠いところにいる箒さんたちが見えるのはハイパーセンサーのおかげですが、ハイパーセンサーはこれでも機能制限がかかっていますのよ。元々ISは宇宙空間での稼働を想定していて、何万キロも離れた星で自分の位置を把握するために、ハイパーセンサーはあるんですの」

 

(代表候補生の肩書きは伊達ではない、ということか……。すげぇな、セシリアは)

 

一夏はセシリアの知識量に感心していた。

ちなみに箒の説明だと、

 

「ぐっ、とする感じだ」

「どんっ、という感覚だ」

「ずがーん、という具合だ」

 

こんな具合である。

 

その度に、『擬音ばかりでは分からないですわよ』と、放課後の特訓に付き添うようになったセシリアに言われていた。

 

箒も箒なりに考えているのだろうが、彼女自身がそう言った通り、説明はうまくできないのだろう。

知っていることと、その知識を人に分かるように説明することの難しさは、全然違うのだから。

 

「織斑、白波、オルコット。急下降と完全停止をやってみせろ。目標は地上から十センチだ」

「了解です。ではお二人共、お先に」

 

そういうや否や、セシリアはすぐさま地上に向かった。

ぐんぐんセシリアの姿が小さくなっていくのを見て、一夏は、

 

「うまいもんだなぁ」

 

という感嘆の声を漏らす。

 

そして、セシリアは完全停止も難なくクリアしてみせた。

 

「よし、僕も」

 

そう言って、忍も翼を羽ばたかせ、急降下した。

だんだん忍の姿が小さくなり、やがて姿が小さくなっていくのも止まった。

 

(よし、最後は俺だ。気合い入れて行くぜ)

 

一夏は気合を入れる。

意識を集中させて、翼からジェット噴射しているイメージを思い浮かべる。

体を傾けて、一気に地上へ近付く——。

 

だが、気合を入れたのが失敗だったのか、白式の出した速度は予想以上に速く、停止できそうにない。

 

(しくじった……)

 

そして、砂煙が上がった。

 

「織斑くん⁉︎」

 

山田先生が心配した声を出す。

 

「あら?忍さんは……?」

 

セシリアが忍がいないことに気付く。

 

煙が晴れると、

 

「ぐぅ……いたた……」

「わ、悪い、忍……」

 

一夏を上にして、忍が押し潰されていた。

一夏を庇ったのだろう。

それを見た一部の女子は、

 

「こ、これは……」

「お、織斑君が攻め、白波君が受け……」

「一忍キター!これは……いいものね、イケメン男子がちょっとクールな感じの男の娘を押し倒す……。誰かカメラを!」

 

このように大騒ぎしている。

 

「勘弁してよ……」

「馬鹿者。グラウンドに穴を開けてどうする」

「「……すみません」」

 

そう言って、一夏は姿勢制御をして上昇し、地面から離れた。

忍もそれに続き、翼を小さく羽ばたかせ、地面から離れる。

 

《マスター、大丈夫ですか?お怪我は?痛くないですか?》

 

アルヴィトが少し慌てた様子で聞いてくる。

 

(もう、アルヴィトは僕のお母さんじゃないんだから……。大丈夫だよ。SEは減ったけど……)

《……そうですか、無事で良かったです》

(ありがとう、アルヴィト)

 

「「(お)二人とも、大丈夫か(でして)⁉︎」」

 

箒とセシリアが二人の元に慌ててやってくる。

 

「うん、大丈夫、僕は平気」

「俺も大丈夫だ、安心してくれ」

「「良かった〜……」」

 

二人は安心したようだ。

 

そんな忍たちの前に千冬先生が立ち、

 

「よし、織斑。武装を展開しろ。それくらいは自在にできるようにはなっているだろう」

「は、はぁ」

「返事は『はい』にしろ。社会に出た時『はぁ』と返事したら上司にこっぴどく叱られるぞ」

「は、はいっ」

「よし。では始めろ」

 

千冬先生に言われ、一夏は横を向く。

そして、正面を少し見つめ、誰もいないことを確認し、一夏は右腕を突き出し、それを左手で握った。

 

(来い……!)

 

一夏の右腕を握る左手の力が強くなっていく。

すると、一夏の掌から光が放たれ、それが形になっていく。

光が収まると、そこには一夏を守る剣【雪片弐型】が握られていた。

 

(よし、だいぶイメージが固まってきたぞ)

 

一夏はそう思い、口を緩めた。

 

「遅い。構えてから一秒で出せるようになれ。戦場では相手は武器を出すまで待ってくれないぞ」

 

そんな一夏を、千冬先生は初心者にも関わらず容赦なく叱る。

 

(いや、普通戦場のことなんて誰も考えないぞ千冬姉……)

(千冬さん、決勝戦を辞退してからドイツ軍の教官になってたらしいから、それも関係あるのかなぁ)

《マスターはお二人が試合に行く時、一人だけ取り残されたから少し怖がってましたね》

(そ、その時の話はいいでしょ!)

