緑のクウガ編、クライマックスです!!
鎮守府近海
強風の吹く中、雪風は佇んでいた。
「…………」
そこは、春日提督の下に着任して間もない頃、着任祝いといって連れてきてもらった想い出の場所だった。
“雪風”―――
“雪風、来てごらん”―――
“何ですか、しれぇ?”―――
“ホラ。こんなに可愛くて、キレイな貝殻があるよ”―――
“わぁー!”―――
“昔の人たちは、こういった貝殻なんかをアクセサリーにして、身につけていたんだよ”―――
“アクセサリー、ですか?”―――
“そうだよ”―――
波の音に混じって、甦る雪風の覚えている春日准将との想い出。
しかし……
その大好きだった提督は、もう……居ない。
楽しかったあの日は
幸せだった時間は、もう戻らないのだ。
「人一人守れない艦娘に、居る価値なんて無いのに……」
必要だと言ってくれた一条の言葉を思い返し、雪風は己を否定する言葉を呟いた。
「しれぇ……雪風は、どうしたらいいんですか……?」
「―――どうしよっか?」
唐突な返事に、雪風は目を丸くした。
この場には自分だけの筈。
呟きに対し、声が返ってくる訳が無いのだ。
しかし……声の主―――五代雄介は、そこに居た。
「んー……流石に、まだ泳ぐにはちょっと冷たすぎるよなぁ」
海を眺めながら、暢気な話をする雄介。
「…どう、して………!?」
驚くことばかりが多すぎて、雪風がやっとの思いで絞り出した一言が、それだった。
その問いかけに対し、雄介は雪風のバッグに飾られた貝殻のアクセサリーを指さした。
「その貝、この辺で採れるやつだから」
そう言うと、雄介は小石を拾い上げ、水平線に向かって投げた。いわゆる水切りだ。
新しい小石を拾うと、雪風に声をかけてきた。
「7連チャン、出来ると思う?」
「え!?……む、ムリですよ……こんな強風で……」
戸惑う雪風を他所に、雄介は助走をつけて、勢いよく右腕を振り抜き、小石を飛ばした。
ピシャッ!ピシャ、ピシャ……
なんと、雄介の宣言通り、小石は7連続で水面を跳ねていった。
「わぁ………!」
あまりの凄さに、雪風は感嘆の声をあげた。
「信じて!必要の無いことなんて無いから!そして君にも、何かやるべきことがあると思う!提督さんも、きっとそれを楽しみに見守っていてくれてるよ!」
「…………」
雄介の言葉と笑顔に、雪風は俯く。
一方。
雄介と雪風の姿を発見したゼミルは、遥か上空でほくそ笑んでいた。
「クウガ………ガドグ・ゴギザ……ラデデ・ギソ………」
同じ頃。
一条はゼミルの行方を追いつつ、雄介のことも捜していた。
「何処に行った…五代雄介……!ヤツはこの上空だぞ……!」
そこに、吹雪から通信が入った。
『こちら吹雪!司令官、応答願います!』
「こちら一条!何かあったのか?」
『はい!誠に勝手ながら、私の独断で艦隊を編成・出撃し、深海棲艦の迎撃を開始しました!』
「なんだって……!?」
流石の一条も、これは予想外だった。
「ちなみに、編成は!?」
『はい!旗艦を私が、随伴艦を叢雲ちゃん、大井さん、加賀さんにお願いしました!』
そのハキハキとした応対に、一条は吹雪の意志の強さを感じ取った。
「……分かった!最後に確認するが、場所は?」
『はい!場所は季廻田海岸沖です!』
「なに………!?」
それは、ゼミルが居る範囲内だった。
「すぐ俺も現地に向かう!迎撃についても、無理はするな!!」
『り、了解!!』
最悪、高空狙撃鬼が深海棲艦と共謀して向かってくる場合も考えられる。
そうはさせまいと、一条はパトカーを飛ばすのだった。
鎮守府近海 04:35 p.m.
