着任先の新提督が色々とマトモじゃない。   作:夏夜月怪像

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おかしい……

これは、あくまでクウガ2章の繋ぎにする予定だった筈………。

コレ、もうクウガ2章と呼ばなきゃヤバくねッ?!


10話 : 餓狼(がろう)

未確認生命体及び深海棲艦の対策会議が終わり、一条はパトカーに乗り込んだ。

 

 

「………」

 

 

艦娘が意見するな___

 

 

会議中、中将と思われる胸章を着けた提督の言葉を思い返し、一条は何とも言い難い気持ちになる。

 

 

 

 

提督は指揮する者。

 

艦娘は戦線に立つ兵器。

 

 

見た目がか弱い女性であろうと、あどけない少女であろうと……武装し、人ならざるモノである深海棲艦と戦う力を持ち、『建造』と呼ばれる、艦娘の召喚・生成に必要な資材が、兵装と同じであるというたった一つの共通点が、多くの人々に艦娘=人外という認識を与え、深く根付いていた。

 

 

「外にも敵、内にも敵……か」

 

不意に、そう呟いたときだった。

 

「一条さん一条さん!!」

 

亀山が大急ぎで駆け寄ってきた。

 

 

「どうした?」

 

「いいから、早く来て下さい!!」

 

 

何事かと、急かす亀山の後を付いていく。

 

 

 

 

「___すぐに来い、と言うのは……コレの事か」

 

 

一条が手にしている、1枚のDVD。

 

ケースとディスクには、『ドルフィンチェイサー2018A取扱説明ビデオ』と記載されていた。

 

 

「そうなんです!トライチェイサーもスゴいですけど、これもスゴいんですから!!実車が届く前に、しっかり勉強しなくっちゃ!__あ、ほら!始まりますよ!♪」

 

 

DVDプレーヤーにディスクを入れ、ビデオを再生する。

 

 

カッコいいBGMと共に、大型の白バイと白バイ隊員の姿が映し出される。

 

 

『これは、《ドルフィンチェイサー2018A》の取扱説明ビデオです。このビデオをよく見て、あなたも街と海を守る風になってください!』

 

 

亀山はウキウキしながら画面を見つめているのに対し、一条は退室しようとする。

 

 

「あ…あれ?見ていかないんですか?」

 

「科警研で、開発の様子を何度も見てるからな」

 

「そうなんですか!?」

 

「試作車は水陸両用で、時速350kmで航行可能だそうだ」

 

「へえ〜、さすが一条さん……って、ああ!!もう、どうして行っちゃうんですかあ!?」

 

 

「提督の仕事が山積みなんでな!」

 

振り向くこと無く、一条はそう告げて部屋を出ていった。

 

 

エレベーターに乗り込むと、一条は苦しげに顔を歪ませる。

 

「…っつ……うぅ……」

 

 

無理もない。

 

この2日間、ギブナとの戦闘で負った傷もまともに癒えぬまま動いているのである。

 

倒れず、立っていることさえ奇跡に等しかった。

 

 

駐車場に向かうと、長門と吹雪がパトカーの傍で待っており。

 

 

「行こう、提督」

 

「今度は、私も忘れずに連れていって下さいね?司令官!」

 

 

一条に敬礼して、迎えるのであった。

 

 

 

 

文京区 ポレポレ 12:27 p.m.

 

 

五代雄介の下宿先兼主なバイト先である“オリエンタルな味と香りの店”『ポレポレ』。

 

 

保育園から帰ってきた雄介は、中に入ろうとポケットから鍵を出そうとした………が、しかし。

 

 

「………?ん?あれ?」

 

ある筈の鍵が無い。

 

 

しかし、雄介は即座に原因を思い出した。

 

今朝方、一条らを助けに突っ込んだ、火の海となり始めていたあの倉庫である。

 

「しまった……!鍵はあの時、失くしちゃったんだよなぁ……」

 

バイク自体は、クウガ専用車として当時の警視庁が開発された物なので、あの程度では壊れたりしないのだが、変身する前、敵の攻撃から逃れるために散々動き回ったため、気付かぬ間にポケットから飛び出してしまい、そのまま火の海に呑まれてしまっていたのだ。

 

普通なら、此処で諦めるところだが……

 

 

「ん〜…」

 

そうではない辺りが、五代雄介らしさと言うべきか。

 

 

二階を見上げ、微かに開いている窓を見る。

 

「よし!久しぶりにやるかぁ!」

 

 

 

