私とフィムの日常(?)譚 ━━親馬鹿AGEはフィムが好き━━   作:揚げたて茶飲みのハンバーグ

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8話 親馬鹿AGEの出会い

 闇が世界を覆う夜、新月の日。いつもとは違うただならぬ空気がこの荒野に漂っていた。

 それはアラガミの活性化ゆえか、それとも新たな()()襲来の前兆か。だがそれを知る術を今は誰も持っていない。

 

 ただ一つ言えるのだとすれば、この現象を引き起こしているのは一人の少女だった。

 

 荒野の中心で死んだかのように倒れており、体には無数の傷や痣、服も同じようにズタズタに引き裂かれていた。

 そしてその少女の右手━━そこには()()のようなものが握られている。

 刃は丸く弧を描くような形状をしており、例えるならば半月のような見た目。

 そんな物騒なもの普通少女が持つようなものでは無いということは一目瞭然だろう。

 だが周りを見渡せばこの少女が只者ではないということを思わせるものがたくさん()()()()()()

 

 それはアラガミの死体。

 首がないものもあれば、両足のないもの、もはや原型が残されていないなど多種多様な死体が転がっていた。辺り一面は鼻にツンとくるような死臭が漂う、一つの戦場と化していた。

 

 

 そんなとき、死体による死臭がきっかけとなったのかむくりと生き返るかのように少女が目覚めた。

 

(ん………ここ、どこ?…)

 

 少女の目には殺した覚えのない辺り一面に散らばった()()とどこまでも続く荒野の地平線が目に入った。

 

(わたし…たしか、灰嵐に…巻き込まれて…)

 

 どうにか記憶を思い出そうとするがそれ以降のことは思い出せない。……いやそれ以前の記憶もだ。

 なぜ自分が灰嵐に巻き込まれたことだけを覚え、それ以外を知らないのか困惑する。だが少女はもう一つ覚えていることがあった。

 

(わたしの…名前…)

 

 少女の名前、自分の名前が

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ━━フィム…という名であることを

 

 

 

 

 ▼▼▼

 

 

(なぜだろう……思い出せない……)

 

 現在、私の目の前には地獄絵図が広がっていました。それも結構やばい感じの。

 

「アルカぁ…私ね…私…アルカのことが好きなのぉ…」

 

 酔いつぶれて私に抱きついているクレア。

 

「フィム!こんな服はどうだ?可愛いと思うのだが…」

「うん!かわいいよ!ルル!」

 

 二人で服の着せあいっこをしているルルとフィム。

 

「このお酒なんてどうですか?」

 

 スピリタスを満面の笑みでみんなに飲ませているエイミーさん。

 

「…これじゃ私たちの威厳が…」

 

 いつもの美貌が伺えないほどの落ち込んでいるしているイルダさん。

 

 

 

 ……どうしてこうなった?

 特にクレア、どうして急に愛の告白をしてるの?しかも私の崖のところに顔をうずめて。……でもこのクレアも普通にかわいい。

 

 

「はぁ…みんなどうしたのかな…」

 

「アルカぁ…わたしと結婚しよ?…」

 

「い、意外と恥ずかしいな…」

「にあってるよ!ルル!」

 

「ふふふふふ…」

 

「どこで私は間違えたのかしら……」

 

 

 ……ほんとにどうしてこうなった?

 私は確か普通のパーティをしていて……

 

 

 

 

 ▼▼▼

 

 

「アルカさんたちの生還祝いに!かんぱ〜い!」

 

「「「かんぱ〜い!」」」

 

 

 何故か何度目かに感じる掛け声に合わせて、グラスを目の前に掲げます。みんなのグラスとぶつかるたびにコツンといい音が響いてとても心地よいです。

 

「それにしてもほんとに生還出来るとはねー…」

 

「ふふっ私もまだ夢なのではないかと思っているぞ」

 

「おかさんやみんながぶじでよかった!」

 

「ほんとに今回は死ぬと思ったよ…」

 

 各々先日の調査の感想をいい、それがとても悲惨なものだったと改めて思い知らされます。正直今回に至っては信じてもいない神に感謝ですね。それほど生還することが難しかったのですから。

 

「でも、よかったわ…みんな無事で」

 

「あはは…無事ではないですけどね…」

 

 

 私の言葉通りみんなもうボロボロで、クレアやルルは体にたくさんの傷ができてしまい全治2週間ほどらしい。

 だがそれ以前に二人の神機が使い物にならなくなったから剣の部分を作るのにさらにかかるらしく次に出撃できるのは3週間ほどだと言われています。

 

 私に至っては左腕と右足の骨折。右肩が脱臼してたり内臓が一部潰れていたりとなぜ生きているのかと言われるレベルのものなのですがそこは持ち前の回復力とフィムの治癒によってほとんどは回復したのですがまだ節々が痛むかんじです。

 

 フィムはクレアやルルも回復しようとしていたが、突然倒れてしまい治癒するのにリスクがつくのではないかということで周りのみんなから反対されることになりました。私もそれがいいと思います。治癒されておいて言うのもなんですが。

