着任先の新提督が色々とマトモじゃない。   作:夏夜月怪像

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激動のクウガ編、第2章。


その決戦が、今。

陸と海を股にかける、“海豚(イルカ)”の銘を与えられた鋼の馬の目覚めによって始まる_____。


15話 : 疾走

雄介が一条の呼び出しに応じ、桜子の研究室を後にしてからしばらく経った頃。

 

 

桜子のスマホに、一条からの着信が入る。

 

 

 

「もしもし、沢渡です。……はい、あの後すぐ出ていきましたけど………まさか、また……?」

 

 

 

 

「ええ………。陸上奇襲鬼が活動を再開したようで、既に4件の被害が出ているそうです」

 

 

受話器越しの桜子の声が不安げになり、一条に伝える。

 

 

『あの………五代くんが決めた以上、止めてくれとは言いません。ただ……戦うことで、五代くんの身に危険が降りかかりそうになったら、その時はまた支えてあげて下さい』

 

「勿論です!彼一人に背負わせることの無いよう、尽力します!」

 

 

桜子の懇願を、一条は即答する。

 

 

 

「それから………連絡基地の大淀さんにも、伝えてあげてくれませんか?」

 

 

「……なんと、伝えれば?」

 

 

 

「『五代くんは、絶対大丈夫』って」

 

 

 

その言葉の重みと深みに、一条はより意思を固めた。

 

 

「___はい!!」

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

その頃、ヂーダは自身を止めようとする警官たちを次々と攻撃。

 

 

 

鋭い爪で喉元を引裂き、地に叩きつけた警官の背中を強靭な脚で踏みつけ、骨を砕くなど、俊敏さと怪力で圧倒していた。

 

 

 

警官に包囲されれば全滅させて移動…を繰り返し、追跡する白バイ隊員を翻弄する。

 

 

「こちらTRCS04!陸上奇襲鬼は、現在六本木方面を逃走中!その速度は、推定時速300km!このままでは、振り切られますっ!!」

 

 

白バイ隊員からの無線を受け、一条は指示を送る。

 

 

「我々もすぐに合流する!無理はするな!!」

 

 

 

 

 

同じ頃。一条との待ち合わせ場所に向かっていた雄介はヂーダの走り去る影を目撃した。

 

 

 

「今のって……!!」

 

 

持ち前の勘の鋭さから、雄介は影の向かう先へ走りだす。

 

 

 

そして、白バイ隊員が交差点に入ったとき。

 

 

ヂーダは左腕に“連装砲”を装備し、白バイ隊員に向けて発砲した。

 

「っ!?う、うわあぁぁあッ!!?」

 

 

慌ててハンドルを切ったが、そのためにバランスを崩し、近くのコンビニの壁に突っ込み、転倒した。

 

 

 

 

「大丈夫ですか!?」

 

慌てて駆け寄り、隊員に声をかける雄介。

 

 

「あ…ああ、なんとか………」

 

幸い、隊員に怪我は無く、トライチェイサー2013Aも問題無く使えそうだ。

 

 

「良かった〜!じゃ、コレちょっと借りますっ!!」

 

 

ヘルメットを取り、トライチェイサーに跨がると、雄介はヂーダを追うべく出発してしまった。

 

 

「えぇ!?ちょっ…ちょっと!?待って!!」

 

 

雄介の唐突過ぎる行動に、白バイ隊員は混乱しながらも追いかけようとするが、当然止められる訳もなかった。

 

 

 

 

 

 

ヂーダを見つけ、追いかける雄介。

 

その雄介に気付き、さらに加速するヂーダ。

 

 

 

(奴の左腕に付いてるのって……艤装だよな、やっぱり……)

 

 

揚陸強襲鬼の件といい、揚陸侵艦たちは深海棲艦や艦娘に似通った特徴があまりに多い。

 

 

 

 

「東京に、何しに来たんだ……!?」

 

 

丁字路を走り抜けるヂーダを雄介が追いかける中、曲がり角から入った一条と長門、吹雪は雄介を発見する。

 

 

 

「司令官!今の……!?」

 

「まさか………!」

 

 

 

 

 

入り組んだ道路を抜け、ヂーダは歩道橋へと入る。

 

 

「!」

 

 

後を追うべく、雄介はトライチェイサーを操って歩道橋に入ろうとした。

 

 

 

「フッ!」

 

「うあっ!!」

 

 

 

しかし、ヂーダの連装砲が火を噴き、雄介を足止め。

 

怯んだ一瞬を突いて、そのままヂーダは逃げてしまった。

 

 

 

そこに、ヂーダを追っていた別の警官が雄介に気付き、詰め寄った。

 

 

「君!!いったい何のつもりだ!?」

 

「スイマセン……。逃げられちゃいました…」

 

「何なんだ、君は!!」

 

 

 

 

そこへ、警官に詫びる雄介の右手を、一条の手錠が捕らえた。

 