そう呟くと、手を軽く揉みほぐし、店の脇に積んだ酒瓶用のカゴを踏み台に、ガレージを手すり代わりにして懸垂(けんすい)

 

ビルクライミングを始めた。

 

 

 

常識的に考えれば、完全に不法侵入行為である。

 

警察に通報されて当然なのだが………

 

 

「おぉ〜い!雄ちゃーん!」

 

ご近所の皆さんにとっては見慣れた光景。ポレポレの名物とも言えた。

 

「ガッハッハ!!久々だなぁ、窓から入るやつ(その光景)!♪」

 

買い物帰りらしい、自転車に乗ったおじさんは笑いながら雄介に声をかける。

 

「でも、また長野に行くんですよ〜!」

 

「そっか!土産は、野沢菜で良いぞぉ〜♪」

 

「わさび漬けも買ってきますよ〜!」

 

そんな他愛もない約束を交わし、雄介は窓から中へ入ったのであった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

石ノ森鎮守府 02:01 p.m.

 

 

「どう見る?今度の提督……」

 

廊下で、数人の艦娘が話し込んでいた。

 

 

一人は紫のスーツにタイトなスカート。白いタイツと少しヒールの高い黒靴、白い長手袋と肩にかかるほど長い、ウェーブのかかったダークブラウンの髪に眼光鋭い凛とした目をした艦娘が、同じような服装で艷やかな黒髪を膝辺りまで伸ばし、サイドテールに結った艦娘に尋ねる。

 

 

「どうって……まあ、これまでの連中と同様、初めは好印象を与えようとする物じゃないのか?足柄」

 

自分に尋ねてきた艦娘___重巡洋艦「足柄」に返答するのは、姉妹艦である「那智」。

 

 

「そうね………いずれ本性を見せる時は来るわ。その時は……いいえ、その時が奴の最期よ!」

 

 

 

 

重巡洋艦《妙高型》___。

 

 

全部で4姉妹であり、1番艦「妙高」から、2番艦「那智」3番艦「足柄」と並び、末に「羽黒」という4番艦がいた。

 

 

彼女たちが着任したのは、一条が着任する二代前の提督の頃だった。

 

その男は自尊心ばかり高く、指揮系統も脳筋としか言いようの無い散々なもので、「前進」か「後退」の二極論で鎮守府を運営していた。

否、運営しているつもりになっていたと言う方が適切かもしれない。

 

よほどの事でなければ、艦隊が大破していようと強行進撃は当たり前。旗艦の大破によって、撤退を余儀なくされれば、その旗艦を呼び出して罵倒し、無能呼ばわり。

入渠することも許さず、反抗すればさらに暴力を振るった。

 

 

それでも……腐っても司令官だと、妙高たちは耐え続けた。

 

しかし、そんな状況下にあって、足柄を怒りと憎しみの権化に変える悲劇が起きた………。

 

 

 

 

元々おとなしめで、控えめな性格だった羽黒を「男慣れする鍛錬だ」と称して、提督を含めた男数人で羽黒を汚したのである。

 

足柄が見つけたときには、羽黒は既に心を壊されており、それを目の当たりにした瞬間……

 

 

足柄は、羽黒を犯した人間たちを提督諸とも皆殺しにした………。

 

その日、遠征から戻った妙高と那智に対し、足柄はこう答えた。

 

 

「ああ……提督なら、殉職しちゃったそうよ?敵が提督に成り済まして、忍び込んでたみたい………」

 

 

この時、妙高と那智は全てを理解した。

 

理解したからこそ、それ以上問い詰めることは出来なかった………。

 

 

「姉さん……みんな…」

 

 

四姉妹の中で一番背が低く、小柄な少女___羽黒が呼びかける。

 

「羽黒………」

 

ショートヘアで背筋の真っ直ぐ伸びた、キャリアウーマンの様な雰囲気を持つ妙高が心配そうに呼びかける。

 

 

「大丈夫なのか?無理しない方が……」

 

「ありがとう、那智姉さん。今は落ち着いてるし……今度の提督さんは、たぶん大丈夫……」

 

「ダメよ羽黒!」

 

 

羽黒の言葉を、足柄は強い口調で遮る。

 

「過去の英雄だかなんだか知らないけど、所詮人間の男は醜いケダモノよ!!」

 

 

「深海棲艦も、未確認生命体も……全部、私が狩り尽くしてやるわ!この《飢えた狼》がね……!!」




まず、謝罪を。


こんなのクウガじゃねえ!!!と言われても、決して逃げずに受け止めます。


次回で、気持ちが晴れるような展開になったなら、分かってください……(何を?)

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