それは正義か、悪か……
今、“塗り変えられた伝説”が甦る____
※追記
誤字の指摘を受けたので、修正致しました。
※本日7月23日、新たに修正致しました。
「五代……雄介さん?」
「はい!」
渡された名刺に目を通し、不意に名を繰り返し呼ぶ吹雪と、それに対して笑顔で応える雄介。
「吹雪くん」
「は、はい?」
「少しだけ、席を外してもらっていいか?」
奇妙な間を変えたのは一条の一言だった。
小さく頷くと、吹雪は作業の手伝いに向かった。
「…まさか、こんな所で再会するとはな」
「ほんと、ビックリですよね。最初に会ったのと同じ場所で……なんて」
流れた月日の長さを実感しつつも、お互い変わり無いことに二人は嬉しさを感じていた。
「ところで…一条さんのその
「ああ。石ノ森の鎮守府を任されることになったんだが……着任式が終わってすぐに、この騒ぎだ。勿論、基地内部にも解決すべき問題や課題は沢山あるんだが……かといって
「そうですよね……。大淀さんも、その問題っていうのについてすごく悩んでました。艦娘のみんなや、提督になる人との関係を良くするにはどうしたら良いんだろうって」
すると、何かを見つけたらしい吹雪が一条を呼んだ。
「司令官!ちょっといいですか?」
「…すまない」
「いえ、今は仕事中だし」
話の中断を詫びる一条に、雄介はサムズアップで応える。
「どうした?」
「それが……」
そこへ、遺跡から何かを発見したらしい作業員が、ビニール袋に入れた出土品を手に、雄介とすれ違う。
それを目にした瞬間。
「!!?」
『あの時見たイメージ』に匹敵する、強いイメージが再び雄介の頭の中に流れ込んできた。
「隊長!!こんなものが…!」
「何だ…これは……?」
作業員が見つけた出土品──石板やその破片と思しきそれには、かつて発見された遺跡の出土品と同じ系統の古代文字らしきものが刻まれていたのである。
「…なんだ?今の………」
疑問に次ぐ疑問に、雄介は首を傾げるしかなかった。
長野県内 石ノ森鎮守府 12:20 p.m.
せっかくの再会ということもあって、雄介は一条らと共に石ノ森鎮守府へと赴いた。
さらに、情報共有のため、大淀も出向いた。
「すみません!!資料の準備に、少々手間取ってしまいました!」
「いえ、ご足労いただき感謝します」
「お出迎え、ありがとうございます……って、五代さん?」
「やあ」
まさか雄介が一条と合流しているとは思わなかった大淀は、戸惑いつつも一条らと共に、鎮守府の大会議室へ向かった。
「えっと……お茶をお淹れしましたので、宜しければ……」
会議室に入ると、石ノ森鎮守府の所属艦娘の一人である軽巡洋艦娘《神通》がお茶を用意してくれた。
……しかし、その態度は提督である筈の一条に対しても、どこか
「これが、問題のカードです。惨劇の中、生き残ったのは……残念ながら、これだけでした」
そう言って、一条が出したのは一枚のSDカードだった。
「皆さん……亡くなられたんですか……!?」
動揺する大淀の言葉に、一条は沈黙で答える。
「……調査団8名、それから大本営より派遣された海軍将校と8人の憲兵で編成された護衛部隊9名。全員、ほぼ即死の状態だったようです……」
「深海棲艦の実態解明の手掛かりがあるかもしれないと、顔合わせをしたばかりだったのに……」
「……それで、それには何が記録されていたんですか?」
突然過ぎる訃報に対し、ショックのあまり俯く大淀の代わりに吹雪が質問をする。
「今からコピーしたものをお見せします。辛ければ、すぐ中止しますので」
妖精さんに合図を送り、映像を再生してもらう。
スクリーンに映し出されたのは、まるでエジプトにあるピラミッドの内部のような空間だった。
壁画らしきものが描かれたそこに、場違いともいえる巨大な影が姿を現し、調査団のメンバーを次々と殺していく。
『カィ…リイ……クウ、ガァ……フウゥアッ!!』
室内に轟く悲鳴。
そして助けを求め、泣き叫ぶ声………。
「こんな……こんなのって……ッ…」
「………」
そのあまりの惨たらしさに、吹雪は両手で顔を覆い、身を縮こまらせてしまっていた。
大淀も俯いたまま黙り込み、映像を見ようとしない。
「…………」
そんな二人を、雄介は悲しげに見つめていた。
