僕はいつも通り、放課後バイトでCiRCLEに来ていた。
いつも通り、友希那が練習にやって来た。
ここまではいつも通りだった。
「友希那~。これ鍵な。ってどうしてここに氷川さんが!」
「どうしてって、昨日言ったじゃないですか。スカウトされたって。」
「スカウトって友希那の事だったのか。ようやく分かった。てっきりプロにスカウトされたのかと思った。だって一人だけ飛び抜けてたし。」
でも友希那がスカウトってどういう事だ?
「それにしても友希那がスカウトしたってまさかバンドでも組むつもりなのか?」
友希那に質問してみる。
「ええ。そのつもりよ。私たちはやるからには頂点を目指すわ。」
頂点って相変わらずスゲー事言うな、友希那は。
「そうなのか。応援するよ。」
「ありがとう。」
こうして、普段の練習に氷川さんも参加するようになった。
今日のバイトを終えた僕は、帰路についていた。
「それにしても氷川さんと友希那がバンドを組む、か。あれ、これってこのあとのメンバー次第でホントに頂点取れるんじゃないか?」
僕が知っている限りでは一番歌が上手いのは友希那で、
一番ギターが上手いのは氷川さん。
僕が知っている限りでは最高の人選だ。
この二人の今後がとても楽しみだな。
こうしていると、自宅に到着した。
「ただいま。」
「お帰り、ちょうどよかった。母さん今から用事で家空けるから店番よろしくね。」
「はーい。」
そういえば店番も久しぶりだな。
こうして僕は店側の方に回った。
今日はもう遅いしもうお客さんは来ないだろう。
と思っていたら、ちょうどよく店の戸がガラガラと開いた。
「いらっしゃいませ~、て巴か。」
「優兄。そういえば最近ほとんど顔合わせてなかったけど、忙しかったのか?」
「ああ、最近委員会とバイトでなかなか店番する時間も無かったからね。」
すると店の戸がまたガラガラと開いた。
「いらっしゃいませ~って今度はあこか。」
「ええ!優兄!?久しぶり~、あこ会いたかったんだよ!」
「そうなんだよ。あこがここ最近優兄に会いたいって毎日ここに来てるんだ。」
そうだったのか。あこよく見たら背が伸びたような感じがする。
それだけ忙しかったんだな、と自分でも思った。
「あこ、背が伸びたんじゃないのか?」
「よく分かったね優兄!やっぱり優兄は凄い!」
僕はなぜか小さい頃からあこになつかれている。
ホントになぜだろう。
「あこ、本当に優兄が大好きなんだな。」
「うん!あこ優兄大好き!だって優兄って本当に優しいんだよ。」
素直に正面から褒められるとなんか照れるな。
でも正面から誉めてくれる人なんてあこ位だよな。マジで。
「ありがとう、あこ。正面から褒めてくれる人なんてあこ位しかいないよ。」
「そうなの?」
「そうなんだよ。」
「そういえば優兄、最近マスク着けなくなったよな。」
「ああ、その事か。別に大したこと無いよ。」
怖がることを止めた。なんて言ったら絶対何言ってんだこいつ。みたいになるから絶対に言わない。
「じゃあな、優兄。」
「バイバイ、優兄。」
少し話した後、宇田川姉妹が帰っていった。
ケーキの入った箱を持って。
それから少し暇な時間があったが、その楽な時間は束の間、店に主婦が大量にやって来た。
あれ、ウチってそんな主婦層に人気だったっけ。
僕からしたらどの世代も等しくいた感じがしたんだが。
すると、主婦の一人が話しかけてきた。
「あら、今日は優ちゃんなの?久しぶりね。」
とか、
「また背が伸びたんじゃない?」
とか、
「彼女は出来たの?」
とか、
「またかっこよくなったわね。」
とか、
色々なことを奥様方に言われて、気づいたら閉店時間。
あれ、店番ってこんなにキツかったっけ?
すると母さんが帰ってきた。
「ただいま。優。さっき店からたくさん奥様方が出てきたけど、やっぱり優は人気者ね。」
「やめてくれよ。疲れるだけだろ。」
「あらあら、照れちゃって。夕飯にするわよ。優も手伝って。」
「ハイハイ。」
「はいは一回!」
「は~~~~~い。」
こうして、キツかった店番は幕を閉じた。