「!?…あっ!」

 

「コイツは、私が連行します。あなたは揚陸侵艦を!」

 

「ハッ!!」

 

 

 

 

追跡を警官に引き継がせ、雄介をパトカーに乗せて一条たちは警視庁へ。

 

 

 

「提督……彼を逮捕して良かったのか?」

 

「…………」

 

長門の質問に、一条は答えない。

 

 

「スイマセン!もうちょっとで追いつけたんですけど………あとちょっとだったのに……」

 

 

悔しげに謝る雄介。

 

 

「五代さん……どうして、あんな真似を?」

 

 

「また変身して戦う気だったんだろう?」

 

 

雄介に尋ねた吹雪の問いに、一条が確認するように答えた。

 

 

「はい」

 

当たり前のように返事をした雄介に、吹雪も長門も呆気にとられる。

 

 

 

 

「……昔とは訳が違うんだ。今に撃ち殺されるぞ?」

 

 

一条提督の補佐艦として、民間人である雄介の身を案じる長門。

 

 

「だからって、止められます?」

 

「あ、あの……五代さんは、もっと自分を大事にするべきですよ!」

 

 

次に、吹雪が説得を試みる。

 

 

しかし

 

「してますよ!」

 

「なに?」

 

 

「だからこそ、自分が大切だと思うものを守りたいんです!」

 

 

 

にこやかな表情ながら、その言葉には一片の迷いも無い。

 

 

 

「一条さんもそうですけど…長門さんや吹雪ちゃんたちだって、そうじゃないですか?」

 

「っ………」

 

「……私は………っ……」

 

 

その一言に、今度は吹雪は黙り込み、長門は口ごもってしまう。

 

 

 

 

 

 

そうこうしているうちに、一条たちは地下駐車場へ到着する。

 

 

車から降りようとしたとき、無線が入る。

 

 

 

『こちら軽巡・由良!揚陸侵艦迎撃艦隊旗艦・足柄が、単騎で陸上奇襲鬼の追跡を開始!今、連れ戻すために後を追っています!』

 

『了解!陸上奇襲鬼との戦闘は、接近戦を特に注意されたし!!』

 

『了解!!』

 

 

 

無線から聴こえる状況___それは、ヂーダを見つけた足柄が、我先にと追跡を開始。

 

神通や由良たち随伴艦を置き去りに、単独行動に走ってしまったというのだ。

 

 

しかも、その先は港付近のコンテナ置場。

 

立体的な動きを得意とするヂーダを追い詰めるには、火力だけでは地形的に不利である。

 

 

実際、合流した警官隊は反撃の隙も作れずに、次々とヂーダに討たれ、遺体は足柄の砲撃を凌ぐ盾にされている。

 

 

如何に足柄が歴戦の艦娘であっても、万が一弾切れを起こせば、それが最期となる危険は充分に有り得る。

 

 

 

しかし……。

 

仮に神通たちが間に合ったとして、そこからまた逃げられたり、返り討ちにされるようなことがあれば、石ノ森鎮守府が大打撃を被ることにもなる。

 

 

 

「……一条さん?」

 

 

 

思案する一条の背中を、雄介たちは見つめる。

 

 

 

 

 

『中途半端』はしません____。

 

 

 

雄介の書き置きをポケットから取り出し、一条は静かに眼を閉じる。

 

 

そして、意を決した表情で向き直った。

 

 

 

 

「___五代雄介!」

 

「はい!」

 

「俺について来い」

 

 

 

一条の後を、雄介と共に吹雪と長門もついて行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一条に案内されたのは、地下ガレージだった。

 

 

照明が点いたことで、一瞬目が眩む雄介たち。

 

 

眼を開けると、そこには1台のオートバイが置かれていた。

 

 

車体その物はスマートで、船体を象った外装が前面と左右の両側面をカバーし、マフラー部には小型のジェットスクリューが搭載されており、第一印象は「タイヤ付きの小型モーターボート」と呼ぶべき姿をしていた。

 

 

 

「わぁ……!!カッコいい……!」

 

「一条さん、これって……?」

 

吹雪と共に、眼を輝かせる雄介。

 

 

「《ドルフィンチェイサー2018》。《トライチェイサー》や《ガードチェイサー》の実践データを基に開発された、改良型の試作機だ。普及型ではコストの都合上、切り捨てた性能が、コイツには全て備わっている!」

 

 

 

「スゴいじゃないですか!!」

 

「なんと……!!」

 

 

一条の説明に、雄介のみならず長門も興奮する。

 

 

「……あれ?司令官、これ右ハンドルが無いですよ?」

 

 

吹雪が指摘する通り、ある筈の右ハンドルが欠けていた。

 

 

しかし。一条も雄介も、それに関してはよく理解している。

 

 

「グリップはここだ」

 

