インフィニット・ストラトス〜つきのおとしもの〜 作:リバルリー
朝八時、一年生寮の食堂。
誰もが朝食をとりにここに来る時間。
そこに、三人の姿があった。
「なぁ……」
「………」
「なぁって、なんで怒ってるんだよ」
「……怒ってなどいない」
「顔が不機嫌そうだよ、箒」
「生まれつきだ」
「…ごめん」
「忍が謝ることではない」
「…そう」
一夏、箒、忍の三人だ。
ちなみに、忍は一夏の左隣、箒は一夏の右隣に座っている。
忍は一見女の子に見えなくない外見なので、忍が女性用の制服を着ていたら両手に花状態だったかもしれない。
この三人は『幼馴染だから』という理由で席についているが、忍は──
(土曜日までは食材買えないし、当分朝昼はここになるのかぁ……。早く土曜日来ないかなぁ)
と、そう思っている。
ちなみに一夏と箒のメニューは和食セット。
メニューの内容は、ご飯に納豆、鮭の切り身と味噌汁、そして浅漬け。これがとても美味しいらしい。
ただし、忍はご飯とふりかけ、卵焼きと味噌汁のセットを頼んだ。
ちなみに一夏、箒の味噌汁の味噌は赤味噌、忍の味噌汁は合わせ味噌だ。
忍曰く「赤味噌はちょっとしょっぱい、合わせ味噌がちょうどいい」らしい。
そのため一夏とたまに赤味噌か合わせ味噌、どっちが美味いかでちょっとした口喧嘩になったこともある。
今となっては笑い話だと二人は思っている。
「箒、これうまいな」
そう一夏が箒に話を振るが──
「…………」
箒はそれを無視した。
しかし箒も同じように美味しいと思っているのか、鮭をつまんでいる。
「なぁ、箒。俺なんか悪いことしたか?怒ってる理由が検討もつかんのだが……」
一夏はそう、箒に尋ねてみる。しかし……
「だから、怒っていないと言っている」
箒はその一点張りだった。
箒は「怒っていない」と言ってはいるが、一夏に顔を向けもしない。どうみても明らかに不機嫌だ。
(怒ってるのか恥ずかしがってるのか……)
と、忍は勝手に悩んでいた。
ちなみに、この時箒が怒っていたのは、自分の恋心に気付かない一夏の鈍感さと、その気持ちを表に出さない自分の弱さに対する苛立ちからくるものであった。
「ねぇねぇ、あの二人が噂の男子だって!」
「なんでも織斑くんはあの千冬様の弟らしいわよ、しかも白波くんはその織斑くんと同棲してたって」
「えー、三人揃ってIS操縦者かぁ。やっぱり二人とも強いのかな?」
この目線も昨日から変わらない。
「興味津々だけどがっつきませんよ」という感じのむず痒い気配の包囲網。
忍はこの目線に一週間耐えられるのか不安になった。
「だから箒──」
「な、名前で呼ぶなっ!」
「……し、篠ノ之さん」
「…………」
名前で呼ぶなと言われたからか、一夏が名字で呼んだら、箒はまたむすっとしてしまった。
この名字も訳ありで、箒にとっては忌々しい名字なのだろう。
そんなギスギスした雰囲気が漂い始めた時、一人の女子に声をかけられた。
「お…織斑くん、白波くん、同席…していいかな?」
「へ?」
急に声をかけられたからか変な声を出した一夏が見ると、そこには朝食のトレーを持った女子が三人、一夏の反応を待ちわびるが如く立っていた。
「あぁ、俺は別にいいぞ。忍は?」
一夏が忍にそう尋ねると、忍もこう許可を出す。
「……僕も構わない。ただし、あまり声は張り上げないでくれ」
すると、声をかけた女子は安堵の息を漏らし、後ろの二人は小さくガッツポーズした。
周りから妙なざわめきを感じる。
「ああ〜っ、私も早く声かけておけばよかった……」
「まだ、まだ二日目。大丈夫、まだ焦る段階じゃないわ」
「昨日のうちに部屋に押しかけた子もいるって話だよー」
「なんですって⁉︎」
