インフィニット・ストラトス〜つきのおとしもの〜   作:リバルリー

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下痢が再発したので初投稿です。
お待たせしました。今回は次話の前日譚なので、8.5という形を取らせていただきました。
それでは、どうぞ!


第3話.鈴の音一つ(8.5)

「約束?」

「そう。あたしと一夏が小学生の頃にした約束。…………覚えてない?」

 

少し顔を赤らめ、一夏にそう尋ねる鈴の表情を見て、

 

(あっ、これ箒が一夏にだけ見せる顔だ)

 

忍はそう思い、鈴の想いを察した。

 

「えーっと、確か……」

 

一夏は考え込む仕草をする。

 

「……」

 

鈴は期待と不安が混ざり合ったような表情をしながら、一夏が答えを出すのを待っていた。

 

(というか、一夏そんな約束してたのか。いじりネタ増えたかも)

 

そんな二人を見ながら、忍はそんなことを考えていた。

 

《マスター、今すごく悪い顔してますよ》

(嘘だろアルヴィト)

《本当です》

 

「あっ、思い出した‼︎」

 

忍とアルヴィトが会話し始めた直後、一夏がハッとした表情で大声を上げた。

 

その直後、

 

ゴンッ‼︎

 

 

という音が響くと同時に、一夏の頭に鈍い衝撃が走る。

 

「お隣さんに迷惑だからあまり大声出さないの」

「いてぇ……。千冬姉ほどじゃないにしても、忍の拳骨も中々痛いんだよなぁ」

「殴られたくなかったら気を付けないとね。僕よりも痛い人はいるし」

「お、おう……」

 

スーツを着こなし、右手に出席簿、左手にバインダーを持ちながら腕組みをする怒りの表情の姉の姿を思い出して、一夏の顔は一瞬青ざめた。

 

「とにかく、約束、思い出せたぜ」

「ほ、本当⁉︎」

 

鈴が一夏にずいっと近寄り、一夏を上目遣いでみる。

 

「ああ。鈴の料理の腕が上がったら毎日酢豚を——」

「そ、そうっ!それ!」

 

鈴の顔から不安が消え、期待一色になった。

しかし、

 

「——おごってくれるってやつか?」

 

一夏があっけらかんとそう言い放った瞬間、部屋の空気にひびが入ったような気がした。

 

「…………はい?」

 

鈴が怒りを抑えたような声を出す。

 

「……また鈍感スキルか?」

 

忍が頭を抑える。

 

「り、鈴さん、落ち着いてくださいまし」

 

セシリアがなんとか鈴を諌めようとする。

しかし、

 

「ん?鈴が料理出来るようになったら、俺にメシをご馳走してくれるんだよな?」

「……は?」

「いやしかし、俺は自分の記憶力に感心——」

 

その瞬間、一夏は不思議な光景を目の当たりにした。

 

「……へ?」

 

一夏が見たものは、部分展開させたISの右手で一夏を殴ろうとせん鈴と、左手のヒルドを部分展開し、それを受ける忍の後ろ姿だった。

セシリアも、それを見て、呆気にとられていた。

 

「どいて忍」

「どいてもいいけど、その拳で殴ったら、多分もう約束は果たせなくなるよ」

「……っ!」

 

鈴が拳を引き、右手の部分展開を解く。

それと同時に、忍もヒルドの部分展開を解いた。

 

「…………」

 

鈴は、肩を小刻みに震わせ、怒りに充ち満ちた眼差しで一夏を睨んでいた。

しかも、うっすらと瞳に涙が浮かんでおり、その感情を抑えるために、唇を噛み締めていた。

耐えられなくなり、忍の方に目を向けると、忍は、左手をさすりながら、冷ややかな眼差しで一夏を睨んでいた、

こちらも耐えられなくなり、セシリアの方を見ると、こちらも怒っているような表情を浮かべていたが、二人と比べると可愛いものだった。

 

「あ、あの、だな、鈴……」

 

一夏が何か話そうとする。

しかし、

 

