今回から原作に入っていきます。
さらに他作品から何名か参戦し、一夏といちごの仲間になります。
どんなキャラが出てくるのか気になる人は、本編をどうぞ。
入・学
グリゴリ社の2人目の男性操縦者発見発表から月日は経ち、季節は桜の花びらが舞う4月。IS学園では入学式が執り行われていた。
IS学園とは、日本の近海に浮かぶ人工島に建設された唯一のIS専門の学校であり、全世界から入学希望が絶えず倍率が20000倍というふざけた数値を持っているエリート校である。
そして入学式が終わると普通はHRで終わるが、この学園は通常授業とISの専門授業を同時進行で行うために日数の影響でそのまま授業に入る事になっている。
「あ"~……入学初日から授業とかあり得ねぇ…」
そんな場所で世界で2番目にISを動かした男、織斑一夏は決められたクラスの席(最後列の窓際)の背もたれに寄りかかって天井を見上げながらその事を愚痴っていた。
「仕方ないよ、やる事多いんだし…」
それを隣の席に座るいちごが宥める。だけど初日からフルで授業があると聞けば、やはりテンションが下がってしまうものである。だけど、何も悪いことばかりではない。
「でも篠ノ之秋羅…だっけ?その人とは別のクラスになれたから良かったじゃない」
そう、いちごの言うとおり一夏達は転生者である篠ノ之 秋羅とは別のクラス【1年3組】になっていた。
これには2つの理由があり、1つは彼の姉である織斑千冬がIS学園の教師になり転生者がいる【1年1組】の担任となったので、親族を同じ組にしてしまうと贔屓があるかもしれないという教育的判断と、貴重なサンプルである男性操縦者2人を別々のクラスにして、万が一事件に巻き込まれても片方は生き残れる様にするための政治的判断があった。
「その点だけは政府に感謝だな。幾ら倒すべき相手とはいえ、あれと授業中ずっと一緒とか気が狂うぜ…」
「でも、クラス中の視線は集めてるけどね?」
「んなもん無視だ、無視」
一夏は体を前に起こし視線を外の景色を向け、自分に突き刺さる数多の視線から気を反らす。だけど、すぐに視線をいちごへと向け直す。
「でも本当に良かったのか?お前まで付いて来なくても…」
「なに言ってるの?私は一夏のパートナーなんだから♪」
一夏は元々、一誠達の援助で千冬と2人だけで決着をつけるつもりだったのだが、何故かいちごも彼を手伝うと言いだし、その結果一夏のサポート役として一緒にIS学園に入学する事になったのだ。
「…………ありがとな」
「どういたしまして♪」
そんないちごに一夏が感謝してると、教室の扉が開いてラベンダー色の髪の女性が入ってきて教壇に立つ。
「皆さん、IS学園にご入学おめでとうございます!!私が3組の副担任の【エイミー・クリサンセマム】です。宜しくお願いしますね♪」
「「「「「よろしくお願いします」」」」」
笑顔で挨拶するエイミーだったが、一夏といちごを含めた5人からしか返事が貰えず、その笑顔も多少引きつったものになっていた。
「ア、アハハ……とりあえず、担任の方は職員会議が長引いていますので、先に出席番号順で自己紹介を始めましょうか?皆さんも早く聞きたくてウズウズしてるみたいですし」
エイミーの提案で始まる自己紹介。ア行の人から始まり次に一夏の番となった。
「では次に…織斑君、お願いしますね?」
「えー…グリゴリ社の企業代表で世界で2番目にISを動かした男、織斑一夏です。趣味は料理と鍛練、最近はお菓子作りに嵌まってます。嫌いなのは女尊男卑の人間で、将来の夢は調理師免許を取得して自分の店を持つ事です。ISの事はまだわからない事が多いので皆さんに教えてもらえると助かります。これからよろしくお願いします」
よく最初の自己紹介で印象に残るようにド派手な事をやる人がいるが、それでは今後3年間そのキャラでやっていかねばならないし、下手すればイタイ人物認定されてハブられる未来しかない。だから一夏は無難な事を喋る事にした。殆どが女子の中で3年間もハブられるのは、さすがの彼も精神的にキツいのだ。
