一人の少女を守るヒーロー   作:疾風の警備員

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どうも、疾風の警備員です。

久々にこちらの作品に感想が来たので、筆が乗りました。

では、どうぞ。


転・入

姫和母の病院から戻った一夏達は、迎えに出ていた木綿季から試合での労いの言葉と、その後の事後処理について簡単な説明を受けてから、自室に戻った。

 

その内容は曰く、試合に乱入してきた篠ノ乃箒以外のIS操縦者達は全員強制退学・国際IS法違反により逮捕となった。今回の件は学園でも重く受け止められ、生徒達への見せしめと再発防止の為にこの処置となったらしい。

 

そんな関心のない相手の事など、どうでもいいとしか思わない一夏だったが、次に聞かされた篠ノ乃箒の対応にいちご共々頭を抱えた。何故なら……

 

「篠ノ乃箒はお咎め無しって……前回に続き、いくら何でも甘過ぎじゃねぇ?」

 

「だよねぇ…」

 

ベットの上で横になる一夏に膝枕しているいちごも、呆れた様なため息を吐く。実際、それを説明している木綿季も、呆れと疲れが混ざったため息を吐いていた。

 

篠ノ乃箒に関しては当初、乱入してきた他のIS操縦者より軽い反省文200枚と、残り在籍中は毎日奉仕活動にIS使用の厳重監視となる予定だった。何故他の乱入者と比べて軽くなっていたのかというと、彼女自身が保護対象だからだ。そんな彼女を退学にして誘拐されたとあれば、あの篠ノ乃束(天災シスコン)が許す筈もない。最悪、全世界の核ミサイルを暴発させるなんて事も辞さないだろう。それを例によって恐れたIS委員会の横槍によって、またしても不問となってしまったのだ。

 

「これだと、彼女が反省する事は無さそう…」

 

「無さそうじゃなくてしねぇよ。ま、襲ってくるならやり返すだけだ」

 

「どのぐらいで?」

 

「倍返しだ」

 

そんな某ドラマの名言を言って、一夏はいちごの膝から頭を上げる。その顔には怒りが浮かんでいる。

 

「それに加えて、壊した教員機の代わりはグリゴリ社で最新鋭機を無償提供しろとか…こっちの技術力目当てだろ?勝手に巻き込んどいてIS委員会のヤロウ…ふざけんなっての」

 

そう、篠ノ乃箒が乗っていて一夏が再起不能までバラした打鉄は当然廃棄処分となり、IS委員会は代替え機をグリゴリ社に無償提供しろと言ってきたのだ。それに一夏は憤慨していた。

 

「でも、よく龍見さんはOKしたね?」

 

「一応理由を聞いたら、機体は提供してやるけど修理やパーツ交換については何も書いてなかったから、オーダーメイドや高級パーツ使いまくりの機体を作って修理やメンテを有料化。その都度、全額委員会に請求してやるってさ」

 

「わあぉ…御愁傷様」

 

しかし、穴だらけの契約だったらしい。グリゴリ社はその穴を突いて、委員会からむしり取る事にしたようだ。

 

「おまけに性能は最新鋭機に相応しい超ピーキー仕様にして、千冬姉か木綿季先生ぐらいしか乗れない様にするって」

 

「それって安全なのかな?篠ノ乃束博士とか侵入者に奪われたり…」

 

「大丈夫だよ。起動者登録には龍見さんの世界の言語……悪魔語だっけ?それを使った手書きのコード入力が必要だし、ブリュンヒルデ級の腕がないと、まともに飛ぶ事すら出来ない程の反応伝達速度にするらしいぜ?」

 

「うん、なら安全だね」

 

最初は奪われる危険性を危惧するいちごだったが、そのトンデモセキュリティや性能に逆に安心した。確かに、この世界に無い言語を読み解くのは不可能に近く、千冬や彼女と剣で互角に渡り合った木綿季のような超人が安売りレベルでいたら怖すぎる……

 

「さて、愚痴はここまでにして寝るか。明日は()()が来るし…」

 

「そうだね……ふわぁ…私も眠くなっちゃった…」

 

会話を終えた2人は寝間着に着替えると、1つのベッドで寄り添い合って横になった。

 

