着任先の新提督が色々とマトモじゃない。   作:夏夜月怪像

64 / 152
みなさん、長らくお待たせ致しました。


緑のクウガ編、クライマックスです!!


56話 : 暴風

鎮守府近海 季廻田(きかいだ)海岸 04:30 p.m.

 

 

 

強風の吹く中、雪風は佇んでいた。

 

 

「…………」

 

 

そこは、春日提督の下に着任して間もない頃、着任祝いといって連れてきてもらった想い出の場所だった。

 

 

“雪風”―――

 

 

“雪風、来てごらん”―――

 

“何ですか、しれぇ?”―――

 

 

“ホラ。こんなに可愛くて、キレイな貝殻があるよ”―――

 

“わぁー!”―――

 

 

 

“昔の人たちは、こういった貝殻なんかをアクセサリーにして、身につけていたんだよ”―――

 

“アクセサリー、ですか?”―――

 

 

“そうだよ”―――

 

 

 

波の音に混じって、甦る雪風の覚えている春日准将との想い出。

 

 

しかし……

 

その大好きだった提督は、もう……居ない。

 

 

楽しかったあの日は

 

幸せだった時間は、もう戻らないのだ。

 

 

 

「人一人守れない艦娘に、居る価値なんて無いのに……」

 

 

 

必要だと言ってくれた一条の言葉を思い返し、雪風は己を否定する言葉を呟いた。

 

 

「しれぇ……雪風は、どうしたらいいんですか……?」

 

 

 

 

「―――どうしよっか?」

 

 

唐突な返事に、雪風は目を丸くした。

 

 

この場には自分だけの筈。

 

呟きに対し、声が返ってくる訳が無いのだ。

 

 

しかし……声の主―――五代雄介は、そこに居た。

 

 

 

「んー……流石に、まだ泳ぐにはちょっと冷たすぎるよなぁ」

 

 

海を眺めながら、暢気な話をする雄介。

 

 

「…どう、して………!?」

 

 

驚くことばかりが多すぎて、雪風がやっとの思いで絞り出した一言が、それだった。

 

 

その問いかけに対し、雄介は雪風のバッグに飾られた貝殻のアクセサリーを指さした。

 

 

「その貝、この辺で採れるやつだから」

 

 

 

そう言うと、雄介は小石を拾い上げ、水平線に向かって投げた。いわゆる水切りだ。

 

 

新しい小石を拾うと、雪風に声をかけてきた。

 

 

「7連チャン、出来ると思う?」

 

「え!?……む、ムリですよ……こんな強風で……」

 

 

戸惑う雪風を他所に、雄介は助走をつけて、勢いよく右腕を振り抜き、小石を飛ばした。

 

 

 

ピシャッ!ピシャ、ピシャ……

 

 

なんと、雄介の宣言通り、小石は7連続で水面を跳ねていった。

 

 

「わぁ………!」

 

あまりの凄さに、雪風は感嘆の声をあげた。

 

 

「信じて!必要の無いことなんて無いから!そして君にも、何かやるべきことがあると思う!提督さんも、きっとそれを楽しみに見守っていてくれてるよ!」

 

 

「…………」

 

 

雄介の言葉と笑顔に、雪風は俯く。

 

 

 

 

 

一方。

 

雄介と雪風の姿を発見したゼミルは、遥か上空でほくそ笑んでいた。

 

 

「クウガ………ガドグ・ゴギザ……ラデデ・ギソ………」

 

 

 

 

同じ頃。

 

一条はゼミルの行方を追いつつ、雄介のことも捜していた。

 

 

「何処に行った…五代雄介……!ヤツはこの上空だぞ……!」

 

 

そこに、吹雪から通信が入った。

 

『こちら吹雪!司令官、応答願います!』

 

 

「こちら一条!何かあったのか?」

 

 

『はい!誠に勝手ながら、私の独断で艦隊を編成・出撃し、深海棲艦の迎撃を開始しました!』

 

 

「なんだって……!?」

 

流石の一条も、これは予想外だった。

 

 

「ちなみに、編成は!?」

 

『はい!旗艦を私が、随伴艦を叢雲ちゃん、大井さん、加賀さんにお願いしました!』

 

 

そのハキハキとした応対に、一条は吹雪の意志の強さを感じ取った。

 

 

「……分かった!最後に確認するが、場所は?」

 

 

『はい!場所は季廻田海岸沖です!』

 

 

「なに………!?」

 

 

それは、ゼミルが居る範囲内だった。

 

 

「すぐ俺も現地に向かう!迎撃についても、無理はするな!!」

 

『り、了解!!』

 

 

最悪、高空狙撃鬼が深海棲艦と共謀して向かってくる場合も考えられる。

 

 

そうはさせまいと、一条はパトカーを飛ばすのだった。

 

 

 

 

 

鎮守府近海 04:35 p.m.

