拳王さま、私めに文才と気力をお与え下さい……っ!!
視界がぼやける。
音もハッキリ聞こえない。
またか……また、この満たされない飢えにイラつかねばならないのか………。
いや、待て?
微かに、潮の香りがする……?
寒さを伝える風……そうか、まだ冬の最中か……。
ああ……腹が減った……
誰でもいい……
俺に、アイスを寄越せ―――。
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「あの……あなたは……?」
自身の見た、赤いおばけについて尋ねてきた男性に、五月雨は戸惑いを隠せない。
「ああ、ごめん!俺は火野映司。今日から此処の提督をやることになったんだ。よろしくね」
にっこり笑いながら、五月雨に手を差し伸べる映司。
「えっと……よ、よろしくお願いします……」
握手をしようと手を伸ばすが……
「…ご、ごめんなさいっ!」
背を向けてしまう。
そんな五月雨を見て、映司は隼鷹に聞いてみた。
「隼鷹さん。五月雨ちゃん……男の人が怖いのかな?」
「いんや、単に恥ずかしがってるだけだと思うよ?事実、鴻上の会長さんには実の父ちゃんみたいに慕ってるみたいだし」
「そう、なんだ……」
あの人の事だから、五月雨ちゃんの要望なんかを「スバラシイっ!」と言って、底知れない財を惜しげも無く使って叶えてあげただけだろう。それを彼女が純粋に感謝しているだけなのでは?
そう思いつつも、五月雨の気持ちを傷つけるような事は言わないようにしようと静かに決心する映司であった。
「ハァ……ハァ……ハァ……」
留置所から脱走した男は、ふらつきながらも街を彷徨い、近くの公園の雑木林の中で倒れた。
「ハァ…ハァ……っなん、なんだよ……この、体中に湧いてくる痒みはァ……!!」
男の右腕は、膨張に加えて変形までしており、まるで別の生き物のようにドクンドクンと脈打っていた。
「ハァ…ハァハア…ハアアア……ッグ!?ウアア、アアアア…!!」
「ウアアァァぁぁああアアアアアアっ!!!」
右腕からあふれる、どす黒い液状のオーラやその波に混じったメダルが男の体を飲み込む。
その光景の一部始終を、鹿のように大きな角を生やしたライオンのような顔の赤い怪物が眺めていた。
『さぁ……その怒りを欲望に変えて、暴れるがいい』
『お楽しみなところ、失礼しますよ……クルイ』
そこに、ドラゴンの顔と鳥の姿を合わせたような帽子型の頭部を持つ、狼の様な顔をした藍色の怪物が近付いてきた。
両者とも、上半身は鎧や衣服のような外殻を身に着けてはいるが、下半身は黒い包帯を巻き付けたミイラの様な格好をしている。
『アザム……お前が来たということは、もしや?』
『ええ、マドゥとガイスも目覚めています』
アザムと呼ばれた怪物が答えると、クルイと呼ばれた怪物は顎に手を当てる。
『しかし……一つ気になることがある』
『メダルが……“
そこに、二本のアホ毛と、額から細く長い一本角を生やした女性がセミロングの銀髪を掻き上げながら、魚の尾ビレを幾重にも重ねたようなデザインの水色のドレスを纏って歩いてきた。
『マドゥ…ガイスも一緒か』
『………』
ガイスと呼ばれたのは、山吹色の外殻を持ち、ヒゲの様な苔と髪のような草を生やした顔をイノシシの仮面で覆った、大柄の怪物だった。
このガイスと、マドゥと呼ばれた女性はクルイとアザムの二人とは反対に、上半身がミイラの様な姿になっており、マドゥは肩掛けの色が失われた布切れみたいになっていた。
僅かな沈黙の後、ガイスは口を開いた。
『我々の魔銭……“
『分かっている………“オリジナル”の中でもイレギュラーの存在………裏切者の烙印を押された、最も狡猾な存在………』
少し、不愉快そうにクルイは呟く。
『命を欲した、愚かなメダルの塊………』
やがて、泥の様なエネルギーを振り払い、人間だったモノは赤い皮膚をした鬼の様な異形に変わった。
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「……以上が、提督としての基本的なお仕事です」
「んー……この遠征って、提督の俺は付いてっちゃダメなのかな?」
映司の質問に、香取はハァ…と溜め息を吐く。
「あのですね?提督。町工場といった小規模の企業体系なら、たしかに社長が動くなどの場面は多くなることもあるでしょう。ですが……部下の出張に付いていって、自分の業務を放棄する社長が何処に居ますかっ!?」
「えぇ……でも…」
「でももヘッドもヴァ○ガードもありません!あなたには、もっと提督という立場を学んでいただかないと……」
その時、大淀から通信が入った。
『緊急事態です!荒川区に、謎の怪物が出現しました!!』
「!?」
―――これが、1つ。
UA、そしてお気に入り登録者数がここまで膨れ上がるなんて………皆さん、私をどうしたいんですか!?(ヽ´ω`)
感謝の言葉って、意外とボキャブラリーが無いんですよ!?
人気投票その4
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火野映司
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アンク
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五月雨
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隼鷹
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香取