着任先の新提督が色々とマトモじゃない。   作:夏夜月怪像

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『闇の中見つめてる……
手を伸ばし掴み取れ。君…求めるもの』

また、誰かが平気な顔をして
夢だと笑っても……


69話 : 出動!G5ユニット

『カイリ……貴女たちは、存在を許されない……』

 

 

カラス怪人は、その不気味な姿からは想像出来ないほど落ち着いた、高い知性を感じさせる言葉で語りかけてきた。

 

 

「カイリ………?私は霞よ!」

 

微かに恐怖を感じてはいるが、それを悟られまいと強気な態度で応じる霞。

 

 

しかし……

 

 

『恐怖を感じることを恥じてはいけない……。カイリもまた、命を宿す者……命在る者が恐怖を感じることは、生きようとする本能なのだから』

 

 

「!?(コイツ……私の心を読んでる……!?)」

 

 

 

考えを見透かされていると感じて、霞はより一層警戒心を強めた。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

「霞ちゃん……!霞ちゃーん!!」

 

霞の姿を探して、大声で名を呼ぶ吹雪。

 

 

 

廃工場はかなり大きく、その中から駆逐艦娘一人を見つけるのは、地味に難しい。

 

 

「後藤隊長!南東の位置で、電波の乱れが発生しているとオペレータールームから情報が……」

 

 

一人のG5隊員からの報告を受け、後藤は氷川から得ていた情報を思い出した。

 

 

アンノウンが出現した時、その範囲一帯では特殊な磁場が発生し、防犯カメラといった電子機器に異常を来す……と。

 

 

「――恐らく、そこにアンノウンが出現している!A班、B班は反時計回りに迂回し、避難経路を確保してくれ!残るC班とD班は、俺に続け!捕らわれている艦娘の保護が最優先だが……万が一アンノウンが攻めてきた場合、俺が食い止める!!」

 

 

「了解!!」

 

 

指示を出した後、後藤は外していたマスクを再び装着。

 

 

専用マシンガン・GM-01《スコーピオン》を手に、部隊と共に工場内へ突入した。

 

 

 

 

 

「…アンタ………誰なの……?」

 

 

カラスのアンノウン………もとい、カラスのアンノウンを通して話しかけてくる存在(もの)に、霞は問いかける。

 

 

 

『知る必要はありません………。貴女は勿論、カイリは全て消えるのだから』

 

 

「ッ!?全て……!?」

 

 

ここで、霞はようやく理解した。

 

 

コイツが言うカイリとは……艦娘のことだ。

 

 

『カイリ……。これまで繰り返されてきた、永遠の苦しみ……そして、決して重なる事の無い、人との共存共栄の道………。その中で受け続ける痛みと悲しみから、貴女たちを開放します……』

 

 

 

 

「アンノウン発見!!側に居る少女、情報にあった艦娘と思われます!!」

 

 

『よし!アンノウンからの攻撃を防ぎつつ、艦娘の救助にあたれ!一番に保護し、救出を成功させた奴には、帰りにビールを奢ってやる!!』

 

 

部下と軽いやり取りをしつつ、後藤の率いるG5部隊が霞たちの前に現れた。

 

 

「GM-01、構えッ!!」

 

 

各班長の号令により、GM-01を構える部隊。

 

 

 

「撃てぇ―――ッ!!!」

 

 

霞の安全を確認し、直後に発砲。

 

 

 

 

しかし…………。

 

 

『愚かな………』

 

 

ただならぬ気配が消えた後、カラスのアンノウンを銃弾の雨が当たることは無かった。

 

 

 

「ッ!!?」

 

 

銃弾は全てアンノウンの眼前で静止し、一つ残らず粉々に砕けてしまったのだ。

 

 

「くっ!第二射撃、用意!!」

 

 

「た、隊長ォッ!!!」

 

 

 

そこに、霞を襲った豹のアンノウンが、黒豹タイプや雪豹タイプのアンノウンと共に出現。

 

 

G5ユニットを蹂躙し始める。

 

 

 

「コイツら、いつの間に………!!?」

 