「最ッッッッ低‼︎女の子との約束を忘れるなんて、男の風上にも置かないヤツ!犬に噛まれて死ね!」

 

そう言って、鈴はバッグをひったくるように持って、ドアを蹴破らんばかりの勢いで出て行った。

ドアが乱暴に閉まる音がして、一夏はやっと我に返った。

 

「……まずい。怒らせちまったな」

 

一夏は自分のやったことを後悔した。

 

「一夏」

 

忍が声を掛けてきた。

 

「な、なんだよ、忍」

「お前は何を言っているんだ?」

(ぐあっ。なんか普段より忍が辛辣)

 

「一夏さん……今のは流石に酷いと思いますわ」

 

「そ、そうだな……謝らないとな」

(でも、覚えてたのに、何がダメだったんだ?…………ああクソッ、何も分からねえ)

 

一夏は答えが出ず、頭を抱えた。

 

「忍さん、一夏さん、今日はこれにて、失礼いたしますわ、おやすみなさいませ」

 

「おやすみ。疲れが出ないようにね」

「お、おう、おやすみ……」

 

そして、セシリアも部屋を出て行った。

 

「……風呂、入るか」

「そうだね」

 

さっきより口調は柔らかくなったが、まだ冷ややかな声で忍がそう言った。

 


 

「なぁ、忍、何がいけなかったんだ?」

「おごるから鈴が部屋から出るまで大体一夏が悪い」

 

一夏の髪の毛を洗いながら、一夏の問いを、忍はそう切り捨てた。

 

「おう……辛辣だな」

「なんでその他はほぼ万能なのにそんなこと分からないの?」

「お前には分かるのか?忍」

「分かるけどその答えを見つけるのは一夏自身の役目だよ、僕が答え教えてもあー、なるほどで済んじゃうでしょ」

「そうだけどさ……」

「…………はぁ、仕方ないな」

 

落ち込む一夏を見かねて、忍は一夏の髪の毛に付いた泡を流した。

 

「ならヒントをあげる。これが分かったら答えとほぼイコールになる大ヒント」

「そんなヒントがあるのか、教えてくれ、忍!」

「分かったから落ち着きなよ、じゃあそもそもの話」

 

そう言って、そこで忍は一旦言葉を止め、息を吸い、こう言い放った。

「『なんで料理の腕が上がらないと、酢豚を奢らないの?』」

 


 

「なんでって……そりゃ……」

「酢豚を奢るんだよね?それならお金を稼げばいい、幸い今なら代表候補生ってことで、多額の資金援助を受けてるはず。なのになんで料理の腕を上げるの?」

 

言い淀む一夏に、さらに忍は追い討ちをかける。

 

「いや、小学生の時の約束だから、料理店のコックとか目指してたかもしれないし……」

「なるほど、確かにそうだね、でも、だったらなんで、あの時鈴は顔を赤く染めてたんだろう」

「えっ……」

「さて、一夏は今回のペナルティとして、これの答えを導きながら僕の髪を洗ってください」

「ペナルティ弱いなぁ」

「確かに、グラウンド五十周の方が良かったかも」

「いきなりハードルが上がったんですけど忍さん」

「冗談。僕もそんなのできないし」

「だよな、じゃあ髪洗うぜ」

「じゃあ明日までに追加のペナルティ考えとくから」

「マジですか」

「流石にこの程度で済ませるのはないわ」

 

そして、翌日。

生徒玄関前廊下に【クラス対抗戦(リーグマッチ)】という紙が貼られていた。

一夏の一回戦目の相手は——鈴だった。

 




いかがでしたか?ちなみに追加のペナルティというものは箒に叱ってもらうというものです。ちなみに箒は馬に蹴られて○ねとだけ言ってます。
今回言葉遣い荒いなぁ……。ロックされないか不安です。
次回からいよいよバトル回に突入していくから気合入れないとなぁ…でも最近忙しいから投下できないかもしれません。楽しみに待って頂ければ幸いです!

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