(……あぁ、確か一年が八名、二年が十五名、三年が二十一名自己紹介に来たんだっけ。一夏がそう言ってた。安眠妨害されたよ……。幸い一夏がドアの前に出て、ドアを閉めてくれて幸いしたけど……。おかげでぬいぐるみはまだバレてないみたい。本当に一夏には感謝だよ)
《マスター、あの時視線で人を殺せそうな目をしてましたからね》
(そこまでだったかなぁ〜…)
《間違いなく》
忍とアルヴィトと脳内会話していると、女子三人は事前に打ち合わせでもしていたかのように席についていた。
窓際に一夏、箒、忍。
空いている席が全て埋まる。
(忍がいてくれて比較的楽だわ……)
一夏はこの時そう思った。
「うわぁ~、織斑くんたちって朝すごく食べるんだー」
「男の子だねっ!」
「俺は夜少なめに取る方だから、朝たくさん食べないと色々きついんだよ」
「僕もそれに倣ってる。確か千冬さんのを真似たんだっけ?」
「忍、それを言うなよ……っていうか、女子って朝それだけで平気なのか?」
三人の朝食は、種類こそ違うが、パン一枚、飲み物一杯、おかず一皿(少なめ)だけだった。
「わ、私たちは、ねぇ?」
「う、うん。平気かなっ?」
二人の女子はそう言う。
(なるほど、ダイエットかな?女子の体型維持って大変)
などと忍がそう思っていると、最後の黄色いフードを被ってる女子が予想外の発言をした。
「お菓子よく食べるし!」
(えぇ……食べすぎてお菓子が主食にならなければいいけど)
などと、忍は心の中で彼女の将来を不安視した。
「……織斑、白波。私は先に行くぞ」
「ん?…あぁ!また後でな」
「了解」
食事を済ませた箒は席を立って行った。
(しかし箒と同じクラスとはな。まぁ、周りがみんな面識のない女子よりはいいか)
一夏はそう思った。
一夏、箒、忍は幼馴染だ。
小学校一年の時に千冬の付き合いで剣道場に通うことになってから、四年生まで同じクラスだった。
両親のいない千冬、一夏、忍はよく篠ノ之夫妻に夕食に招いてもらった。
織斑家はあまりお金がなく、貧乏だったので大いに助かった。
ただ、箒と一夏はあまり仲が良くなく、むしろ悪かった。
それがなんであんな風になったかと言うと、
『男女』と言われていじめられていた箒を一夏が助けたからだ。
箒と忍の関係は、悪くはない。どこにでもいる普通の友達同士という感じだ。
……恐らく忍もいじめを受けていたから、という点もあるにはあるが。
(……あんまり覚えてないんだよな、昔のこと。まぁみんなそうなんだろ。昔は昔。今は今だ)
一夏はそう思った。
「織斑くんって、篠ノ之さんと仲良いの?」
「あぁ……まぁ、幼馴染だし」
一夏がそういうと、周りがどよめきだす。
「え、それじゃあー」
隣の女子(谷本さんというらしい)が、質問をしようとしたところで、突然手を叩く音が食堂に響いた。
「いつまで食べている!食事は迅速に効率良く取れ!遅刻したらグラウンド十周させるぞ!」
その千冬先生の声を聞いた途端、食堂の全員が慌てて朝食の続きに入った。
忍は食べ終わったらしく、トレーを返却口に置き、教室に戻って行った。
このIS学園、一周が五キロもある。
十周もするとなると、授業を受けても頭に入らないだろう。
一夏も急いで食事を始めた。
ちなみに千冬先生は、一年生の寮長も務めているらしい。
いつ休んでいるのか分からない。
だが、一夏は千冬先生にタフネスで勝ったことがないので、恐らく大丈夫だろう。
(まあ、今はあまり考えずにISの勉強に集中しなきゃな、来週にはあのセシリアとの対戦もある。なんとかISの操縦をものにしなきゃな。……まぁ、なんとかなるだろ)
一夏はそう楽観視した。
いかがでしたか?今回は食事パートです。令和始まりましたね。ここから頑張るぞ!