 

GM-01を構える後藤だが、黒豹のアンノウンに飛びかかられ、防戦一方となってしまう。

 

 

「くっ……!オペレータールーム!オペレータールーム!!こちらG5後藤、緊急事態が発生した!直ちに応援を……ぐあっ!?」

 

 

「ヒッ、ヒイイイッ!!!」

 

 

恐怖に飲まれ、がむしゃらに発砲する新米の隊員たち。

 

 

しかし……カラスのアンノウン同様、アンノウンたちは一発の銃弾も受けることなく、戦場を蹂躙していく。

 

 

 

「嘘………これも、私が起こしたことだっていうの………?」

 

 

カラスのアンノウンの鋭い眼が、霞を冷ややかに見下ろす。

 

 

「フウウウ……」

 

 

右手で左胸を撫で下ろし、鳩尾辺りで止めた後、左手でZの字を刻む動作を取る。

 

 

 

 

 

 

この時、霞は初めて走馬灯というものを見た気がした。

 

 

霰や朝潮たち姉妹のこと、吹雪たち鎮守府の仲間や妖精さんたち………。

 

 

 

そして

 

 

最後に浮かんだのは、今日、翔一にバイトの取り消しを頼んで、その帰り際に贈られた言葉と笑顔だった。

 

 

 

『分かった。―――でも、もし気が変わったら、その時はまたいつでも声をかけて?そうでなくても、お客さんとして友達と一緒に来てくれたら嬉しいな』―――

 

 

 

 

 

 

瞬間。

 

 

霞は、涙を流していた。

 

 

「あ、れ………?なんで……」

 

 

茫然としてしまったが、すぐに理解した。

 

 

自分が、翔一の下から離れようとした理由……

 

自分が艦娘であるために、彼から何かを奪ってしまうかもしれないという恐怖から逃げようとしただけだったのだ。

 

 

それに気付いたと同時に、霞は「生きたい」という強い願望が芽生えた。

 

 

「やだ………やだ………っ」

 

 

それまでの強気な雰囲気は微塵も無く。

 

人一倍寂しがりで、甘えん坊な少女の本心だけが残されていた。

 

 

「やだ……やだぁ……」

 

 

 

カラスのアンノウン……クロウロードは頭上に現れた《光の輪》から長剣を召喚。

 

(きっさき)を霞の首元に突き付け

 

 

 

振り上げた……その時。

 

 

バイクのエンジン音が轟いた。

 

 

「!!」

 

「…………へ……?」

 

 

バイクから降り、ヘルメットを脱いで現れた男は

 

 

「…………」

 

 

 

左腰で両手をクロスさせ、右腕を胸の前でかざした。

 

 

すると、腹部に光の渦が発生し、ベルト状の装身具が実体化する。

 

 

 

「ふぅぅぅ……」

 

 

静かに、深く息を吐きながら、男―――津上翔一は叫ぶ。

 

 

 

神と呼ぶに等しい、巨大な存在を前にして尚立ち上がり、抗う者の魂の叫びを―――!!

 

 

「変身ッ!!」

 

 

 

ベルト状の装身具・オルタリングの両サイドバックルに備わったスイッチを叩き、翔一はゆっくりと歩み寄ってくる。

 

 

「グルル……!オオオッ!!」

 

 

クロウロードは飛び出し、翔一に飛びかかるも

 

 

手慣れた動きで翔一はクロウロードを往なしつつ

 

 

オルタリングに収められた『賢者の石』から発せられる、神秘の光・オルタフォースを受けて『変身』する―――。

 

 

「…………!!?」

 

 

 

「グルルル……!!ア・ギ・トォ……!!」

 

 

霞の前に立ち、クロウロードと対峙する金色の戦士

 

 

《進化し続ける者》を、アンノウンたちはこう呼んだ。

 

 

《アギト》…………と。




久しぶりに長々と書いてしまいました(^_^;)


次回、脳内BGMをアギト200%にしてお楽しみ下さい!!!

人気投票その6

  • 津上翔一
  • 氷川 誠
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