 

忍とアルヴィトが脳内で話していると、千冬先生は、

 

「オルコット、白波。武装を展開しろ」

 

そう二人に命令した。

 

「「はいっ」」

 

二人はそう返事をすると、武器を出すポーズをとる。

 

セシリアは左手を肩の高さまで上げ、真横に突き出す。

忍は自分の視線の先に右手を翳す。

すると、二人の掌が一瞬だけ爆発的に光り、二人の手には、それぞれ【スターライトmk-Ⅲ】と【スルーズ】が握られていた。

 

(すげぇ……。俺なんかより全然速い)

 

一夏は二人の展開の速さに感心していた。

 

「流石だな。だがオルコット、そのポーズはやめろ。横に向けて展開しても、相手はお前の視線の先にしかいないからな。お前のイメージを固めるには大切かもしれないが、余計な手間がかかる。次の実習までに直すように」

「はいっ」

 

セシリアがそう言うと、千冬先生がまた新たな指示を出す。

 

「オルコット、今度は近接用の武装を展開しろ。白波はオールレンジ攻撃用の武装を展開だ、いいか?」

「はいっ」

「はっ、はいっ!」

 

忍とセシリアがそれぞれ返事をする。

そして、セシリアは【スターライトmk-Ⅲ】を光の粒子に変換した。

 

続けて、セシリアは新たに近接用の武装を展開する。

しかし、【スターライトmk-Ⅲ】を展開した時とは違い、光が像を結ばず、空中を彷徨っている。

 

(……あれ?おかしいぞ?忍と戦っていた時は、一瞬で近接武装を出してみせたのに……)

 

一夏はセシリアの武装の展開の遅さに疑問を覚えた。

 

ちなみに、忍は既に【オルトリンデ】を展開しており、短剣が六つ、忍の周りを浮いていた。

 

「くっ……」

「まだか?」

 

苦戦しているような様子のセシリアを、千冬先生は急かした。

 

「だ、大丈夫です。すぐですから……。——ああっ、もう!【インターセプター】‼︎」

 

武器の名前を叫び、それによってイメージがまとまったのか、光はショートブレード【インターセプター】として形を成した。

 

「……何秒かかっているんだ。近距離での戦闘になったらどうするんだ?相手に待ってもらうのか?この前の試合では咄嗟に名前を呼んだからそれを用意できたわけだが、武器の名前を呼び、それを展開するということは初心者がやる手法だ。名前を呼ばず、即座に展開出来るようにしろ。そんな調子では代表候補生の名が泣くからな」

「じ、実戦では近接の間合いに入らせませ——」

「前の試合で白波に一度間合いに入られただろう?それが全てを物語っている。近接戦闘も多少はこなせるようにしておけ」

「……はい」

 

この二人のやりとりを聞き、一夏はなんであの試合の時一瞬で展開できたのかを理解した。

 

すると、チャイムが鳴り出した。

 

「時間だな。今日の授業はここまでだ。織斑、白波。グラウンドを片付けておけよ」

「「はーい……」」

「……」

 

箒が心配そうに一夏を見ていたが、一夏が目線を送ると、箒は顔を赤らめ、帰っていった。

 

セシリアは、すでに帰ったようだった。

 

「誰も手伝ってくれないのかよ……」

「まぁ、みんな疲れただろうからね」

「そうだな。さぁて、俺たちもやらなきゃな」

「IS使えたら早めに片付けられそうなんだけどなぁ……」

「おっ!それいいな、やろうぜ!」

「え、えっ⁉︎でもバレたら……」

「バレないって!みんな帰ったし!見てる人なんていないって!」

「わ、分かった……(千冬さん、僕らの特訓知ってるから、見られててもおかしくないんだけどなぁ……)」

 

そして、二人はISを展開し、グラウンドの手入れを始めた。

その後、二人は忍の心配通り、千冬先生に見つかり、こっぴどく怒られ、反省文を書かされた。

 

 


 

 

「ふーん、ここがそうなんだ……」

 

夜のIS学園の正面ゲートに、一人の少女が立っていた。

少女の髪は、黄色いリボンで左右それぞれを高い位置で結ばれている。

 

(アイツら、元気かな……多分この学園にいるのよね)

 

ふと、少女は二人の幼馴染を思い出す。

片方は元気な姿以外見たことないが、もう片方は、女子にいじめられていたので、女子だらけのこの学園にいるのなら、鬱になっていてもおかしくない。

 

(ふふっ、あの二人、あたしがここに来たことを知ったら、びっくりするだろうなー)

 

そう思い、少女は、走り出した。

 




いかがでしたか?ご期待に添えていたら嬉しいです!
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