 

 

念のためにもう一度言おう。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()のだ。

 

 

 

ここだけ見れば、2人は既に恋人同士だとか夜の営みだとかのエロい想像が浮かんだりするかもしれないが、その答えはどちらも違う。

 

2人がこうしているのは……これが2人が【まともに眠れる唯一の方法】だからだ。

 

一誠達によって研究施設から救出され、家族の元に帰ったその日の夜。家がない一夏と千冬は、しばらく星宮家に厄介になる事になった。入浴を終え、貸し与えられた部屋で一夏と千冬が眠りに着いてすぐの事だった…

 

 

一夏が激しく魘され始めたのは。

 

 

それに気づいて慌てた千冬が一夏を起こし、荒い呼吸を整えさせてから話を聞こうとした時、別の部屋から悲鳴が響き渡った。賊の侵入かと思った千冬は近くに立て掛けておいた木刀を手に部屋を飛び出し、悲鳴が起きた部屋に向かうと……そこには両親と弟に支えられながら自身を抱きしめて泣いているいちごがいた。

 

一夏といちごは最初、悪夢を見たからと言って落ち着いたらもう一度寝ようと瞼を閉じるが、しばらくするとまた魘されて飛び起きる。それを夜中に何度も繰り返し、気がつくと2人はまともに眠れぬまま、夜明けを迎える事となった。

 

さすがに異常を感じた大人達は嫌がる2人を病院へ連れていき、医者に診てもらう事にした。その診断結果はPTSD…所謂【心的外傷後ストレス障害】の一種と診察された。

 

心的外傷後ストレス障害とは、生死に関わる様なトラウマ等による強烈なストレスによって引き起こされる病で、事件の記憶が突如甦るフラッシュバックや其れによる不眠、原因となったものへの回避行動などの症状がある。

 

2人が眠れないのは、捕まっていた時の記憶がフラッシュバックしていた為であり、病院を嫌がったのは人体実験された研究施設を想起する物が多かった事が原因であった。

 

それから星宮夫妻と千冬は協力して、2人が眠れる方法を探した。時に寝具一式を安眠仕様の物に取り替えたり、安眠に効くアロマキャンドルを焚いたり、場合によっては市販の睡眠薬等を試してみるも効果はなく、時間ばかりが過ぎていき、2人も見るからに痩せていった。

 

そんなある日、りんごが洗濯物を取り込んでリビングで畳もうしたら、一夏といちごがソファーに寄り添って寝ていたのを見つけた。最初はまた悪夢に魘されるのではないかと心配したりんごだったが、幾ら時間が経とうとも魘される事はなく、それどころか穏やかな顔で2人は眠り続けたのだ。

 

これに驚いたりんごは、すぐさま千冬に連絡。やって来た彼女との話し合い、夕方に起きた2人に事情を話すと、2人も研究施設にいた時はあまり眠れなかったが、脱走して野宿した時はよく眠れた事を話してくれた。

 

それからは、寄り添う組み合わせを替えて何度か試したが、一夏といちごの組み合わせ以外は効果がなかった。

 

ゆえに、一夏といちごは2人で寄り添って眠る事が安眠の為の唯一にして絶対の条件となった。

 

一応、思春期である一夏といちごは、なるべくお互いを配慮して、寝る前に服装等をキチンとし、エロい事が起きないように背中合わせにしている為、今のところ、お互いに安心して眠れている。

 

「んぅ…?って!?なんで俺、いちごの胸に顔を埋めてどわぁッ!!」ドッシ~ン!

 

まぁ、寝相などによるハプニングについては、どうしようも無いが…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「本当に、さっきは悪かった!!」

 

「いいよ別に、ワザとじゃ無いんだし…」

 

「だけどよぉ…」

 

「なら、今日のお昼に食堂のパフェを奢る事」

 

「了解、それくらいなら大丈夫だ」

 

あの後、一夏がベットから墜ちた音で目覚めたいちごに、落ちた理由を話し、謝罪した一夏をいちごは許して一緒に朝食を作り、食べて片付けを終えてから揃って寮を出る。そして、教室までの間に一夏は朝の事を謝り続けていた。いちごは事故だと判断していたので気にしてなかったが、一夏はお咎め無しなのを許せないらしく、それならとデザートの奢りで手を打つ事にした。