 

 

「まぁ、生き残ったことには変わりありませんから!みなさんお酒を飲んで忘れましょう!」

 

 酒飲む時に一番やっちゃいけないことを勧めている気がしますが今回は聞かなかったことにしましょう。

 

「今回はたくさん飲みます!」

 

「…クレアほどほどにするんだぞ?」

 

 ルルの忠告が聞こえなかったのか、クレアは浴びるように酒を飲み始めて大丈夫なのかと心配してしまいます。

 とりあえず酔ってへんなことをしないよう祈りましょう。

 

 

 

 そんな私の願いを知らずに、クレアが急に抱きついてきました。目がとろんとしていた視点が定まっていません。……完全に出来上がってますね…

 

「ねぇ…アルカも一緒に飲も?」

 

 やめて!そんなにかわいい顔で私を見つめないで!

 私にはフィムがいるの!……で、でもちょっとだけならいいよね?

 

 ちょっとお酒を一緒に飲むだけだから……

 

 

 

 そしてそのまま酔いつぶれてしまい現在に至る、という感じです。

 はい、そうですね。クレアに至っては完全に自業自得ですね。

 でもどうせこんな状況になったんです、もう十分にこの状況を楽しんでやりましょう。

 とりあえず最初はフィムにはないクレアのおっ……

 

「みなさん!ちょっと聞いてください!」

 

 へ?

 ちょっと今からお楽しみというのに!なんなんですか!

 

「今現在近くに人間の生体反応を感知したとのことが!」

 

「…っ!今すぐそこに迎えるかしら?」

 

「はい…誰かが向かえば可能かと…」

 

 そのときエイミーさんとイルダさんの視線を感じたような気がしました。た、多分気のせいでしょう。どれほどここがブラックな環境でもさすがに怪我人を派遣させるなんてこと…は…

 

 ……あるようですね。

 

 二人からの期待の眼差しに私は折れてしまいました。ここで私の優しさが裏目に出てしまったようです…

 

 

 

 

 とりあえず一人では流石に危険だということでフィムと一緒に行くことになりました。

 

「ひさしぶりにふたりきりだね!ふひひ!」

 

 あ〜私も久しぶりにフィムを一人堪能できそうだよ…

 さっきちょっと浮気しそうになったけどフィムにはバレてないから大丈夫。さっさと仕事を終わらせて帰る(かわいがる)としますか!

 

 

 

 

 外は相変わらずの荒野で、果てがなく地平線が続いています。周囲を見渡してもアラガミの姿らしきものは一切なく、少し不自然に感じてしまいます。

 ですがそれも気のせいでしょう。一応頭に留めておいて、対象である人を探すのですが……

 

 

「おかさん!あれ!」

 

 フィムが指さす方向を見てみると一人の少女が倒れていました。髪は長く伸びた銀髪で、体型は私よりちょっと小さいぐらい。体には無数の傷がついていて服もボロボロです。そして右手には神機が握られていました。

 ですがおかしな点があります。それが…

 

 

 ━━━━え?この子腕輪がない…

 

 そう腕輪がないのです。それなのに神機を握っている……

 

 なんだがただならぬ雰囲気の子ですね…意識を失っているのか起き上がる気配もありませんしとりあえず持ち帰るとしましょうか。

 

 私が少女を持ち上げて運ぼうとした時…

 

「お、おなか…すいた…助けて…」

 

 とってもか細い声で私に助けを求めてきました。

 

「え!あ、だ、大丈夫?」

 

 私はすぐに持参していた水と食料を渡し、食べさせます。するとみるみるうちに二つの姿は消えてしまい、少女は元気になったのか立ち上がり私たちの方を見てきました。

 

「私…おなか、すいてて…倒れてた…ありがとう」

 

 少女はぺこりとこちらにお辞儀をしました。

 

「ううん、いいの。それよりあなた大丈夫なの?一人でここにいたけど…」

 

 少女は少し悩むような動作をして、決心したかのようにまたこちらを見ました。

 

「あの…私…記憶が、ないの。だから…何してたか…わからない」

 

 

 ……マジか。

 まさかの記憶失った系の子でしたか……だとすると一旦こっちで預かった方がいいですね。

 

「だったら私たちのところにくる?記憶が戻るまでの間でいいから」

 

「いい…の?」

 

「全然!それよりあなたの名前はなんていうの?もしかしてそれもわからない?」

 

「………」

 

(もしかして聞いちゃいけなかったのかな…?)

 

「い、言いたくないなら…」

 

「私の名前は…」

 

 私の言葉を遮り、顔を俯きながら答えようとします。

 

「私の名前は……フィム」

 

 私はこの発言にとても驚いていたのを覚えています。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




クレア「アルカぁ…アルカぁ…」

ルル「クレアはほんとうに大丈夫なのか…?」

クレア「私の…アルカ…ふふっ…ふふふふ」

ルル(駄目みたいだな…)
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