やがて映像は終わり、妖精さんたちは室内の明かりを点け直した。
「…あの謎の影の正体は不明です。しかし……奴は最後に、まるで恨み言を発するかのように謎の言葉を残した。私には、それが漠然と気になるんです」
この時、一条は小さな嘘を吐いた。
謎の言葉……それが何を意味するのか、部分的にだが自分は知っている。
あの遺跡に関することを知る者なら………いや、
「本来、遺留品の鑑定には手続きが必要なのですが……それは、こちらでどうにか済ませておきますので」
そう言って一条が出した物。
それは、雄介が見た石板だった。
「あーっ!!コレ、遺跡から出たやつですよね!?」
「ああ…そうだが?」
「だったら、俺が桜子さん所に持っていきましょうか?また東京に戻りますし」
「気持ちはありがたいが……宅配とは訳が違うんだぞ?」
「でも……」
雄介と一条の会話に付いて行けず、吹雪の頭が混乱し始めたその時だった。
「一条提督!!」
勢いよくドアを開けて入ってきたのは、長い銀髪を結った姿が印象的な軽巡洋艦娘《由良》。
軽巡洋艦の中では石ノ森鎮守府の着任が浅いためか、一条への態度もいくらか柔らかだ。
「失礼……。どうした、由良くん?」
「事件です。それが……」
報告を受け、一条は頷く。
「それはお預けしますので、よろしくお願いします!申し訳ありませんが、私はこれで……!吹雪くんは、その方たちをお見送りしてくれ!」
一礼すると、一条は吹雪と雄介たちを残し、行ってしまった。
「えっ?ええぇっ!!?」
初期艦にして、秘書艦である筈の自分が出撃から外されたと思った吹雪は、ガックリと肩を落とす。
「大淀さん……私って、そんなに司令官に信用されてないんですかぁ……?」
「それは…無いと思いますけど………」
秘書艦だからこそ、危険に晒したくないのではなかろうか?
大淀はそう考えるも、今の吹雪にそれを聞き取るだけの気力は無いようだ。
長野市 オフィスビル街 02:21 p.m.
通報を受けた警官隊や憲兵たちが現場に駆けつけ、怪奇現象を目の当たりにしていた。
「こちら憲兵隊第1班!謎の生物が、巨大な蜘蛛の巣を張って……!!」
それは、かつての事件を彷彿させる光景だった。
ビル伝いに極太な糸が張り巡らされ、巨大な蜘蛛の巣が形成されていたのだ。
「きっ、来ます!!」
憲兵の一人が無線機を通して報告している最中、“それ”は襲いかかってきた。
「フゥゥアッ!!」
糸を腹部に巻き付け、バンジージャンプの様に遥か上空から飛びかかると、憲兵と警官をそれぞれ両脇に抱え込み、一気に上昇していった。
「なっ!?」
「ウアっ!!?アァーッ!!」
「気をつけろ!!また来るかもしれんッ!!」
一人の刑事が周囲に呼びかけ、警戒するも……
これまた唐突に、その異形はパトカーの屋根の上に着地した。
「うわぁあっ!?」
それは、ハッキリ言って人間ではなかった。
人のような形をしていながら、頭部にある複眼や口の形状、身に付けた装飾品等から、全体的には蜘蛛を彷彿とさせる姿をしており、さらには
「ザボ・ゾロガ……」
「まさか……深海棲艦!?」
「馬鹿な!奴らは海の上にしか現れない筈だぞッ!!?」
「と…とにかく、撃て!!撃てぇッ!!!」
異形の怪物に対し、一斉に発砲する警官や憲兵たち。
しかし……銃弾は、怪物の身体に僅かにめり込むだけで貫通することはなく。
「フン…」
怪物が少し力むだけで弾丸は押し返され、バラバラとその場に散らばる。
「ヅギパザンボ・ボ・ヂサザバ?ヘェアッ!」
憲兵たちの手が止まったと見るや、次はこちらの番とばかりに怪物の蹂躙が始まった。
素手の殴打や爪による一撃。見せつけられるのは、単純明快な力の差。
一人、また一人と警官や憲兵たちは殺傷されていく。
「うわぁあ、あああぁあっ!!!」
最後の一人となってしまった警官は恐怖に耐えきれず、パトカーでの逃走を図る。
「フン」
しかし……それすらも、怪物から見れば無駄な抵抗に過ぎなかった。
怪物の吐き出した糸がパトカー後部を容易く貫き、警官の首をシートの枕ごと絞め上げる。
「ぅぐっ!?ぅぇ、げえあぁ‥ぁがハァ‥‥っっっ!!!?」
パトカーの走りに身を任せながら、糸を手繰り寄せていく怪物。
そして────
石ノ森鎮守府 門前 03:22 p.m.
