世界最凶の個性『らしい』(憑)   作:枝豆%

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プロローグ

 「──個性はなくても、ヒーローは出来ますか!?」

 

 緑色の髪をした、癖毛の目立ついかにも根暗そうな少年が声を発した。発した先はこの国にいれば誰もが知っている人物、いや、この世界なら彼の名を知らない人はいない。

 

『オールマイト』

 唯一無二の絶対的平和の象徴。

 

 2人の体格差は歴然としており、まさにオーラが違うとも言える。

 

 片や王道をあゆみ続けた英雄。

 片や王道を外れた落ちこぼれ。

 

 それは個性社会が生み出した格差とも言える。

 派手な個性と人の良さで登りつめた象徴としての席、何か一つでもなければその場所へと辿り着けなかっただろう。

 そして、その全てを支える『個性』が落ちこぼれの少年にはなかった。

 

 

 「個性のない人間でも……貴方みたいになれますか!!??」

 

 

 心を振り絞ってだした言葉。

 今のご時世、個性が無いだけで虐められることなどざらだ。更にいえば個性がない、つまり無個性の事を悪と捉える人たちもいる。

 片や底辺と頂き。ただの有無だけで彼の人生はお世辞にも良かったとは言えなかっただろう。

 だが、その少年が勇気を振り絞り、覚悟を決め、残酷な現実へと立ち向かった。

 

 

 ───だが返ってきた答えは残酷な現実だった。

 

 

 大人なら濁すことも出来ただろう。だがそれをしなかった、それはオールマイトが彼に感化されたからだ。あの熱意に、あの意地に。

 

 生まれた時から先天的なもので生き方が変わる世界。

 そしてその『個性(才能)』がなければ務まらない職種であるヒーローに憧れてしまった憐れな少年。

 

 夢を見続けていた少年は、やっと夢から醒めた。

 

 

 

 

 

 ーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 そして、その少年は帰る。

 何も無かった自分には、やはり何も出来ない。

 その事実だけが重荷になってのしかかった。

 

『夢を見ることは悪いことじゃない。分不相応なものを──』

 

 言われた言葉が頭から離れない。

 トップに立つオールマイトですら重症を負ってやっとの状況でヒーローをやっている。

 

 それなのに……。僕は……。それでも僕は、、、、。

 

 

 

 

 「今日は散々だったな……」

 

 

 ヴィランに襲われている幼馴染を助けたら、プロのヒーローに怒られた。

 

『無個性が出しゃばるんじゃない』

『君がそんなことをする必要はなかった』

『君の行動がどれだけの人に迷惑をかけたのか分かっているのか』

 

 

 口には出さないけど僕は「なんで?」と思った。

 

 有利な個性持ちが来るまで待機?

 

 それってヒーローなの。

 

 

 僕が憧れたヒーローは、そんなの関係なく笑顔で人を助けていたのに。

 

 

 「……なんで、なんで僕には個性がないんだ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「──何言ってんだ坊主」

 

 

 「え!?」

 

 誰もいなかったはずなのに…。

 今まで周囲に人は居なかったはずなのに…。

 

 その疑問が疑念に変わる頃、真っ黒な髭をしたオジサンは手にあるチェリーパイを齧った。

 サクサクとこちらの気持ちもよくなるほどいい食感だということが、こちらにまで伝わってくる。

 

 「ゼハハハ!!このチェリーパイはやっぱり最高だ!!」

 「アナタは……」

 

 「なぁに、ちょいと坊主のことを見てたんだよ。オールマイトと会った所からヴィランから友達を助けようとした所をな」

 

 一瞬少年に悪寒が走った。

 ずっと付けられていた??

 

 その事を理解した途端、少年は背中に冷汗が渡ったことが分かる。

 

 

 

 「──なれるぜ、ヒーロー」

 

 「え?」

 

 

 言われた言葉に詰まる。

 訳の分からないオジサンだけど、諦めたハズの道を肯定してくれた。

 

 

 

 「プロヒーロー(アイツら)のいうヒーローなんて糞だ」

 

 チェリーパイを置き、オジサンは酒瓶で流し込んだ。

 僕は子供だから分からないけど、とても満足そうな顔をしている。

 

 「子供が夢を見るのは分不相応だって?え!?おい!ゼハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ」

 

 まだお酒が残っている酒瓶を上に挙げて、勢いよく地面に叩き付けた。

 割れるのではないかと思えるほど強い衝撃。

 僕は今このオジサンに圧倒されている。

 

 

 「人の夢は──終わらねぇ!!!!!」

 

 

 その衝撃に近辺の家の人達が出てきた。

 大の大人が、などと笑われているがオジサンはそんなことお構い無しに続ける。

 

 

 「そうだろぉ!!!!!」

 

 

 無個性だって医者に言われてから僕がずっと欲しかった言葉。謝罪や否定なんかじゃない。

 肯定だった。誰かから『ヒーローになれる』そう言って欲しかった。

 だから見ず知らずのオジサンに言われた言葉が僕の胸に刺さる。

 

 親からも憧れの人からも、決して言われることのなかった言葉。

 堪えなければ泣いてしまいそうだ。

 

 

 「人を凌ぐってのも楽じゃねぇ。ゼハハハハハハハハ!!!!!」

 

 オジサンはそう言いながらも笑う。

 羞恥など微塵も感じさせない。

 

 近隣の人はこのオジサンを子供に見せないようにしたり、後ろ指を指したりして笑っている。

 

 

 でも、僕にはそんな風には見えなかった。

 ただただカッコイイ。

 

 僕の中でこのオジサンはオールマイトに匹敵するくらいにかっこいい存在になっていた。

 

 

 「笑われていこうじゃねぇか。ゼハハハハハハハハ!!!!」

 

 一頻り笑ったらオジサンは地面から立って愉快に立ち去った。

 

 「っと、邪魔したな坊主」

 

 「ぼ、僕は──」

 

 

 ──ヒーローになれますか?

 このオジサンに聞いておきたかった。僕のことを馬鹿にしない、夢を見ろって言ってくれたこのオジサンに。

 

 でも言葉が出てこない。

 オールマイトみたいに拒絶されたらと思うと……僕にはあと一歩進むことが出来ない。

 

 

 

 

 「なれるといいな、最高のヒーローに」

 

 

 僕は応えることが出来なかった。

 やっと欲しかった言葉を言われたから、やっと僕を肯定してくれたから。

 だから僕は──。

 

 無個性でも、最高のヒーローになる。

 誰に何と言われても構わない。

 

 

 だってこのオジサン以外誰も僕の本物を見つけてくれなかったんだから。

 ならなんて言われても関係ない。

 

 

 無個性だから無理?

 違うだろ。そうじゃないだろ。

 

 

 無個性でも出来るんだ。

 無個性だからこそ出来るんだ。

 

 

 

 

 僕は………最高のヒーローになる。




「人の夢は終わらねぇ」がワンピースで一番カッコイイと思う。
異論も反論も認める。
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