私とフィムの日常(?)譚 ━━親馬鹿AGEはフィムが好き━━ 作:揚げたて茶飲みのハンバーグ
「はぁ…はぁ…ど、どうにか間に合った…」
軽く体の限界を突破させて、類似バーストをした私はあまりに疲れたため少し柱にもたれかけて休憩しています。
あのとき突然ビルが倒れてきたのはビックリしました。多分クレアの呼びかけがなかったら潰されていたところでしょう…
「そういえばクレアたち…大丈夫かな…」
私に注意してくれた当の本人であるクレアは私と違ってビルの手前の方、アラガミがたくさんいる所にいます。そして私はその奥の方。
つまり私達は離れ離れになってしまったのです…
言ってしまえば大ピンチです。クレアたちが危険なのはもちろん、私も今は1人なのでアラガミに襲われたらひとたまりもありません。
「…とりあえず、クレアたちに合流しに行こうかな…」
数分ほど休憩し、体の疲れがとれてきたので足を動かすことを決意します。正直、さっきの類似バーストで体の節々が痛いのですがそんなことは言ってられません。事態は一刻も争います。
そのため最短ルートで行くにはこのビルを乗り越えて行けばいいのでしょうが……
━━無理ですね…あまりにも高すぎます。
仕方がありません。ちょっと迂回して進める道を探すとしましょう…
さっきの倒れたビルの辺りから沿うように歩いていると人1人がちょうど入れそうな穴を見つけました。
「ここからなら行けそうかな?」
頑張ってその穴の中に入ろうとしましたが結局ダメでした。私が入ることは出来たのですが神機が大きくてつっかえてしまうのです。
…またルート探しかぁ…
そう溜息をつきながらまた新たなルートを探そうとしたところ突然何か大きな音が聞こえてきました。
爆発音とも取れる音だったのでもしかしたらだれかが戦ってるのかもしれません。
「…クレア…?」
そして私は音の聞こえる方へと走っていきました。
▼▼▼
「ルル…まだ戦える…?」
「はぁ…クレアこそ…どうなんだ?…」
「私はまだまだよ…」
「そうか…私もだ…」
倒れたビル近く━━━━二人のAGEが背中を合わせてアラガミと戦っていた。
彼女らの体はボロボロで神機も所々欠けている部分があり、もはや慢心である。
その周辺にはたくさんの死体が転がっていたがまだ二体のアラガミ、『ヴァジュラ』と『キュウビ』がこちらを睨んでいた。
アラガミにも体にいくつかの傷があり、ふらついてはいるもののクレアとルルの二人に比べればダメージは少ない。
「それにしても…フィムを先に行かして大丈夫だったのか?」
「ええ…フィムならアルカの所にたどり着いてくれるでしょ…」
だが彼女らの目には諦めなど一切なかった。
そう彼女たちは勝利を確信していた。
今の姿からではとても信じられない、勝利をだ。
「じゃあ…私達も頑張るか…!」
「そうするとしましょう…!」
そして二つの影は動き始めた。
▼▼▼
かれこれ走って数分、周りのビルが焼け焦げている場所にたどり着きました。
━━なに…これ?
戦闘の残骸といえればいいかもしれませんが、それを言うにはあまりにも残酷な光景でした。
辺りにはアラガミの死体が沢山転がっており全て例外なく体が喰い荒らされていて、中には体に焼け焦げた跡がある死体もあり、鼻にツンとくる臭いがまわりに撒き散らされています。
クレアたちがここで戦ったのかな…?
ですがそれにしてはアラガミの死体には切られた跡などはなく、あったとしても噛み跡のようなものだけです。
多分ここは違うのだろうと思い、その場を離れようとしたところ…
『グルルルルゥ…』
近くで唸り声が聞こえてきました。
声の聞こえた方に視界を向けるとそこには
━━━━『マルドゥーク』がこちらを睨んでいました。
それは赤い毛と白い毛の生えている狼のような化け物で、前足からはとても高熱の蒸気がでており、所々から赤い溶岩のようなものが溢れ出ていました。
…よりによって感応種が…!?
