ある日、君に一目惚れした。   作:深き森のペンギン

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第16話 大人気

僕と燐子が主演で開催される演劇部の劇、『ロミオとジュリエット』の会場として、学校の講堂を使っているが、その講堂には、沢山の観客でいっぱいになっていた。

 

今回の劇の前に、コンクールの前の吹奏楽部の演奏もあり、会場はとても賑わっていた。

 

「緊張するな。燐子。」

 

「私は優君がいるからあんまり緊張はしないよ。優君、こうすれば落ち着けるかな。」

 

すると燐子は僕に抱き着いてきた。

暖かい。

 

燐子の体温を感じながら、僕の緊張はほぐれていった。

 

吹奏楽部の演奏が終わった。

その後、楽器の片付けとセットの準備で少し休憩が入った。

 

休憩の間、舞台袖でずっと抱き合っていた僕達を、演劇部の皆が暖かい目で見ていた。

 

特に重労働のあった男子達の癒しになっていた。

 

休憩時間が終了する。

僕達の出番がやって来た。

 

何のトラブルも無く、僕達の演劇は、最も有名なあのシーンに差し掛かった。

 

『ああ、ロミオ様、ロミオ様!なぜあなたは、ロミオ様でいらっしゃいますの?お父様と縁を切り、家名をお捨てになって!もしもそれがお嫌なら、せめてわたくしを愛すると、お誓いになって下さいまし。そうすれば、わたくしもこの場限りでキャピュレットの名を捨てて見せますわ。』

 

燐子のこのセリフに、

 

『黙って、もっと聞いていようか、それとも声を掛けたものか?』

 

と僕が返す。

 

『わたくしにとって敵なのは、あなたの名前だけ。たとえモンテギュー――それが、どうしたというの?手でもなければ、足でもない、腕でもなければ、顔でもない、他のどんな部分でもないわ。ああ、何か他のお名前をお付けになって。名前にどんな意味があるというの?バラという花にどんな名前をつけようとも、その香りに変わりはないはずよ。ロミオ様だって同じこと。ロミオ様という名前で無くなっても、あの神のごときお姿はそのままでいらっしゃるに決まっているわ。ロミオ様、その名前をお捨てになって、そして、あなたの血肉でも何でもない、その名前の変わりに、このわたくしのすべてをお受け取りになって頂きたいの。』

 

よくこんなに長いセリフが覚えられるな。

燐子はやっぱりすごい。

 

『お言葉通りに頂戴いたしましょう。ただ一言、僕を恋人と読んでください。さすれば新しく生まれ変わったも同然、今日からはもう、ロミオでは無くなります。』

 

こうして、僕達の最大の見せ場が終了し、そのままの勢いで劇は終了した。

 

最後のカーテンコールでは、観客席で泣きじゃくっている母さんを発見して、少し恥ずかしくなった。

母さん以外でも、沢山の人が感動して泣いていたようで、これだけの人を感動させられたんだ、と思って、少し嬉しくなった。

 

その次の日、通学路でばったり会った燐子と二人で教室に入ると、クラスの皆から注目を浴びた。

 

「桐島君、昨日の劇、すごく感動したよ!」

 

「あ、ありがとう。」

 

そういっていきなり感想を伝えてくれた女子生徒は、丸山さんだ。

彼女はPastel*Palettesというアイドルバンドのボーカルを務めている。

 

CiRCLEで声を掛けられるまで、全く気付かなかった、というのは秘密だ。

 

仕方無いだろう。

だって丸山さんとは声を掛けられるまで何の接点も無かったのだから。

 

HRになり、担任が入ってきた。

そして、僕の演劇での余韻をぶち壊す爆弾が投下される。

 

「二週間後の体育祭は、今年も羽丘との合同体育祭になる。よって今年もこの二校での対抗戦になる。選手の方を決めておくように。」

 

体育祭である。

僕は運動はできない訳じゃない。むしろ出来る方だ。

でも、運動が大嫌いなのである。

 

早速選手決めが始まった。

まずは陸上競技。

100メートル、障害物、借り物の中から一人絶対一つはでなければいけない。

 

「桐島~、お前足めちゃくちゃ早いし100メートルな。」

 

「僕に拒否権は?」

 

「無い」

 

マジかよ。ってまあいつも通りか。

体育祭ではだいたい勝手に100メートルにされて、拒否権は無い。

毎年恒例のヤツだ。

 

でも陸上競技でも一つ僕の運命がかかっている競技がある。

 

男女二人三脚だ。

 

この競技で燐子と一緒になれなければ、僕は死ぬ。

そう思っていると、女子の方から声がした。

 

「男女二人三脚のペア、桐島君と燐子ちゃんでいいと思う人手挙げて!」

 

クラスの全員が手を挙げた。なかには担任や氷川さんまで混じっているではないか。

いいぞ。もっとやれ。

 

「後リレーだけど、桐島君がアンカーでいいと思う人手挙げて!」

 

またクラスの全員が手を挙げた。

 

「桐島、お前はうちのクラスのエースだ。頑張れ。」

 

どうして神はこんなにも無慈悲なのか。

僕は運動がこの世の何よりも嫌いなのに、運動の方からやってくる。

 

止めてくれ、僕はやりたくない。

 

そう言おうとしたとき、高槻さんが、

「燐子ちゃんは桐島がアンカーでかっこよくゴールする所ってみたい?」

 

すると燐子はうなずいた。

その後、

 

「私は、優君のかっこいい所、みたいな?」

 

「ならばやるしか無いだろう。皆!うちのクラスが総合優勝するぞ!皆は僕に着いてきてくれ!僕が皆を優勝させてやる!」

 

言ってしまった。もうどうすんだこれ。

やるしかないな。これは。

 

案の定クラスの皆も大盛り上がり。

こうして、僕の地獄の体育祭が始まろうとしていた。

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