関東医大病院 01:41 p.m.
習志野での戦闘の最中、意識を失った巧。
そんな彼が次に目を覚ましたのは、病院のベッドの上であった。
「たっくん!」
「巧!!」
「たくみちゃーん!!」
病院への搬送に同行した龍田、五十鈴、長月、文月に呼びかけられ、巧は自身の身に起きた事を朧気ながら理解した。
「‥‥あの深海棲艦は?倒せたのか?」
起きて早々、質問の内容が戦闘の結果とは‥‥‥
巧の仕事に対する真面目な姿勢に、龍田と五十鈴は感心すると共に苦笑した。
「もう‥‥少しは自分の体の心配もしてよぉ」
「全くだ。目立った外傷こそ少ないが、突然倒れたと聞いてるんだからな」
龍田の文句に共感しつつ、椿が入室した。
「あんたは‥‥」
「当院で司法解剖を担当している、椿だ。流星鎮守府の乾提督‥だったな。あんたの容態を診させてもらったが‥‥もう少しだけ、詳しく診察させてもらえるか?」
椿の発言に、どうかしたのだろうかと首を傾げる龍田たちに対し、巧の表情が微かに強張る。
「‥‥人払いをしたいなら、対応するが?」
医者という仕事柄、椿も様々な患者を診てきた。
だから、「診察したい」という椿の申し出に対する巧の反応が、拒絶のそれに近い物である事も直感したのだ。
「‥‥頼む」
最初は昔の
‥‥が
「あら〜?秘書艦くらいは同席しても良いんじゃないかしら〜」
「お前‥‥」
「龍田さん、良いの?たくみちゃん人払いして欲しいって‥‥」
出来るなら自分も傍に居たいのだろう、文月が不安そうな顔をする。
「‥‥うん。ここは龍田に付いててもらいましょ」
「五十鈴?お前まで‥‥」
文句を言おうとする巧の額に、五十鈴は指を押し当てる。
「情報ってのは、ある程度共有すべき物でしょ?知った時にはもう手遅れだったーなんて、あたし達だって嫌なんだから!」
それに、と五十鈴は小声で付け加える。
「何でも独りで背負い込むのはキツいだけだって、たっくんも知ってるでしょ?」
「‥‥‥」
悩みや不安を打ち明けられず、抱え込む事しか出来なかった前例である龍田たちを相手にしていただけでなく、自身も誰かに頼る事が苦手な巧に、この発言は深く刺さった。
しかし、だからと言って“自分の秘密”を明かしたとしても、それが彼女らに何をもたらすか判らない‥‥
「患者の事情やプライバシーはちゃんと守る。口の堅さも、それなりに信用はしてもらっている」
なかなか決心のつかない巧と五十鈴たちを見て、椿は一条が着任して間もない頃の石ノ森艦隊を思い浮かべた。
ここまでのやり取りだけを見ても、想像以上の訳有りなのはほぼ確定であろう。簡単に問い詰めて良い問題ではないだろうが、
抱える問題がいくつ増えようが、自分に出来るのは医者として適切な処置をする事だけである。
「巧ちゃん‥‥お願い」
龍田たちの懇願する眼差しから眼を逸らしつつ、巧は椿に尋ねた。
「‥‥本当に、黙っててくれるんだな?」
「おう。詳しくは言えないが、“危ない話”にも関わってたりするんでね」
そして、巧は龍田と椿、そして五十鈴の3人だけを病室に残し、長月と文月には待合室で待ってもらう事にしたのだった。
断片的にシーンが組み上がっては崩れる‥‥その繰り返しの中、月日ばかりが過ぎていきます。
椿さん、「アブナイ奴」枠が増えるかも?