この状況は非常にまずいです。
アラガミと遭遇するだけでまずいのにそれが感応種ともなればもはや絶望です。
感応種のアラガミというのは簡単に言ってしまえばアラガミを引き寄せるアラガミで、灰域種の次にヤバいアラガミです。
こうなってしまえば戦うしかありません。
両手に神機を握りしめて、即飛翔。からの急降下でまずは目を潰しに行きます。
ですが惜しくも顔に少し当たっただけで後退してしまいました。そのままマルドゥークは私に飛び込んできて右手を振り下ろしてきましたが、その行動を予測していたためバックラーを展開しガードします。
攻撃を防いだ、と思った瞬間、急にマルドゥークの手が紅く光だし抑えきれないほどの衝撃が手にかかってきて
「きゃあっ!」
そのまま私は吹き飛んでしまいました。
何が起こったのかを理解しようとマルドゥークの方を見ると、手の方から排熱口のようなものが開いていて、大量の蒸気が出ていました。
━━もしかして爆発した…!
そうか…!あのとき聞こえていた爆発音もこのマルドゥークによるものだったのか!
だとしたらクレアたちは多分他のところにいるでしょう…早くこいつを殺して会いに行かなくては…
そう思考していたらまたマルドゥーク飛び込んできて右手を振り下ろしてきました。
今度も同じようにバックラーで防ぎますがさすがにあの爆発を2度目はくらいません。
マルドゥークの手が光出した瞬間に手をバックラーで受け流し、懐に潜り込んでから
「早く…!死んで…!!」
思いっきりお腹を縦から切り裂きました。
するとマルドゥークが変な鳴き声を上げながら、倒れて来ました。もしもこのまま生きていたら困るので、切り裂いた部分から刃を何度か突き刺していたら完全に声が聞こえなくなりました。
これで安心です。
マルドゥークも倒しましたしクレアに会いに行こう…と思ったのですがさっきの爆発で結構体に響いたので少し体を休ませてから行くことにしました。
………なんでこうなるのかな…?
とっても嫌になります…
周りから二、三体のアラガミの気配を感じるのです。多分マルドゥークに引き寄せられたのでしょう…
まわりをよく見渡してみると二体のアラガミがいました。それも灰域種のアラガミです。
「さ…さすがに…これは勝てないかも…」
逃げようにも完全に囲まれていて逃げることができません…これは戦うしかないようです…
神機を両手にまた握りしめて、覚悟をします。
「……殺す…!」
▼▼▼
「はぁ…はぁ…やったねルル…」
「あぁ…倒せたな…」
二人はあまりの感動にお互いを抱きしめる。持っていた神機はどちらも壊れていてもう使えるものでは無い。
体をそれと同じように傷だらけになっていて、生きているのが不思議なくらいである。
「でも…今はこんなことしている場合じゃないな…」
「そうね…早くアルカに会いに行かなきゃ…」
お互い支え合いながらどうにか立ち上がる。だがその体では動くことなど出来ず、また倒れ込んでしまう。
「やっぱり…休まないとダメか…」
そう悪態つきながら、仕方なく二人はゆっくりと体を休ませる。
それから何分かたった後、耳から聞きなれた声が聞こえてきた。
『み…さん…聞こえ……か?……てたら返事……てください…!』
「エイミーさん!?クレアです!聞こえますか!」
『クレ……さん!無事だった………ですね!』
最初のうちはあまり聞こえなかったが少しずつ無線の音声がクリアになってきた。
「一応は無事です!近くにルルもいます!」
『ルルさんもいるんですね!ではアルカさんとフィムは…?』
「……わかりません。フィムはアルカのところに行かせたんですが…」
「そのアルカが生きてるのか……」
『…とりあえず、私たちがそちらに向かうので少し待っててください!その後に二人を探すとしましょう!』
「はい…わかりました」
▼▼▼
「このっ……早く倒れてっ!」
アラガミの胸を貫き叫びます。
すると片方のアラガミは倒れ、動かなくなりました。
━━━━あと一匹…!
