着任先の新提督が色々とマトモじゃない。   作:夏夜月怪像

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激しさを増してきました、オーズ編第2章。

現時点での人気投票、独り占めとはやりますなぁ……後藤ちゃん(;・∀・)


98話 : 臆病な風と父性と提督命令

白露型駆逐艦・山風。

 

鴻上鎮守府に来る前、彼女は最悪と言えるブラック鎮守府に在籍していた。

 

そこの提督は、大本営の幹部の一人息子で、深海棲艦との戦いをゲーム感覚で見ており、艦娘の扱いも酷いものだった。

 

 

「提督……作戦、失敗しました……」

「そう、じゃあもっかい頼むわ」

 

「提督!これで5回連続の出撃です!疲労が溜まって、戦闘への集中力が落ちている艦娘たちもいます!!一度補給と入渠、編成のし直しを……」

 

「ウッザいなぁ……ゲームのコマが文句垂れてんじゃねえよ!!轟沈がなんだ?それならまた“代わり”を作れば良いだけだろ?所詮、お前らは提督(カミサマ)が居なきゃ何にも出来ない役立たずなんだからさあ!わかったらとっとと行ってこいっての、グズ共がっ!!」

 

 

この様に、無茶な出撃や遠征は日常茶飯事。任務失敗をした時には、入渠も補給も許されず、そのまま放置され、最悪の場合、囮として『処分』された………。

 

そうした中で、大人しい山風は提督の都合の良い『相談相手』だった。

 

 

「ったく……冗談じゃねえぞ、大本営のハゲジジィ共!!僕を何だと思ってんだ!提督だぞ?未来の大元帥サマだぞ!?調子に乗ってんじゃねえよ、クソがあっ!!!」

 

少しでも気に食わない事があったり、苛立つ事がある度に、山風を殴る蹴るなど暴力を振るうだけでなく、関係の無い罵詈雑言まで浴びせかけ、ストレスや鬱憤の捌け口にしていたのだ。

 

 

(役立たず……役立たずのままでいたら、私……私……っ)

 

 

こうした数々の問題を在籍艦たちに告発され、提督は逮捕されたが、山風はそれ以後も人に触れられる事や優しい言葉をかけられる事に恐怖を感じるようになり、さらに死に急ぐような行動を取るようにまでなってしまったのである。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

『我が力の前に屈するがいい!!』

クルイはそう叫びながらサーベルを抜き払うと、バースや龍騎らに向けて炎の斬撃を放った。

 

「龍驤さん!隼鷹さん!!」

 

「あいよっ!!」

「任しとき!!」

 

五月雨の掛け声に応え、隼鷹と龍驤の軽空母コンビが艦載機を発艦。

 

「艦載機のみんな!お仕事お仕事ッ!!」

「艦載機、発艦!!」

 

炎の斬撃を掻い潜り、爆撃機や戦闘機がクルイに向かって攻撃する。

 

「!……えっ!?」

 

援護射撃の態勢に入った阿武隈は、視線の先に映った光景に目を疑った。

 

 

クルイの死角に回り込んだ一条が、対深海棲艦用に配備された狙撃用ライフルを構え、加賀と対角線上に並んだ。

 

「…………」

 

静かに、深く息を吐き、照準を捉える。

 

そして―――

 

 

ライフルが火を噴き、加賀の放った矢は戦闘機となり、クルイに向かっていった。

 

 

『チッ!ちょこざいな……!!』

「まだまだッ!!」

 

一条らの方へ向けば、ドラグセイバーを手にした龍騎が前に飛び出し、真っ向から立ち向かう。

 

青葉が援護射撃する上に、ドリルアーム&キャタピラレッグを装備したバースが追撃を繰り出すなど、これまでに無い連携だった。

 

 

(どうした、火野……!まだか……!)

 

ラミアモアーズと山風の下に向かったオーズを、バースは戦いに集中しつつも気にかけるのであった。

 

 

 

 

 

「山風…ちゃん………」

「ちゃんとするから……だから、今は……構わないで……」

 

 

山風の言葉に、オーズは一つの確信を得た。

 

彼女が怖れているのは、暴力を振るわれることでも轟沈することでもない。

 

『役立たず』と言われ、存在を否定される事を怖れているのだ。

だから、轟沈しかねない無茶を繰り返していたのだと。

 

 

 

「そんなの……」

 

オーズが言いかけた時。

 

 

ラミアモアーズが、オーズと山風の下に迫ってきた。

 

『モットォオオオ!!!』

 

 

二人を捕まえようと、巨大な手を振り下ろしてきた。

 

 

 

「そんなの、認められる訳無いだろうッ!!!」

 

 

瞬間。

 

バッタレッグを展開し、山風を抱えて跳び上がることでこれを回避。

 

 

「ひっ……!?やだ…はなし、離して……!!」

「嫌だ!!絶対に離さないッ!!!」

 

腕に抱かれていることに気付いた山風は、オーズから離れようともがく。

 

しかし、オーズはその腕でしっかと抱き締めた。

 

 

「艦娘は戦う為に生まれてきた……確かにそうかもしれない。けど!生き方を決める自由ぐらい、あって良い筈だ!!」

 

オーズの言葉に、山風は目を見開いた。

 

「それでも戦うことを選ぶのなら、1個だけ約束しよう!!俺が戻れと命令したら、絶対に帰ってくること!自分や仲間の命を、任務に優先させるな!!でなきゃ……二度と戦わせないッ!!!」

 

 

力強く、そして優しく包み込むようなオーズの言葉に、山風は涙を溢れさせた。

 

 

「……っ………!!」

 

『モットォ…モットオオオ!!』

 

手掴みが失敗したので、今度は下半身の蛇で襲いかかるラミアモアーズだったが

 

 

「主砲……撃てぇ―――ッ!!」

途中、追いかけてきた愛宕が砲撃。ラミアモアーズの蛇の目を潰した。

 

「愛宕さん!」

「提督……さっきの“命令”、嘘じゃありませんよね?」

 

「命令?………あ」

オーズが山風に告げた約束を、提督命令として扱うのか愛宕は確認を求めた。

 

 

オーズの答えは

 

 

「………もちろん!」

 

 

言わずもがなであった。

 

「さてと……山風!愛宕さん!オーズ艦隊突撃班!!反撃開始だッ!!!」

「了解!!」

「ぅん……!」




次回。

オーズ編2章及び艦これ編2章(?)、遂に決着です!

人気投票その8

  • 後藤慎太郎
  • 龍驤
  • 愛宕
  • 山風
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