 

(せっかくだから、一番高い【旬のフルーツ盛りだくさんパフェ】にしよ~っと♪)

 

しかし、そこでちゃっかりしているいちごだったりする。

 

そんな2人が教室に入ると、中はクラスメイトの半数以上が来ており、何やら話し込んでいた。

 

「なんだなんだ?随分楽しそうだな?」

 

「皆、転入生の事を話しているんだ」

 

それが気になる一夏に話しかけてきたのは、姫和だった。

 

「おう姫和、おはよう」

 

「おはよう、姫和ちゃん」

 

「ああ、おはよう。昨日は本当にありがとう…何度感謝してもしきれない…」

 

「いや、だからそれはもういいって!?」

 

昨日の事でまだお礼を言う姫和に、一夏はタジタジとする。

 

「何を言う。もう目覚めないと言われていた母さんを目覚めさせてくれたんだ。私としては、これ以上ない幸せな事だったんだぞ。それをしてくれたお前には、感謝しかない」

 

「だから、礼ならもう充分してもらったからさ!?」

 

「フ…なら、これ以上は止めておこう。私もお前を困らせたい訳じゃないしな。だが、何かあった時は遠慮なく相談してくれ。私も全力で付き合ってやる」

 

「ああ、そん時は頼むよ……ところで、なんでさっきから俺と目を会わせようとしないんだ?」

 

「うぐッ!?」

 

そこで一夏からの疑問に、体をビクッ!!と強張らせる姫和。そう、先程から彼女は一夏への視線を微妙にずらしていた。

 

「あ、それ私も気になってたの。なんか微妙に視線をずらしているというか…顔も少し赤いし…?」

 

「大丈夫か?病院で病気でも貰ってきたんじゃ…」

 

「いや、何でもないぞ!?」

 

「そっか」

 

「ふ~ん…?」

 

「ア、アハハ…」(くそぅ~!!母さんがおかしな事言うから、変に意識してしまう…!!何か…!!何か話を変えねば!!)

 

姫和はそんな内心を悟られぬよう話題を探し、今さっきのネタを使う事にした。

 

「そ、そういえば!!…お前達は転入生について何か知ってるのか?」

 

「ああ、知ってるぜ」

 

一夏としては、それが自分の知り合いだから断言できた。しかし、ここで予想外な言葉が姫和から放たれる。

 

「おお…!!それは()()()()()()の内、誰なんだ?」

 

「「え?」」

 

その質問に、一夏といちごは一瞬思考が止まる。だが、姫和は確かに3人の転入生の転入生と言った。つまり、今日来る転入生は3人もいるという事だ。

 

「え~と……1人は知ってるけど、他はどこに来るんだ?」

 

「確か噂では、2組に1人と3組に2人らしいが…内、企業代表が1人に国家代表候補生が1人らしい。残った1人は企業からの推薦だとか…」

 

「へぇ~…」(いちご、どう思う?)

 

(たぶん、企業代表の方はスパイだと思った方が良いよ。狙いはきっと…)

 

(俺か秋羅のデータ……か)

 

(違うかもしれないけど、注意だけはしておいて)

 

(了解)

 

2人は目線だけで会話し、とりあえずの対策を決める。

 

「それで、お前達が知っているのは誰なんだ?」

 

「ああ…それなら姫和も1度会ってるぞ?」

 

「え?……うーむ…」

 

一夏の言葉に頭を捻る姫和だったが、そこで始業のチャイムが鳴り、全員が席に着いてすぐにエイミーが入ってきた。

 

「皆さん、おはようございます」

 

「「「「「おはようございます!!」」」」」

 

「はい、元気で良いですね♪それでは出席を取る前に……このクラスに加わる新しい子達を紹介しまーす!!」

 

「「「「「「イエェェェェェェェイ!!」」」」」」

 

「それでは、2人とも…入ってきてくださーい!!」

 