勇ましく出撃した吹雪たちであったが、予想は大きく外れて、敵影を見つけられずに居た。
「敵、発見に至らず……ね」
加賀の呟きに、吹雪はガックリと肩を落とした。
「!」
その時、加賀は海岸の方に視線を向けた。
「雪風………それから、あれは………?」
すると、加賀の放っていた偵察機から通信が。
「…………そう、分かったわ」
「加賀さん?どうしたのよ?」
叢雲が尋ねると、加賀は答えた。
「信じられないかもしれないけど………私たちは、敵の罠に嵌められたみたい」
「えっ!?」
「提督たちが交戦したという《高空狙撃鬼》……ヤツの仕業ね」
「そ…、そんなっ!!」
愕然とする吹雪。
「……それが何?ここで立ち往生してる場合じゃないでしょう?吹雪!出撃の言い出しっぺなら、へこたれてないでシャキッとしなさいシャキッと!!」
そう言って喝を入れたのは大井だった。
「大井さん……」
「……ほら!時間は待っちゃくれないのよ?急いで提督たちと合流しなきゃ!!」
「叢雲ちゃん……。うん!そうだね!!」
叢雲からも励まされ、吹雪は立ち上がり、一条らとの合流に向かった。
季廻田海岸 04:41 p.m.
レーダーが捉えている、ゼミルの位置が変わらないことを不審に思った一条は、海岸に出向いていた。
「!」
砂浜を歩いている中、沖から吹雪たちの姿が見えてきた。
「吹雪……」
さらに、海岸の先には雪風と雄介の姿が。
「雪風………五代……?」
瞬間。
これらの状況から、一条は全てを理解した。
「まさか、ヤツの狙いは………!!」
「司令官!ご報告したいことが……って、司令官!?」
「ダメ……ダメよ!」
雪風たちの下へ走る一条を見て、大井は航行用の艤装を取り払い、一条を追いかける。
「一条さん!?」
「しれぇ?大井さんたちまで……!」
「この上空に、高空狙撃鬼がいる!!」
駆け寄りながら、一条は状況を伝えると、雪風を抱き抱え、直撃しないように庇う。
「狙いは五代――君だッ!!」
傍で聞いた雪風も、一条を追ってきた吹雪たちも、その話に驚愕した。
只でさえ敵の位置が判らないのに、しかも標的が雄介だと。
それは、揚陸侵艦への対抗手段を失うに等しかった。
(また………また、雪風は……誰かを死なせちゃう……)
雪風は悲しかった。
せっかく、自分に優しくしてくれた人がいるのに……
ほんのちょっとでも、自分を好きになれると思ったのに……また、誰かの命を奪ってしまう……。
雪風の目に、涙が溢れそうになった、その時。
雄介は両手を腹部にかざし、ベルト・アークルを呼び覚ました。
「えっ………」
加賀も、大井も、雪風も。
そこから起こった一連の出来事に、目を離せなかった。
ゆっくりと構える雄介の動き。
アークルの中央に収められた霊石アマダムの放つ、翡翠の輝きを。
「―――変身ッ!!」
穏やかな風から、徐々に力強さが増していき、嵐のような強風に包まれて、雄介は緑の戦士へと変身した。
「受け取れ!!」
変身した雄介に、一条は躊躇無く自身の銃を貸し与えた。
【邪悪なるものあらば その姿を彼方より知りて 疾風の如く 邪悪を射抜く戦士在り】
拳銃―――「射抜くもの」を基に《天翔ける天馬の弓》ペガサスボウガンを生成し、緑のクウガことクウガ・ペガサスフォームは完成する。
しかし。
今回はそれだけに留まらず。
クウガは、そこからさらに飛行甲板を模した武装を纏い、空母タイプへと超変身!
