着任先の新提督が色々とマトモじゃない。   作:夏夜月怪像

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またもスランプ気味に……

でもワタシ、負けないっ!!

負けないんだからッ!!( ゚д゚; )クワッ!!


116話 : 不退(ふたい)

「…笑顔……?」

 

 

雄介から戦う理由を問いかけられ、天龍は耳を疑った。

 

自分は目の前のこの男……五代雄介みたいに、そんな暢気な理由で戦っているつもりは無い。

 

俺は、俺自身の為に戦っている。

誰かの笑顔の為とか、周りの連中がどうかなんて………

 

 

―――そこまで考えたとき。

 

天龍の脳裏に、電たち駆逐艦や石ノ森鎮守府の仲間たちの姿が浮かんだ。

 

 

「………!」

 

その時見えた、仲間たちの顔は皆、笑顔だった。

 

(笑顔……か……)

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

石ノ森に着任するまで……天龍は、はっきり言って孤独だった。

 

主な原因は、やはりその負けん気の強さと我の強さにあった。

 

勝手な単騎行動や、提督の命令に背くなどの違反行為は日常茶飯事、酷いときには艦娘とも衝突が絶えなかった。

 

『港湾の野良猫』―――あまりの身勝手ぶりから、いつしかそう呼ばれるようになっていた。

 

そして……一条が石ノ森に着任して間もなく、天龍は前に居た鎮守府から異動させられた。

早い話が、厄介払いである。

 

当時、人間……ひいては提督に対し、敵意や憎悪を抱く者が大勢居た石ノ森であったが、一条が着任し、さらにそこへ五代雄介という全く関係無さそうな民間人が出入りするようになってから、その様相は過去の悪評と共に瞬く間に払拭されていった。

 

それは、天龍にとって予想外な展開であり、起こるわけが無いと思っていた“奇跡”であった。

 

 

()して、かつて世間を恐怖に陥れた《未確認生命体事件》を解決に導いた真の英雄、【未確認生命体第4号】の正体が目の前の男だというのは今だに信じられない事だった。

 

 

「………」

 

しかし……

 

何故か、天龍は雄介の言葉に反論出来なかった。

 

鍛錬場で話した時と同様、のほほんとした雰囲気の中に、揺るぎ無い意志の強さを感じたのだ。

 

(天龍さん……貴女も感じたんですね?雄介さんの意志の強さを……)

 

そして、それは鹿島も同様に感じていた。

 

 

この人は誰よりも優しい。

けれど……優しいからこそ、自分がやらねばと決めたことから逃げ出したくないのだ。

 

 

「お前はお前の場所で。俺は俺の場所でやってるってだけだよ」

 

 

笑顔、そしてサムズアップ。

 

「雄介さん……」

「………」

 

 

「――はい!」

「えっ!?」

 

この時、まだ納得していない天龍を余所に、鹿島は雄介の言葉に納得していた。

 

 

そうだ。

 

自分が保育士のボランティアをしようと思ったのも、全ては誰かを笑顔にしたかったからだ。

 

雄介は、その方法が「クウガになって、みんなの笑顔を守ること」だったというだけの違いなのだ………。

 

 

そう納得したからこそ、鹿島も笑顔でサムズアップを返した。

 

 

「鹿島……お前……」

「天龍さん。大丈夫!天龍さんも、雄介さんや提督さんと、絶対上手くやっていけますから!」

「〜〜〜〜〜〜……!」

 

 

これまでの経緯と相まって、天龍は純真無垢な眼差しが苦手だった。

しかも、今回の作戦で仕留めてやると意気込んでいた相手に守られ、しかも「女」としての顔を見られたことで弱味を握られてしまったように感じてしまい、強気な態度を取れなくなってしまった。

 

 

と、その時。ドルフィンチェイサーの無線に通信が入った。

 

「っ!――俺です!」

『五代雄介!戦艦潜水鬼が有明に現れた!』

「有明だって!?」

 

一条からの通信を聞いて、天龍は驚愕した。

有明―――すなわち有明海は、今まさに第六駆逐隊の4人が巡回している海域だからだ。

 

「おい、提督!アイツらは……電たちは無事なんだろうなッ!?」

「天龍さん……」

『その声……天龍か?』

 

「どうなんだ!!」

 

その必死な様子から、雄介は天龍が心根の優しい艦娘なのだと、改めて安心した。

 

 

一方の一条も、天龍が僅かながらでも心を開いてくれたのだと理解した。

 

「現在、付近を巡回していた警官隊が援護しているそうだ!俺もなるべく急いで、現地に合流する!」

 

 

「はい!!」

『最後にもう一つ!夕張と科警研の調査で、奴の弱点が判明した!21号と同様、腹を狙え!!』

「分かりました!!」

 

通信を終えると、雄介はドルフィンチェイサーに跨り、ヘルメットを被ろうとした。

 

「あ、雄介さん!待って?」

「ん?」

 

鹿島に呼び止められ、たくさんの手作りのお守りを渡された。

 

「園のみんなで作ったんです。いつ冒険から帰ってくるか分からない、雄介お兄ちゃんにって」

「う〜わ!ハハ、こりゃまたたっくさん作ったなあ?」

 

 

「……いくら怖くたって、これじゃあ引き下がれねえわな?」

「!」

 

鹿島からお守りを受け取った雄介に、天龍がボソッと一言つぶやく。

 

「……うん」

「………で?あのバケモンに勝つ手はあるのかよ?」

 

天龍の問いに対し、雄介はこう答えた。

 

「避けずに攻め続けられるように……、繋ぎ止めようと思う」

 

「繋ぎ止め………って、正気かよアンタ!?」

「しかも、避けずに攻め続ける……なんて、無茶です!!」

 

これには、天龍のみならず鹿島も驚きを隠せない。

 

「……紙一重の戦いだぜ?」

「……うん!」

 

 

かつて、【紫の力】を極めるための特訓をした際も、一条から似たような言葉を掛けられたなぁと、雄介はほんのり懐かしんだ。

 

すると

 

「……俺も連れてけ」

 

なんと、天龍が雄介の後ろに飛び乗った。

 

「天龍さん!?」

「今回の作戦は俺が巻き込んだみてぇなもんだ。旗艦らしく、責任取らせろよな?」

 

「……分かった。その代わり、危ないと思ったらすぐにイナちゃんたちと逃げるんだよ?」

「わーったよ……」

 

保育園の園児たちからのお守りを懐に収め、天龍を連れて。

鹿島に見送られながら、雄介は電たちが待つ有明海へと出発した。




予定の破壊ばかりを繰り返して申し訳ありません……(;´Д`)

なんとか……なんとか調整出来るようになりたいっ!!

人気投票その10

  • 天龍
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