そう思ったとき…突然目の前にもう一匹のアラガミ現れてきて攻撃してきました。
アラガミ攻撃に少し遅れてバックラーを展開しますが間に合わず、そのまま吹き飛んで壁に叩きつけられてしまいました。
━━━━あ、あれ…おかしいな…何か身体が動かないや……
壁に叩きつけられて衝撃が強かったのか口から血が出てきました。既に私は満身創痍でほぼ立つ力も残っておらず、少し視界も霞んできました。
神機を両手に握りしめどうにか立とうとしますが痙攣しているようになるだけでほとんど動けません。心臓も嫌というほどバクバクと音を立てていてとてもうるさいです。
もしかしてこのまま終わりなんでしょうか?…そんなの嫌です…私はフィムと約束したのです…それを守るために絶対に死ねません…
ですが現実は非常です。私をこんなふうにした元凶のアラガミが一歩、また一歩と近づいてきています。私のことは脅威ではなくもう餌としてしか見てないのかとてもゆっくりと近づいてきており、正直とても怖いです…
「や…だぁ…まだ…死にたく…ないよぉ…」
涙目に訴えますがアラガミには通じません。ゆっくりと、ですが着実に私の方にヨダレを垂らしながら近づきます。
そして大きな口を開けて………
「わたしのおかさんに…てをだすなぁ!!」
横から飛んできた小さな影に首ごと切り裂かれてしまいました。
その小さな影は少し褐色味を帯びた肌に露出度の高い服を着ており、その手には大きな半月のような神機を持っていました。
その影の正体は…
「フィ…フィム…!!」
「おかさん!!」
フィムは私を見つけるや否や神機を投げ捨てて飛び込んできました。胸の中ではずっと泣きながらおかさん…おかさん…と繰り返し呟いていたので、少し安心させるために頭を撫でることにしました。
しばらくそうしているとフィムも落ち着いたのか、スンスンと鼻を鳴らしながらこちらを見てきました。
「お、おかさん!…これから…一人で無理しちゃメッたがら!…」
「うん…ごめんねフィム…おかあさん…次から無理しないから…」
ダメです…何か…視界が歪んできて…意識が…
「おかさん?お……さん!………!!」
▼▼▼
「んっ……」
何かカシャカシャとものを動かす音が聞こえてきて目が覚めました。天井が真っ白で何度か見たことのあるような気がします。
「いたっ…!」
起き上がろうとして体を動かしたら急に激痛が走りその痛みに顔を引き攣らしてしまいます。
そんなことをしてたら隣から
「アルカ!起きたのね!」
クレアが声をかけてきました。
とても安心したような顔になって目から涙も出していました。そのクレアも身体中に包帯を巻いていて松葉杖をついている状態ですが。
「ちょっと待っててね!みんなを読んでくるから!」
そう言い残し部屋から出ていってしまいました。
さすがにみんなが来るのにこんな情けない格好でいるのも嫌なので頑張って体を起こします。
━━━━超絶痛い……
え?…何これもんのすごく痛いんですけど?
特に背中、腰ですよ腰!も、もしかしてこれはぎっくり腰とか言うやつなんですか?
「わ、私はまだおばさんになりたくない!!」
「そんな大声をあげる元気があるなら大丈夫そうね」
「はっ!イルダさん!いたんですね!」
「はぁ…とりあえず無事でよかったわ」
「無事じゃないですけどね!」
これのどこをどう見たら無事に見えるんですかイルダさん!
もしかしたら私はこの出来事のせいで大人の階段登っちゃったかもしれないじゃないですか!
「まあ、先にこれを言っておくわね。おかえりなさい、アルカ」
「はい!ただいまです!」
そのあとみんなが集まってきて私の復活祭をやろうという話になった。しかもこの病室で。
なんでか理由を聞いてみたら
「だってアルカさん動けないでしょう?」
と、説得力ある返しをされたため私に逆らう気力が無くなってしまいました。
仕方がありません…
みんなで楽しくパーティーをするとしましょう!!
いつもより長かった(確信)