エイミーの言葉にテンションが爆上がりする3組。そしてエイミーに言われて入ってきたのは、以前グリゴリ社で出会った自動人形(オートスコアラー)の少女【いろは】と、腰まで伸びた薄い紫のストレートヘアに細身のリボンを着け、少し気弱そうな顔を緊張で強張らせ手と足が左右一緒に出ている少女だった。

 

「其れでは2人とも、自己紹介をお願いしますね?」

 

「畏まりました」

 

エイミー先生の言葉にいろはが答えて、一歩前に出る。

 

「ただいまご紹介にあずかりました、グリゴリ社所属の自動人形…【環 いろは】と申します。不束ものですが、よろしくお願いいたします」

 

「しつも~ん!!おーとすこあらー?…って何?」

 

「そうですね……簡単に言えば生体ロボットでしょうか?」

 

「ええッ!?全然ロボットに見えない!!」

 

質問した少女はいろはの見た目に驚く。それもその筈、今の彼女は体に人工皮膚を着けているので、前に見れた球体間接などが見えなくなっているので普通の人間と変わらないからだ。そんな見た目でロボットと言われても、信じがたいだろう…

 

「では、証拠をお見せしましょう」

 

そう言うと、いろはは両手を自分の頬に当てて植えに押し上げようとする…

 

「ちょいストップ!!」

 

が、その前に飛び出してきた一夏に頭を上から押さえつけられた。

 

「何をするのですか、一夏様?」

 

「いろは……お前今、何やろうとした?」

 

「え?ここはロボットらしく、首をこう…ポーンと」

 

そう言って両手を上に上げるいろはに、一夏はため息を吐く。

 

「ああ、確かにそれはロボットらしいけどよ……さすがにリアルでやったらトラウマもんだぞ…」

 

「そうなのですか?自己紹介で聞かれたら、こうした方がインパクトがあると、響様に教わったのですが…」

 

「何教えてんだよ、響さん…!!」

 

それが師匠の入れ知恵だった事に呆れる一夏。

 

「とりあえず、首を外すのは禁止だ!!」

 

「では、腕ならよろしいでしょうか?」

 

そう言ういろはの右手には、既に外した自身の左腕が握られていた。

 

「外す前に言って!?」

 

「「「「「アハハハハハハ!!」」」」」

 

段々とコント染みた2人の会話に笑い出すクラスメイト。いろはに対して、変な感情を抱いている者がいない事に一夏は安堵した。

 

「はいはい、コントはそこまでにして織斑君は席に戻ってくださいね。次に…マユカさん、自己紹介をお願いします」

 

「は、はいぃ!?(ガッ)はう!?」(ビッターン!!)

 

エイミーに促され、一歩前に出ようとしたマユカと呼ばれた少女だったが、何もない床で足を縺れさせて顔面から派手に転んだ。

 

「だ、大丈夫ですか!?」

 

「イタタ…はい、大丈夫ですぅ…」

 

転んだ時に打ったのか鼻と額が赤くなっていたが、慣れているのかすぐに立ち上がり自己紹介を始める。

 

「はは初めまして!!【マユカ サナギ】と言いましゅ!!グリューネ社の企業代表で専用機持ちです!!え、えっと…!!よ、よろしくお願いしま(ガン!!)いったあ!?」

 

途中どもったり噛んだりしていたが、何とか無事に終わりそうと思ったその瞬間、お辞儀をしようと頭を下げるが、下げすぎて前の席の子の机に思いっきり頭をぶつけていた。これまでの出来事を見て3組の全員が…

 

((((((あ、この子ドジっ子だ…))))))

 

そう心の中で思った。

 

「……いちご、アイツが本当にスパイなのか?」

 

「え、え~っと……アハハ…」

 

そして最初はスパイかもと疑っていた一夏といちごも、この光景には困惑しかない。

 

「はい、色々ありましたが皆さん仲良くしてくださいね~。それでは、授業を初めますよ~。最初は実技の授業になりますから、更衣室で着替えて【第一アリーナ】に集まってくださいね~」

 

そしてエイミーが声かけをして空気を正し、新たな仲間と共に、何時も通りの授業が始まるのだった。




いかがでしたか?

という訳で、いろはと新キャラ参戦となりました。

次回はISの実技授業と2組の転入生登場回です。

更新は……感想次第です。

では、次回でお会いしましょう。
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