吹雪に付き添われ、雄介と大淀は外へと歩いていた。
「はぁ……。司令官、私の事どう思ってるんだろ……」
「そこまで心配する必要無いと思うよ?一条さん、良い人だし!」
「私としては、五代さんが提督とお知り合いというのが驚きですけど」
「そう?」
雑談をしながら正門へ向かおうとした、次の瞬間────!!
1台のパトカーが鎮守府に突っ込み、扉をぶち破ってきた。
「きゃああぁっ!!?」
「な、なんだッ!?」
「え!?えっ!!?」
突然の異常事態に、鎮守府内の艦娘や憲兵、さらに設備の点検に訪れていた作業員などが騒然となる。
停車したパトカーのドアが開き、中からゆっくりと出てきたのは、警官でもなければ人間ですらなかった。
「フゥゥァ……」
「ヒッ……!!?」
現れた蜘蛛のような怪物に、吹雪と大淀は怯える。
「ジャザシ・ギスグ・ゴセゼパ・バギバ・リント……」
「へっ?ぅえっ!?」
聞いたことの無い怪物の言語に、吹雪は困惑するばかり。
すると、怪物は不意に石板へと視線を移し。
「ボセパ・シグドン・カイリ…!!」
何かを知っているように、憎らしげに呟いたが、雄介や吹雪たちはそれに気が向くほどの余裕は無い。
さらに。
石板を目にした途端、またも雄介の脳内にイメージが流れ込んできた。
「……また…!何なんだ、いったい……!?」
「何事だ!!」
「っ!長門さん!!」
そこへ騒ぎを聞きつけ、石ノ森鎮守府の古参メンバーの一人である艦娘・戦艦《長門》が駆けつけた。
「っ!?……なんだ、あの怪物は!?」
「分かりません!でも……でも、あの怪物に殺された人たちが……!!」
吹雪の言う通り、多くの憲兵が怪物に応戦するが、拳銃による発砲は何の意味も為さず、怪物の殴打や爪の一撃で次々と討たれていく。
「くっ……!これ以上、この石ノ森で犠牲を出してなるものかッ!!」
艤装も身に着けず、長門は怪物に挑みかかった。
「ギゲギン・ギギ・ジャヅザ!」
「ほざけ!!」
石ノ森鎮守府所属艦の中でも戦闘経験豊富にして、対人格闘の心得もある長門は、相手が怪物でも人型である限りは遅れを取るまいと見ていた。
否‥‥実際、ほぼ互角に渡り合っていたのだ。
「ゴロギ・ソギ……」
「っ!?……はっ!?」
怪物の放った、錨に腕を絡め取られるまでは。
「フウウゥゥゥンッ!!」
「しまっ…!!う、うあああああぁぁっ!!?」
勢いよく振り回され、長門は床に叩きつけられる。
「がっふ……あ、ぐ…!!」
「長門さん!!どうしよう…長門さんが……長門さんまでやられちゃう……っ!!」
怪物に対する恐怖と長門への心配から、吹雪の目には涙が浮かんでいた。
この時、五代雄介は思考する。
相手は『奴ら』ではない。全くの未知の敵だ。
しかし……ここで立たねば、また多くの人が……
一人の少女が涙を流すことになる。
ならば
自分の出すべき答えは決まっている。
それが、自分の“納得出来る行動”だから────。
「吹雪ちゃん、大淀さん。隠れてて!」
「えっ……」
「なんとかしてみる!!」
「なんとかって……ちょ、五代さんっ!?」
「ンン?」
怪物と長門の前に飛び出した雄介は、包み込むような構えで自身の腹部に両手をかざし、意識を集中させる。
戦いたい、と。
その意思に応えるように、雄介の腹部からベルトが出現する。
神秘文字を刻まれたそれは、長い年月を感じさせぬほどに美しく、完璧なまでに復元されていた。
構え、伸ばした右腕を左から右へ、ゆっくりと動かしていく。
「変 身 !!」
伸ばした右腕を左腰へ振り抜き、雄介は怪物に殴りかかる。
一打、また一打と、拳や蹴りを繰り出すごとに
五代雄介の姿を
肉体を『戦士』へと変えていく────。
「…………!!」
「ご…五代……さん……?」
「
吹雪と大淀、そして長門と怪物の前に立つ者。
それは、白い身体に短い角を持つ異形の戦士だった………。
短めにまとめるつもりが、結局4000文字……!!
もっとぼくを、ライターにしてよ……(切実)
※修正を重ねた結果、まさかの5000文字にグレードアップ(ヽ´ω`)
本作の人気投票その1
-
五代雄介
-
一条 薫
-
吹雪
-
長門
-
大淀