………タブン(←オイ)
石ノ森鎮守府が蜘蛛のような謎の怪物に襲われ、それに呼応するかのように白い怪物が現れて交戦し、それぞれが行方を晦ましたその日の夜。
とある港付近の廃倉庫に、男3人のグループが入ってきた。
「な?結構悪くない場所だろ?」
「へえ、艦娘用に使われてた倉庫って案外広いんだな?」
「へへ……確かにこんだけ広くて、しかも街から程良く離れてりゃ、女連れ込んでヤるには充分だな」
「だろ?だろ?」
そんな犯罪染みたことを話し、盛り上がっている連中を、ジッと見つめる不気味な影がそこにあった。
「ヅギパ・ガセババ……」
獲物と見なし、影はするすると近付いていく。
「それで?目星は付いてんのか?」
「一人は確定済みだよ〜ん♪金髪の別嬪で、メッチャ乳がすんげぇの!」
「ああ、分かる分かる!!ありゃもう──」
「……へ?」
それが、彼らの交わした最期の会話だった。
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石ノ森市 ときわ町 07:47 a.m.
近くのファミレスにて、大淀と雄介、そして妖精の
とは言え、雄介は熟睡中だったのだが。
ノートパソコンで、深海棲艦や昨日の怪物に関する情報を探っている大淀と、その傍らで手伝いをしながら朝食のパンを頬張る単ちゃん。
「……《敵艦載機墜落現場に熊出現》?どういう事……?」
その最中、あまりにも不自然な見出しの記事を発見。
いったい何事かと読み進めようとする大淀だったが。
「ふあぁ〜〜あ……」
ここでも、ある意味マイペースな雄介の欠伸と目覚めによって注意が削がれた。
「……あっかるぅ……」
「当たり前でしょ?ビーフステーキ2人前とカレー大盛りを平らげて、その後11時間も寝ていたんですから」
皮肉混じりに呟く大淀に対し、雄介は
「いやあ…ゴメンね?なんかこう、久々に体力を消耗したー!ってカンジで…。あ、スミマセーン!メニュー下さぁーい!」
平常運転であった。
「こっちは眠れませんでしたよ!あんなビデオを見せられて……深海棲艦とも違う変なのに襲われて。その上、五代さんまで姿が変わって!!大丈夫なんですか?あんな事になって……」
「んー……まあ、良いんじゃない?とりあえず死なずに済んだし」
「気楽過ぎです!変身したまま、五代さんでなくなるんじゃないかって、単ちゃん共々不安だったんですからっ!!」
大淀の言葉に、単ちゃんもプンスカしながら頷いて見せた。
塩を舐めるも、出しすぎたのかしょっぱい顔をした雄介は、おしぼりで手を拭う。
「なんかね?その気になると、あの戦う姿に変わるみたいなんだよ。……で、その気じゃなくなると元に戻るんだよ。分っかりやすいよね?ホントに……」
「どうぞ」
メニュー表を受け取り、朝ご飯を何にしようかと眺める雄介に、大淀は言い寄る。
「早く基地に戻りましょう?もうあんな事しなくて良いんでしょ?」
「んー……ただの冒険野郎に戻れれば良いよね。やっぱ好きになれないから、あの感触は……」
「あの感触……?」
「?」
雄介の言葉に疑問を持った大淀と単ちゃんは小首を傾げる。
それに対して、雄介は己の握りしめた拳を悲しげに見つめるのみで、答えることは無かった。
一方、こちらは石ノ森鎮守府。
昨日の戦いから、一条が信用するに値する人物であると判断した長門は、秘書艦の吹雪と共に一条の指揮する第一艦隊への編成・着任を志願。
有事の際は一条の代理として、そして先輩艦娘として吹雪の補佐をすることとなった。
「あの、長門さん!司令官!今朝方辺りから、妙な噂ばかり聞くんですけど、どういうことなんですか!?子供が神隠しに遭ったり、夜中に唸り声が聞こえたり!さらには、牛の血が抜かれていたなんて話も!なのに、どうして大本営や
パトカーに乗りながら、吹雪は一条らを問い詰める。
「あの《
「でもですね……!」
一条の言葉に食い下がろうとする吹雪に、パトカーを運転する長門がこれを
「その代わり、我々の管轄の警備体制を強化してもらえる筈だ。例の《DPCS2018A》が実装されれば、優先的に
「よ、よく分かりませんけど…スゴイ事なんですね!」
と、その時。
「!!」
長門と一条が何かに気付き、パトカーを停めた。
一条と長門が向かった先。
そこは雄介と大淀たちの居るファミレスだった。
「!」