そう言って、起動キーであるドルフィンアクセラーをアタッシュケースから取り出し、ドルフィンチェイサー本体にセット。

 

 

さらに、起動用の暗証番号を登録。

 

 

その番号は、雄介___クウガと共に戦い抜いた2大マシンと同様〈0318〉である。

 

 

暗証番号登録により、ドルフィンチェイサー2018は起動した。

 

スロットルを軽く吹かし、一条は最後にこう告げた。

 

 

「後から俺たちも行く!!」

 

 

雄介は小さく頷くと、腹部に両手をかざし、アークルを呼び覚ます。

 

 

「変、身!!」

 

 

構え、動作を終えるとベルトは赤い光を放ち、雄介はクウガへと変身する。

 

 

 

一条がシャッターを開けると、新たなマシンを得たクウガは、スロットルを全開にし、出発した。

 

 

 

「よし……。吹雪!長門!直ちに艤装を展開し、弾薬等の最終点検を!それが終わり次第、俺たちも出撃する!!」

 

 

それは、一条 薫の《提督》として最初の出撃命令であった。

 

 

「了解ッ!!!」

 

吹雪と長門は敬礼し、出撃準備に取り掛かった。

 

 

 

 

 

 

ドルフィンチェイサーは力強く、しかし軽やかな速さで道を走る。

 

 

マシンを駆るクウガの眼は、目指す先で待つ戦いへの覚悟と決意に満ちていた。

 

 

 

 

 

 

ヂーダが逃げた先の港。

 

足柄や警官隊が、用心しながら姿を探していた…その時。

 

 

「フンッ!!」

 

白バイ隊員の頭上から、肩車をするように飛びかかると、両脚で首を挟み、小枝を圧し折るかのように殺害。

 

 

「揚陸侵艦……!!」

 

 

単装砲を構えるが、ヂーダは足柄の腕を払い除け、蹴り飛ばすと左腕の連装砲を構える。

 

 

「伏せろォォッ!!!」

 

その時、一人の若い刑事が、大声を張り上げながら足柄を突き飛ばし、ヂーダの凶弾を一身に受けて倒れたのである。

 

 

「………え?」

 

目の前で起きた光景に、足柄は頭が真っ白になる。

 

 

今、この男は何をした?

 

私を突き飛ばして……そして、今血まみれで倒れて、死んでいる………。

 

 

「わたし、を……かば……って……」

 

 

この瞬間、足柄は頭の中がグチャグチャになった。

 

 

人間は醜い。

 

自分さえ良ければ、周りなど何とも思わない連中。

 

艦娘を道具や欲望の捌け口程度にしか見ていない、下劣な存在ばかり____。

 

 

そう、思っていたのに。

 

人間を憎むことで、戦ってきたのに……

 

 

なぜ?

 

なぜ、この人間(ひと)は私を庇ってくれたの?

 

なぜ……

 

 

 

ワタシハ イキテイルノ……?

 

 

「あ……ああ……あぁぁあ……っ……!!」

 

 

突然溢れ出す涙にも、足柄は思考が回らない。

 

この人を殺したのは誰か?

 

目の前の揚陸侵艦か?

 

それとも……

 

 

「ビガラロ・ギショショビボ・ソギデジャスレ!!」

 

 

私………?

 

 

 

ヂーダの主砲が足柄に狙いを定め、発砲しようとしたその時_____!

 

 

稲妻のような爆音が轟き、1台のバイクを巧みに操る赤い戦士が現れた。

 

 

「ッ!!」

 

避けようとするヂーダの顔面に、バイクの車体後部を浮かせ、後輪を横凪に振るバイクテクニック「ジャックナイフ」を決める。

 

 

「グァウッ!?」

 

倒れ、怯んだ隙に赤い戦士___クウガは足柄の下に駆け寄る。

 

 

「ひぅっ!!」

 

昨晩の未確認だと気付き、足柄は殺されると思い、身体を強張らせた。

 

 

しかし、クウガはたった一言。

 

 

「大丈夫ですか、艦娘さん!?」

 

 

「___え?」

 

 

あまりに予想外過ぎて、足柄は泣いていたことも忘れてしまった。

 

 

「……クウガァ!!」

 

 

憎々しげに名を呼ぶと、ヂーダは海へと逃走。

 

 

クウガはすぐにドルフィンチェイサーに跨がり、海に向かって飛び出す。

 

 

コンソールのテンキーでモードを切り替え、水上バイクモードにして海域へと飛び出した。

 

 

 

「……………」

 

 

遅れて、ようやく追いついた神通たちに名を呼ばれるまで、足柄はクウガの向かった海を眺めていたのであった。




さあ!!

遂にきました、クウガの初・海上戦!!


次回、ヂーダとクウガの戦いが決着を迎えますっ!!

本作の人気投票その1

  • 五代雄介
  • 一条 薫
  • 吹雪
  • 長門
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