【邪悪なるものあらば その姿を彼方より知りて 暴風の如く 空の使いと共に 邪悪を射抜く戦士在り】
変身直後、クウガの周りに小型のゴウラムを模した艦載機《天馬》が出現。
優雅に舞う天馬の起こす疾風よりも荒々しく、敵を粉砕する暴風の戦士―――クウガ・テンペストフォームの誕生である。
「来るぞ!!」
ペガサスボウガンを手に、クウガは精神を研ぎ澄ませ、集中する。
「あ…あの、五代さんはなにを…」
「シッ!」
一条に質問しようとする吹雪を、加賀が制止。
静寂―――。
一条や吹雪たちに聴こえるのは、風が吹く音と波の音のみ。
―――と、その時。
―――ビィイイイッジジジジジジ……
常人では聴き取ることの出来ない、しかし忌々しい羽音を、クウガ・テンペストフォームの耳が捉えた。
「っ!」
遥か上空……高度数千メートルもの場所から、ゼミルはクウガ目がけて水弾を発射。
さらに、ついでと言わんばかりにボウガンを構え、吹雪たちに向けて矢を放った。
「フッ!」
ボウガンを基点にして、クウガは天馬を飛行甲板より発艦。
天馬は最大10機に増殖、ゼミルの放った矢を尽く相殺していく。
さらに、クウガはゼミルの放った水弾の弾道を読み、僅かな動作でこれを回避。
「ッ!?」
驚愕するゼミルをそのままに、流れるような動きでクウガはペガサスボウガンのレバーを引き絞り、エネルギーの込められた空気弾をチャージ。
そして
バギュンッ!!
引き金を引いて、必殺の狙撃・テンペストブラストペガサスを放った!
「グッ!ウゥ……ウアッ!?」
封印エネルギーの込められた弾丸を胸に受け、ゼミルは落下していく。
「グウウウッ!!ヌウウゥゥアアアアアアアッ!!」
悔しさと苦痛に声を荒げる中、ゼミルのベルトの装飾はパキンッと真っ二つに割れる。
そのまま海面に叩きつけられ……爆発。
「や……やった……?」
彼方に立ち昇る炎と煙が、撃破の成功を示していた。
戦闘が終わった頃。
すっかり陽は傾き、辺り一面夕焼けに染まっていた。
「はぁ〜〜〜………くったびれたぁ」
文字通り、体力気力共に激しく消耗する変身だった為、雄介はぐったりと砂浜に寝そべる。
「………」
加賀としては、ここで「だらしない」と注意をしたいところだが、先程のものを目の当たりにしただけに、強く言い出せなかった。
「五代……さん……」
「ん?……あ、君が大井ちゃん?良かったぁ…ケガは無い?」
「……っ………」
先程の変身然り、今の挨拶然り。
こんなお人好しが、ついさっきまで自分が殺そうとした人なのか……
「……ッ……う…うぅ……!」
過去の憎しみに囚われていた自分がみっともなくて
そんなことも知らず、無条件で誰かのために必死になれる雄介の姿が眩しくて…優しさが嬉しくて……
大井は泣き出してしまった。
一方、雪風も一条らと面向かっていた。
「しれぇ……私……」
「……無事で良かった」
謝ろうとした雪風に、一条が向けたのは安堵の言葉だった。
その優しさに、雪風も泣き出した。
「ごめんなさい………ごめ…なさい……っ」
泣きじゃくる雪風の頭を撫でながら、吹雪は微笑みかける。
「………明日は、よく晴れそうね」
水平線の彼方に煌めく夕陽を見ながら、加賀はそっと呟くのだった。
《戦果報告》―――
石ノ森艦隊
旗艦 吹雪
随伴艦 叢雲
大井
加賀
全艦、無傷。
鎮守府から一時行方不明になっていた雪風を捜索中、揚陸侵艦《高空狙撃鬼》を発見。
途中、出現した未確認生命体第4号が《空母4号》に変化。
狙撃によって、これを撃破。
判定―――《完全勝利》
クウガ編4章、これまでで最長になりました(;´Д`)
ひとまず、次回はまたキャラ紹介になります。
人気投票その5
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雪風
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加賀
-
大井