着任先の新提督が色々とマトモじゃない。   作:夏夜月怪像

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戦うことへの執着……
それは、守りたいものへの想い故か。

それとも……

己が己であることの、生きていることの証を示す為か……


109話 : 拒絶

クウガ、そして天龍たち石ノ森水雷戦隊が揚陸侵艦《メ・ベギマ・ギ》と交戦していた頃。

 

わかば保育園にて、鹿島は園児の少女と一緒に『桃太郎』を読んでいた。

 

「門が開くと、桃太郎たちは一気に中へと飛び込みました。『なんだなんだ!?』『助けてー!』鬼たちは慌てました。犬は、噛みつきます。猿は、引っかきます。キジは、つつきます」

 

園児がハキハキと音読し、鹿島が付き添って聴いていると。

 

 

「あれえ?『花咲かじいさん』の絵本が無いよぉ?」

 

一人の園児の少女が本棚の絵本を探していた。

 

それに気付いた園児の一人・良平(りょうへい)が声をかける。

 

「さっき雅人(まさと)くんが持ってったよ?」

「えー…」

 

「持ってきてあげようか?」

「ホント?」

「だってボク、4号だもん!」

 

音読に耳を傾けつつ、鹿島は良平の優しさに笑みを浮かべた。

 

そして、良平は目的の相手である雅人の下へ向かった。

 

 

「ねえ、雅人くん。その絵本貸して?」

「やだ」

「でも、次は真子(まこ)ちゃんの番だよ?」

 

そう言って、良平は絵本を取ろうとした。

 

しかし、雅人はそれでも拒み、良平から絵本を取られまいと抵抗を始めた。

 

「イヤだって言ってるだろ!」

「離せよっ!!」

 

お互いに譲らず、揉め始めた。

 

「せんせぇ……」

そのピリピリした雰囲気に、真子は少し怯えた様子で鹿島にしがみついた。

 

「コラ、止めなさい?」

 

良平らに呼びかけるが、それでも二人は止めない。

 

 

雅人の頑固さに苛立ってしまったのだろう。良平は雅人を叩いてしまった。

当然、それを許せない雅人もやり返す。

 

揉め事は暴力によるケンカに発展してしまい、さらに……

 

「!!」

 

良平は、叩き合いになった際に落ちた絵本を拾い上げると、雅人を叩こうと振り上げた。

 

 

「コラッ!!」

 

鹿島や、騒ぎに気付き、良平の行為を目の当たりにしたみのりが止めようとした、その直前。

 

 

距離の近かった榛名が雅人を庇いながら、絵本による打撃を左腕で防ぐと、良平の手を掴み、取り押さえた。

 

 

「止めなさいっ!!」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「ぐっ……うぅ……ふぅんっ!!」

 

ベギマの放った、生きた砲弾に咬み付かれたクウガは、痛みに耐えながら砲弾を引き剥がし、その場に叩きつける。

 

 

「ククク……」

 

しかし、その一瞬を逃さず、ベギマは通常の砲弾を放ち、クウガを追撃する。

 

「ッ!!ぐっ、ウアアァっ!!」

 

「五代さん!!」

 

 

これ以上、攻撃させてなるものかと、電は前に飛び出そうとした。

 

「止めなさい、電!あなた、弾薬が尽きてるんでしょうがっ!!」

「暁ちゃん……でも……!!」

 

暁に止められ、電は戸惑う。

 

 

このままではクウガがやられてしまう。

だが、今の自分たちでは、反撃をしようにも打つ手が無い。最悪、返り討ちに遭って轟沈(終わり)だ。

 

 

「ハァ…ハァ……ッ」

 

砲撃による打痕(だこん)や火傷、そして噛み傷と、今までに無いダメージと傷を負いながらも、クウガは逃げなかった。

 

(しめた…!今なら、4号だけでも……)

 

 

クウガの背中に回り込めたことから、天龍は刃先の折れた刀を握りしめ、立ち上がる。

 

 

「フフ……ドゾ・レジョ」

 

不敵な笑みを浮かべながら、ベギマは主砲をクウガと天龍に向けた。

 

 

 

 

品川区内 01:32 p.m.

 

 

揚陸侵艦を一網打尽にすべく、桜井と警察犬ハヤテ号、そして訓練士の緑間は、匂いの元を追って辿り着いた工場の物陰で待機していた。

 

そこへ、連絡を受けた一条と加賀、吹雪が合流した。

 

 

「一条さん!加賀さんと吹雪ちゃんも!」

「お疲れ様です、桜井さん!緑間さん!」

 

「……ありがとう、あなたは頑張り屋さんね」

 

桜井らに敬礼する吹雪と、ハヤテ号に労いの言葉をかける加賀。

 

「桜井さん、敵の様子は?」

「静かなもんですよ……あと、2日ほど前から行方が分からなくなっていた、この工場を運営している会社の社長と思われる遺体が、倉庫の裏手で発見されたそうです」

「……そうですか…」

 

 

また、救いきれなかった……

 

悔恨の念を抱きつつ、一条は気持ちを切り替えて任務に専念した。

 

 

同じ頃……長門は一条からの指示により、クウガや天龍たちの救援に向かっていた。

 

「頼む……間に合ってくれよ……!!」

 

僅かにではあるが、長門は天龍たちの身を案じるのと同じくらい、クウガ――雄介のことも心配していた。

 

理由は勿論、天龍の意気込みにあった。

 

石ノ森鎮守府の面々の中には、今だにクウガ=第4号を他の揚陸侵艦や未確認生命体と同族であると見なし、危険視するのみならず、あわよくば撃破しようという考えの者がいる。

 

天龍はその最たる者で、今回の出撃の際も自ら旗艦を立候補したほどだ。

 

「五代……みんな……!!」

 

 

 

しかし……そんな長門の望みは、呆気なく消えてしまった……。

 

 

 

「くたばりやがれ……未確認ッ!!!」

 

 

「ッ!?」

 

「天龍さん、ダメッ!!!」

 

 

電の叫びも虚しく、天龍の振り上げた刃はクウガに向けて振り下ろされた………。




邪悪なるものあらば 鋼の鎧を身に着け 地割れの如く 邪悪を切り裂く 戦士在り―――


邪悪なるものあらば 鋼の根を伸ばして 舟を(くさび)に繋ぎ留め………の如く 邪悪を切り裂く 戦士在り………。



待て、次回!!

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  • 天龍
  • 大潮
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