 

 

勇ましく出撃した吹雪たちであったが、予想は大きく外れて、敵影を見つけられずに居た。

 

 

「敵、発見に至らず……ね」

 

加賀の呟きに、吹雪はガックリと肩を落とした。

 

 

「!」

 

その時、加賀は海岸の方に視線を向けた。

 

 

「雪風………それから、あれは………?」

 

 

すると、加賀の放っていた偵察機から通信が。

 

 

「…………そう、分かったわ」

 

「加賀さん?どうしたのよ?」

 

 

叢雲が尋ねると、加賀は答えた。

 

 

「信じられないかもしれないけど………私たちは、敵の罠に嵌められたみたい」

 

「えっ!?」

 

 

「提督たちが交戦したという《高空狙撃鬼》……ヤツの仕業ね」

 

 

「そ…、そんなっ!!」

 

 

愕然とする吹雪。

 

 

「……それが何?ここで立ち往生してる場合じゃないでしょう?吹雪!出撃の言い出しっぺなら、へこたれてないでシャキッとしなさいシャキッと!!」

 

 

そう言って喝を入れたのは大井だった。

 

 

「大井さん……」

 

 

「……ほら!時間は待っちゃくれないのよ?急いで提督たちと合流しなきゃ!!」

 

 

「叢雲ちゃん……。うん!そうだね!!」

 

 

叢雲からも励まされ、吹雪は立ち上がり、一条らとの合流に向かった。

 

 

 

 

 

季廻田海岸 04:41 p.m.

 

 

レーダーが捉えている、ゼミルの位置が変わらないことを不審に思った一条は、海岸に出向いていた。

 

 

「!」

 

 

砂浜を歩いている中、沖から吹雪たちの姿が見えてきた。

 

 

「吹雪……」

 

 

さらに、海岸の先には雪風と雄介の姿が。

 

 

「雪風………五代……?」

 

 

瞬間。

 

これらの状況から、一条は全てを理解した。

 

 

「まさか、ヤツの狙いは………!!」

 

 

「司令官!ご報告したいことが……って、司令官!?」

 

 

「ダメ……ダメよ!」

 

雪風たちの下へ走る一条を見て、大井は航行用の艤装を取り払い、一条を追いかける。

 

 

 

「一条さん!?」

 

「しれぇ?大井さんたちまで……!」

 

 

 

「この上空に、高空狙撃鬼がいる!!」

 

 

駆け寄りながら、一条は状況を伝えると、雪風を抱き抱え、直撃しないように庇う。

 

 

「狙いは五代――君だッ!!」

 

 

傍で聞いた雪風も、一条を追ってきた吹雪たちも、その話に驚愕した。

 

 

只でさえ敵の位置が判らないのに、しかも標的が雄介だと。

 

 

それは、揚陸侵艦への対抗手段を失うに等しかった。

 

 

(また………また、雪風は……誰かを死なせちゃう……)

 

 

雪風は悲しかった。

 

 

せっかく、自分に優しくしてくれた人がいるのに……

 

ほんのちょっとでも、自分を好きになれると思ったのに……また、誰かの命を奪ってしまう……。

 

 

雪風の目に、涙が溢れそうになった、その時。

 

 

 

 

雄介は両手を腹部にかざし、ベルト・アークルを呼び覚ました。

 

 

「えっ………」

 

加賀も、大井も、雪風も。

 

そこから起こった一連の出来事に、目を離せなかった。

 

 

 

ゆっくりと構える雄介の動き。

 

アークルの中央に収められた霊石アマダムの放つ、翡翠の輝きを。

 

 

 

「―――変身ッ!!」

 

 

 

 

穏やかな風から、徐々に力強さが増していき、嵐のような強風に包まれて、雄介は緑の戦士へと変身した。

 

 

 

「受け取れ!!」

 

 

変身した雄介に、一条は躊躇無く自身の銃を貸し与えた。

 

 

 

【邪悪なるものあらば その姿を彼方より知りて 疾風の如く 邪悪を射抜く戦士在り】

 

 

拳銃―――「射抜くもの」を基に《天翔ける天馬の弓》ペガサスボウガンを生成し、緑のクウガことクウガ・ペガサスフォームは完成する。

 

 

 

しかし。

 

今回はそれだけに留まらず。

 

クウガは、そこからさらに飛行甲板を模した武装を纏い、空母タイプへと超変身!