「ありがとうございます。個人的な質問は全員の自己紹介が終わってからか、休み時間などにしてくださいね?では次の人…」
一夏の紹介が終わると同時に、エイミーがそう言って次を促す。このまま質問をさせれば次々に手が上がって収拾がつかなくなると思ったからだ。
「星宮いちごです。一夏と同じグリゴリ社の企業代表で、趣味は料理と音楽、実家はお弁当屋をやっています。3年間よろしくお願いします」
「ありがとうございます。次は「エイミー先生、ゴメンゴメン!!遅くなっちゃった~!!」あ、紺野先生!!」
自己紹介は続き、いちごの番が終わると同時に教室に1人の女性が駆け込んできた。腰まで届きそうな黒髪をうなじの部分で赤いリボンで纏めた髪型に、どこか幼さが残る顔で活発そうな女性だ。
「会議、やっと終わったんですね?」
「うん、警備の事とかで色々と変更点があったから確認に時間が掛かっちゃった」
そう理由を告げ、エイミーが降りた教壇に立つ女性は自己紹介を始める。
「えー、まだ自己紹介の途中だと思うけど先に話しちゃうね?ボクが君達の担任を勤める【
「「「「「よろしくお願いします」」」」」
担任の挨拶に返事を返すのは先程と同じ5人の声。その状況に木綿季は顔をしかめる。
「ん~…今の5人はいいとして皆、挨拶はキチンとやってね?挨拶は礼儀の基本中の基本なんだから。それができない人は社会人になったら相手に無礼者って思われて信用されなくなっちゃうよ?わかったら返事は?」
『『『『『は、はい!!』』』』』
「そうそう、それでOK♪」
木綿季先生の言葉に今度は全員が返事する。それを聞いて彼女はサムズアップした。
(な、なんか今の紺野先生…凄い迫力があったね?)
(知らないのか?木綿季先生は千冬姉と一緒に国家代表の座を争って……剣だけの千冬姉に同じく剣だけで挑んでほぼ互角に斬り合ってた人だぞ?惜しくも負けたけど、その試合から日本の候補生の間では【絶剣】という二つ名で呼ばれる様になったんだ)
(千冬さんと剣で互角ぅッ!?)
「ハイそこ!!小声でお話しない!!」
「「す、すみません!?」」
木綿季先生について話してた一夏といちごだったが、彼女に見つかりすぐに謝る。
「それじゃ自己紹介の続きを《キーンコーンカーンコーン》ありゃ?HR終わっちゃった…それじゃ次は授業になるから準備しておいてね?自己紹介できなかった子は放課後にもう一回時間作るし、各人でしてても良いからね」
途中で終業のチャイムが鳴り、教師2人は教室を出ていく。するとさすが女子というべきか、部屋が一気に騒がしくなる。
「女子の切り替えスゲェ…」
「アハハ…」
それに唖然とする一夏に苦笑いを浮かべるいちご。だが、2人の周りに人は集まらない。先程と同じく遠巻きに見ているだけだ。一夏の強化された聴覚ではこっちに来ようとしても何故か緊張して無理だとか、男がISを使うなんて生意気なんて声が届く。ただ、否定的な声は教室の外からだけで教室内はどうやって声を掛けようか悩んでいるものが殆どだった。
「どうやら君達は、すごい人気者みたいだな?」
「ん?」「ほえ?」
そんな2人に一人の少女が声を掛けた。黒髪を腰まで伸ばし、切れ長の目で凛とした雰囲気を持つ子だった。
「君は確か…」
「【
そう言って彼女は右手を差し出してきて、それを一夏はしばし見つめていた。
「…?どうかしたのか?」
「いや、君は女尊男卑じゃないんだな?」
「そういう事か…私は母の教えで自分の目で見たものを信じる様にしているんだ。そして君達は先生にキチンと挨拶していた…だから、悪い人ではないと思ったんだ」
「そうか」
その理由に納得した一夏は彼女の手を握る。彼女なら信用出来ると。
「よろしくな、十条」
「こちらこそだ」
「んじゃ、お近づきのしるしに…これ、食うか?」
そう言って鞄から取り出したのは有名なお菓子会社である海永から発売されてるお菓子、大枝のチョコミント味だ。
「そ、それは…大枝の期間限定チョコミント味!?」
「俺はチョコミント味が好きなんだけど、誰もこの味の良さを分かってくれないんだよなぁ…」