外から窓をノックする音に気付き、カレーを頬張っていた雄介が顔を上げると、そこに一条と長門が。
「今、来れるか?」とジェスチャーする一条に対し「あ、はい!大丈夫、すぐ行きますんで!!」と、同じくサムズアップで応えた雄介は残りのカレーをかき込むと外へ向かった。
「俺や長門くんの思い違いなら忘れてくれ。君は昨夜……」
「ハイ!あのクモみたいなのと戦いました!!」
一条の問い掛けに、雄介は笑顔とサムズアップであっさりと認めた。
「……ではやはり、貴方があの《未確認生命体第4号》なのか!?」
「艦娘さん、クウガを知ってるんですか!?いや、なんか照れるなあ……」
一条や長門の心境と裏腹に、照れ臭そうに頭を掻く雄介。
「五代雄介!何故、あんな真似をした!?」
「いや、成り行きってゆーか……あの遺跡でまた幻を見て…あとやっぱ、あの状況になったらやるしかないかなあって思って……やってみたら出来たんですよ!変身!!でも…まだちょっと万全じゃなかったのか、変身する時とか戦ってる間、ずっと痛みはありましたけど。この辺がこう、ズキズキって……」
腹部をさすりながら、当たり前のように話す雄介。
「……いや、ビリっと?いや、ガツン!って感じもあったっけ?どれが良いッスか?」
いや、どうでもいい。
「馬鹿か、貴殿は!!何故そんな軽率なことをした!?」
案の定、と言うべきか。
一条に負けず劣らずの生真面目である長門は、雄介の暢気そうな雰囲気に声を荒げる。
「……求められた気がしたんです。あのクモみたいな怪物と戦えって」
「求められた……?」
長門の言葉に、雄介は小さく頷く。
「戦ってみて、やっぱりそうかって思いました。また、クウガの力が必要なんだなって」
「何ともないのか!?下手すれば、今度こそ取り返しのつかないことになるかもしれないんだぞ!」
「……?」
取り返しのつかないこと────。
一条の言葉に、吹雪はふと耳を傾ける。
「大丈夫!ただの勘ですけど」
「…貴殿は我々をおちょくってるのか?」
変わらず暢気そうな雄介の態度に苛立ち始めたのだろう、長門は額に青筋を浮かべていた。
「それより、一条さん。艦娘さん」
そんなことを知ってか知らずか、雄介は話題を変えてきた。
「あの未確認みたいなヤツ……どうなりました?」
「……もう貴殿には関係の無い事だ」
その素っ気ない長門の態度に、雄介はかつての一条を重ねた。
「……生きてるんですね?」
「関係無いと言っただろう!!……ええい、もう良い!一条提督!吹雪!さっさと現場検証に向かおう!!」
ズカズカとパトカーに向かう長門を、キョトンとした雄介と少々申し訳なさそうな一条が見届ける。
「……万が一ということもある。明日にでも、椿に診てもらえ」
「そう、ですね。そうします」
そして、雄介と一条らは別れた。
東京都 ときわ港 01:57 p.m.
一条たち3人が赴いた殺人現場。
そこには、若い男性3名の死体が転がっていた。
「
長野県警時代、一条の先輩であった海老沢刑事の元同僚にして捜査一課の刑事である柳井が先に来ていた。
「おお、スマンな…提督に着任して早々、
「いえ……それで、状況は?」
「詳しいことは鑑識の結果待ちだが……被害者の首元、それも首筋辺りに吸盤の痕みたいな傷が一箇所。それ以外に致命傷は無い。しかも一晩で4人だ……。コレがただの殺人じゃあないってのは、俺にも判る」
柳井の言葉に、一条は犯人の正体を考える。
それに対し、柳井は問いかけた。
「昨夜の生き残り……って可能性はあるかね?」
「……揚陸強襲鬼も第4号も、明らかに人間や従来の生物と異なる形状をしていましたから、それはまず無いかと」
「そうかぃ………ってなると、残る可能性はあと一つ……」
「……新たな、未確認生命体」
「ッ!?」
一条の一言に柳井は静かに頷き、長門は目を見開き、耳を疑うのだった。
急遽、サブタイトル及び話の区切り方の変更をお許しください!
次回、次回こそは!!
本作の人気投票その1
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吹雪
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長門
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大淀