 

 

【邪悪なるものあらば その姿を彼方より知りて 暴風の如く 空の使いと共に 邪悪を射抜く戦士在り】

 

 

変身直後、クウガの周りに小型のゴウラムを模した艦載機《天馬》が出現。

 

 

優雅に舞う天馬の起こす疾風よりも荒々しく、敵を粉砕する暴風の戦士―――クウガ・テンペストフォームの誕生である。

 

 

 

「来るぞ!!」

 

 

 

ペガサスボウガンを手に、クウガは精神を研ぎ澄ませ、集中する。

 

 

「あ…あの、五代さんはなにを…」

 

「シッ!」

 

 

一条に質問しようとする吹雪を、加賀が制止。

 

 

 

 

静寂―――。

 

一条や吹雪たちに聴こえるのは、風が吹く音と波の音のみ。

 

 

 

 

 

―――と、その時。

 

 

―――ビィイイイッジジジジジジ……

 

 

 

常人では聴き取ることの出来ない、しかし忌々しい羽音を、クウガ・テンペストフォームの耳が捉えた。

 

 

「っ!」

 

 

遥か上空……高度数千メートルもの場所から、ゼミルはクウガ目がけて水弾を発射。

 

さらに、ついでと言わんばかりにボウガンを構え、吹雪たちに向けて矢を放った。

 

 

「フッ!」

 

 

ボウガンを基点にして、クウガは天馬を飛行甲板より発艦。

 

 

天馬は最大10機に増殖、ゼミルの放った矢を尽く相殺していく。

 

 

さらに、クウガはゼミルの放った水弾の弾道を読み、僅かな動作でこれを回避。

 

 

「ッ!?」

 

 

驚愕するゼミルをそのままに、流れるような動きでクウガはペガサスボウガンのレバーを引き絞り、エネルギーの込められた空気弾をチャージ。

 

 

 

そして

 

 

 

バギュンッ!!

 

 

引き金を引いて、必殺の狙撃・テンペストブラストペガサスを放った!

 

 

「グッ!ウゥ……ウアッ!?」

 

 

封印エネルギーの込められた弾丸を胸に受け、ゼミルは落下していく。

 

 

「グウウウッ!!ヌウウゥゥアアアアアアアッ!!」

 

 

悔しさと苦痛に声を荒げる中、ゼミルのベルトの装飾はパキンッと真っ二つに割れる。

 

 

そのまま海面に叩きつけられ……爆発。

 

 

「や……やった……?」

 

 

彼方に立ち昇る炎と煙が、撃破の成功を示していた。

 

 

 

 

 

戦闘が終わった頃。

 

すっかり陽は傾き、辺り一面夕焼けに染まっていた。

 

 

「はぁ〜〜〜………くったびれたぁ」

 

 

文字通り、体力気力共に激しく消耗する変身だった為、雄介はぐったりと砂浜に寝そべる。

 

 

「………」

 

 

加賀としては、ここで「だらしない」と注意をしたいところだが、先程のものを目の当たりにしただけに、強く言い出せなかった。

 

 

「五代……さん……」

 

 

「ん?……あ、君が大井ちゃん?良かったぁ…ケガは無い?」

 

 

「……っ………」

 

 

先程の変身然り、今の挨拶然り。

 

こんなお人好しが、ついさっきまで自分が殺そうとした人なのか……

 

「……ッ……う…うぅ……!」

 

過去の憎しみに囚われていた自分がみっともなくて

 

そんなことも知らず、無条件で誰かのために必死になれる雄介の姿が眩しくて…優しさが嬉しくて……

 

 

大井は泣き出してしまった。

 

 

一方、雪風も一条らと面向かっていた。

 

 

「しれぇ……私……」

 

「……無事で良かった」

 

 

謝ろうとした雪風に、一条が向けたのは安堵の言葉だった。

 

その優しさに、雪風も泣き出した。

 

 

「ごめんなさい………ごめ…なさい……っ」

 

 

泣きじゃくる雪風の頭を撫でながら、吹雪は微笑みかける。

 

 

 

「………明日は、よく晴れそうね」

 

水平線の彼方に煌めく夕陽を見ながら、加賀はそっと呟くのだった。

 

 

 

《戦果報告》―――

 

石ノ森艦隊

 

旗艦 吹雪

 

随伴艦 叢雲

    大井

    加賀

 

全艦、無傷。

 

 

鎮守府から一時行方不明になっていた雪風を捜索中、揚陸侵艦《高空狙撃鬼》を発見。

途中、出現した未確認生命体第4号が《空母4号》に変化。

狙撃によって、これを撃破。

 

 

判定―――《完全勝利》




クウガ編4章、これまでで最長になりました(;´Д`)


ひとまず、次回はまたキャラ紹介になります。

人気投票その5

  • 雪風
  • 加賀
  • 大井
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。