「だってそれ、歯みがき粉みたいな味なんだもん…」
「「何を言うッ!!歯みがき粉なんかと一緒にするな!!」」
「ウェイッ!?」
いちごの呟きに一夏と姫和が同時に怒る。
「いいか!?チョコミントの魅力はまずあの清涼感だ!!口に含んだ瞬間にやってくるミントの清涼感は、口だけでなく鼻の中までスーッと真っ白な気分に一新してくれるんだ!!」
「そしてその清涼感が、後に来るチョコの香りや味を極限まで味わわせてくれる!!これは正しくベストマッチな組み合わせと私は断言できるぞ!!」
「は、ハイィィィィィィィッ!!」
そんな風に2人に熱く語られ、涙目になりながらいちごは頷くしかなかった。そしてそんな2人はお互いを見やると、先程とは違う固い握手を交わした。
「お前とは、思ってたより仲良くやっていけそうだ。十条」
「こちらの台詞だ。それと、私の事は姫和でいい」
「なら俺も一夏で良いぜ」
今ここに、チョコミント好きによる友情が結ばれた瞬間である。
「何やら奇妙な友情が結ばれてますね?」
「というか、友情なんでしょうか…?」
「「「うん?」」」
そこにさらに2人分の声が聞こえ、3人が視線を向けると肩まである黒髪を左側のサイドポニーにして、少しタレ目気味な少女と170㎝はある身長に後頭部に赤いリボンをした黒髪ロングでオッドアイの少女がいた。
「貴方達は?」
「私は【
「私は【
サイドポニーの少女が聖良、オッドアイの少女が智と名乗る。
「2人はどうしてこっちに?」
「いえ、2人目の男性操縦者がどんな人なのか気になりまして…」
「そうしたら、何やら愉快な事を叫んでましたから…思いきって話し掛けてみようと思ったんです」
「まぁ…確かに愉快な事だったと思うけど……お?そういやこれで揃ったのか」
「「「「揃った?」」」」
「さっき先生に挨拶した5人だよ」
「「「「あ、そういえば声に覚えが…」」」」
4人がそれに気づくと同時に始業のチャイムが鳴り、クラスメイトはすぐに席に戻る。
「と、話はまた後でな3人とも!!」
「ああ」
「失礼しますね」
「では、次の休み時間で」
こうして出会った3人の少女が、一夏達の頼れる仲間になるのは……ほんの少し先の話である。
その頃、1組の教室では…
(ようやく原作が始まった…ここまでは狙い通りに
顔は真顔にしつつも、心の中でこんなドス黒い事を考えている男がいた。一夏によく似た容姿をしつつも目つきが若干鋭かったり、左目下に泣き黒子がある彼は【篠ノ之 秋羅】…篠ノ之束の義弟であり、一夏と千冬の人生を台無しにした転生者だ。
(いや、すぐに殺すのも面白くないな……折角だから、俺が活躍するための踏み台にでもなってもらうか!!)
「おい…」
彼は授業を受けながらそんな事を考える。もちろん、顔には出さずに…
(先ずは俺達のクラスで起きる代表決定戦に巻き込んで、そこで俺が華麗にコテンパンに叩きのめしてやろう)
「おい…」
(そうすれば奴は学園中で恥を晒して、すぐに去っていくさ!!)
「呼び掛けに答えんか」(ゴスッ)
「いったぁッ!?」
そんな彼の意識を現実に引き戻したのは、彼の担任である織斑千冬だ。その手には開かれた教科書があり、先程の痛みはその背表紙で彼の頭を叩いたからだ。
「今は授業中だぞ。集中しろ篠ノ之弟」
「はい…………チッ…」
彼女に聞こえない様に舌打ちする秋羅。だが、千冬の耳にそれは聞こえていた。
(ずいぶん生意気になったものだ……しかし、お前はこれから絶望していく事になる。何時までそんな態度でいられるのか見物だな?)
そんな彼を横目で見つつ、彼女も心でそう呟いた。
こうして始まったのは転生者への復讐劇。彼の野望を悉く打ち砕き、絶望へと追い込む物語の始まりである。
いかがでしたか?
今回から参戦した他作品キャラのは
十条姫和……【刀使ノ巫女】
鹿角聖良……【ラブライブ!サンシャイン!!】
浅間智……【境界線上のホライゾン】
紺野木綿季……【ソードアート・オンライン】
エイミー・クリサンセマム……【GOD EATER3】
となります。
次回はイギリス代表候補生や転生者との接触です。